仮面ライダーAP外伝 Imitated Devil 作:X2愛好家
「進め!蹂躙するのよ!」
オーストラリア主要都市の一つ、シドニー。
海に臨むユニークな形状のオペラハウスをはじめとした、様々な観光名所が存在する州都。今、そのオペラハウスをも焼き払わんとハンドレッドの軍勢が侵攻していた。
日本で焔と激闘を繰り広げた仮面ライダーオーガに変身する幹部と同じく、このオーストラリアはシドニーに降り立った女幹部もカッシーンとは異なる手駒を持っているようだ。灰緑色の装甲に黄色のパイプとケーブル、髑髏のようにもイナゴのようにも見える意匠。そして各々が手に持った短剣と大型拳銃のような武装。
更には、マフラー風のパイプの色が違い、右肩にランチャーユニットが増設された指揮官型と思わしき個体も複数見受けられる。
彼ら彼女らの正体は、クラウディングホッパープログライズキーとスラッシュorショットアバドライザーで変身した量産型の仮面ライダー。
アバドンである。
「くふふっ!ここを選んで正解だったわぁ。こんなに綺麗な建物をメチャクチャにできるんだもの!」
アバドン部隊の後方で笑う女幹部。この世界への同時侵攻に際して、真っ先にシドニーを攻めると名乗りを上げたのだ。理由は至極単純、綺麗なモノ、美しいモノが壊れる時に最高の愉悦を感じる性根をしているから。
「壊し終わったら生き残りの奴隷共に建て直させて、目の前でもう一度壊してあげましょう……!最高に絶望した顔を見せてくれるわ!モノと一緒に心も壊す。あぁ、何て素敵な事かしら!」
その性根は腐り切っているようだ。
侵攻を開始した地点周辺は破壊し尽くし、次の標的を定めようとしている様子。オペラハウスはメインディッシュに取っておくとして、軽くそこらの人間を八つ裂きにでもしてみようか。等と人の命を何とも思わぬ外道の思考のまま、アバドン隊を伴って移動しようとする幹部。
「そう言えば……DVだかRVだかが追って来ているのだったかしら?全く、暇な上に破壊の良さも分からないなんて……面倒で退屈な人達だこと」
やれやれ、と心の底からくだらないと言わんばかりの溜め息を吐き出し顔をしかめる。焔の名を知っていたオーガの変身者とは異なり、この幹部はD.R.V.の事はお邪魔虫程度にしか知らないのだろう。そのオーガは既に焔ことクズィーに討たれたという事実を知る術も無い、というより興味が無いのだろう。気を取り直して破壊と殺戮だと上機嫌になる女幹部だったが、アバドン隊が揃って空を見上げている事に気付く。
「オーロラ……私が通って来た物じゃない……?」
大きな灰色のオーロラカーテンが出現していたのだ。直ぐに、自分とアバドン隊がこの地へ降り立つのに使ったオーロラではないと気付く女幹部。スラッシュアバドライザーとショットアバドライザー、指揮官型は右肩のアバドランチャーも構え臨戦態勢を整えるアバドン隊。警戒を強める中、オーロラカーテンから四つのレールが伸び、その上を巨大な要塞が走って来た。D.R.V.の拠点にして頼れる仲間でもあるスペリオルフォートドランだ。
「噂をすれば、というやつかしら」
その巨体に似合わない機動性を見せ、低空走行へと移るスペリオルフォートドラン。更に走行高度を下げ、地面すれすれの所まで降り、女幹部とアバドン隊の10m程先を通過。そのまま上空へと戻り、別のオーロラカーテンを展開して去っていったのであった。
「一人……?」
「はい~。一人ですぅ~」
ドランが通過した地点には一人の女性が立っていた。レディーススーツを着用し、「ゆるふわ」と形容できるカールの掛かったロングヘアと纏う空気感。おおよそ戦場には似つかわしくない、20代前半の女性がハンドレッド幹部とアバドン隊の前に立ち塞がっていたのだ。
可愛らしく、おっとりとした女性。スーツ姿も相まって、平時のオフィスにでも居れば空気が和やかになるだろう。だが今ここは戦場。仮面ライダーの「力」だけを借りた、更に悪く言えば「暴力」を「悪用」しているハンドレッドによって破滅の一途を辿っている戦場なのだ。そんな所にD.R.V.所属とはいえ、血なまぐさい戦場とは無縁そうな女が現れればどうなるか。答えは勿論、浮く。場違いと言っても良い。
