仮面ライダーAP外伝 Imitated Devil 作:X2愛好家
アイツらの名はハンドレッド
ハンドレッドは私達が止める
クズィーとして!
ワタシの強さは1000%にも収まりませんよ~?
私の神様……
神なんざクソくらえだ
少しだけ、力を借りるぜ!
ボセパパガンゲゲルザ
アフリカ大陸にて、勇ことG1-MildがG4を破り、強烈な飢餓感に襲われ本性を見せたアリアマゾン達をガライが一蹴した所から時を戻して。
中東某国の中央街道を激走する二人の女性が居た。
「なぁんでこうなりましたのぉ~!?」
「お前が迂闊だからだと思うぞ」
片方は赤と黒が混じったドレスを着用した金髪碧眼のThe・お嬢様といった見てくれの女性。
名をミレーヌ・
ドレスの裾を掴んで風になっているミレーヌに、涼しい顔で並走している少女───に見える25歳の成人女性は
「わひゃあおぅっ!あっぶねぇ!髪!髪ちょっと焦げたんですけどぉ!?」
「お嬢様が出していい悲鳴じゃないし、素が出てるぞ」
曲がり角を利用して追手の射線を一度切る二人。バチバチに染めたミレーヌの金髪を焦がしたのは、追手が放った銃弾。全力疾走を続ける二人を追い、曲がり角から姿を見せたのはスーツを着た髑髏の怪人マスカレイドドーパントである。それも一体や二体ではなく、十人を超える部隊規模。
ハンドレッドを追ってこの世界に現れたD.R.V.メンバーであるはずの二人が、逆にハンドレッドマスカレイド達に追いかけられているのか。それには深い───いや、特に深くはない、むしろあっっっっさい経緯がある。
◆◇◆
「居ましたわ……!わたくしのガイアメモリスァーチャーに狂いは無し!」
「その割にはマスカレイドしか居ないが」
遡ること数分前。中東某国の廃工場の物陰にミレーヌと蛇子。その視線の先にはマスカレイドドーパントが複数と、黒い服を着用した少年が一人。
「あのガキがハンドレッドの指揮官か?」
「カコさんとそう変わらな───」
「風都の海、今の季節は冷たいかねぇ……底に沈んで確かめてみるか?あ"?」
「ヒュッ」
なぜ見えている地雷を踏みに行くのかミレーヌ。
漫才を繰り広げながらも、ハンドレッドの部隊に気付かれない小声でやっている辺り戦士としての自覚はあるらしい。自覚……多分、きっとある、メイビー。と、そうこうしている内に指揮官らしき少年が動く。マスカレイドの一体に何やら命令を伝え、他の個体を連れさせて工場の外に出す。
「別働隊か……?」
「でしょうか……あっ、メモリを出しましたわ!」
マスカレイドに指令を出し終え、懐からガイアメモリを取り出して眺め始めた少年。メモリの所持は分かったが、二人の居る場所からは何のメモリかまでは判別できない。
「くっ……何を持っていますの……け、ケータイ、ケータイのズームで何とか……!」
「おい、無茶はする───」
───♪
「ハァァァァァァァ!?!!」
「ばっ、何で音切ってないんだ!」
「誰だ!」
◇◆◇
そして工場から走って脱出し、今に至る。
「ゼェッ!ハァッ!よ、よこっ……横っ腹がバチクソに痛ぇですわ……!」
「自業自得だがな。巻き込まれた被害者である私に対しての謝罪もまだだ」
「何でそんな余裕で走れますの!?」
「鍛えてるからな。全く、敵を盗撮しようとして音切ってないなど。そんな間抜けはお前以外に居ないだろうさ」
居ない事はない。
