仮面ライダーAP外伝 Imitated Devil 作:X2愛好家
1つ!戦わなければ生き残れない!
2つ!蜘蛛は厳密には昆虫ではない!
そして3つ!銃を使う奴は接近戦も強い!
ドッペルゲンガーを知っているだろうか。
自分自身を自分で見る幻覚、瓜二つの分身、分かたれた自我、生霊や超常現象とも言われる。肉体から魂が抜け出て実体を持ち、出会ってしまうと近い内に死が訪れるとされた現象だ。
それが今、ハンドレッドの魔の手が伸びるAP世界で起きていた。
▲▽▲▽▲▽
アメリカはニューヨーク州ニューヨーク市マンハッタン。クイーンズ、ブルックリン、ブロンクス、スタテンアイランドと共にニューヨーク市を構成する五つの行政区の一つ。摩天楼と呼ばれる高層ビルが建ち並ぶ圧巻の風景は今、異界からの厄災に見舞われていた。まるで建物内で羽化しているかのように、怪物がビルから次々と現れるのだ。それによってマンハッタンは混沌の坩堝に叩き落とされていた。
「なっ、何だ……!?」
「ふふっ!驚いてる驚いてる!」
トンボのような怪物を避け、路地裏に逃げ込んだ男が目にしたのは「自分」。顔立ちも服装も何もかもが自分と全く同じ形をしたモノ、それが目の前に立っている。男は三十代半ばといった所だが、男と同じ姿をした何かはまるで子供のように無邪気な反応を見せている。
「じゃあ、死のっか」
男にそっくりな何かがニヤリと笑い、その右腕が鋭利な鉤爪のように変異する。それを見た男の顔はみるみる青ざめ、何かは笑みをより邪悪に歪める。鉤爪が振り下ろされた瞬間、突如として火花が散り、鉤爪は何も無い空間を抉りながら地面に叩き付けられた。
「チッ……」
「何だ!?何なんだよ次から次へと!」
「大丈夫みたいだね」
非常階段から身を乗り出し、メカニカルな銃器を鉤爪の怪物に向けている女性が居た。その姿勢と口振りからして少女が男の危機を救ったようだ。
「何なんだよクソォ!」
「名前とか……聞いてくれないんだ。まぁ命は大事にってことで」
女性が階段から飛び降りるのと同時に逃げ出していく男。彼女としては親愛なる隣接次元の友人的な名乗りを考えていたようだが、せっかく助かったんだしと特に引き留めはしない。
「おんやぁ~?誰かと思えばゼクトの弱虫ちゃんじゃあん。ギッタギタのボッコボコにしてあげたのに、もう忘れちゃったのかなぁ~?ほんっと、学習しないおバカさんしか居ないよねぇ人間ってさぁ!」
「あの時はゼクトルーパーしか出せなかったから負けたんだ。あの子の調整が終われば、お前なんかに」
一瞬にして男からゴスロリ風ハンドレッド制服を纏った幼い子供に姿を変える鉤爪の怪物。銃撃を行った女性───
「……ゼクター?」
「この子達の力は嫌ってほど知ってるでしょ。ワーム」
そう、今は子供の姿になっている怪物の正体は地球外生命体ワーム。人間に擬態する能力を持ち、記憶や人格、果ては当時の所持品まで再現する事も可能な恐るべき侵略者である。そんなワームと戦う為に結成された武装組織がZECTであり、遥はその組織に籍を置いてワームと戦っていたようだ。そして、そのZECTが開発したライダーシステムの根幹を成すのが遥の元に現れたゼクターであり、彼女の言葉通りワームに大打撃を与えたのがゼクターを用いて変身した戦士達なのだ。
「やぁーんこわーい。なーんて言うと思った?」
「……」
「そっちがD.R.V.に拾われたなら、こっちもハンドレッドと仲良しになったんだよねぇ!」
変異していない左手を空に翳すワーム。遥のゼクターと同じく空間に穴を開けて現れたのは、飛行能力を与えられた別のゼクターだった。
「黒い、カブトゼクター……!」
「コイツの性能は知ってるよねぇ?」
「っ!」
「「変身!」」
【【HENSHIN】】
同時にゼクターをバックルへと装填する両者。互いに丸みを帯びた重厚な装甲が特徴のマスクドフォームへとその姿を変える。
「弱虫ちゃんがイキれるくらい強くなったのか、まずは試してあげるよ!」
「イキってるのはどっちだか。ワームらしく群れたらどう?寄って集って袋叩きにしないと一般人にすら負けるもんね」