「……チッ」
「あら~?」
そしてD.R.V.の女性はハンドレッドの女幹部に個人的な苛立ちを募らせてもいた。スリムで慎ましやかな体型をしている女幹部に対し、D.R.V.の女性は大きかったのだ。それはもう色々な部分が。特に胸など雲泥の差、まな板とたわわな果実である。
「色々と……」
「?」
「気に食わないのよ!やれ!」
脳内に「侵略の果実……」という、とあるロックシードの音声が何故か流れ始めた辺りでアバドン隊に攻撃命令を出す女幹部。オーガに変身した幹部とは異なり、最初から女性を完全に抹殺するつもりらしい。
「乱暴ですねぇ。でもぉ……!」
「なっ、何をしているの!しっかり狙いなさい!」
指揮官型のアバドランチャーとショットアバドライザーを所持したアバドン達が女性を狙って一斉射。したのだが、その殺傷力を発揮した弾が一発も無いどころか掠りもしていない。女性が何をしたかと言えば、ただ走っただけである。その豊満なボディから想像し難いと言うと失礼だが、見た目や雰囲気、空気感から程遠いような機敏かつ鋭いムーブ。幹部からの叱責もあり、慌てて各々の武器で狙い直すアバドン隊だが、結果はつい数秒前と全く同じだった。
(どういう事……!?あんな重苦しい体の何処にあそこまでの身体能力を秘めているの!?まさかハイドープ?それとも人間じゃない?)
「もしかして~、こう考えてますかぁ?ガイアメモリの深層適合者、あるいはグロンギだとかヒューマギアだとか、人間の形をした人外じゃないかって~」
「っ!?」
「あはぁ~、当たりですねぇ~。ごめんなさい~、他人の思考すら読み取れる超感覚的なモノを持って生まれてしまってごめんなさい~」
「こ、っの……!」
ただでさえ気に食わない豊満体型の女が更に気に食わなくなった瞬間である。この女性、一見ふわふわとした天然気味な女性かと思いきや、性根の部分が凄まじく図太い。他人の神経を逆撫でするレベルで自己肯定感が高いようだ。
「でも貴女の予想は外れなんですよ~。だってワタシ、正真正銘ただの人間ですからぁ~」
「……はぁ?そんなデタラメな身体能力を持った人間が居るわけ───」
「居るじゃないですかぁ~、貴女の目の前に~」
ブチッ、と女幹部の中で何かが切れた。
「もういい……お前は、私が手ずから殺す!」
【LUCIFER】
ついに我慢の限界が来た女幹部が懐から何かを取り出した。起動スイッチの押し込みと同時に展開したそれから、堕天使にして悪魔の名が発せられた。更に左手でこの世界由来の物ではないドライバーを自らの腰にあてがい、そちらもスイッチを操作して起動する。
「私の楽園に……お前のような女は必要無い!」
「変身!」
取り出したアイテム───エデンゼツメライズキーとエデンドライバーで変身する楽園の創造主にして守護者。
【プログライズ!アーク……!】
装填されたエデンゼツメライズキーに内包された人間のロストモデルを装甲と能力へと変換し、纏う。だがその装着方法は、出現した巨大な骸骨に噛み砕かれながらアンダースーツを纏うという強烈なもの。何事も無かったかのように各部のアーマーが装着されていき、変身者を噛み砕いた骸骨を想起させる白と黒の仮面ライダー。
【The creator who charges forward believing in paradise.】
【OVER THE EDEN.】
仮面ライダールシファー。
エデンを超える者、そして楽園を追放されし者。
「あらぁ」
「ふふふっ、ヒューマギアを知っているのなら、このルシファーについても聞いた事はあるでしょう?さぁ、感想と悲鳴を私に聞かせてごらんなさい?」
「……なんて───」
「なんて幸運なのでしょうワタシは」
「は?」
恍惚とした表情を浮かべ、先程まで以上に声色が興奮した物へと変わっていく。その様を見たルシファーは嫌な予感がしていた。またあの理解不能なまでの自己肯定が始まると。そしてその予感は的中する。