鏡とモンスターの世界の仮面ライダーが似たような事をやっていたりするが、ミレーヌと蛇子はそれを知らないらしい。知っていた所で現状の打開にも繋がらないのだが。
「それよりドライバーとメモリを出しておけ」
「なに!ゆえっ!」
「気付いてないのか、工場に戻ってきているぞ」
「へぇあっ!?」
「途中で覚悟を決めてカチコミかと思ったが……本当に無策で走っていただけか……」
しっかりマスカレイドドーパントの銃を確認し、体力の消耗を抑えた最小限の動きで回避行動を取りながら走る蛇子。対してミレーヌは、彼女にしか見えないハードルでもあるのか、大仰に跳ねて回ってを繰り返すコミカル全力ダッシュを行っている。自ら体力を削りにいっているような物だが、不思議な事にマスカレイドからの銃撃には一度も被弾していない。
そんなドタバタ珍走劇を繰り広げながら、ハンドレッド幹部の居る工場へと戻ってきた二人。再会の挨拶代わりにと工場内のマスカレイドからも銃撃されるが、蛇子は左方向に跳んで回避。それを見たミレーヌも一拍遅れて迫真の大ジャンプ。片膝と顔面滑り込みで各々着地した先で、自らの手札を切った。
「ふん……」
【SEA】
「ぶべっ」
【MASQUERADE】
「ガイアメモリ……?」
幹部と思わしき少年が、二人のメモリに気付いたのとほぼ同時に。蛇子は左、ミレーヌは右にスロットが倒れる形状となっているロストドライバーにメモリを装填し終えていた。
「変身」
「変身!ですわー!」
【SEA】
【MASQUERADE】
マスカレイドドーパント達が一斉に発砲するが、渦潮のようなエネルギー流と黒い突風に阻まれ、二人に弾丸が届く事は無かった。二種の奔流が消えた時、その中心に立っていた二人の姿は大きく変わっていた。
ダークブルーの生体装甲に波飛沫のような白い紋様、蛇のような意匠が特徴のマントを靡かせる蛇子の変身態。
タキシードを思わせる服のようなボディに、ベネチアンマスクを張り付けた頭部を持つミレーヌの変身態。
それぞれ異界の風都から来た、仮面ライダーの名を持つ二人の女。メモリからそのまま名付けるのが慣例ならばこう呼ぼう。
仮面ライダーシー、そして仮面ライダーマスカレイド。
「D.R.V.のガイアメモリ……」
「御ビビりまして?変身を許した時点で、後悔しても時既に遅しですわー!」
「あいつらが街の涙を拭う二色のハンカチなら、私は世界が流した涙を受け止める海って所だ」
「その罪を抱えて沈め」
「さぁ!わたくしと御一曲いか───」
「やれ」
幹部がマスカレイドに武器の使用を指示。動こうと構えていた蛇子は何の問題も無く回避して走り出したが、決めセリフの途中だったミレーヌは盛大にコケていた。そのお陰で集中砲火を避ける事ができたのだが。
「ちょっ、わたくしにも最後まで言わせなさいよ!」
ボディの至るところに開いている噴出口、スプラッシュイジェクタから勢いよく水を噴射し、敵陣に斬り込んでいく蛇子のシー。それを追いかけミレーヌのマスカレイドもまた走り出す。
「御火力が御ダンチですわぁー!」
ミレーヌマスカレイドの接近に対して弾幕を張るハンドレッドマスカレイド軍団だが、やたらと大仰に飛び跳ねては弾丸を躱すミレーヌへの有効弾が無い。更には、ベルトの後背側ホルスターに出現していたマスカレイドマグナム(仮)を引き抜き、言葉通りハンドレッドマスカレイド達の銃器とは段違いの威力を誇るエネルギー弾を連射。被弾した数体が倒れて爆散し、その炎を背景に駆け抜ける。
「危ないんだが?」
