仮面ライダーAP外伝 Imitated Devil 作:X2愛好家
人は産まれながらに泣く生き物だ。
親に自らの存在を刻み込む為か。
肥溜めに産み落とされた事への嘆きか。
その理由は誰にも分からない。
成長してからも人は涙を流す。
嬉しくて。
悲しくて。
痛くて。
苦しくて。
産まれた瞬間は目一杯泣けば良い。
その涙が身勝手な悪意によるものなら。
せめて元凶を止めてみせよう。
私の指は涙の拭い方を知らない。
知っているのはトリガーの引き方だけ。
▲▽▲▽▲▽
2021年8月6日。
仮面ライダーオルバスこと忠義・ウェルフリットが、ニュージェネレーションの一人として世界各地を転戦しつつ、強奪されたジャスティアドライバー奪還にも動いていた時期。
忠義の同僚でもある六人のニュージェネレーションライダー達が、その名と勇姿を民衆とノバシェードに刻み込んでいた頃。
とある一柱の悪魔もまた、このヨーロッパに存在していたのだ。
これはその悪魔が紡ぐ喜劇にして悲劇。
血生臭い謎だけを表に残した、闇に葬られるべき物語。
▽▲▽▲▽▲
「本当にここまでで良いのかい?」
「あぁ。助かったよ」
栄えている都市部から離れた、牧歌的な風景が広がる草原に一台のトラックが停まっていた。トラックの運転席から声を掛ける男性と、助手席から降りつつ礼を言う女性。どうやら女性がトラックに相乗りさせてもらっていたらしく、降りると言った場所が場所だった為に本当にここで合っているのか改めて聞いたようだ。
「幾らだ?」
「いやぁ、別に構わんよ。この先の倉庫に行くついでだと言ったろう」
「タクシーならそれなりに掛かる距離だ。貰っておいてくれ」
「そこまで言うなら……」
財布から紙幣を取り出し男性に渡す。お人好しなのか本当についでの積もりだったのか、受け取りを渋る運転手だが女性が引き下がりそうにないと見て運賃を懐に仕舞った。
「ではな」
支払いを済ませ、トラックの行き先とは別方向へと歩き出す女性。その後ろ姿を見送りつつ、運転手は独り言を溢す。
「随分とぶっきらぼうなシスターだなぁ……別に教会まで乗っけてっても良かったのに」
各部に変わった装飾をあしらった黒い服、所々にダメージ加工のような傷があるが、その姿は運転手の言う通りシスターに見えなくもない。だが絶対にシスターであると言い切れる訳でもなく、慈愛から遠く離れた態度や財布を含めた所持品も世俗的。シスターというイメージからは解離した、どうにもチグハグな女性なのだ。
そしてその女性が足を向けた先には、これもまた運転手が溢した通り年期の入った教会がある。シスターにも出張とか左遷とかあるのかねぇ、等と益体も無い事を考えつつエンジンを噴かして自らの目的地へトラックを走らせる男性。
偶然の出会いから乗せた女性───ルゥ・ガルディウムが、偽りの悪魔と契約したジャスティアライダーの一人である事など、神でも悪魔でもないただの人間である彼には知る術も無い。
▲▽▲▽▲▽
「ん……」
舗装されていない砂利道を歩く事数分。ルゥは目的の教会に辿り着いていた。所々に補修の跡が目立つ年季の入った教会に隣接する形で別の建造物も建っている。こちらは比較的新しく、十年も経過していない事が見て取れる建物だ。
「また穴が空いてないと良いが」
「あーっ!シスタールゥだ!」
教会の補修跡を睨んでいたルゥ。そんな彼女を発見した子供の声が響き、それに続いて多数の足音がルゥの方へ一斉に向かってくる。
「おかえりー!」
「何度でも言うが、私はシスターじゃない」
「でもリシャねぇとおなじかっこーしてるよ?」
「よく見ろ、これは修道服じゃない。修道服をイメージしたファッション、着こなしだ」
「シスターじゃないのにシスターの格好してるの?変なのー!」
「カッコいいだろ」
あっという間に子供達に囲まれ、服装やら何やらと質問攻めに合うルゥ。トラック運転手が「ぶっきらぼう」と評したように子供達に対しても硬い態度を取るルゥだが、律儀に一つ一つ答えている辺り嫌っている訳ではないようだ。
「みんなー、そろそろ……あっ」
全くルゥから離れる気配の無い子供達を呼ぶ声。教会の方から歩いてきたのは、ルゥとは違い、正真正銘の修道服を纏ったシスター。子供の一人が名前を挙げていたリシャその人である。
「ルゥさん!お帰りなさい!」
「ただいま……慣れないな、これは」
むず痒さを感じながらリシャに言葉を返すルゥ。彼女と血が繋がった姉妹という訳ではなく、この教会とそれに隣接された建物───孤児院で育った訳でもない。そう何度かあしらったにも関わらず、リシャや子供達はルゥを家族として扱ってくれる。親の愛情を知らずに育ち、傭兵として戦場を駆け回っていたルゥにとって、それは何度味わっても慣れないモノだった。