「アバドライザーは大量にデータが取れましたが、エデンに関してのデータは少ないんですよぉ。過去の偉人も驚愕する程に行動の早いワタシがほんの少し出遅れた事で有名なシンクネット事件!集めきれなかったエデンゼツメライズキーとドライバーのデータどころか、その実物を持ってきてくれるなんて!あぁ、幸運の女神に溺愛されているとしか思えない程に幸運で強運な自分が恐ろしい……」
そういう演劇の一場面か?とツッコミが入りそうな程に、やたらと芝居がかった動きと喋り口調になる女性。彼女が出遅れた事は特段有名な事ではないのだが。
「では、早速いただきますね~」
「なっ」
「素直に渡す積もりは無いのでしょう~?なら、野蛮に話し合うより互いの暴力で持って穏便に済ませてしまいましょう~」
そう言いつつ、足元に置かれていたアタッシュケースを開きデバイスを取り出す女性。それを腰に当て、懐から別のアイテムも抜き放つ。奇しくもルシファーと同じゼツメライズキーだ。
【ZETSUMETSU EVOLUTION】
何やらトンボのような生物が描かれたゼツメライズキーの起動スイッチを押し、待機状態に移行したゼツメライズキーを腰に装着したデバイス───ザイアサウザンドライバーの左側に装填。次いでゼツメライズキーとは別のアイテム、プログライズキーも取り出した所で呆気に取られていたルシファーがアバドン隊に再度攻撃命令を出した。のだが───
【GREAT JAW】
「残念ながら通りませんよぉ~」
オーロラカーテンとは異なるワープゲートのような物を通り、巨大なクワガタムシのような何かが出現。それを追い掛けるように、こちらは空間を裂き砕く強引な現出でトンボモドキが飛来。二体によってアバドン隊の射撃は悉く弾かれ、女性への有効弾は一発も無かった。
「ライダーは助け合い、その技術もまた助け合い……ドランさんの時の扉とゼクターのジョウント移動を応用した、ライダモデルとロストモデルの瞬間転送。素晴らしい技術ですねぇ~、流石はワタシです~」
「な、に……!何なのよお前はぁ!?」
「……あっ、名乗っていませんでしたかぁ。完璧で究極で常に未来へ向けて成長を続けているワタシとしたことが、失念していました~」
展開し、変身待機状態となったプログライズキーを構えつつ自らの名を口にする女性。
「ワタシはエクセリオン=アークロード。ZAIAエンタープライズの新CEOです~」
そして、と左手を添えて構えた「ブリリアントマンディブラリスプログライズキー」をザイアサウザンドライバーの右側スロットに装填し、その直前にもう一つの名へと至る為の合言葉を発するエクセリオン。
「変身」
【パーフェクトライズ!】
【When the giant power cross】
【the platinum Empress TEN THOUSER is born.】
【Presented by ZAIA. featuring D.R.V.】
「仮面ライダーテンサウザー、ワタシの強さは1000%にすら収まりませんよ~?」
偉大なる大顎をアビリティとして持つブリリアントマンディブラリスプログライズキー、大型捕食者としての能力を授けるプリデイションメガネウラゼツメライズキーの二つを融合反応させ、シナジーを最大化させた状態で仮面ライダーへと変身させるパーフェクトライズを実行するザイアサウザンドライバー。
今、この場に爆誕したのは、黄金の戦士サウザーでも漆黒の戦士ザイアでもない。白金の装甲を輝かせ、自分以外の輝きを許さぬ傲慢な女帝。
仮面ライダーテンサウザーである。
「ザイア系列の……!ふ、ふんっ!そんな基礎スペック頼みの欠陥品で何が出来ると!やりなさい!」
「拡張性の無さならエデン系も似たような物と思いますが~。まぁ構いません、素の実力で片付けるだけですしねぇ~」
アバドショットライザーとアバドランチャーによる一斉射撃がテンサウザーを襲うが、生身のエクセリオンにすら傷を負わせられなかった弾幕が変身後のテンサウザーに対して通用するのか。答えは否である。背中に大型槍と手槍を組み合わせたような武器を担いだ、変身前よりも大柄になったシルエットをしているにも関わらず、テンサウザーは重さを感じさせない機敏な動きで弾幕を掻い潜っている。その最中、背部マウントの中心に収められている最も大きな槍を抜き、アバドスラッシュライザーを持った個体からの斬撃を危なげなく受け止めて見せた。
