仮面ライダーAP外伝 Imitated Devil   作:X2愛好家

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受け継ぐ覚悟、繋ぐ笑顔


特別編 第4話 原初のG/白獣

アフリカ大陸、ナイジェリア。

その首都であるアブジャにもハンドレッドの魔の手が伸びていた。

 

上海でセイヴァーとクロスギーツが羅漢とディルフに撃破された同時刻、アブジャの被害は既に他の侵攻地域とは比べ物にならない規模となっていた。このアフリカ大陸に侵攻してきたハンドレッド部隊は、日本に現れたオーガとライオトルーパーの部隊とほぼ同時にオーロラカーテンから展開したのだ。しかもスペリオルフォートドランがD.R.V.メンバーを個別に展開させなければならない関係上、展開の早い部隊への対応はどうしても遅れてしまう。

 

おまけにこのアフリカ担当の幹部の性格が、被害拡大を後押ししてしまっている。

 

「迅速迅速!何事も早いのが一番だ!」

 

何よりもスピードを是とする、シンプルながら敵に回すと面倒な性格をしているのだ。

 

「よしよし!続々と制圧が終わりつつあるな!さてさて進捗は……なっ」

 

タブレット端末のような物を取り出し、広大なアフリカ大陸の侵攻制圧率をパーセンテージで表示している画面を開く幹部。自身が担当したルートは完全に落とした事がデータに表れているが、今居るポイントから少し先を境として制圧が目に見えて遅れている。

 

「えぇい!何をしておるか!遅い遅い!こうなれば我輩が直接指揮を取ってくれる!」

 

スラッとした細マッチョ体型が泣くようなコミカルダッシュで市街地へと走る男。それを見た部下が慌てて停めていた装甲トレーラーを叩き起こし、幹部を拾って目的地へと走らせるのであった。

 

 

▲▽▲▽▲▽

 

 

「到着!うむ、良いタイムであった!して、ここを担当している者共は何をてこずっておるか!」

「隊長!?そ、それが……」

 

「んー?親玉登場……?」

 

直属の上司が現れた事に動揺しながらも、侵攻遅延の原因を示す構成員。そこには、サブマシンガンを両手に持っている以外は一般人と何ら変わらない、涼しげな服装をした女性が立っていた。

 

「女……?生身の女一人に我輩の完璧かつ迅速な作戦が遅らせられていると!?」

「も、申し訳ありません!どうやら特殊な訓練を受けているらしく───」

 

「ん……」

 

「ぬおぉぉっ!?」

 

少なくとも指揮官である事は確実と判断した女性が、おもむろにサブマシンガンのトリガーを引く。事情聴取も警告も無しの頭部を狙った殺す気しか無い射撃。だが、すんでの所で躱されてしまった。

 

「隊長!イカれてるのかあの女!」

 

「今は休暇中だから、自己防衛優先なんだよね」

 

「どういう理屈だ!?」

 

ふわふわとした眠たげな雰囲気に反して機敏に動く女性。リーダーへの攻撃で危険度を上方修正し、周囲の構成員達が一斉に動き出した。

 

「隊長!こちらに!」

「うむ!」

 

「逃げる……あぁもう邪魔だなぁ……こんな事になるって分かってたならマス服も持ってきてたのに……くぁ……」

 

部下の一人に守られながら、乗ってきたトレーラーの後方へと退避していくハンドレッド幹部。バックや切り返しの素振りを見せない事から、単純に乗って逃げるという訳ではないようだが、追撃しようにも周りの構成員達が邪魔で回避に徹さざるをえない。

 

今この場に無い装備があればと愚痴と欠伸を同時に溢す女性の名はトリニティ。ノバシェード対策室の中でも選りすぐりの人材が選抜されたエージェント部隊、Blue-Armored-Valkyrie-Agent-Riders-Force。通称B.A.V.A.R.F.(バヴァーフ)の一人。

 

本来なら、デザイン以外は一級品の特殊強化服ことマス・ライダー軽装型と、対改造人間用の強化サブマシンガンでもって迫る脅威に立ち向かうのが常なのだが、先ほど本人が言った通り現在のトリニティは休暇中。溜まりに溜まった有給の消化にアフリカを選び、その衝動のまま食っちゃ寝を満喫しようとしていた矢先にハンドレッドの襲撃である。

 

普段からノバシェードを筆頭とした犯罪者に対して情け容赦無しの彼女なのだが、爆音で叩き起こされ、市民の避難誘導に駆り出され、本来の装備も無く武器は拾い物な上に、腹には朝食分しか入っていない。何が言いたいかというと───

 

「はぁ……死んでくれないかなぁ……」

 

