ヘイローが『反転』できるようになったので、謎のヒロインごっこを楽しみます。   作:YEBIS_nora

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今週はイマイチ頭が働きませんでしたわ~!
少し短めなので、手軽に読んでくれると嬉しいです。



『謎のヒロインごっこ』活動記録~『災厄の狐』との交戦編~

○月✕日

 

 うびゃぁぁぁぁああああっ!!ワカモ!?ワカモナンデ!?

 

 カイテンジャーの本拠地から立ち去って僅か数分後。

 黒服さんが所有するセーフハウスへ向かっていたボクの背後を強襲してきたのは、あの『災厄の狐』ことワカモちゃん。

 矯正局を脱獄した『七囚人』の一人にして、ボクと先生しか知らないシャーレの『秘密の古参部員』にして、先生の懐刀でもある属性てんこ盛りな大和撫子...?ちゃんだ。

 

 さっきまで先生がいないと喋らない系キャラを試していたけど、もうそんなこと意識してる余裕もなかったよね。

 『...いきなり何?』って聞いてみたら、『(わたくし)と少々キャラが被っておりますので、早めに始末しておこうかと...♪』とか言って躊躇なく攻撃を再開してきた。わーお、動機が雑過ぎますわ!?

 

 いやいやいや待ってよワカモちゃん!キャラ被りって言っても、せいぜいお面やマスクで顔を隠してることや密かに先生の周りで動き回ってることくらいしか......割と重要な部分が似通ってるな、うん。

 でっ、でもさ〜?ボクはワカモちゃんみたいに、FOX小隊が出て来るレベルの大規模な暴動とか起こさないし?明らかに『一目惚れ』とも違う打算や下心で先生を逆ナンしに来る女の子を()()()()に行ったりとかもしないと思うんだ!......きっと、たぶん、おそらく、めいびー...。

 

 ...まあとにかくっ!残弾も心許ないし、この理不尽な強襲イベントから早めに離脱したいところではあるんだけど...どうやって逃げる隙作ればいいのコレ?

 

 もうすっっっっっごい強い。小銃の巧みな取り回しと高練度の近接格闘が併さって、攻撃が途切れる気配がまるでない。

 カイテンジャーが5人で維持していた隙の無さをたった1人で実践してのける...キヴォトスの中でも『上澄みの強者』しか持ち得ない戦闘能力でもって、ボクに怒涛の攻撃を繰り出してくるのだ。

 

 体力的にもジリ貧になりそうで内心焦りまくりのボクなわけなんたけど...対するワカモちゃんも、次第にどこか荒々しい雰囲気を滲ませるようになってきた。

 

 うへへへへ...どうして要所への攻撃だけ的確に防がれるか不思議だよね。どれだけ攻め立ててもイマイチ崩しきれなくてイライラしてるよね。

 

 ...なぜならボクは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 少しでもシャーレの戦力になるために...『謎のヒロインごっこ』を始めるずっと前から、シャーレ部員全員の戦闘映像を何度も観て動きを研究していたのだから...!

 

 先生から秘密裏に単独任務をお願いされているワカモちゃんの記録だって、事情を知っているボクなら何の問題もなく閲覧することが可能だ。

 そのしなやかな身体捌きも、初動で僅かに現れる予備動作のクセも、銃剣で相手を狙おうとする時のシチュエーションの傾向も...()()()()()()()()()()()

 

 思考に身体が付いてこなくて宝の持ち腐れだった知識の数々も、『反転』した今のボクなら『戦略』として活用することが出来るのだから!

 

 ...ゴヅンッッッ!!と意表を突いて繰り出した頭突きがワカモちゃんの額に直撃し、小銃とショットガンで押し合っていたボクらはようやく互いの間合いの外まで距離をとる。

 ゲマトリア品質のボクのガスマスクは(かす)り傷程度だったけど...ワカモちゃんの狐面は一部分が割れ、綺麗な金色の左目がボクを鋭く射抜いていた。

 

 小銃を肩に担ぎながら、『この上なく厄介な邪魔者(あいて)ですね』と吐き捨てるワカモちゃん。きっと褒めてはないんだろうけど...あのワカモちゃんに『厄介』と評価された事実に口元が緩んじゃうボクは、大概に『戦いの愉悦』というヤツに目覚めかけているのかもしれないね。

 

 ちょっと調子に乗って『...もう帰っていい?』なんて言ってみたら、『(わたくし)がソレを許すと思います?』ってノータイムで返ってきた。うへぇ...ホントに今日この場でボクを始末するつもりだよぉ...!

 まあでも、殆どの動きはボクのメタ戦略の範囲内だし?このまま攻撃を捌きつつ、もう少し人目がある場所まで誘導して残りのお面を壊せば、指名手配犯のワカモちゃんなら撤退を考えてくれるだろう。

 

 ......なんて呑気に考えていた時期も、ほんの数秒前までありました。

 

 具体的には...互いに踏み込んで攻防を再開した直後、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が、ボクの脇腹に突き刺さったのだ。

 

 ぐおおおおお死ぬほど痛えぇぇぇぇぇぇっ!!

 油断したっ、まさかワカモちゃんにこんな奥の手があったなんて...!

 

 『()()()()』って何!?踏み込む前に呟いてたけど、直後からとんでもない密度のプレッシャーが__マエストロさんが話してた『神秘』らしきオーラが溢れ出してるんですけど!?ヘイローめっちゃ輝いてるし!

 

 それに弾丸がボクを掠めると、一時的に身体の動きがガクッと鈍くなる...もしかしてだけど、弾丸に込められた『神秘』がボクの『恐怖(テラー)』を掻き乱してるのかもしれないね...!