(敢えて乗った訳ですが……想定よりも練度が高いですねぇ~。こちらも力を見せる甲斐があるというモノです~)
テンサウザーに斬り掛かった一体を囮として、四体のアバドンが彼女を包囲していた。その誘いにわざと乗りルシファー率いる部隊の練度を図る目論見だったエクセリオン。自分の予想を僅かに上回ったアバドン隊の連携を見て仮面の奥で笑みを浮かべ、彼ら彼女らの評価を上方修正する。
「そぉ~れぇ~」
そこからの動きは迅速だった。スラッシュライザーを受け止めていた大型槍───テンサウザンドジャッカーを体ごと回してスラッシュライザーを弾き、左右と斜め後方から迫っていたアバドン達には、背のマウントから四本のサウザンドジャッカーを射出して対応する。射出された四本のサウザンドジャッカー全てがアバドン達に命中し、尚且つそれぞれの武器に寸分違わず突き刺さっていたと言えばエクセリオンの実力が分かるだろうか。
そして、武器であり変身デバイスでもあるアバドスラッシュライザーにサウザンドジャッカーが突き刺さったという事は───
【【【【ジャックライズ!】】】】
本来なら手動で柄のレバーを引かなければならないのだが、テンサウザーのサウザンドジャッカーは射出による中距離攻撃を前提としているらしく、対象に着弾させるだけでライダモデル・ロストモデルのデータを抽出可能なようだ。
「そっくりそのままでは芸が無いのでぇ~」
「マズい……!離れなさい!」
「10倍ほどにしてお返ししますね~」
JACKING
B R E A K
「どっかーん、です~」
JACKING BREAK
feat.D.R.V.
【ZAIA ENTERPRISE】
サウザンドジャッカーが突き刺さった部分からイナゴ型のエネルギーが膨れ上がり暴発。更に四ヶ所で爆散したエネルギーが他のアバドンにも直撃し、一瞬にしてアバドン隊は壊滅寸前にまで追い込まれた。
「馬鹿、な……」
「ルシファーの方と~、指揮官用の方々は距離を取っていましたね~。素晴らしい判断能力です~、やはり倒すだけというのは惜しいですねぇ~」
部隊長であるルシファーを守る為に油断無く武器を構える指揮官型アバドンだが、ほんの僅かな手合わせで部下達を全滅させたテンサウザーことエクセリオンに対し焦りを募らせつつあった。恐怖が鮮明になってきていると言ってもいい。ルシファーもまた、戦慄しつつも自らの武器を手にテンサウザーを睨んでいた。その手に握ったのは、本物を精確にトレースしたのかテンサウザーの元となったザイア系の物と同じサウザンドジャッカーだ。
「うんうん、やはり人を見る才に溢れていますね~、才覚が溢れ過ぎて湖になってしまったら申し訳ありません~」
「戯れ言を……!」
「ふざけてなんていませんよ~。ここで一つ、ビジネスの話をしませんか~?」
「ビジネス、ですって……?」
何と、エクセリオンはここで商談を始めようと言う。穏便に暴力で~等と言いつつ、そこまで長くない戦闘中にルシファー隊の実力や内面を探っていたようだ。互いに武器は下げないまま、奇妙で物騒な「お話」が始まった。
「えぇえぇ、いわゆるヘッドハンティングです~。単刀直入に言えば、ハンドレッドを辞めてワタシの所に来ませんか~という話でしてぇ~」
「……は?」
唖然とするルシファー。当然だ、今の今まで殺し合いを繰り広げ、変身前の生身ですら意気投合どころではなかったというのに。それを完全に無視して下に付け、というのだから。動揺するアバドン達もよそにエクセリオンの話は続く。
「あなた達は元々のルシファーやアバドンの変身者より優れている、とワタシは考えています~。コピー元がロクに戦闘訓練を受けていない民兵以下の一般人だった、という点を差し引いても、あなた達の連携は見事でした~。相手が悪かっただけでぇ~」
「っ!」