「みんなは先に戻っていてね」
もっと遊びたい、ルゥとお話したいとちらほら不満の声が漏れたが、リシャの言うことを聞いて孤児院へと戻っていく子供達。それと入れ替わるように一人の少女が出てきたのが目に留まる。
「彼女は?」
「あぁ、ルゥさんは初めて会うんでしたね。二ヶ月前から住み込みで手伝ってもらっている───」
「お客さんですか!はじめまして!わたしはユト・ミクスって言います!どうぞヨロシャスです!」
「どういうタイプかは分かった」
「あはは……」
▽▲▽▲▽▲
「リシャ先輩の話によく出てくるルゥさんでしたか!いやー、そうとは思わず失礼しました!」
「構わない。……近いな」
教会内の礼拝を行う場所、聖堂にて意気投合したというよりはぼ一方的にルゥに絡んでいるユト。子供達の世話の為に孤児院に引っ込んだリシャに代わり、ユトがルゥの応対を買って出たようだが、そのテンションとバグった距離感にルゥは早くも引き気味である。
「ユトはどうしてここに?」
「んぁ?えーっと……」
「話したくないなら言わなくてもいい。我ながら不躾だったと反省している」
「あー、いや。そんな面白くも珍しくもない話ってだけですよ。シェードだかノバだかが街をメチャクチャにして、母さんも姉さんも妹もオタノシミにされて、父さんは普通に殺されて」
「……すまん」
「いやいや!もう昔の事なんでホント!んで、二択だったんですよねぇ。泣いて恨んで、復讐する為に軍人ごっこするか、生き恥晒して家族の分まで生きるか」
で、逃げる事を選んだってわけで、と苦笑いしながら話すユト。その瞳の奥に、その胸の内に、どれ程の淀んだ悪感情を押し込めて生きてきたのだろう。ルゥの戦場で鍛えた観察眼は、チョーカーと服の袖で隠されたユトの首と手首から痛ましい傷痕が僅かに覗いているのを見逃さなかった。
(試したのは二つか……)
何度も死にたくなったのだろう、何度も心が折れかけたのだろう。過去と絶望を呑み込みながら、ようやくここまで来たのだろう。ルゥが見てきた人間の中でも、ここまで痛め付けられて立ち上がれた者は片手で数えられる程しか居ない。
「あー……湿っぽい話終わり!オシマイ!笑い飛ばして楽しく明るく行きましょうよ!ね!!!いやー、今頃わたしに逃げられたアホ共悔しがってるだろうなー!」
ビキニとかバチクソに似合っちゃう超絶美少女ですからね!と先程までより元気に振る舞うユト。完全に黒い感情を消せた訳ではないだろうが、それでも前を向こうとしている彼女は眩しく見えた。
「あっ、んで流れ流れてこの教会に拾ってもらったんですよ!わたしの経緯終わり!さぁさぁ次はルゥさんが来た理由ですよぉ?聞かせてもらいましょうか!ヘイヘーイ!カモン!」
「はぁ……」
それはそれとして距離の詰め方が異常なユト・ミクスという少女は苦手な部類のルゥだった。
◆◇◆
「ちょうど今日かな?」
「えぇ、予定では」
「楽しみだねぇ……」
◇◆◇
「私の話も、そう面白いものじゃない」
「別に面白くなくても良いんすよー、わたしがルゥさんとお話したいだけなんで!あっ、でもでもアレっすよ。んっんん……話したくないなら言わなくてもいい……似てました?」
「私の真似か?まぁ、及第点だな」
「きびしっ」
聖堂の椅子に腰掛け話を続ける二人。キリッ、と擬音が聞こえてきそうな決め顔を作り、ユトを気遣った際のルゥを真似したユト。人の特徴を捉える才能があるのか、口では及第点と言いながらも内心かなり似ていたルゥの物真似。磨けば光る一芸、そして明るく快活な振る舞い、恐らくこういう所が孤児達に好かれているのだろうと分かる。
「私が来た理由は……見舞いだよ」
「お見舞い、ですか?……あっ、もしかして」
「さすがに知っているか。そうだ───」
「メリバのな」
メリバ・クレイザ。
ルゥ・ガルディウムの元同僚。彼女と同じPMCに属していた傭兵であり、ルゥとは仲間と言うよりも戦果を競い合うライバルと言った所。属していた、という過去形の通り現在は傭兵を引退し、この孤児院のシスターをやっている。
(私は腕で済んだ。だがメリバは……)
ギリッ、と僅かに金属音を発するルゥの右腕。彼女の右腕は骨に肉が付き、血管の通う普通の人間の物ではなくなっている。右腕だけではない。他にも臓器の幾つかを機械に置き換え、生物としての整合性を半ば強引に保っているのがルゥ・ガルディウムの体なのだ。そして、進歩した技術でも補いきれなかったのか、はたまた自戒の証として残しているのか、右肩から腹部にかけて痛々しい十字の裂傷痕が走っている。
(あの日、あの作戦決行の日……私達の全てが変わってしまった。悪魔の力を見せつけられ、そして悪魔の囁きが聞こえたあの日だ……)
「あの……?ルゥさん?」
「っ、すまない」