その内の一発が蛇子の肩を掠めていたりするが。
「チャカを扱うなら練習くらいしておけ……」
接近戦担当らしくナイフやマチェットを手に襲い掛かってくるマスカレイドの第二陣。それらの関節を的確に極めて武器を取り落とさせ、別のマスカレイドに向けて投げ飛ばし、蹴り飛ばして即席の飛び道具としている蛇子ことシー。時には掌底打ちと共に水流を放ちマスカレイドを吹き飛ばす荒業も披露している。
カッコいいを突き詰める事で洗練された格闘術に、水を操るシーメモリを掛け合わせた蛇子。
常に見栄を張る事でマスカレイドの低スペックを帳消しにし、天然モノのポテンシャルと陰ながらの努力がマッチしたミレーヌ。
並みのドーパントでは相手にもならない二人の実力を認識したのか、遂に護衛を押し退けて幹部の少年が前に出てきた。
「もういい、僕がやる」
「しっ、しかし!」
「下がれ」
「ようやくお出ましか」
「ふんっ!どんなメモリだろうが、わたくし達に勝てるなどとお思いに───」
【ETERNAL】
「へ?」
「変身」
【ETERNAL】
ハンドレッド幹部が変身したのは、Eのメモリを用いる白い死神。かつて、風都を恐怖と混乱の坩堝に叩き落とした最悪の仮面ライダー。
エターナルである。
「ちょおぉぉぉぉっ!?!!」
「少しは骨がありそうだ」
「骨どころか皮と肉も付いてますが!?骨太とかそういう次元じゃありませんことよ!?もう受肉してる!バ美肉!」
「……チッ」
「ん?」
一度は仮面ライダーダブルとアクセルすらも完封した白い厄災の出現に大慌てのミレーヌ。一方で、蛇子は幹部の様子がおかしい事に気付いていた。更に言えば、記憶の中にあるエターナルとは姿が違う事にも違和感を覚えている。
「赤……?確か大道克己は───」
「無駄口を叩いてる暇がァ……!」
「っ、構えろミレーヌ!」
「あるのかッ!」
ボディ各部のマキシマムスロットやマントの有無、そして上腕辺りまで燃え盛っているようなフレイムパターン。蛇子が見た真のエターナル、大道克己が変身した姿では青い炎だったが、目の前のハンドレッド幹部の少年が変身したエターナルは赤に染まっている。まるで不完全な炎である事を示すように。
と、そこまで観察し推測を立てた所でハンドレッドエターナルが飛び掛かってきた。咄嗟に掌のスプラッシュイジェクタから地面に向けて圧縮水弾を発射、その衝撃で飛び退きながらミレーヌも吹き飛ばし緊急回避させてみせた。
「へぶぅっ」
ミレーヌはまた顔面から着地していたが。
「無茶を……!ソウゲツ様をお守りしろ!」
「はっ!」
ソウゲツと呼ばれたエターナルの変身者を援護すべく、再びマスカレイド軍団が殺到する。慕われているのかソウゲツよりも上の存在に厳命されているのか、それは定かではないが、ハンドレッドマスカレイド達の士気はかなり高いようだ。銃火器を持った個体が蛇子の背後に回り、近接武器を所持した個体の多くがミレーヌマスカレイドへと向かう。数の上では圧倒的に不利な状況だが、蛇子とミレーヌとて幾度も修羅場を潜った仮面ライダー。そう簡単に負けはしない。
「さすがに多すぎましてよ!?」
多分、負けない。きっとそう恐らくメイビー。
「お前ら……!っ!」
「余所見をしている暇があるのか?」
エターナル変身直後に先手を取られた意趣返し、と強烈なストレートパンチを繰り出す蛇子。躱しきれずに仰け反り、追撃の水流を受けて後方に転がっていく。その勢いのままマスカレイドに絡まれているミレーヌに振り向き、援護の水弾。エターナルの護衛が放った弾丸は蛇鱗柄のマント、シーサーペントウェアが防ぎダメージはゼロだ。