今の彼女は機嫌が悪い。

 

「怯むな!あの程度の弾では傷など付かん!」

 

「隙間狙わないと駄目か……隙間……?あるのかな……面倒だなぁ……ふぁ……ねむ……」

 

殺意に度々どころか絶え間なく混じる欠伸と眠気。ほぼ半分しか開いていない瞼が示す通り、トリニティはハンドレッド構成員以外に睡魔とも戦っている。これは、彼女が「性欲、睡眠欲、食欲の三大欲求いずれかに常に偏る」という特異な性質をしている故である。目の前の敵は何れも堅牢な装甲に覆われ、ヤるのは難しい。朝食しか摂っていない以上食欲も論外。消去法で眠気にスイッチして戦っているのだが、周囲から見れば狂人そのものである。

 

「これだけ撃って何故当たらん!」

「こっちに聞かないでよ!」

 

「互いに決め手無し……めんどくさい……」

 

そしてトリニティ側も攻めあぐねている理由が構成員達の装甲である。

赤い瞳に白と青が目立つ装甲、各々が所持している銃火器。元々の世界では開発計画が打ち切られたはずの量産型仮面ライダー、G3マイルドだ。仮面ライダーアギトの世界で、人知を超えた生命体である怪人アンノウンの武器による攻撃を、理論上の話とはいえ防ぐ事が可能なG3マイルドの装甲。しかもハンドレッドがコピー・量産するにあたって手を加えた物に対し、対改造人間を視野に入れていない通常弾のサブマシンガンが通用するかどうか。答えは火を見るより明らかだった。

 

(何か見た記憶があるような……どっかで……最近……)

 

殺意と眠気に更に混じる別の思考。ハンドレッドG3マイルドの姿に朧気な既視感を抱くトリニティ。そんな彼女の鼻先を掠めた弾丸の主に視線を送り、思い出せないという事はそこまで重要な記憶ではないと邪念を欠伸と共に捨てる。

 

と、そこへ───

 

『バヴァーフのトリニティ捜査官だね?こちらゼガン。後は我々が引き継ぐよ』

 

「んー……あー……ニュージェネの人か……」

 

職業柄肌身離さず持ち歩いているインカムが、少し離れたポイントからの通信を受け取った。発信主は仮面ライダーZEGUN、ニュージェネレーションライダーの一人である芦屋隷(あしやれい)だ。更に別の人物からの通信も届く。

 

『マス・ライダー装備も無しに無茶をする……退け、奴らはどうにかする』

『戦う力の無い者達は避難させた。お前は立派なリントの戦士だ、だが命を捨てるべきは今ではない。シェルターを守れ』

 

ZEGUNと手分けして避難誘導、護衛を行っている二名の声。共にニュージェネレーションライダーである仮面ライダータキオンと仮面ライダーN/G-1も、トリニティの戦っている現場に向かうからそちらは退けと言う。

 

「て言ってもなぁ。どんどん数増えてきてるし、そう簡単に逃がしてくれそうにないというか……」

 

「えぇい!装着に手間が掛かりすぎだ!」

 

「何か親玉が黒くなって戻ってきたし、いわゆる絶体絶命ってやつかなぁ……ふぁ……」

 

ニュージェネレーションの三人を避けて幹部の援護を優先し始めたのか、どうあってもトリニティだけは殺すと決めたのか、明らかにG3マイルドの数が増えている。更にはトレーラーに引っ込んだはずのハンドレッド幹部が戻ってきたのだ。青い瞳に黄色のラインで彩られた漆黒の装甲に鈍い輝きを反射し、G3マイルドと互換性のある武装を手にしたコピーライダー姿で。

 

G3マイルドと同じ仮面ライダーアギトの世界の技術で作られた破壊の力。

仮面ライダーG4。どうやらトレーラーに積まれていたのはこれだったらしい。

 

「ふん、まぁよいわ。小娘!我輩のスマートかつスピーディーな作戦を遅めた罪、その命で贖ってもらうぞ!」

 

『持ちこたえてくれ!直ぐに───』

 

「あー、大丈夫っぽい」

 

「あぁ?」

 

『何?』

 

「こっちにも来たみたい」

 

 

▽▲▽▲▽▲

 

 

トリニティの交戦開始からかなり遅れてアブジャ上空に現れたスペリオルフォートドラン。大急ぎで他の地域へ向かう為か、今回のD.R.V.メンバーは地上付近を走行して着地させるのではなく、上空からそのまま投下するらしい。今までのメンバーは現着してから変身を行っていたが、どうやらG4部隊迎撃の為に出撃する人員は既に変身を終えているようだ。

 