機械式の義手となった右手を、左手で無意識に抑えていたようだ。心配した様子でユトが顔を覗き込んでいる。
「詳細は省かせてもらうが、私とメリバは同じ場所で戦っていた。そこで私は体を、メリバは心を壊されたという訳だ」
「心……だから、あんな風に……」
メリバがこの孤児院、ひいては教会に預けられたのは心の傷を癒すため。戦場から遠く離れている立地で、受け入れを表明してくれたのがリシャだった、というだけの話だ。最近住み込み始めたユトもメリバの現状は知っているらしい。
「私達も改造人間に手酷くやられてな、アレは正に悪魔の力だった。そんな悪魔を目にしたんだ、メリバが神に縋るのも理解できる」
「そう、ですね……」
「さて……私の湿っぽい話も終わりだ。ユト、特にやる事が無いなら手伝ってくれるか?幾らかガタが来ている所があった。それの補修をしたい」
「……っす!」
ルゥがこの教会に来た一番の目的は本人の言葉通りメリバの見舞いだが、彼女を受け入れてくれたリシャへの恩返しも目的の一つだ。道中で当たりを付けていた場所と礼拝堂の内装も幾つか。嫌な空気は体を動かして忘れるに限る、とユトも誘うルゥ。沈んでいた表情をぱぁっと輝かせルゥに続くユト。力仕事と高い所はお任せっす!と張り切って道具を取りに向かうのであった。
▲▽▲▽▲▽
あぁ、私の愛しい子。
悪魔は全てを奪い去る。
その瞳で悪魔を見てはいけない。
その耳で悪魔の声を聞いてはいけない。
その口で悪魔を呼んではいけない。
その手で悪魔に触れてはいけない。
その足で悪魔の元に駆けてはいけない。
死んではいけない。
その魂を喰われてしまうから。
生きていて。
私の元で生きていて。
私の、元で。
▽▲▽▲▽▲
「メリバさーん?シスターメリバー?お客さん、というかお友達がいらっしゃってるっすよー?」
「寝てるんじゃないか?」
「ですかねぇ……?いつもは夕飯の支度を手伝いに出てくるんすけど。メリバさーん、具合悪かったりしますー?」
孤児院の廊下、メリバの部屋の前で立ち往生しているユトとルゥ。教会と孤児院の補修を終え、少し遅めの夕食を取ろうとしていた二人だったが、リシャからメリバがまだ姿を見せていないと聞き今に至る。やや強めにノックし名前を呼んでも返事が無い。ルゥの言う通り眠っているのか、はたまた体調を崩しているのか。
「あら……?」
「っ」
「あれ、メリバさん出てたんすか」
確認の為にも入室しようとユトがドアノブに手を掛けた瞬間、二人の背後に現れた人物。痛々しい傷跡の残るルゥとは違い、その修道服から覗いている肌には傷一つ無い。ふわりと軽くカールした金髪、とろんと垂れた目尻、相対した人間まで柔らかくしてしまいそうな雰囲気を漂わせる女性こそメリバ・クレイザその人だ。
「どうしたの?ユト。それにルゥも」
「晩御飯の時間になっても降りてこない、って聞いたんで様子見に来たんすよ。体調崩したんじゃないかって心配してたんですけど、元気そうなら良かった!」
「あぁ……ごめんなさいね……?見ての通り元気よ。それにルゥ、来てくれたのね?ありがとう、嬉しいわ」
「……あぁ」
とても血と泥に塗れる戦場に生きていた元傭兵とは思えない程に淑やかな女性。今のメリバと戦場に居た頃のメリバは似ても似つかない。再びユトに視線を向け、ルゥについての話に花を咲かせるメリバだが、未だ血生臭い戦場に身を置き続けているルゥは気付いていた。この孤児院に居る限り付く事の無い「匂い」が、そして昔は互いに全身に被っていた「匂い」がメリバから漏れている。
血の匂いだ。
「えっ、ちょっ……ルゥさん!?」
「何処で、何をしていた」
「……?」
「答えろ」
義手となった右手でメリバの腕を掴み語気を強める。疑問符を浮かべながら首を傾げるメリバだが、慌てるユトを意に介す事なく自分だけを見据えるルゥを見てクスッと笑うメリバ。
「ふふっ……ちょうど良いわ、来て?」
そう言ってメリバは来た道を引き返し始めた。かなりの握力があるはずの義手をいとも容易く振りほどいて。疑念を強めるルゥは静かにメリバの後に続き、なにが何やら分かっていないユトも一拍遅れて二人の後を追い始める。
その先に地獄が待っているとも知らず。
▲▽▲▽▲▽
「こっちよ」
「……」
「えぇ……?教会に戻ってきちゃいましたけど……わたしらが作業してる間、メリバさんも教会に居たって事ですかね……?」
ユトが困惑した通り、ルゥ達は先程まで二人が修繕作業を行っていた教会に戻ってきていた。作業中は特に何も感じなかったが、メリバが発しているのと同じ匂いを感じられるようになっていた。そしてその匂いはどんどんと濃くなっている。ふとメリバが立ち止まる。そこは礼拝堂の終点、鮮やかなステンドグラスの真下だ。
「少し待ってね……はい、どうぞ」
「地下……」
