仮面ライダーAP外伝 Imitated Devil 作:X2愛好家
特別編 第1話 Open your eyes/クズィー、その力
───本当に邪魔なんですよ、あなた。
───遅かれ早かれ敵になると思っていたよ。
───裏切り者には、死を。
───焔ちゃんがやりたい事。
───お前に預けてみても良いのかもな。
何が正しくて、何が間違っているのか。
私にはそれがまだ分からない。でも、そこに居るだけで、そこで生きているだけで殺されなきゃいけない理由なんて無いはず。
一緒に生きていけるっていう可能性はあの人達が示してくれた。
その可能性を殺さない為にも、私は戦い続けないといけない。
▲▽▲▽▲▽
「大見得切ったからには、やってみせないと」
マシンGチェイサーに乗り、遠ざかっていく男の背中を見送る灰神 焔。仮面ライダーオルバスとしてではなく、本来の警察官としての役目を果たしに向かった忠義・ウェルフリットを送り出し、異次元からの侵略者「ハンドレッド」を迎え撃つ為にこの場に残ったのだ。
「さて、と……もしもし?」
オーロラカーテンを突き破って上空に現れ、焔を認識して停止、或いは停車している要塞を纏った巨大竜ことスペリオルフォートドランを見上げ、クズィーフォンで何者かへ通話回線を開いた焔。やがて応答があったのか、忠義を含めた複数のライダーがこの世界には存在している事、非戦闘員や戦う力を持たない一般人の避難誘導等をその忠義らに任せた事、各地のハンドレッドは当初の予定通りに自分達が当たる事等を要塞内の仲間に伝えているようだ。
「ん、分かった。ここから一番近い所には、このまま私が向かうよ。ドランなら世界一周もあっという間だし、他の場所は任せた」
通話を終え、ハンドレッドの手勢が出現している別のオーロラカーテンへと走り出す。彼女を鼓舞するように軽く吼えるドランへと手を振り、全力疾走へと切り替えた焔。ドランもまた、その巨体を加速させ日本以外に出現したオーロラの元へと出発した。
「こんな事ならオートバジンかジェットスライガーでも持ってくれば良かったな……格納庫を増やしても良いか、今度ドランに聞いてみよう」
元の世界ではクズィー用として調整されたオートバジンとジェットスライガーを所持していたようだが、今回の一件にはどちらも持ち込めなかったらしい。というか、普通二輪免許で通せそうなオートバジンはともかく確実に特殊な資格が必要になりそうなジェットスライガーはどうしていたのだろうか。スマートブレイン所属の特例か、ライダーズギア使用による変身中は法の外になるのだろうか。
「意外と近かった……いや、誘い込まれた?」
「その通りだハイガミ・ホムラ!」
移動と戦闘補助の為のマシンについて思案しながら走っていた焔だが、想定よりも早く次のハンドレッド部隊とエンカウントする事となった。実際オーロラカーテンはまだ少し先なのだが、既に敵は展開を終えていた。
そして、焔を包囲する形で展開しているのは見慣れた金と黒の鎧を纏った兵士───カッシーンではなく、より丸みを帯びた装甲が特徴的な人型だった。
「ライオトルーパー?」
「クックックッ……驚いたか?」
そう、焔の生まれの世界であるスマートブレインとライダーズギアの存在する【仮面ライダー555】の世界。その世界において運用されているライダーズギアの一つ、スマートバックルを用いて変身する量産型ライダー。ライオトルーパーの部隊だったのだ。
「ううん、別に」
「……何?」
「仮面ライダーのデバイスと能力をコピーできるなら、ライオトルーパーをコピーして量産しててもおかしくはないし」
出身世界の技術をコピーしたという事実と物量で焔の気勢を削ぎたかったらしいが、当の本人は「だと思った」とばかりに平然としている。
「面白くない女だ……ならば、これはどうかな!」
「っ……!」
予想よりも面白みに欠ける焔の反応に苛立つハンドレッドの幹部らしき男。ならばと取り出したのは黒を基調として金の装飾が目立つデバイス。一見するとカッシーンに色合いが近いが、それを見た焔はライオトルーパー隊を認識した時とは比べ物にならない動揺を見せた。
ベルトを腰に装着し、二つ折りの携帯電話、いわゆるガラケー型のガジェットを開く男。そこに【000】のコードを入力し、閉じたガジェットをバックルのようにベルトへと装填した。