「それはサナギのザコ連中だぁけぇ。それにぃ、わたしだけに構ってるとどんどん死んでくよぉ?ほらほら、もっと焦らないと!」
「向こうは仲間が対処しているの。分かる?信頼。暴力にしか頼れないワームにも、卑怯で性根の腐ったネイティブにも無い人間の心。信じるって事」
「うっっっわ、さっむキッショ!よく真顔で言えるね!だいたい、そんなお仲間なんて何処に───」
直後、遥とワームの上空を大型の影が過る。マンハッタンの街を破壊し尽くさんと飛ぶトンボのような怪物、ハイドラグーンがまた人間を殺したぞと仮面の奥でほくそ笑むワームだったが、ハイドラグーンの動きがおかしい事に気付き笑みが消える。フラフラと姿勢を崩し、川の方へ向かって高度を下げつつあるのだ。そして体力が尽きたように川へと落ち、一拍置いて爆散した。
「……は?」
「空は任せたよ。竜二」
▽▲▽▲▽▲
「任せろ!」
マンハッタン上空を飛んでいるのはハイドラグーンだけではなかった。黒いボディに黄色のラインが走るドラゴンのような怪物も加わっていたのだ。だが、そのドラゴンは人間を襲っておらず、むしろ逃げる人々を援護するようにハイドラグーンとレイドラグーンに向けて火球を放っている。
その背には戦闘機のような物が装着されており、コックピットらしき部位には操縦桿を握るパイロットの姿も見える。彼こそ遥が名を呼んだD.R.V.の信頼できる仲間、
「このままトンボ型ミラーモンスターを掃討する!スクワッドラン!続け!」
竜二の操縦桿捌きに合わせて動くドラゴンはコマンドランと言い、D.R.V.の移動拠点となっているスペリオルフォートドランの眷属なのだ。今回のような航空戦力が必要となる状況で投入される奥の手であり、基本的に人間の身で対応できない空中で活動できる貴重な存在だ。そして竜二の号令に呼応して雄叫びを上げたのは四頭のドラゴン。それぞれ、群青、藤色、茶、水色の体色が特徴的なコマンドランより一回り程小さいスクワッドランだ。
「逃がさない!」
コマンドランの口腔から放たれた火球が直撃し、地面に墜ちる事なく空中で爆散するハイドラグーン。竜二とのコンビネーションで次々と撃墜数を重ねるリーダーに負けじと、スクワッドラン達もハイドラグーンやレイドラグーンを叩き落としていく。
「よし、このまま数を減らしていけば───」
マンハッタンの空を我が物顔で飛び回っていたドラグーン達の数が減ってきた、と思いきや高層ビルの窓などから新たなレイドラグーンが現れる。それを確認した竜二は歯噛みしつつも、新たに出現したレイドラグーンへと操縦桿を切る。
「やはりコアミラーを破壊しなければ無限に生まれてくるのか……!仕方ない、掃討を続行する!」
せめてハイドラグーンへ成長する前にとコマンドランに火球を連射させる竜二。まとめて焼き払う事には成功したが、先ほどまでより撃墜した数が少なくなっている。纏まっていては良い的だと学習し始めたのだろうか。更には、残っていたハイドラグーンがスクワッドラン達の背後を取るような動きを見せる。どうやら本格的に空戦に適応してきたらしく、うかうかしていては何れ磨り潰されると竜二にも焦燥が浮かぶ。
また一体ハイドラグーンを墜とした瞬間。
「っ!何だ!?」
突如として襲い来る衝撃。周囲に直接攻撃が可能なドラグーンは居ない。とすれば、地上からの対空攻撃。警戒を強める竜二を嘲笑うように絶え間なく衝撃波が襲って来る。そしてそんな状況でハイドラグーンの攻撃を完璧に回避出来るはずもなく、正面から突っ込んできた個体と接触しバランスを崩してしまう。
「うぉあぁぁぁぁ!?」
狙い澄ました衝撃波による追い撃ちが決まり、墜落していくコマンドラン。スクワッドラン達がフォローに動こうとするも、戦い方を覚えてきたドラグーンの群れに邪魔され足止めされてしまう。
「ぐっ、うぅっ!持ち直してくれッ!」
川に叩き付けられるコースだったが、ギリギリの所で竜二の操作が間に合った。半身を水に浸けながらも推力を回復し、水面を切り裂くように飛翔しようとするコマンドラン。だが衝撃波を放った主は、そんな状態になった獲物を逃さんと次の手に出ていた。
「はっ!?脱出だ!」
───ヌゥン!