「こちらはD.R.V.!攻撃中のハンドレッド部隊に告ぐ!直ちに侵攻を中止し、撤退せよ!繰り返す───」

 

オーロラカーテンの向こうに消えたドランから射出されたのは、衝角らしき先端部と簡易的な翼が目を引く青と白で塗装されたボードのような物体。それからは明確に男の物と認識できる声が発せられ、オープンチャンネルで地上のトリニティとハンドレッドG4部隊に届けられている。

 

「D.R.V.め……!予想より早かったな!全部隊!上空の奴を撃ち落とせ!」

 

「警告はしたからな!」

 

G3マイルド達が一斉に手持ちの武器を構えるのと、D.R.V.メンバーが中に居るらしきボードが中央から分離したのはほぼ同時だった。衝角付きの前部を質量弾としてG3マイルド部隊に向けて落下させ、残った後部を簡易変形させて減速を開始。

 

燃ゆる空に曝したその姿は、かつて人々の笑顔を守る為に戦った未確認生命体四号を想起させる形をしていた。同じく人々の安寧を守る為、人の手に余る古代の異能を人の身に再現する為の機械。一度は封印され、守る為の力として再び解き放たれた鎧。奇しくもハンドレッドが暴力として利用しているG3マイルドと同じ名を冠した仮面の戦士。

 

G1-Mildと、それを纏う男 齋藤勇(さいとういさむ)。自衛隊を懲戒免職となりながらも、裏取引で警視庁に引き抜かれた曰く付きの過去を持つ男。後輩が虐待されているのを見過ごせず上官を殴り飛ばした、短絡的ながらも間違った事が何よりも嫌いな熱く優しい男。

 

「G3……!そいつぁ、尾室や小沢が誰かを守れるようにって作って、氷川が命懸けで戦い抜いた証なんだよ……!テメェらみたいな連中が汚い手で触って良いもんじゃねぇんだ!」

 

着陸すら待てずに両腕にそれぞれ持たせた銃火器を連射し始める勇。右手にはG3-X用の装備であるGX-05 ケルベロスを、左手には電磁加速用のレールが特徴的なボウガン型のレールガンを。握ったそれらを、突入ユニット後部のスラスターを噴かして体ごと回転する事で広範囲を薙ぎ払う荒業に出たG1-Mild。対アンノウン用の特殊徹甲弾を装填されているだけあり、トリニティのサブマシンガンでは傷付ける事すら困難だったG3マイルド達が次々と倒れていく。

 

「大丈夫か嬢ちゃん!」

「人の頭の上でうるさいなぁ……」

「だ、大丈夫みてぇだな……?」

 

トリニティに当たらないよう彼女の真上で回転射撃をしていたのだが、救われたはずの本人はスラスターの噴射音とガトリング&レールガンの発射音がうるさいと文句を溢している。

 

「と、とにかく!今のうちに行け!」

「分かったー。じゃあ、後よろしくね……ふぁぁ……」

 

サブマシンガンを指でぷらぷらと弄びながら、動けなくなったG3マイルドを跨いで去っていくトリニティ。本当に何だったんだあの女は、とG3のコピーに猛っていた心は何処へやら。ガコンッと背中の突入ユニットをパージし、気を取り直してハンドレッドG4へと向き直る。

 

「ぬぅ……敵ながら見事な迅速行動よ」

「テメェみたいなのに褒められても嬉しかねぇな。そんなにスピーディーなのが好きなら、さっさと終わらせてやるよ……!」

 

予備弾倉の無いケルベロスを投棄し、空いた右手で背中から両刃の直剣を抜き放つ。

 

「むむっ、ボウガンに剣……そしてそのアーマー!その姿はまるで───」

 

「4号……お前の残してくれた平和、守ってみせるからよ……少しだけ、力を借りるぜ!」

 

左手で握った試製レールボウガン ペガサスでG4の胸を狙い撃ちながら走り出す勇。狙いは無論、右手の試製ソニックブレード タイタンによる必殺の斬撃。だがG4の幹部も見え透いた攻撃に当たる程の素人ではない。ペガサスから放たれた電磁加速特殊弾を回避し、反撃の弾丸をGM-01改4式から放つ。元の世界ではG3-Xすら行動不能にしたGM-01改4式の連射だが、今のG1-Mildにはそこらの盾よりも頼りになる武器がある。

 

「通るかよ、んなもん!」

「ぬうっ!」

 

タイタンの刀身で致命傷になりかねない胸部や首もとへの着弾を防ぎ、一気に距離を詰めつつタイタンを寝かせる勇。間合いに入った瞬間、間髪入れずにタイタンの横薙ぎを繰り出すが、硬質な音が響き受け止められた事を知らせた。