【Standing by…】
最後の工程として装填したガジェットを横に倒し、その【言葉】を口にする。
「変身」
【COMPLETE】
強烈な威圧感を放つ黒と金の装甲、優美かつ力強く靡く腰のローブ、右腰から提げた鞘に納められた剣、Ωを模した形状の頭部。
本来は焔と同じ世界の技術であるはずのライダーズギア。帝王のベルトと呼ばれる二つの内の一つ。オーガギアを用いて変身する、スマートブレイン製ライダーの中でも最強格の存在。
仮面ライダーオーガである。
「これが地のベルト、最強の帝王……!さぁ伏して拝むが良い!圧倒的な力を!」
鞘からスパナのような形状をした剣、オーガストランザーを引き抜きその切先を焔へと向けるオーガ。一瞬にしてエネルギーが集束し、カッシーンの物とは桁違いの威力を誇るフォトンブラッド弾が放たれる。
「くっ……!」
「フハハハッ!先程までとは打って変わって楽しませてくれるじゃあないか!そぉら、もっと上手く踊らなければ風穴が空いてしまうぞ?」
生まれ持った身体能力を活かし、どうにかオーガストランザーからの射撃を避け続けている焔だが、こうも断続的に狙われては変身する隙が見出だせない。唯一の救いは、オーガの変身者が一人で楽しんでいる事。ライオトルーパー隊には包囲だけさせ、手を出させないように厳命しているのだろう。もし、あの幹部が焔を殺す事だけを目的としていたならば、各々が装備しているアクセレイガンの集中砲火であっという間に蜂の巣だ。
「中々に粘る。なら曲目を変えてやろう、達磨にされたくなければ踊れ!舞うのだ!」
【READY】
オーガフォンからミッションメモリーを取り外し、オーガストランザーの柄の部分に装填。刀身が伸びた長剣モードへと変形させ、焔を斬り刻み四肢を落とさんと飛び込んでくる。
「なめる、な……!」
右に左に、上から下へ、斜めに返してと息つく間も無く振るわれるオーガストランザー。冥界の剣とも呼ばれる凶器を生身で受け止める訳にもいかず、斬撃を躱し続けるしかない焔。だが反撃の準備を怠っている訳ではなかった。射撃を行える短剣モードから斬撃主体の長剣モードへ変形させた事で、ミッションメモリーを装填するという若干の隙が出来ていたのだ。変身コードの入力までは間に合わなかったが、フォンブラスターのアプリ立ち上げだけは完了できた。
「っ!」
「何っ!?ぐあっ!」
掠り傷一つ負わない焔に対して、さすがに焦りを感じたのか大上段からの振り下ろしを選択したオーガ。それを待っていたとばかりに懐へと潜り込み、左肩でオーガの手首を担ぐようにして抑え込む。無論ライダーと生身の人間では直ぐに振りほどかれてしまうが、ようやく見出だし自ら拡げた隙を逃す焔ではない。器用に片手でクズィーフォンのグリップを引き出し、オーガの腹部に銃口を密着させてフォンブラスターのトリガーを引く。
「遊び過ぎ」
「貴様───っぐぅ!?」
オーガの怒り滾る言葉を途中で遮った焔の右足。よろけた所に飛び蹴りが炸裂し、オーガの赤いバイザーに焔の靴跡がくっきりと刻まれた。
「えぇい!もういい!殺せ!撃てぇっ!」
「だと思った……!」
着地と同時に再度フォンブラスターの狙いを定める焔。だが、非変身状態の女に翻弄されて我慢の限界に達したオーガがついにライオトルーパー隊に焔への攻撃を命じる。待ちわびたとばかりに火を噴くアクセレイガン。そろそろ鶏冠に来る頃かと想定していた焔は、オーガの動向を視界の端に捉えつつ最も狙い易いライオトルーパーに向けてフォンブラスターの光弾を放つ。如何に量産型とはいえ、数発で仕留められる程にやわな敵でもないため本体への直撃ではなく手に持ったアクセレイガンを狙う。
「グゥッ!?」
「次……!」
一人、二人とアクセレイガンを撃ち落とし、時には本体の頭や肩を撃ち抜いて怯ませ被弾を避ける。動き回れば死にはしないと、遮蔽物の多いオフィスビルを目指して走る焔。だがやはり数の差は歴然。どれだけ焔が年齢の若さに似合わない優秀な戦士でも、使用しているライダーズギアが最新のネクストタイプでも。数というのは、相手よりも多く用意し、個々の質を高める程に暴力としての純度を増していくのだ。
「っ!ぐっ、くぅっ!ま、だぁっ!」