「助かりましたわ!そこっ!」
恩は直ぐに返すとばかりにマスカレイドマグナム(仮)をシーの背後へ向けて連射。ハンドレッドマスカレイドを数体撃破したまでは良かったのだが、やはり一発はシーの頬を掠めている。もはや伝統芸能なのだろうか。
「危ねぇ……」
「申し訳ありませんわぁー!」
「嘗めるなよD.R.V.!」
【OCEAN】
【MAXIMUM DRIVE】
体勢を立て直したエターナルが別のメモリを起動させ、ロストドライバーのマキシマムスロットに装填。大洋の記憶を宿したオーシャンメモリだ。似た性質を持つ海の記憶、蛇子のシーメモリに対抗するため使用したのだろう。凄まじい勢いの水流を右掌から放出し、蛇子を狙うエターナル。水流対決なら負けないと、蛇子もまた両手のスプラッシュイジェクタから激流を放つが、咄嗟の反撃だった為にマキシマムを使えていない。
また、蛇子は水流の激突にメモリの基礎能力とマキシマムドライブの違いだけではない、別の要因も感じ取っていた。
(素の出力が違う……!まさか奴のメモリは───)
「ハァァァッ!」
「くっ!があっ!?」
「蛇子さん!」
エターナルの水流に押し切られ、今度は自分が地を転がされる事となったシー。マスカレイドマグナム(仮)からエネルギー弾を乱射し、ハンドレッドマスカレイド達を牽制しつつ蛇子の元に駆け寄る。
「ご無事ですか!?」
「あぁ……それより気を付けろ。奴のメモリは恐らくT2だ……!」
仮面の奥でハッと目を見開くミレーヌ。レッドフレアという大道克己と異なる姿に惑わされていたが、ハンドレッドがより強力な姿のライダーをコピーしているのならば、総合的にスペックの向上しているT2ガイアメモリを用いているのは当然の事だ。変身用のメモリだけでなく、手数を増やすマキシマム用のメモリもT2にしているなら、拮抗できずにシーが吹き飛ばされたのも納得できる。
「ならば尚更、エターナルのマキシマムを使わせる訳には……」
「使うまでもないさ。次はコイツだ!」
【UNICORN】
「何本お持ちですの!」
大道克己も利用していたT2ユニコーンメモリを起動させるエターナル。させじとシーの前に立ち、マスカレイドマグナム(仮)でエターナルに狙いを定めるミレーヌだったが、蛇子は水が跳ねる音を聞いていた。自分たちやハンドレッドマスカレイドではないとすれば───
「ミレーヌ!姿の見えない奴が居る!」
「えっ」
「遅い!」
ミレーヌに近付いていく水音。姿を消し、自らの得物の距離にミレーヌを捉えたそれが現れる。鈍い光沢を持つ鋼の如きボディ、ターゲットを逃すまいと赤く光る一つ目、硬質さをこれでもかと主張する鋼棒。
姿を消す能力など無いはずのメタルドーパントだ。
「オラァッ!」
「っ!?しまっ───」
「捕まえたァ!坊主!」
「坊主と呼ぶな!リーダーは僕だ!」
【UNICORN】
【MAXIMUM DRIVE】
メタルシャフトでマスカレイドマグナム(仮)を弾き飛ばし、ミレーヌの首と腕を掴んで拘束するメタルドーパント。その隙を逃さず、ユニコーンメモリをマキシマムドライブし、右腕に螺旋状のエネルギーを纏ったエターナルが走り込んでくる。
「だあっ!」
「っ!きゃあぁぁぁっ!?」
「ミレーヌ!」