「こんな物が礼拝堂にあったなんて……」
何らかの装置をメリバが操作すると、ガコンッと鈍い音を響かせ地下へと続く薄暗い階段が現れた。ギリギリ足下が見えるかどうかという暗さにも関わらず、何の躊躇いも無く階段を降りていくメリバ。それに続き、メリバが足を降ろした場所をしっかり記憶して危なげなく下っていくルゥ。ユトはルゥの服の裾を掴んでおっかなびっくり降りていく。
「……うふっ、ふふふっ……!」
「ユト」
「へぅあっ!?はっ、はい!なんでしょーか!」
「最近のメリバはいつもあぁか?」
「えっ、とぉ……いや、違うと思いますよ……?儚げな美女シスター的な感じで、あそこまで……その、何というか……こ、こわーい笑顔はしないと言いますか……」
どこか狂気じみた雰囲気はユトも初めて見るらしい。本当にごく最近発露したのか、上手く隠していたのか。
(そういえば、さっき「ちょうど良い」と……)
「ユト、メリバはどんな仕事をしている」
「わたしらとあんま変わんないっすよ?ガキンチョどもと遊んで、勉強見て、ご飯作って……あ、でも確かリシャ先輩と一緒に里───」
「着いたわ」
ユトが自分のやっていない仕事を挙げようとした時、ちょうど良いのか悪いのか目的地に到着したようだ。上の礼拝堂には似つかわしくない頑丈な扉を開き、中へ二人を招くメリバ。扉が開くと同時に、気配と経験から感覚的に捉えていた「匂い」が嗅覚で感じられるようになったのに気付くルゥ。ユトを制止して上に帰そうとするが、一手遅くメリバに引き込まれてしまった。
「おぅわっ!?ちょっとぉ!何する、ん……」
「何だ、ここは……」
二人が目にしたのは、上の礼拝堂に酷似した光の差さないもう一つの礼拝堂。特徴的なステンドグラスは勿論、椅子や壁掛けの燭台まで、何から何まで上の礼拝堂と同じだった。違う点は、椅子やら床やらに黒い染みが着いている事。そして別の部屋らしき扉が幾つかある事。
「な、なんだって礼拝堂がもう一つ……」
「ここは私たちの為の礼拝堂」
「私、たち……?」
いつの間にか二人の背後から扉の前に移動していたメリバが、いやに楽しそうな口振りで語る。複数を指す言い方にルゥが引っ掛かりを覚えたのと同時にメリバが後ろ手に扉を開いた。
「えぇ、私の個人的な祈りを捧げる為に。そして、悪魔に魅入られてしまったこの子達を救う為に」
「この子達……?」
「っ、待てユト!見るな!」
事情を知りたいという好奇心か、助けになりたいという優しさか。ルゥの制止も遅く、メリバが開いた扉の向こう側を覗いてしまったユト。
「……え?」
ルゥに肩を掴まれ勢いよく引き戻されるが、部屋の中の光景はしっかりと目に焼き付けられていた。数秒程度にも関わらず、僅かな光源しかない薄暗い部屋だったにも関わらず。ユトの脳裏に刻み込まれたのは───
「うっ……えぅっ……!」
子供たちだった。
血塗れで、身体の多くが欠けた、見るも無惨な状態の、吐き気を催すような惨劇の跡だった。みるみる内に顔が青ざめ、胃の中にあった物を吐き出すユト。そんなユトを庇いながらメリバを睨み付けるルゥ。その目は「敵へ向ける怒り」に満ちていた。
「何をした……!なぜこんな事をした!」
「なぜ、って……言ったでしょう?その子たちは悪魔に魅入られてしまったの。それに、卑しい悪魔が他の子にも手を出したら大変でしょう?だから清めたのよ」
「目を」
「耳を」
「口を」
「喉を」
「手を」
「足を」
「性器も」
「そうすれば悪魔も手出しできない。後はここで祈りを捧げて、身を清めるだけ」
メリバの瞳にかつての面影は無かった。改造人間という悪魔に心を壊され、その反動で神に縋り、行き過ぎた信仰と思考がメリバを凶行へと走らせたのだろう。少しずつ、ゆっくりと快方に向かっていると思われた心は、端から元になど戻らない程に粉々だったのだ。
「素晴らしいでしょう?最後にここで祈りながら命を還せば御許へと行ける……これ以上の救いがある?」
「メリバ……そこまで堕ちたか……!罪の無い子供達を痛め付け、身勝手な救いなどと宣って!」
「安心して、ルゥ。それにユトも。あなた達も必ず御許へと行けるわ!私が送ってあげる!リシャも、他の子らも!うふっ……!あははっ!」
もはや話も通じない。懐からやや大きめのデバイスを取り出しつつ、ユトを強引に立ち上がらせ降りてきた階段の方に向かって押し出す。
「走れ!リシャ達を逃がすんだ!」
「あ……ぅ……!」
「うふふっ……!くっふははははっ!アーッハッハッハハハッ!」
ふらつきながらもユトが走り出したのと同時にメリバが狂った笑い声を上げる。更には、その身体が膨張し、不気味な音を発しながら変異していく。
───見て!ルゥ!これが私に授けられた福音!主が悪魔を討てと与えてくださった祝福!