ついにアクセレイガンのエネルギー弾が焔に銃創を刻んだ。右の太腿を撃ち抜かれ、大きくバランスを崩す焔。ここで倒れては本当に蜂の巣にされると力を振り絞り、派手にガラス窓を突き破る形でオフィスビルの物陰に飛び込んだ。
「ハァッ!ハァッ!……ふぅ、っ……へん、しん、を……!」
「逃がすと思ったか?」
「っ!?」
【EXCEED CHARGE】
戦い慣れしているとはいえ、焔はまだ未熟な部類の戦士。回避に必死になる余り、最も警戒していたはずのオーガを思考の外に置いてしまっていたのだ。オーガストランザーを長剣モードへ移行させる際にミッションメモリーは装填済み。あとはオーガフォンを操作すればエクシードチャージが完了し、必殺技であるオーガストラッシュを発動できる状態という事。
「粉微塵になるがいい!!!」
オーガストランザーから伸ばしたフォトンブラッドの刃が、ビルの中程から直線上の障害物を破壊しつつ焔へと迫る。激痛に耐えながら足を無理矢理動かし逃れようとする焔だが、人間の身体能力では到底間に合わない。
「……フン、小娘風情が。オーガのエクシードチャージを使わせた事だけは褒めてやる。おい、一応確認しておけ」
フォトンブラッドの刀身が消失し、オーガストラッシュの解除が示される。忌々しげに焔が居た場所を睨み、念には念をとライオトルーパー隊に焔の生死を確認せよと指示を出すオーガ。死んだはずだ、自分がここまでやったのだから、ただの人間が、それも怪我を負っている状態であの状況から助かる訳がないと。自分を納得させようとしているオーガだが、戦場に身を置き磨いてきた感覚が嫌な気配を感じているのも事実。まだ終わっていないと。
そしてその感覚が間違っていない事を直ぐに知る事となる。人間ではあの状況を打破できない。
「何だ……なっ!?」
「グアァァッ!」
「なっ、何かが……!うあぁぁ!?」
そう、
「どうした!何が起きている!」
次々と倒れていくライオトルーパー。オーガの視覚と索敵システムが粉塵の中を凄まじいスピードで動く何かを捉えた。やがて確認に向かったトルーパーが全滅し、粉塵内の何かに対して残りのトルーパーがアクセレイガンを構えたの同時に。
王の領域と煙に巻かれた狩場の境界線に【それ】が立った。そして奇妙な事に、【それ】の影に憎き小娘───焔の顔が浮かび上がったのだ。【それ】が何なのか、そして焔がどういう存在なのか、どうやってオーガストラッシュから逃れたのか。その答えがそこに立っていた。
───…………
焔は、人間でありながら人間ではなかった。
彼女の世界における怪物であり、怪人。人智を超越する異能を持った人類の進化形態。その発生原因を暗喩し、その末路を暗示するかのような灰色の肉体。
「オルフェノクだったか。どうりで……」
オルフェノク。
それが、焔が望まぬ形で発現させた力である。
「大方、罪の意識と迫害で他次元に逃げ出したのだろう?ハッ!哀れな子供だ!」
───どう取られてもいいよ。私は、私が正しいと思った事を全力でやるだけだから。
獣の性質を持ったオルフェノク態が解かれ、影も徐々に人間のモノに戻っていく。自らの意思で細胞の組み換えを行い、ラーテルオルフェノクから灰神 焔へとその姿を変えていく。それを見たオーガは、やはり人間である事に執着するか、と仮面の奥で嫌らしい笑みを浮かべていた。所詮は20も生きていない情緒不安定な小娘だと。
「私は……戦う」
そんな視線など飽きる程浴びてきた。
何度も裏切り者と呼ばれてきた。
何の為に戦うのか、正義とは何なのか。
何度も何度も迷い悩んだ。
答えはまだ見付からない。
でもせめて、戦うという罪を背負いたい。
夢の為に生きる者達の為に戦う。
自分に夢は無くとも、誰かの夢を守る事は出来ると教えてもらったから。
「あなた達がこの世界の夢を奪うなら、私が戦う」
「人間として」
「オルフェノクとして」
焔が駆け出す。人間としての力は見せた、オルフェノクとしての力も見せた。ならば残る力も今ここで見せる。オーガの護衛として残った三体のライオトルーパーがアクセレイガンを向けるが、焔には確信があった。この男は確実に自分で動くと。そしてその確信は現実に起き、焔は賭けに勝った。
「死ねぇ!」
「クズィーとして!変身ッ!!!」