背中にユニコーンのマキシマムを受け、大きく吹き飛ばされるミレーヌ。蛇子もマスカレイド達に足止めされ、エターナルの妨害に動く事が出来なかった。ダメージが大きすぎたのか、空中でミレーヌの変身が解除されてしまう。地面に落ちた時には、既に生身の状態に戻ってしまっていた。
「っ……!その、ドライバー……は……うら……風、都の……!」
「ほーう?複製とはいえ、T2のマキシマムをまともに食らって生きてるか。タフだねぇ、嬢ちゃん。それに裏風都の連中まで知ってるたぁ、そこそこ有名なスジかい」
途切れかける意識をどうにか繋ぎ止め、メタルドーパントを睨み付けるミレーヌ。大道克己が起こした事件の最中にも見掛けたメタルドーパントだが、腰のドライバーが当時の個体と異なっている事に気付く。
「レイズ、機能……透明化、も……そのドライバー、による、もの……!」
「知ってるんなら種明かしもねぇな。そうさ、さっきの奇襲はコイツのお陰ってな」
【INVISIBLE】
ガイアドライバーrex。ミュージアムを退けた風都の仮面ライダー達が遭遇した新たな勢力、通称「裏風都」や「街」と呼ばれる異空間を拠点とする面々の中でも、幹部クラスにのみ与えられる次世代型のガイアドライバー。ドーパントに変身する為のメモリとは別のメモリを挿入可能となっていて、短時間かつ一時的ながらも全く別のメモリ能力を行使できるという機能が「レイズ」である。
ミレーヌを襲ったメタルドーパントは、このレイズ機能を用いてインビジブルメモリを使用。透明化してミレーヌに奇襲を仕掛けたのだ。
「ま、そういう事で……坊主の為にも、ここで死んでくれや」
拘束の為に手放したメタルシャフトを拾い直し、ゆっくりとミレーヌに近付いてくるメタルドーパント。マスカレイドの隙間を縫ってシーも水流を放つが、防御力の高いメタルドーパントには大したダメージが入らない。
「じゃあな」
「ミレーヌッ!」
喉か顔か、どちらにせよ急所となる部位にメタルシャフトが振り下ろされる。変身は解除され、武器も防具も持たないミレーヌにこれを回避する手立ては無い。
「っ!」
はずだった。
「あぁ?……おいおいウソだろ」
掴まれ、止められていたのだ。ミレーヌの左腕一本だけで。怪人ドーパントの中でも剛腕を誇るメタルが全力で振り下ろしたシャフトが、細腕の女に。
「動かねぇ……!?どうなってんだ!」
「これ、が……わたくしの、プライドです、わ……」
身体中が埃にまみれ、鼻血を流し、冷や汗は止まる事なく吹き出している。お嬢様のあるべき姿ではない、泥まみれで優雅さの欠片も無い状態。そんな状態でも尚、ミレーヌはプライドを張り続ける。
「どんな手品か知らねぇが!くだらねぇ見栄張りやがって!」
「くだらないでしょうね!わたくしの見栄は!ですが!」
シャフトが押し込めないどころか、とうとう押し返され始めた。ミレーヌが立ち上がりながらメタルドーパントに突き返しているのだ。咄嗟にシャフトから左手を離し、ミレーヌの顔面を殴り付けるメタルドーパント。確実にクリーンヒットなのだが、ミレーヌは生きている。
「なっ、何だ!何なんだお前は!」
「わたくしはミレーヌ・三重春!!!全力で見栄を張れという家訓を胸に秘め!全力で胸を張って生きる最強のお嬢様ですわぁっ!!!」
「ふっ……バケモノお嬢様め」
(仮面の記憶に、見栄を張るというプライドが重なってハイドープ化した……?心が折れない限り、どんな攻撃を受けても生命活動が止まらない……!?)