 

「GS-03……!」

「鍔迫り合いは勝負が長引く。遅延は我輩の最も嫌いな事象なのだ!」

 

本来のG4は使用していなかった装備。高周波振動ブレード、GS-03 デストロイヤーを左手に装着し、それでタイタンを防いだようだ。

 

「どこまでもパクるのが好きらしいなぁ、お前ら!」

「ふんっ!有効活用である!」

「水城の覚悟も知らねぇで……!」

「知らぬよ!人は己の知る事しかな!」

「テメェらは人間である事も捨ててんだろうが!」

 

鍔迫り合いを文字通り斬り上げ、G4は至近距離射撃を、G1-Mildは蹴りを選択。タイタンでの防御もさすがに間に合わずGM-01改4式の連続射撃を受けてしまうG1-Mildだが、勇の放った蹴りもただのケンカキックではなかった。

 

「ぐうっ!?き、貴様っ!その右足に何か仕込んでおるな!」

「チッ……さすがにバレるか……」

 

G1-Mildの足裏には電撃キックユニット マイティが搭載されているのだ。無理な姿勢で放ったのが祟り、必殺の威力には程遠いキックだったが、G4もけっして軽くはないダメージを負ったらしい。

 

(4号の事を知ってるなら、まだ見せてない手札がある事は予想されてるな……)

 

「残りは青の力か!さっさと棍棒を出すがいい!我輩は遅いのが何よりも嫌いなのだ!」

 

(おっと、こりゃ勘違いされてるな?丁度良い!)

 

マイティ、ペガサス、タイタンと三つの能力を見せた事で青の力ことドラゴンの存在も知られたと歯噛みする勇だったが、G4の幹部は残りの手札はドラゴンロッドだと推測しているようだ。これ幸いと勇はちょっとした賭けに出る。

 

「……チッ」

 

「む?……ははーん、成る程成る程。置いてきたか!フハハハッ!間抜けな男だ!貴様の行動は迅速ではなく拙速である!」

 

僅かに首を動かし、G4の斜め後方に墜落、もとい着弾させた突入ユニット前部に視線を送ったのだ。それに気付いたG4は、「先ほどのユニットに収納したまま」だとほくそ笑んでいるのだ。

 

まんまと釣られたとも知らずに。

 

「っ!」

「させぬよ!馬鹿めが!」

 

ペガサスから一射、更にタイタンも投げ付けながら突入ユニットへと走り出す勇。その悪足掻きを嘲笑いながら射撃を回避し、タイタンはデストロイヤーで斬り払いながら勇へと踏み込むG4。GM-01改4式の銃口がG1-Mildを捉えたのと、G1-Mildが急激に方向転換したのは同時だった。

 

「ドラゴンは───」

「ぬうっ!?」

「こいつの事だッ!」

 

バックパックと背部装甲に沿って内蔵されたエネルギーライン、そして脚部全体。それこそが、瞬間跳躍ユニット ドラゴンの正体なのだ。

 

「オラァッ!!!」

「ぐぼぁっ……」

 

GM-01改4式の弾丸が左肩を掠めるも止まらないG1-Mild。射撃をすり抜け、一瞬にして距離を詰めた勇の拳が、G4の顔面に突き刺さった。

 

「っ……!」

 

勇の追撃は終わらない。ペガサス用の精密狙撃システムを叩き起こし、瞬間的に人智を超えた視覚と聴覚を得る勇。脳内に叩き付けられる膨大な情報を捌き、ゴロゴロと転がるG4をロックオンする。放たれた擬似的超感覚の一撃は、寸分違わず左手に握られていたGS-03 デストロイヤーの基部を撃ち抜いた。

 

「ぐあぁぁぁっ!?ばっ、馬鹿なッ!」

「お待ちかねのスピード決着だ……!」

 

GM-01改4式から牽制弾を乱射しながら、自身の乗ってきたハンドレッドGトレーラーへと逃げ込む算段のG4。ここまで来て逃がす気も無い勇は、ペガサスシステムの副作用を気力で捩じ伏せ、再度ドラゴンを起動させる。斜め上への跳躍でGM-01改4式の弾を避け、ドラゴンのエネルギーを消費して空中で方向転換しつつ加速。G4への直撃コースを取り、そして───

 

「オォラァァァァァァッ!!!」

 

マイティを最大稼働させての急降下キック。敢えて名付けるならマイルドライジングキックが、G4の胸に突き刺さる。

 

「ぐおぁぁぁぁ!?」

 

人を人とも思わぬ外道によって複製された、人を部品として扱う心無き兵器。それを、人が人のまま、誰かを守る為に限界を超える戦士が打ち破った瞬間だった。

 