オーガに変身しているハンドレッド幹部の性格を読み切った焔の勝ちだった。アクセレイガンによる援護の射線を自ら遮り、性懲りもなくオーガストランザーを振りかぶって襲い掛かってきたのだ。フォンブラスターから通常形態へクズィーフォンを戻していた焔。走り出すのと同時に【941】の変身コードを入力し終えていた。
「だあっ!」
オーガストランザーを持った右手の手首辺りを弾き、態勢を崩した所に渾身の右ストレート。ノックバックしたオーガに直ぐ様追撃のドロップニー、着地と同時に肘鉄、締めに先輩直伝の喧嘩キック。ゴロゴロと転がっていくオーガを尻目にクズィーフォンを操作し、変身とも武器のマテリアライズとも異なるアプリを起動する。
【BLOODY CANON Active】
前世代機であるファイズの強化形態、ブラスターフォームのデータが一部使われているクズィー。その機能及び武装の中には、背部装甲を肩に展開して放つブラッディ・キャノンのデータも含まれている。ライオトルーパー達がオーガのフォローに動こうとするが、アクセレイガンの射撃より早くクズィーのブラッディ・キャノンから放たれた高密度フォトンブラッド弾がトルーパー達を撃ち抜いていた。
「ラスト……!」
「この……化物がぁっ!」
ブラッディ・キャノンが背部ブースターユニットに戻るのと、起き上がったオーガがストランザーを構えるのはほぼ同時だった。そして全く同じタイミングでそれぞれのデバイスに必殺技のコードを入力する両者。
【【EXCEED CHARGE】】
オーガがストランザーを突きの姿勢で構え、その胸に円錐の形をした深緑のポインティングマーカーが着弾する。ブースターを噴かして飛び上がるクズィー、それを狙いオーガストラッシュを合わせるオーガ。突き出されたフォトンブラッドの切先は外れ、残りの刀身部分をレール代わりにするかのように左足でのキックを繰り出すクズィー。強引に横薙ぎし、クズィーを吹き飛ばしながら斬り払う形に変えたオーガを見て焔は再びクズィーフォンのタッチパネルに指を触れさせた。
【XZI EDGE Materialize】
更なるエクシードチャージではなくクズィーエッジのマテリアライズを選んだ焔。ついでとばかりにブースターユニットの右側だけをリミッター解除し、左半身の装甲を削られながら突進していく。
「んっ、ぐぅっあぁぁぁッ!!!」
「何だとぉ!?」
破損しながらオーガ本体の元へ辿り着き、マテリアライズしたクズィーエッジをオーガの胸に叩き付ける。
そして───
【EXCEED CHARGE】
今度はクズィーエッジへのエクシードチャージ。勢いそのままにオーガの背後へと斬り抜けた。
「バカ、な……!帝王の、力が……!地のベルトが!こんな、こんな……人間モドキの化物に……!」
「…………」
【Ξ】の文字が浮かび上がり、叩き斬られた箇所から青い炎を噴き出し灰となって崩れ落ちるオーガ。灰化した変身者の肉体と装甲が風に流され散っていき、最後に形を留めていたオーガギアが地面に落ちて砕けた。
「はぁ……ふぅ……」
いつの間にやらライオトルーパー達も消滅しており、周囲にもう敵が残っていない事を確認して変身を解除する焔。振り返り、破損したオーガギアを眺めながら今ここに居ない人物へと語り掛ける。
「これで、あなたに返せたかな……取り戻せたのかな、あなたの信念と思いを……」
ただ力として使い捨てるだけのハンドレッドではない、かつて本来のオーガとして戦っていた、ある男への言葉。道を違え、惑わされ、それでもと足掻き続け、正面から互いの正義と信じる物をぶつけ合った男達。ほんの少しでもあなた達に近付けたかなと、問い掛ける焔。返事など来るはずもない問い掛けは、灰と共に風の中へと消えていった。
生きる力、戦う力。
【ラーテルオルフェノク】
焔のオルフェノク態。
背面は柔軟かつ強靭な生体装甲で覆われており、特に後頭部から臀部にかけての表皮は受けた攻撃をほぼ全て無力化できるほどの強度を誇る。手足の鋭利な爪を用いた肉弾戦を得意としている。
また、この姿になると「目の前の敵を倒して生き残る」という闘争本能と生存本能が活性化するらしく、元の世界では「デルタのような能力」「天然モノのデモンズスレード」等と呼ばれていた。
余談だが、このラーテルオルフェノクは使徒覚醒による変異ではなく、一度死亡した焔が自然と発現させたオリジナルである。