ミレーヌ裂帛の叫びを聞き、メタルドーパントは完全に呑まれ、蛇子は苦笑し、エターナルは恐ろしい推測を立てていた。そしてその推測は正解なのだが、彼らがそれを知る事は無い。
「ミレーヌ!あの時メタルを倒したのは!」
「えぇ、分かっていますとも。目には目を歯には歯を、レイズには借り物で御相手いたしますわ!」
【MASQUERADE】
【MAXIMUM DRIVE】
「変身前にマキシマムだと?」
再変身を試みるミレーヌがマスカレイドメモリを起動。だがメモリを装填したのは変身用のスロットではなく、マキシマムスロット。突然の奇行に困惑するメタルドーパントだが、ミレーヌはお構い無し。
「チッ……!」
【ETERNAL】
【MAXIMUM DRIVE】
ミレーヌの危険度を上方修正したエターナルが本来のマキシマムを発動。これ以上妙な真似はさせまい、とT2以外のメモリ機能を不全に陥らせるエターナルレクイエムを使ったのだ。
「ぐっ……うっ……は、はっ……!一手、遅かった、な!」
【JOKER】
従来型のシーメモリで変身している蛇子は動きが鈍るが、エターナルと同じT2メモリを使っているらしいメタルドーパントは無傷。先にシーを始末しようとするエターナルだったが、その場に響いたのは、ここには存在しないはずのメモリを示すガイアウィスパー。
「さぁ!あなた方の罪を御数えあそばせ!」
二人で一人の探偵にして仮面ライダー、その片割れが単独で変身した姿。仮面ライダージョーカーがそこに立っていた。しかも、確実にエターナルレクイエムの影響下にあるにも関わらず、ご丁寧に決めポーズを取って健在をアピールしている。
「なっ!?」
「マスカレイド……まさか!仮面を被るという特性を使って多重変身したのか!?バカな!マスカレイドメモリにそんな機能は───」
(ハイドープ化した……?)
「っ!」
先ほどの推測がリフレインする。ロストドライバーのマキシマムにハイドープ化、それらが重なった事で可能となった奇跡的な能力なのではないか、と。
「とぉおうっ!」
「うおっ!?何で動けるんだよ!」
「お借りしたのがT2ジョーカーだからですわぁ!」
「ご丁寧に解説どうも!」
気力に見合う戦闘力を取り戻し、メタルドーパントへ殴り掛かるミレーヌジョーカー。防御力こそ本来のジョーカーから落ちているものの、マスカレイドハイドープによるある種の不死性と、使用者の身体能力や潜在能力を極限まで引き出した上で感情による変動を上乗せするジョーカーメモリの特性によって、今のミレーヌジョーカーは接近戦においてほぼ無敵と言っていい力を発揮する。
そしてメタルドーパントに遠距離攻撃の手段は無い。これが意味するのは───
「くっ……そ、があっ!」
「お嬢様パンチ!お嬢様キック!お嬢様チョーップですわ!」
絶え間無い連続格闘でメタルドーパントを圧倒するミレーヌ。技名こそ珍妙、というか安直そのものだが、その一撃一撃は並みのドーパントなら戦闘不能になっている威力だ。
「やらせる───」
「こっちのセリフだよ……!」
メタルの援護、もといミレーヌの始末に動こうとしたエターナルだったが、いつの間にか接近していた蛇子に組み付かれてしまう。
「なっ、なぜお前まで!?」
「はっ……大道克己のエターナルなら危なかったが……メモリが停止されてないなら、戦えない訳じゃないんでねぇ!」
意味が分からない、と混乱しながらシーの背に拳を叩き付けるエターナル。確かに自分が変身したのは、大道克己が変身したブルーフレアのエターナルではない。だがそれでも、エターナルレクイエムはT2で発動した。現に手勢であるマスカレイド達はメモリが機能停止し、身体から強制排出されている。
(なのに、何故!)