そこにはもうメリバの姿は無く、代わりにメリバの声で喋る怪物が立っていた。修道服の切れ端が至るところに張り付いた、二足歩行の狼のような怪物。5メートルはあろうかという人狼のような姿になった、メリバだったモノが歓喜の声でルゥへと語りかける。
───救済を!救いをもたらすの!私が!この御使いの力で!
「違う」
取り出したデバイス───ジャスティアドライバーを腰に当て、ベルトが一周して固定されるのを確かめたルゥは、かつての戦友であったモノに友人だった者の義務として言葉を返す。
「それは悪魔だ」
▽▲▽▲▽▲
「ハァッ、ハァッ!っくぅ……!」
息を切らして走るユト。階段を駆け上がり、表の礼拝堂を抜け、叩き壊しかねない勢いで孤児院のドアに辿り着き押し開ける。ドアを開けた先には一人の少女が居た。血相変えて飛び込んできたユトを心配し、だいじょうぶ?と駆け寄ってくる。
「っ!うっ……おえっ……」
目の前の少女は生きている。それは分かっている、分かっているはずなのに。つい先程見てしまった光景が重なり少女を直視できない。もう全て吐き出したはずなのに再び胃から異物感が込み上げてくる。
「エスタ?今の音は───ユト!?」
「リシャねぇ……ユトねぇが……」
様子を見に来たのはリシャ。エスタが何か落としてしまったのかと確認に来てみれば、そこに居たのは真っ青な顔で蹲っているユト。床には抑えた口から漏れたらしい液体が滴っただろう染みが出来ている。
「どうしたのユト!何が……」
「に、げ……」
「え?」
「逃げ、て……!みんな、早くッ!」
▲▽▲▽▲▽
「チッ……!」
───あぁ、ルゥ。何処へ行く気なの?
地下礼拝堂では、異形の怪物と化したメリバを止めるべくルゥが奮闘していた。子供達に存在を悟らせなかった拳銃をコート裏のホルスターから抜き、開けた口の中や目を狙って発砲するも悉く防がれてしまう。盲信によって狂気に染まったとはいえ、長く隣で見続けたルゥの戦い方とその対策は染み付いているようだ。
「駄目か……なら!」
弾倉に残っていた弾を陽動と牽制がてら撃ち尽くし、離していた距離を今度は一気に詰める。抜いたのは新たな拳銃ではなくナイフ。顔を狙った弾丸を防がせ、視界を狭めた所で急接近、急所であろう首か左胸辺りを貫ければという目論見だったが───
「っ!?」
───なぜ?なぜ拒絶するの?
確かにナイフは首、人間で言う所の頸動脈辺りを的確に捉えていた。が、刺さっただけ。おまけにその刺さりも甘く、致命傷には程遠いダメージなのはメリバの反応からも明らかだ。ナイフはそのままに離脱しようとするルゥだったが、メリバの方が早かった。蹴って離れようとする動きに容易く反応し、片手で軽々とルゥを掴み捕らえてみせた。
「ぐっ……うぅっ……!」
───やはり、そうなのね……あなたも悪魔に憑かれてしまったのね……!でも大丈夫、安心して?直ぐに清めてあげる……その目も耳も口も、腕も足も!
「そう、やって……!何の罪もッ!無い子供達から奪ったのか!お前は!」
───奪った?何を?
「なっ」
───私は与えているのよ?悪魔に脅かされる事の無い、魅入られる事の無い平穏な未来を!
話が通じない。
メリバは本気で、あの悍ましい状態にした子供達を救っているつもりのようだ。五感の殆どと手足を失い、暗闇の地下礼拝堂に閉じ込められた子供達に、本当に平穏な未来が待っていると。
「生きているだけだ……!」
───……?そうよ?あの子たちは生きている。だからこそ、その未来を守るの。
「全てを奪われた上で生かされるのがどれだけ残酷な事か!お前は良く知っているはずだ!その先に真っ当な結末など来ない事も!」
───これ以上を悪魔に奪われない以外に、素晴らしい事など無いでしょう?