「どうでしょう~?ワタシのZAIAに来る気はありませんか~?それなりに良い待遇をお約束いたしますよ~?」
「ふん、お前の下に付くなど真っ平だわ!どうしてもと言うならお前がハンドレッドに来れば良───」
「それは丁重にお断りです~」
ルシファーの変身者としては、どんな待遇だろうが、どれだけ輝かしい未来だろうがエクセリオンという女そのものが気に食わないらしい。そんなに自分の力が欲しいならそちらがハンドレッドに寝返れば良い、という女幹部の発言を遮りキッパリと断るエクセリオン。そこには、ほんの一瞬前までの優しげな雰囲気は欠片も残っていなかった。
「ワタシはハンドレッドが気に食わないので~」
「な、なら交渉決裂ね!」
「えぇ、とても残念です~。ワタシの大嫌いな終わりを告げなければならないなんて~」
「終わり……?終わるのはお前の方よ!」
ルシファーの言葉と共に一斉に攻撃を再開する指揮官型アバドン。スラッシュライザー、ショットライザーに加えてアバドランチャーによる殲滅攻撃が迫るが、「相手をスカウトする」のではなく「敵を倒す」と決めたエクセリオンに迷いも動揺も無かった。テンサウザンドジャッカーの柄尻を回し、先ほど抽出したクラウディングホッパーではない別のライダモデルを呼び出す。
【ジャックライズ!】
【JACKING BREAK】
「なっ!?」
水晶のように透き通ったエネルギー体がテンサウザンドジャッカーから分離するように現れ、それらが飛び回りアバドン隊の射撃を纏めて相殺したのだ。元の世界でシャイニングアサルトホッパーから抽出していたシャインクリスタだ。射撃を無傷で無力化し、スラッシュライザーを振りかぶった近接型はテンサウザンドジャッカーで薙ぎ払い、串刺しにする。これが選択を間違えたお前の末路だと言わんばかりに。
「冥土の土産に教えてさしあげますね~。ワタシがハンドレッドと相容れない理由を~」
「なっ、あっ……」
「それは、ハンドレッドが終わらせるだけの存在だからです~。スパコンすら嫉妬するワタシの思考を持ってしても、ハンドレッドの目的は明確に分かりませんが~。あなた方は侵略した世界を、壊して、支配するだけに留めてしまいますよねぇ~?」
「み、惨めに敗北した連中の妥当な結末よ!」
「それがダメなんですよぉ~。世界は自由だからこそ需要を生む、戦争は続けてこそ商機になる。あなた方はそれを理解せず、ただ壊して支配して終わらせてしまう。ワタシのビジネススタイルとあなた方のライフワークが致命的に噛み合わないのは、ここが理由なんですよねぇ~」
だからこそ、有能なあなたを引き抜いてビジネスの楽しさに気付いてほしかったんですけど~、と語るエクセリオン。仮面に隠れ、外からは見えなくなっている瞳をスッと細め、本当に残念ですと言外に滲ませながらドライバー右側のブリリアントマンディブラリスプログライズキーを押し込む。
【TEN THOUSAND DESTRUCTION】
「お別れです」
「くっ……舐めるなぁっ!」
【PARADISE IMPACT】
テンサウザーと同じくエデンゼツメライズキーを押し込み、必殺技には必殺技で迎え撃つ構えのルシファー。可能ならば発動前に潰したいのか、サウザンドジャッカーから黒と赤が混じった黄金の波動を飛ばしてテンサウザーを狙うも、予測済みとばかりにテンサウザンドジャッカーを振るわれ軽く弾かれてしまう。やむ無く走り出し、先にパラダイスインパクトを命中させようとするルシファーだったが、突如としてテンサウザーが悠然と歩いてくる方向とは異なる角度からの衝撃に襲われ、足を止めてしまう。
「ガッ……あぁ……っ!?」
四本のサウザンドジャッカーに貫かれていたのだ。右肩、左肘、腹、そして右足首。アバドン隊のライザーからデータを抽出し、ジャックライズを発動して機能を停止したように見えた四本のサウザンドジャッカーだ。本体の遠隔操作でオールレンジアタックすら可能な無線誘導攻撃端末だったらしい。
「では、さようなら」
TENTHOUSAND
DESTRUCTION
「ふっ!」
TEN THOUSAND DESTRUCTION
feat.D.R.V.