「くっ……ハッ……ハァッ……!どう、だ……!」

 

「ガハッ……!あぁ……ぐうっ……!」

 

システムの多重限界稼働で、肉体の方にも限界が来ている勇。仕留めたと思われたG4だったが、まだ装着者の幹部は動けるらしい。

 

「クソッ……しぶてぇ、なッ……!」

 

「じっ、G3部隊……!なに、をしておる……!我輩、をっ……守れぇ……!役立たず、どもめぇ……!」

 

「いい加減、お縄につきやがれ……!俺は警官だ、罪を認めて悔い改めるってんなら───」

 

悪いようにはしない、と続けようとした勇。それを遮ったのは、軍人として、そして警察官として何度も修羅場潜り抜けてきた事で磨かれた感覚が伝えてくる「嫌な予感」。それの出所は背後から。振り返れば、行動不能にしたはずのG3マイルド達がゆらりと立ち上がっていた。

 

「コイツらもまだ動けたのか……!」

「良いぞ!殺せ!この愚か者を───」

 

「腹減ッた」

 

「なに……?」

 

ゾクッ、と勇の背筋に冷たい物が落ちる。どこか様子のおかしいG3マイルド達は、それぞれ破損した所からG3のアーマーを外し始めている。それを見た勇は、背を向けずにゆっくりと後退り、投擲したタイタンの元へ向かっていた。直感が告げているのだ、武器が無いと不味い事になる、と。するとG4の幹部が何かに気付いたように叫ぶ。

 

「まさか!何故だ!薬の効果切れだと!?早すぎる!」

 

(薬……?)

 

「腹減ッタ」

「はらへった」

「はら……へっ、た……」

「ヴゥゥゥッ……!」

 

次第に人の言葉すら失っていくG3マイルドの装着者たち。勇が地面に突き刺さったタイタンに辿り着くのとほぼ同時に、G3マイルド装着者たちの正体が明かされた。

 

「ギッ……!」

「ギシャアッ!」

「グルルルル……!」

「ギャアッ!」

 

「コイツら……!あの時の!いや、違う……?別のアンノウンなのか!」

 

砕け、破損したG3の装甲。その隙間から覗いているのは人間の体表ではなかった。頭部装甲からは触覚が飛び出し、腕部が破損した個体は黒と白の生体装甲で形成された指が見えている。そう、G3マイルドの「中身」は薬物投与によって抑えられていた怪物だったのだ。アリのような特徴から、かつて元の世界で戦ったアントロードと一瞬だけ間違う勇だったが、色濃く残るアントロードの記憶と目の前のアリ型怪人は細部が異なる。

 

クロスギーツに変身した幹部がジャマトを従えていたように、このG4の幹部も人間ではないモノを従えていたのだ。

 

アマゾンを。

 

「早い早い早い!何故こんなにも早く薬が切れる!まだ効いているはずだ!薬による抑制を食欲が上回ったとでも言うのか!?」

 

所々にG3マイルドの装甲を張り付けたままのアリアマゾン達が不気味に動き出す。餌を見付けたのだ。傷付き、満足に動けなくなっている獲物を。かつて自らを便利な道具として扱っていた元ご主人様を。

 

「なっ!?き、貴様ら!我輩を誰だと───」

 

G4の幹部が恐怖に頬を引攣らせた瞬間、アリアマゾン達が一斉に飛び掛かった。如何に強固に改修したG4といえど、G1-Mildとの戦闘で破損した状態でアマゾンに襲い掛かられては一溜りも無く。断末魔の絶叫と、ぐちゃぐちゃばきりべきぼき、という生々しく悍ましい音を響かせハンドレッドG4の幹部は捕食されてしまった。

 

「人を喰う化物……!」

 

「ヴゥゥゥッ!」

「タリナイ!」

「ハラヘッタ……!ハラヘッタァァァッ!」

 

血肉と骨を食らい尽くし、治まらない空腹に突き動かされるまま、今度は勇に狙いを定めるアリアマゾン。僅かに人の言葉を取り戻したのは、ほんの一瞬でも腹を満たせたからか。

 

「放置する訳にいかねぇ!ここで全滅させなきゃ、この世界の人間が食い尽くされちまう!」

 

疲労困憊の体に鞭打ち、タイタンと残弾が少なくなってきたペガサスを構える勇。覚悟を決め、先手を取ろうと勇が踏み出した瞬間。

 

───ウオォァァァァァァッ!!!