「……お前も、僕が出来損ないだって……そう言いたいのか……!お前もぉっ!」
フラッシュバックする記憶。閉じ込めて忘れてしまいたいと願うそれを意図せず掘り起こされ、激昂のままにシーへ拳を叩き付け膝で打つ。それでも尚、シーは揺るがない。蛇子は折れない、退かない。
「がっ……ぐっ、うっ……お、まえに……どんな、過去があるか……知らないし、興味も無い……!」
メタルシャフトを生身で受け止めたミレーヌのように、蛇子もまたボロボロの体で、メモリの機能をほぼ止められながらも、エターナルの拳を受け止めてみせる。その気迫にエターナルが呑まれたのも、先のメタルドーパントと同じように。
「カタギのお嬢が気張ってんのに……暴と義理の道を歩くって決めた私が……!死力尽くさない訳にいかねぇだろうがッ!!!」
シー渾身の右フックがエターナルの腹を打ち抜いた。想定外の衝撃に仰け反るエターナルに対し、蛇子は追撃を選ぶのではなく相手のマキシマムスロットに手を伸ばしたのだ。
「しまった……!」
「これで漸く動ける」
メモリをスロットから引き抜きエターナルレクイエムを停止。これでシーメモリも本来の力を取り戻せた。投げ捨てられたエターナルメモリを回収しようとした所に飛ばされてくるメタルドーパント。マキシマムが止まったのを見て、ミレーヌもジョーカーからマスカレイドの姿に戻り、ロストドライバーにメモリを挿し直している。
「すまねぇ……抑えきれなかった……」
「くっ……!」
「御フィニッシュですわ!」
「あぁ!」
【BOMB】
【MAXIMUM DRIVE】
【SEA】
【MAXIMUM DRIVE】
それぞれのマキシマムスロットに装填されるボムメモリとシーメモリ。ミレーヌは走り出し、左足裏で踏んだ地面を爆砕しながら跳躍。蛇子は両手足のスプラッシュイジェクタから激流クラスの水を放出して飛翔。それに加え、放出された水も意思を持っているかのようにうねり、巨大な蛇を形作り、エターナルとメタルドーパントを搦め捕った。
「光届かぬ深淵へ……落ちろッ!」
「とおぉうっ!」
「シーゲートアビスッ!!!」
「お嬢様ボンバァァァァー!!!」
マスカレイドの右足がメタルドーパントに、シーの両足がエターナルに叩き付けられ、文字通りの必殺技が両者に炸裂した。水流と爆発のマキシマムに耐えきれる訳もなく、海蛇の拘束から解き放たれながら吹き飛んでいくエターナルとメタルドーパント。手応え、ならぬ足応えを確め勝利を確信しながら着地した蛇子の耳が拾ったのは、爆発音とメモリブレイクの音───
【ZONE】
【MAXIMUM DRIVE】
ではなかった。
ハンドレッドや自分たちD.R.V.が使用している灰色のオーロラではなく、マス目のようなフィールドにライダーキックで弾き飛ばされた勢いのまま飛び込んでいく二人。振り返って確認してみれば、先ほど投げ棄てたはずのエターナルメモリも消えていた。
「よっしゃぁー!大・勝・利ッ!ですわー!」
「そうでもない」
「はぇ?」
「ゾーンメモリまで持っていたか……」
テンションの昂りでミレーヌには聞こえていなかったらしい。やれやれ、と呆れながらシーメモリを引き抜き変身を解除する蛇子。慌ててミレーヌもマスカレイドから再び生身へと戻る。
「まぁ、あれだけのダメージは早々回復できるものじゃないだろうが……場所の特定くらいはしておいた方が良いな。ミレーヌ、御自慢のガイアメモリサーチャーの出番だぞ」
「えっ、あっ……お、お任せあれですわ!あと発音はもっとエレガントに!ガイアメモリスァーチャーですわ!スの所で口をすぼませる感じの───」
「さっさとやれ」
しょんぼりミレーヌ。
ガイアメモリを使っているのは自分たちと先ほどのエターナルしか居ないと読み、詳細な地形データ等は入れずとりあえずの検索を掛ける。と、数秒と経たずにヒットした。
「ガイアメモリ反応!しかもこれは……」
「データを見るに起動した後だな」
「ですわ───ハァァァァァァァ!!!」
「鼓膜が逝きかけた」
「齊藤さんの直ぐ近くですわぁぁぁ!!!もう一人居やがりましたに違いなくてよぉー!」