崩れ落ちる事も出来なくなったルシファーに対して繰り出される無慈悲な一撃。回し蹴りスタイルで放たれたテンサウザンドディストラクションがルシファーの側頭部へと吸い込まれ、横方向に凄まじい勢いで吹き飛んでいく。一拍置いて聞こえてくる爆発音。エデンゼツメライズキーやドライバーと共に爆散したのだろう。
「実物を回収できなかったのは残念ですが、生体反応のデータと一緒にジャックライズできたのは収穫でしたね~。抜け目無い、さすがはワタシ抜け目無いです~」
どうやらサウザンドジャッカーで四方から串刺しにした際、ルシファーに適合した女幹部の生体反応と各デバイスのデータを抽出していたようだ。誰に言うでもない自分への賛辞を送り、もうここに用は無いと立ち去ろうとするテンサウザー。僅かに首を動かし、ルシファーが吹き飛んでいった方向に視線を向ける。
「手応えならぬ足応えが妙でしたし~、恐らく生きているのでしょうねぇ~。また会えたなら、その時にドライバーとキーを貰うとしましょうか~」
ハンドレッドから世界を守ろうとしているD.R.V.への義理は充分に果たしたとして、今度こそその場を去ろうとした矢先。エクセリオンの記憶に無い声が、破壊され、今もなお炎上しているシドニーの街に響く。
「メディカレイダーは要救助者の発見を急げ!誰一人として死なせるなよ!」
「……?あぁ~、焔さんの言っていた此方の世界の仮面ライダーでしょうか~?技術に興味はありますが、気付かれずにジャックライズできそうな相手でもなさそうですし~。また別の機会があればですねぇ~」
ハイパーレスキューが到着し、逃げ遅れた要救助者の捜索と破壊活動の後始末を始めたようだ。レイダー、という聞き覚えのある単語に興味を示すエクセリオンだったが、わざわざ揉め事を起こしてまで欲しいデータでもなく、振り返る事なく今度こそ本当にシドニーを後にした。
こうしてまた一つ、ハンドレッドの部隊が壊滅させられたのであった。
ビジネス界の常識ですよ~
【エクセリオン=アークロード】(匿名希望の方より)
人間とヒューマギア、善意と悪意の世界こと仮面ライダーゼロワン世界出身の女性。年齢は21。
ZAIAエンタープライズのCEOであるリオン=アークランドの遠縁に当たる人物。彼の来日とほぼ同時に行動を開始した。多数の問題を起こしたZAIAを建て直し、自ら先頭に立って戦う姿も見せ、世間に実力を認めさせた才媛。
いわゆる戦争特需を邪魔するハンドレッドを目障りに感じたのと、ZAIAの平行世界進出という目的も兼ねてD.R.V.に参加した経緯がある。
気味が悪い程に自己肯定感が高く、基本的に相手を貶さない代わりにその自己肯定感で大抵の人間を不快にさせる天才。実力に裏打ちされているのが余計にタチが悪いと言える。
卓越した思考回路を持っているだけでなく身体能力も非常に高い。ハイドープや、人間以外の種族に間違われるレベルの高度な身体機能を発揮するが、彼女はれっきとした人間である。
【仮面ライダーテンサウザー】
ザイアサウザンドライバーにブリリアントマンディブラリスプログライズキーとプリデイションメガネウラゼツメライズキーを装填し、パーフェクトライズする事で変身する白金の仮面ライダー。
基礎スペックは同型のライダーであるサウザー、ザイアを遥かに凌駕し、拡張性の無さが弱点だった前世代機の欠点を外付け武装の追加である程度補っている。
背中に大型槍となった新型のジャッカー、テンサウザンドジャッカーを装備。更にそのマウント部分の左右には無線遠隔操作が可能な射出型ジャッカー、サウザンドショットジャッカーを二基ずつ計四基装備している。
(武装イメージはビギナ・ロナのバスターランサー)