 

アマゾンではない、かといって勇でもない雄叫びが響き渡る。次いでアリアマゾン達と勇のちょうど中間に何かが落着し、それに伴う粉塵と破砕音が両者を襲う。

 

「ヴゥ……?」

 

「っ、おいおいマジかよ……!コイツまで連れ出したのか!?」

 

土煙が風に流され、落ちてきたモノの姿形が明瞭になっていく。それを見た勇の反応は、困惑と驚愕。何故ならそれは、D.R.V.の中でも特に異質な存在だったから。

 

───ゲゲルバギギザ……!

 

ホワイトライガーのような身体的特徴を持つ純白の怪人は、他の同種とは別格である事を示す金の装飾品を身に付けていた。

 

ゴ・ガライ・ダ。仮面ライダーの定義から大きく外れた仮面ライダーの名を持つ者。曲者揃いの中でも特級の曲者である彼が今、自らのゲームの為に異世界へと降り立った。

 

 

◆◇◆

 

 

「っ!」

「どうした、ガルバ」

「いや……」

(何だ、今の悪寒は……)

 

 

◇◆◇

 

 

「未確認N号……!よりによってコイツを……」

 

───ボセパパガンゲゲルザ

 

───リデギソ パガゲゲルゾ

 

「相変わらず何言ってんのかサッパリだ!」

 

「エモノ、ニク……チガウ」

「ニンゲン、ジャナイ」

「コロセ!」

 

───ゲロボパゾヂサバ ググビパバス!

 

その場の誰にも真意の伝わらないグロンギ特有の言語を発し、一斉に襲い来るアリアマゾン達を迎撃する構えのガライ。まずは小手調べのつもりなのか、武器も能力も使わず押し寄せるアリアマゾンを拳と蹴りだけで捌いて見せた。その内の数匹は、グロンギの強靭な肉体に物を言わせた鋭く重い貫手で胸を貫かれ、手刀でふらつかされた所にすかさず繰り出された踵落としで頭蓋を粉砕されていた。

 

(あれだけの数を相手にしながら、一瞬たりとも判断が鈍ってねぇ……G3の装甲が剥がれて、生身が露出してる部分を的確に打ち抜いてやがる……)

 

───ボンデギゾバ?ゾボセスボパバズザベバ

 

「ギッ……グッ……!」

「グルァ……!」

 

───ヅラサン パガゾボシゾバベスバヂロバギ

 

まだ生きているアリアマゾン達をぐるりと睨み、大きく溜め息を吐き出すガライ。勇や、まだ理性の残る個体には言葉の意味こそ分からないが、ガライが失望と飽きを口にしたという事だけは理解できた。

 

───レギゾンリジャゲザ パガヂバサンギダダンザベビゴブビビザリ ギベ

 

体勢を整えているアリアマゾン一体に対して、おもむろに手の平を向けるガライ。何をしているのかと訝しむアリアマゾンだったが、己の肉体に異変が起きている事に気付いた。

 

身体が動かなくなっているのだ。

 

「グッ、ゲッ……!?」

 

ガライが拳を握るように、徐々に手を閉じていくにつれて鈍くなる身体、遠のいていく意識。やがてガライが翳した右手を完全に閉じた時には、アリアマゾンは息絶えていた。仲間の突然かつ理由の分からない絶命に狼狽するアマゾンたち。そんな哀れな獲物に対してガライは攻撃の手を緩めない。一匹一匹というのも面倒だ、と言わんばかりに右腕を振り抜き、残りのアマゾンをまとめて自らの能力の餌食にしていく。

 

やがて、その場に立っている生命体はガライと勇だけとなった。

 

「何、を……何しやがった……!」

 

───ズゼグサバギグゾグルゾググ

 

ガライの正体不明の能力に勇が戦慄し、二度目の溜め息をガライ吐き出した瞬間。パキッという音を発し、能力によって最初に命を奪われたアマゾンが砕けた。それを皮切りに、他のアマゾンの遺骸も砕け、崩れ落ちていく。まるでガラスか氷のように。

 

(完全に凍り付いてやがる……溶ける気配もまるでねぇ……ハナから氷細工だったみたいに……!)

 

───ゴグギゲダ

 

「っ!」

 

───ビガラロ パガゲゲルンジョグデビビズガパギギバ?