声はくぐもり、吐息は獣のそれになっても理解できる。メリバは絶対に意思を曲げない。いや、曲げる意思など無いのだ。そこにあるのは盲信と狂気。一つ事に囚われた哀れな獣。これが外に出れば、更に多くの罪無き子供達が救済という名の地獄を見る事になる。いずれニュージェネレーションライダー達に討たれる運命だとしても、それまでに出るであろう被害から目を背ける訳にはいかない。
此処で今、討つしかない。
「悪魔を討つ為に悪魔となる、か……」
───なんと、言った……悪魔、だと……?
───ふざけるなァッ!!!
ルゥの独り言を聞き激昂するメリバ。先程までの狂気を孕んだ優しい口調は何処へやら、憤怒と共にルゥを拷問、もとい清める為の部屋へと投げ捨てる。
「がっ……あっ……!」
ユトが目撃してしまった部屋とは別の部屋。中には子供の姿が無く、今のところは使われていないようだ。そこにルゥを投げ込んだのは偶然か、一応は本気で子供を気にかけているからか。
───あぁ、あぁ。私に怒りを覚えさせて堕落させようと言うのね?なんて卑しい。やはりあなたの中にも悪魔が巣くっているみたい……!
ルゥが突き破らされた衝撃で破損した扉。それを更に一部崩し、潜り抜けて部屋に入ってきたメリバ。指先に生え揃った鋭い爪をルゥの顔に向け、狙いを定めながら距離を詰めてくる。
(骨が何本かイカれたな……腕は……無事か)
部屋の最奥にまで吹き飛ばされ、壁に激突して止まったルゥ。本来の生体部分である骨は何本か折れたが、掴まれていた義手の方は何とか守れた。それなりに高くついたが、この状況を打開するには、どうしても拘束から逃れる必要があった。
───まずはその口から縫い合わせましょう。二度と呪詛など紡げないように……!
「っ!」
殺す気は無いらしく、ゆっくりと腕を伸ばすメリバ。また掴んで捕らえ、もう片方の腕で口を切り裂くつもりなのだろう。だがその「力を得た故の慢心」はルゥにとって好都合だった。スライディングするように体勢を更に低め、メリバの腕をすり抜けて躱す。
回避と同時に、義手から溢れ落ちるように排出された小さな部品をドライバーに装填していた。
───ルゥ、お願いだからじっとしていて?
「私が大人しくしていられる質じゃないのは、お前も良く知っているだろう」
小さな部品───イグニッションキーを装填されたドライバーは、熱暴走でも起こしたのかと思える程に【熱く】なっている。
「そして、お前のような敵を逃さない事も」
右手を横に、左手を縦にして組んだ十字。右手を引き、左手でドライバー上部のスイッチを殴り付けるように押し込む。
「変身」
そうしてもたらされるのは悪魔の祝福。メリバが忌み嫌い、恐れたモノ。強き者だけが得れば良い力の具現。そして今、ルゥが欲した悪魔を討つ為の悪魔の力。
尖った耳のようなアンテナ、口元のクラッシャーを更に凶悪に見せる二本の牙、十字型の装甲を関節部に備え、腰からたなびかせる布のような軟質装甲。清廉な聖職者と、荒々しくも気高い狼が混じりあったような姿へ変身したルゥ。
それは地獄の侯爵。
ジャスティアナンバー35。
仮面ライダーマレコシアスだ。
───グゥゥゥッ……!
「悪魔を討つのは同じ悪魔の仕事だ」
───黙れぇぇぇぇぇぇ!!!
顔を防御しながら一息にマレコシアスへと飛び掛かるメリバ。空中から繰り出された蹴りをゆらりと回避し、いつの間にやら握っていた十字架のような銃器をメリバへと向けるルゥ。瞬く間に銃口から吐き出された複数の弾丸。それらは全てメリバの右腕に防御されてしまうが、着弾箇所から火が噴き出した。
───アァウッ!?
「……」
マレコシアスには二つの形態があり、ルゥが直接変身したのが機動力重視の姿である
───こんなっ……!事でェッ!
地面に突き刺さった足を引き抜きながら蹴りを繰り出すメリバ。飛散した瓦礫程度ではマレコシアスの鎧を砕けず、蹴りそのものも上体を反らして躱してみせる。左手のクロスで反撃の銃弾を浴びせつつ、右手のクロスを逆手に握り直しグリップをメリバの背後へと向ける。マレコシアス・クロスのグリップ下部には蛇腹剣が装着されており、格闘戦の間合いの外から斬撃を繰り出したり、ワイヤーの代わりに使用して移動補助にも使えるのだ。
───ガファッ!?
ちょうど今のように。礼拝堂よりも天井の低い小部屋だからこそ届いたグリップブレードの切っ先。それの引き戻しによって天井へ向けて加速し、途中にあったメリバの顔に強烈なドロップニーを叩き込んだのだ。仰向けに倒れる異形化メリバの巨体。その隙を逃さず、天井でキックターンし急降下するルゥ。
右手のクロスを銃の順手に戻し、両方のグリップブレードをメリバの喉元に突き立てた。
───グゥアァァァァァッ!?!!