「落ち着け」
「御電話!鬼電かけるしかねぇですわー!」
「齋藤さん!ご無事ですの!?」
『三重春か、何とかな。未確認N号がこっちに向かって来ようとした時は───』
▲▽▲▽▲▽
「騒がしいな……異世界の仮面ライダーというのは、ああいうのしか居ないのか?」
「葬式みたいに落ち込んでるよりはマシよ」
「で?仕掛けるのか?今のクライアントはお前だ。判断は任せる」
「一先ずは放置。対策室にもニュージェネレーションにも迷惑は掛けてないようだし、どうせ悪魔の女王様はデータが欲しいだろうし。それに……」
「その鉄甲ニードルガンはいざという時の為の切り札だもの。あの女に使う日が来るまで表沙汰にはしたくないし、ね?」
「了解だ」
ギャアギャアと騒がしいミレーヌと、それに呆れながらもツッコミと補足をしている蛇子。そんな彼女らを物陰から監視している者が居た。現状は害にならないと判断したらしく、各々の武器を収めてその場を去る男女。どちらも意匠の異なるパワードスーツを纏っている。
女の方は胸部装甲に人魚のようなマーキングが施され、男の方はノバシェード対策室や警察機構特殊部隊で運用されているマス・ライダーのカスタムタイプと思われる姿が特徴的だ。かなり崩した書体ではあるが、70というマーキングも確認できる。不穏な空気を漂わせながら、二人は闇へと消えていった。
これで決まりだろうか。
【ミレーヌ・三重春】(原案:人見知り 様)
20歳 女性。
金髪(染めてる)碧眼(カラコン)ですわ口調(たまに忘れる)というザ・お嬢様(偽)。その騒々しい性格で意図せず場をかき乱したり、シリアスな雰囲気を派手に壊したりと色々残念な女。
しかし芯の通った心の強ぇ女であり、家訓の「全力で見栄を張れ」を胸に抱いて敵を討つ立派な戦士でもある。
実家は商家であり財団X、及びミュージアムとも関わりがあった。そのルート経由でマスカレイドメモリを入手するが、財団Xが死の商人だった事を知り猛省と共に決別。愛する風都への贖罪も兼ねて財団Xを追い、D.R.V.に加入した。
ロストドライバーとマグナムガジェットは、本来シュラウドが予備として持っていた物。ダブル、アクセルとドーパントの戦闘のゴタゴタで手に入れ、マスカレイドメモリがドライバーの規格に合致した事から仮面ライダーマスカレイドとなる。
本人に自覚は無いが、「見栄を張り続ける」ミレーヌの深層心理と「仮面を被る」というマスカレイドの特性が噛み合った事で「見栄を張り続け、心が折れない限り肉体も死なない」というハイドープに目覚めている。これを見越して、シュラウドがロストドライバーを入手させるように仕組んだ……のかもしれない。
【辰成 蛇子】(原案:ただのおじさん 様)
25歳 女性。
風都を根城にしていた極道「水宮組」の構成員。子供に間違われる程ちみっこい容姿に童顔だが、内面は仁義を貫くタイプのオールドヤクザ。
敵対組織だった新真乃組との抗争の最中、新真乃組の研究成果に興味を持った財団Xが出資と共に介入したのが彼女にとってのビギンズナイト。ロストドライバーで実証試験を行うはずだったが水宮組がそれを強奪、対抗策と報復の為に財団Xがドーパントを投入。構成員全員を巻き込む程に抗争の規模が拡大した結果、両組は壊滅してしまった。育ての親すらも喪い途方に暮れていた彼女だったが、何の罪も無い風都の人々が巻き込まれていた事を知り、「カタギに命は懸けさせねぇ」と、贖罪と財団X追撃を決意。
それを待っていたかのように現れたシュラウドからシーメモリを受け取り、次いで蛇子の世界に現れたハンドレッドを迎撃する為に仮面ライダーシーへと変身。ハンドレッドを追っていたD.R.V.に加勢。平時は財団Xの方を優先するという条件付きで加入した。
余談だが、ミレーヌと蛇子の風都はそれぞれ違う世界であり、ほぼ同じ歴史を辿りながらも二人がそれぞれの世界には居ないという相違点があるパラレルワールドである。その為、NEVERとの戦いや裏風都勢力の出現などは二人とも共通して経験している。