 

 ...正直もう、帰るまでの体力とか気にしていられる場合じゃない。

 下手に『恐怖(テラー)』を出し惜しんで負けてしまったら、まず間違いなくガスマスクをひっぺがされて素顔を見られてしまうだろう。

 生徒相手に『恐怖(テラー)』を練り込んだ弾丸を撃つことには抵抗あったけど...あれだけ身体中に『神秘』が巡っている状態なら、ボクと同じ様な状態異常に陥るだけだろうから問題ない。

 

 ...脇腹に手を当てながら呼吸を整え、ボクはヘイローに意識を集中させる。

 少し前まで無差別に振りまいていた『恐怖(テラー)』を研ぎ澄ませて、今度はムダなく全身に巡らせる。

 

 ...さあ、今もう一度自覚しよう。

 自分はただ、運良く『反転』を身につけることが出来ただけの一般事務員であることを。

 戦闘経験に裏打ちされた『磐石な強さ』を、自分は欠片程しか持っていないということを。

 

 序盤の『謎のヒロイン』っぽいスタイリッシュな戦い方なんて意識しなくていい。

 立てかけられた建材をなぎ倒してでも、収集場所に積んであるゴミ袋を投げ飛ばしてでも...みっともなくて意地汚くとも、目の前の『最強』を乗り越えるために死力を尽くせ...っ!

 

 この超絶難易度の試練(イベント)を切り抜けられるくらいでなきゃ、先生の『謎のヒロイン』を名乗る資格などありはしないのだから____!

 

 

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 夕焼けのオレンジと、夜の藍色が空に共存する時分。

 雑居ビルの給水塔を背もたれに座り込むボクは、『反転』を維持出来ずに一般事務員の姿へと戻っていた。

 

 ...その後数時間に及ぶ攻防戦の末、ワカモちゃんによる強襲イベントは()()()()()()()()()()()()()

 理由は、弾切れと極度の疲労による両者同時の撤退判断。

 

 どうやらあの奥の手は消耗が激しいらしく、終盤はワカモちゃんですら肩で息をしてキツそうな表情を浮かべていた程だ。

 ボクもスランピアでの長時間戦闘を経験していなかったら、ここまで粘ることは出来なかったかもしれないね。

 

 ...しかし『神秘解放』ね...今まで聞いたことなかったけど、ボクら生徒の『神秘』にあんな潜在能力(ポテンシャル)があるだなんて。

 昼間は完全に不意を突いたから出せなかっただけで...ヒナちゃんをはじめとした()()()()()()()()()()()も、実は使えたりするのかも...?

 

 ...だとしたら、ちょっと羨ましいな。

 

 呟くボクの脳裏に呼び起こされるのは、資料室のパソコンで何十回も観た『最強』達の戦う姿。

 戦場を縦横無尽に駆け抜けて、数多の相手を薙ぎ払って、強大な兵器や『複製(ミメシス)』のような超常現象にも正面きって立ち向かえて......頼ってもらえて。

 

 そんな彼女たちの姿が眩しかったから...ボクは『強くなりたい』と願い、実を結ぶか分からない努力を腐らず続けるようになったんだっけな...。

 

 ...なーんておセンチなことを考えていたら、連絡しておいたゴルコンダさんとデカルコマニーさんが迎えに来てくれた。

 

 『いや〜、大変だったよ〜』みたいなノリでゴルコンダさんと話してる間に、流れるような手際でボクの応急手当をしてくれるデカルコマニーさん。やだ、なんかカッコいい。

 これだけ処置してくれたら、明日30分くらい恐怖(テラー)に反転すれば完全に傷痕を消すことが出来るだろう。

 

 『ありがとね』って言ったらビシッとサムズアップしてくれたので、ボクも親指を立てた拳で応えてみせた。グータッチだね、イェイ☆

 

 さて、じゃあ帰ろうかって言いたいところなんだけど...疲労がエグ過ぎてまだ動けそうにないんだよね。

 後30分くらい休んだらビル(づた)いに跳躍できると思うから...なんて話していたら、『デカルコマニーが運んでくれるので大丈夫ですよ』と答えるゴルコンダさん。

 

 運ぶって...つまりボクを米俵みたいに肩に担いで帰るってこと?うへへっ♪それはそれでちょっと絵面が面白いかもね。

 そう笑っていたボクにゴルコンダさんを預けると、デカルコマニーさんがボクの膝裏と首の裏に腕を通して......って、んんっ!?

 

 待って待って待って待って!お姫様抱っこは流石にアレじゃございませんこと!?

 『気配遮断の『遺産』を使うので別に目立ちませんよ?』って...そういうことじゃなくてっ!抱えられてるボクがなんか恥ずかしいって意味なんだけど!?

 

 『疲労困憊の子どもに、ビルの屋上を跳び越えさせるわけにはいきませんから』じゃないが?『悪い大人』を自称してるくせに根が紳士的なのズルくない?漫画やアニメのキャラだったら推しキャラになってしまいますわ!

 

 その後もギャーギャーと騒ぎ立てるボクに『そういうこった!』と返しながら、デカルコマニーさんは助走をつけてビルの屋上から跳躍した。

 

 ...あぁ。きっとボクはキヴォトスで唯一、首のない大人にお姫様抱っこされながらビルの間を跳び回る経験をした生徒になるのだろう。

 やたらと顔が熱く感じるのも、今日の気温が比較的高いからだと思いたい...。

 

 ...ちなみにこの様子は記録用ドローンにバッチリ記録され、後日映像を見た黒服さんとマエストロさんに暫くネタにされて(からか)われたのは言うまでもない。

 

 




作者の頭では、色彩ちゃんのガスマスクはアツコちゃんのマスクと似たようなフォルムをイメージしておりますわ~!
安全と信頼のゲマトリア品質ですことよ~!
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