喉を貫いたにも関わらず致命傷には届かない。ルゥを振り落とさんと暴れ、その豪腕でルゥの背中を狙うが、爪は硬質な音を響かせながら受け止められていた。マレコシアスの背には、量子格納から取り出された棺桶が装着されていたのだ。カノン・ロックと名付けられたそれはマレコシアスの装甲と同じか、それすらも上回る防御性能を持つ。そして、硬く重いという事は、それを利用して武器にも転用できるという事でもある。
「ぬぅっ……んッ!」
───グブッ……!
背中のマウントからカノン・ロックをパージし、メリバの腕を振り払いつつ振り下ろす。ゴキュッ、という鈍い音を発しながらメリバの顔に食い込むカノン・ロック。これでも終わらない事を見越していたルゥは攻めの手を緩めない。カノン・ロックが中央から左右に展開し、中からクロスよりも遥かに大型の銃器が飛び出した。カノン・ロックは盾だけでなく、大型銃器のコンテナでもあるのだ。
「ふっ!」
取り出した大型銃器───スタンニードルライフルを携えもう一度跳躍するルゥ。ニノマエラボ製の試作型対改造人間用兵器であるライフルをメリバへと、かつての戦友へと向け、引き金を引く。その機構の関係上、一発しか装填できないという欠陥品に片足を突っ込んだライフル。だがこの状況においては、一発あれば充分だった。
───グゥゥ……アッ、ガァッ……!
メリバの腹に突き刺さったスタンニードルは、遺憾なくその効力を発揮。高い貫通力で改造人間の防御を貫き、それで仕留められずとも弾丸側の放電機能で生体機能を破壊する二段構えの武装。
「終わりに……するッ!」
発射の反動も使い、再び天井を蹴るルゥ。マレコシアスの右足には、最大稼働スキル発動によってエネルギーが集約されていた。
───ウ……ァ……
迎撃の為か、はたまた助けを求めたのか弱々しく掲げられた右腕をすり抜け、狼の頭を模したエネルギーと共に最大稼働スキル【ジャッジメント・ファング】をストンプキックの型で繰り出す。
メリバの胸を貫き、床にまで到達した右足を引き抜くルゥ。仮面の奥に隠された素顔には勝利を喜ぶ笑顔など無い。また一人、戦友を失ったという悲しみに満ちた泣き顔しか、そこには無かった。
▽▲▽▲▽▲
「無理、しなくて良かったんすよ……?」
「これは、私がしなくてはならない、事だから……」
夜が明けて翌日。
孤児院と教会には多くの人間が集まっていた。リシャとユト、警察に救急隊。中には防弾ベストを着込んだスーツ姿の男女も居る。ノバシェード対策室の捜査官だ。
「お疲れ様でした、シスターリシャ。……ご協力、感謝します。お辛いでしょうに……」
「いえ……お気遣い、ありがとうございます」
リシャと彼女に声を掛けた女性捜査官の後ろには、慌ただしく発車していく複数の救急車。地下礼拝堂から救出された子供達を乗せ、病院へと向かっているようだ。リシャは捜査官立ち会いの元、子供達の確認を行っていたらしい。その顔には血の気が無く、何度も何度も涙を堪え吐瀉物を飲み込んだ形跡が見て取れる。
「あの子たちだけじゃない……メリバさんまで……あんな、姿に……うっ、うぅ……!」
地下室の一つで発見されたメリバ・クレイザは、喉を掻き切られ、腹を大きな針で貫かれ、胸を潰されるという余りにも惨い状態で発見された。
「被害に遭ったのは、シスターメリバが里親探しを担当していた子供達で間違いないのですね?」
「はい……」
「きっと、あの子達を守ろうとしたのでしょう。あのような手口は改造人間にしか取れない」
「ノバ、シェード……」
真実を知る術の無い二人にはそう映るのだろう。だが少なくとも、メリバは「優しく勇敢なシスター」として終われた。それだけが救いだろうか。
「安心してください。必ず落とし前は着けさせますから」
救急車を見送ってからリシャに声を掛けたのは、明らかに現地の警察や軍とは異なる制服を着込んだ女性だった。
「えっ、と……あなたは?」
「東方百合香、ヨーロッパ担当の仮面ライダー。その内の一人です」
◆◇◆
「…………」
木陰に隠したマレコシアス専用のオフロードバイク「ヴォルフクロッサー」に跨がっているルゥ。軍用の双眼鏡で見ているのは、無事に逃げてくれたらしいリシャと彼女に頭を下げている百合香の姿。大方、今回の悲劇に気付けなかった、被害を出してしまった事を謝罪しているのだろう。慌てて百合香に頭を上げさせ、必死に笑顔を見せるリシャ。声まではさすがに拾えないが、彼女が何と言うのかは想像がつく。
「リシャはそのままで居てくれ。優しいシスターのままで……お前まで戦う必要など無いんだ」