 

霧散していた殺気が戻り、今度はG1-Mildに対して構えるガライ。言葉こそ分からないものの、その動作と気配の変容を感じ取った勇もまた、タイタンとペガサスをガライへ向ける。仮にも同じD.R.V.同士でやりあってる場合じゃないと苦虫を噛み潰す勇だったが、そこへ鋭い声が飛ぶ。

 

「ガライ!」

 

───ジャビス バ

 

「そのリントは手強いぞ?時間切れになる前に他のターゲットを狩りに行く事を奨める」

 

───……ジョベギバゴゲパザ

 

いつの間にやら瓦礫の上に立っていた女性。ガライの知己の人物らしく、グロンギ語のまま喋るガライに流暢な共通言語を返している。彼女の言葉に悪態をつきつつも、勇から視線を外し別のポイントへと足を向けるガライ。そのままドラゴンユニットも凌駕しかねない跳躍で勇の前から姿を消してしまった。

 

「まったく……」

「おい待て!お前はいったい……!」

「鉢合わせは避けるがいい、リントの戦士よ。次もガライを止められるか───

 

───ゾギョグパゼビバギゾ」

 

「なっ」

 

茶髪のエキゾチックな美女といった風情だった女が、一瞬にしてガライと同じような怪人へと変貌した。彼女もまたグロンギだったようだ。勇に警告を飛ばし、ガライと同じく驚異的な跳躍力で瞬く間に目視範囲から消えるジャビスと呼ばれた女グロンギ。一人取り残された勇は、D.R.V.のメンバーとしてカウントされていないどころか、元の世界の警視庁データベースにも登録の無い新たな未確認生命体に危機感を募らせていた。

 

「あの女……妙な算盤みたいなモンを持ってたな。まさか、あのふざけた殺人ゲームの進行役か?」

 

ここは民間人優先だなと思考を切り替え、丁度もぬけの殻となっていたハンドレッドG4のトレーラーに目を付ける。装備の応急修理や弾薬の補充ができればと考えていた勇の耳に、他の地域を担当していたD.R.V.メンバーからの通信が届く。

 

『齋藤さん!ご無事ですの!?』

「三重春か、何とかな。未確認N号がこっちに向かって来ようとした時は冷や汗かいたが」

『ガライまで出したか。まぁ、アレはゲゲルに熱中させておけば良い』

「あん?辰成まで居んのか。ガイアメモリ組は二人で動いてるみてぇだな」

 

通信の主は仮面ライダーWの世界、風都からD.R.V.に参加しているミレーヌ・三重春と辰成 蛇子だ。

 

『あっ、そう!ガイアメモリですわ!』

「持ってねぇぞ、俺は」

『ではなくて!』

『お前の近くからガイアメモリの反応が出た。我々が戦ったハンドレッド構成員以外にもう一人、そちらに行ったのではとミレーヌが騒がしいんだ』

「……?いや、こっちにはパクりG4野郎とG3マイルドのガワ被った化物しか居なかったぞ」

『だから言ったろうミレーヌ。勘違いだと』

『そ、そんなはずありませんわ!にっくきアンチクショウの財団Xを追い掛けてブチのめす為に作ったガイアメモリスァーチャーがバチバチに反応していたのですわよ!?』

 

ギャアギャアと騒がしいミレーヌとそれを宥める蛇子。二人のやり取りを半ば聞き流しながら、トレーラーに入りG1-Mildを脱いでいく勇。ガイアメモリを持っていたとしたら無惨な骸になっているG4の幹部くらいだが、と一応あの場に居た面々を思い出していく。もしかしたらアリ怪人の誰かが持ってたのかもな、と決め、メンテナンスを開始する。

 

次第にメチャクチャ大変でしたのよこちらも!と自分達が戦ったハンドレッド幹部の話にスライドしていくミレーヌの声を聞きながら簡易メンテナンスを終え、使えそうな武器を拝借しつつ、ガライが跳んでいった方向とは別のポイントへと走る勇だった。

 

 

◆◇◆

 

 

「お腹減ったなぁ……どこかに料理でも置いてないかなぁ……アマラでしょー、クロッカーフィッシュでしょー、ジョロフライスにエワドド……せっかくナイジェリアの名物調べてきたのに、このままじゃ食べれないまま帰国になっちゃうよー……あー、もう少しスイッチ我慢すれば良かったかなぁ……」

 

「アリも食べれない事はないし……あれ?アリ?なんでそんな事分かったんだろ……まぁいっか。それよりお腹減ったなぁ……」

 

HUNGRY

 

 

 




目覚めよ、新たな伝説

【齋藤 勇】(原案:守次 奏 様)
仮面ライダーアギトの世界出身の男性警察官。
年齢は31。
自衛官だったが、後輩を虐待していた上官を殴り飛ばして懲戒免職となり、封印を解かれるシステムの被験者を欲していた警察に裏取引で引き抜かれた経緯がある。
熊のよう、と形容される大男であり、見た目に違わず粗暴で短絡的な性格。だが、上述の通り間違った事は大嫌いな情に厚い男というのが本性。粗暴で短絡的というのも、上官をボコボコにしたという一件が誇張されて広まった結果の評価。