無理が祟ったのか、ふらついたリシャをユトが支えるのも見えた。あの二人なら支え合っていけるだろうと双眼鏡を降ろし、教会からも視線を外す。双眼鏡を仕舞い、代わりに懐から取り出した携帯端末を手に持つルゥ。数秒と経たずに専用の回線が開く。
『どうしました?後処理ならこちらで済ませますが』
「周囲のノバシェードの情報を片っ端から寄越せ。どんな小さな物でも構わん」
『ニュージェネレーションライダーと鉢合わせる事だけは避けろ、と言ったはずですが。……まぁ良いでしょう。潰してほしい部隊が居ます。彼らが辿り着く前に片付けてください』
「情報がある確率は?」
『メリバ・クレイザの変異に関わっているか、でしょう。さぁ、そこまでは。ですがヨーロッパの各支部に改造人間とそれに関する技術を供給している部隊です、何らかの手掛かりは得られるかもしれませんね。……それはそうと、あなた自身の負傷は大丈夫なのですか?仕損じるようなら別のジャスティアライダーを向かわせ───』
縁との通信を切り、直ぐに送られてきた情報を確認するルゥ。アイドリング状態だったヴォルフクロッサーを叩き起こし、目標部隊が潜伏しているポイントへ向けて走らせる。
「落とし前は着けてもらう」
その後、ノバシェードの部隊が一つこの世から消える事となった。対策室と百合香を筆頭としたヨーロッパ担当のニュージェネレーションライダー達は、教会の一件が完全に片付いていないまま次なる謎にぶち当たる事となった。頻発する「対策室でもニュージェネレーションライダーでもない勢力によるノバシェード襲撃」。
その黒幕、裏で暗躍する悪魔の仮面ライダー達に彼ら彼女らが気付くのは、もう少し先のお話。
罪と罰の中で狼が吼える。
【ルゥ・ガルディウム】(原案:アルキメです。様)
ジャスティアライダーの一人。年齢は26。
小麦色の肌に赤い髪が特徴の女性。
元傭兵であり、戦闘能力はジャスティアライダーの中でも高い部類。
弱い者が戦う必要は無い、という不器用な優しさを持っている。リシャや孤児院の子供達にはそれなりに心を開いていたが、今回の一件で手を引く事を決めた。
過去に大規模な作戦に参加しており、その際に改造人間の襲撃を受け重傷を負った。そのため、それなりに多くの生体機能を機械で代替している。
【マレコシアス】
ルゥが適合したナンバー35のジャスティアライダー。
防御に秀でた守勢形態と機動力に優れる攻勢形態の二形態を持っているのが特徴。
変身認証は一定の「冷気」か「熱気」を感知し、十字に組んだ両腕で特定の動作を取る事。冷気感知なら守勢形態に、熱気感知なら攻勢形態へと直接変身する。戦闘中の換装も可能。
十字架型のマシンピストル「マレコシアス・クロス」を基本装備とし、相手と目的に応じて「カノン・ロック」から武装を取り出して運用する。
牙のようなクラッシャーや青と赤で彩られた瞳、十字を模した装甲などが特徴的で、形態換装に応じてパーツが展開されたり一部装甲を排除・再装着する。
【リシャ・イオ】
18歳。
オレンジ寄りの金髪に青い瞳が目を引く、教会のシスターにして孤児院の管理人。
受け入れた子供達が穏やかに暮らせるようにと願う優しい女性。戦う力こそ無いものの、教会の管理・孤児院の運営を行うなど福祉活動分野において才能を伸ばしている才媛。
メリバの療養介護に名乗りを上げた事でルゥとの面識ができた過去がある。
【ユト・ミクス】
16歳。
白髪混じりの赤茶髪をなびかせる快活な少女。
生まれつき身体能力が高く、ノバシェードのテロで故郷が破壊された際に一人難を逃れた過去を持つ。家族や知人友人の悲鳴、怨嗟の声に取り憑かれ、罪悪感に押し潰されそうになりながらも皆の分まで生きようと明るく振る舞っている。
事件後、恐怖によるストレスか頭髪が完全に白く染まってしまった。
【メリバ・クレイザ】
26歳。
金髪をショートヘアに纏めた体格の良い女性。
ルゥと同じPMCに属していた元傭兵。ルゥが重傷を負った際に同じ場所で戦闘を行っていた。詳細は不明ながらも「心に傷を負った」らしく、一時期は廃人のようになっていた。
リシャの教会で受け入れられ、少しずつ傷を癒し、やがてリシャを手伝うシスターとなった。が、悪魔の如き改造人間への恐怖と憎悪が狂気的な神への信仰に転化し、やがて悪魔から遠ざけるという建前の元、残虐な行為を行うようになってしまった。
そしてそれらの行為に「悪意」の類いは一切無く、本気で子供達を救おうとしていた模様。
【聖蝕獣メリバ】
メリバが「天より与えられた悪魔を討つ御使いの力」と称する人狼のような異形の怪物。
これといった特殊能力は無く、5mに届くかという体躯から繰り出される強烈な物理攻撃で相手を沈めるパワーファイター。
ただのシスターとして暮らしていたはずのメリバが、何故このような姿を得たのかは不明。