【仮面ライダーG1-Mild】
勇の世界で実戦投入された強化服。
警視庁がG3のスペック不足を痛感し、次世代の量産型パワードスーツを開発するために過去の技術を再検証する目的で「人間には扱うことができなかった」G-1を「人間が扱うことができる範囲でクウガの技術を再現・再検証する」目的で再開発したもの。
未確認生命体鎮圧兵装として電力を通じた最新技術が搭載されており、足裏の電撃キックユニット マイティ、バックパックと脚部でセットの跳躍ユニット ドラゴン、ボウガン型レールガン ペガサス、収納式ソニックブレード タイタンの四種を基本装備としている。

【ゴ・ガライ・ダ】(原案:麻婆炒飯 様)
仮面ライダークウガの世界出身。
年齢不明。
古代の好戦的な先住人類グロンギの戦士。ホワイトライガーのような意匠を持つ純白のグロンギ。
遥か北欧の地に封印されていたらしいが、覚醒した直後に姿を消した。以降、世界各地で人類ともグロンギとも異なる異形の怪物と戦う姿が何度か目撃され、人を襲わず怪物だけを標的にしている事から未確認生命体4号の後継者なのではと推測された。

その正体は、かつてダグバに敗れたン候補の一体。本人は敗北を認めておらず、ダグバとの再戦を願い「この星の命と理を異にする生命体を666匹殺す」という規格外のゲリザギバスゲゲルを続けている。制限時間は元々かなり長めに設定されていたようだが、中途半端な封印のせいか制約が機能しなくなっている。

彼が「仮面ライダー」と呼ばれる所以は特殊であり、「人を守り、怪物を討つ」姿を見た者達がガライを「仮面ライダー」と呼び始めたのが原点。
だが、本人にリントを守っているという認識は無い。
彼にとって「仮面ライダー」とは、「外界から現れた敵を殺す者」という意味なのである。
D.R.V.参加も効率的にゲゲルを進める為の手段でしかなく、他のメンバーすら「外界の命」として見ている程。

彼の持つ能力はダグバと同じ「分子・原子操作」。
ガライのこれは「物質を構成している素材の運動を停止させて凍結し、内側から凍らせ破砕する」というもの。生物に対して使えばほぼ確実に殺傷する強大な能力だが、ダグバとの戦いにおいてはガライが凍結させるよりもダグバの発火・溶解の方が早かった事から敗北した。

【トリニティ】(原作:オリーブドラブ 様)
Blue-Armored-Valkyrie-Agent-Riders-Force
通称B.A.V.A.R.F.の一人。年齢は20。
約1年前のタンカー事件などを含む激務が続いていたB.A.V.A.R.F.メンバーの慰安と、溜まりに溜まった休暇の消化を目的としてナイジェリアに入国していた。
睡眠欲、食欲、性欲の三大欲求何れかに常に偏るという特異体質をしている。ノバシェード対策室の中でも選りすぐりのB.A.V.A.R.F.所属という事もあり、戦闘能力は一級品。だが、自らの欲求にとことん素直なのが玉に瑕。

体内に三つのガイアメモリを宿しており、ミレーヌが拾ったガイアメモリの反応は彼女のもの。
なぜ別世界の技術であるガイアメモリが彼女の元に現れたのかは不明だが、過酷な幼少期から宿している事もあり、三つのメモリ全てにおいてハイドープと化している。類稀な身体機能と三大欲求に偏る性質はガイアメモリが原因。
メモリ内訳は「HUNGRY」「NIGHTMARE」「SUCCUBUS」の三つ。余談だが、ハンドレッドG3マイルド達が薬物抑制を振り切ってアリアマゾンに戻ってしまったのは、トリニティが睡眠欲のナイトメアメモリから食欲のハングリーメモリに切り替え、その空腹感にあてられた為。勇は完全に貰い事故だったりする。

【ラ・ジャビス・ダ】
ガライを制止したグロンギ。
名前の通りゲゲルの進行・監視役を担うラ集団の一体。
生物としてはジャコウネコの意匠を持つ。
かつては「リントの男女を交わらせ、男だけを殺し、女の内に新たなリントの命が宿ると1カウント」「それを4日で50カウント」というゲリザギバスゲゲルを完遂したゴ集団の一体であり、ンの座には興味が無かった模様。
「生命体の性欲を煽り、発情させる」という変わった能力を持ち、それを存分に活かしてリントを殺害していた。
現在はガライのゲゲル進行を見守っているが、既にダグバは倒れ、ダグバを倒したクウガも行方知れずという状況を認識している。何の目的でガライのゲゲルに関わっているのか、ガライは現状を把握しているのかは一切不明。
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