キャノピーが吹き飛び、真横に竜二が飛び出したのと、襲撃者が得物を振るってコマンドランのバックユニットを両断したのはほぼ同時だった。
「ぐぅっ!ガッ!?」
無理な姿勢での緊急脱出が祟り、水面を跳ねる小石のように浅瀬へ叩き付けられた竜二。幸い自身の変身デバイスと武器は無事だが、それのせいで余計なダメージを負ってもいる。
───フン、多少は心得があるようだな
「ハァッ……!ふっ、くっ……!お、まえ、は……!」
竜二の正面に立ったのは奇抜な鎧を纏った怪人だった。水色の頭部に青い胴、赤い装飾が映える下半身。そしてコマンドランのバックユニットを切り裂いたらしい、下半身と同じ赤色をした槍のような武器。胸には水棲生物のアイコンが描かれた逆三角形のプレート。
サメ・クジラ・オオカミウオのメダルを用いて変身する未来の仮面ライダー。
ポセイドンが立っていた。
「確か、未来の……!」
───ほう?本来の我を知っているようだな?
「何?」
───我が記憶と力を完全な物とする為、貴様の体をいただくとしよう!
「記憶だと?何の事かは分からないが、僕の体を渡す訳にはいかないな!」
かつて湊ミハルが変身していたポセイドン。過去の時間軸から跳躍してきたメダルを取り込んだ事で邪悪な自我が発現してしまい、底無しの戦闘欲のままに破壊活動を開始。ミハルとは分離させられたものの、成長した事で単独活動が可能となり、仮面ライダーの姿をしたグリードとも呼べる存在になったのがポセイドンなのだ。
竜二の目の前に居るポセイドンはハンドレッドが造り出したコピーライダーシステムのようだが、意図的になのか偶然かは不明ながらも元の世界における邪悪な自我まで複製してしまったらしい。だが本来のポセイドンを再現するには不完全だったらしく、オリジナルの記憶は持っていないようだ。
───フンッ!
「っと!僕だってあの時の僕とは違うんだ……!」
コマンドランを墜とした衝撃波を生身の竜二に向けて放つポセイドン。さすがに直撃を貰う訳にいかず、横方向に大きく飛び出して回避する。その動作の中で、竜二は奥の手を取り出していた。
───セルメダル……?
「あぁ、お前達のような存在と戦う為の力さ!」
竜二が腰に装着したのはバースドライバーJ。鴻上ファウンデーションが開発した生体強化ユニットのコアとなるデバイス、それを型落ちのジャンクで補修した現地改修型だ。そしてそれに装填するセルメダル。コイントリックのように右手の親指で弾いたそれを、左手の人差し指と中指の間で器用にキャッチしてみせる。それこそが、竜二の変身の合図なのだ。
「変身!」
専用のスロットに装填されるセルメダル。次いでドライバー右側のグラップアクセラレーターを捻り、セルメダルをドライバー内部に送り込む。カポンッという音が鳴り、竜二の全身を装甲が覆っていく。
───見覚えがあるぞ、その姿!
「だろうね。お前のせいでプロトタイプは廃棄処分になったんだ。あの時の借りも……ここで纏めて返す!」
仮面ライダーバースJ。
欲望とメダルが螺旋を成す仮面ライダーオーズの世界から来た戦士。ボディ各部がリベット打ちされた鈍色のジャンクパーツで補強され、鮮やかな緑色の部位も錆びてくすんだような色になっている。
本来のバースよりも防御力が劣るJ型でもって、竜二は同僚であり戦友だった二人の借りを返してやると吼える。片や記憶喪失、片や全盛には程遠いジャンク。当時と同じようで違う、奇妙なリベンジマッチの幕が切って落とされた。
▽▲▽▲▽▲
「近い……」
逃げ惑う民衆の波を掻き分け、ほぼ壊滅状態になっている市街地中心部に現れた女性。D.R.V.の一員であるプリヘーリヤ・ソコロフは、何かを感じ取るように瞳を閉じ目的の場所へと近付いていく。
キィン、と耳鳴りのような音が次第に大きくなっていき、プリヘーリヤは遂にそれを見つけ出した。
「コアミラー……!」
何らかの商業ビルだったのだろう高層建造物。割れた一階のガラスの中に、現実には存在せず鏡に映った世界にだけ存在する大きな円柱状の鏡があった。
それこそがコアミラー。
ネグレクトによって追い詰められていたとある兄妹が絵を描くという行為で空想を膨らませ、やがて本当にもう一つの世界とそこに生きる怪物達を生み出してしまった。そのもう一つの世界というのがミラーワールド。その名の通り鏡の中に在る左右反転したミラーモンスター達の生きる世界。コアミラーは、そんなミラーワールドを存続させる文字通りの核。本来はもう少し複雑な事情が絡んでくるのだが、プリヘーリヤが発見した物はハンドレッドが造り出した複製品。ミラーワールドを強制的に発生させ、そこから侵略の尖兵となるミラーモンスター達を生み出し続ける道具だ。
「護衛が居ない……?それどころかレイドラグーン一匹すら……」
元々のコアミラーにはディスパイダーという蜘蛛型のミラーモンスターが護衛役として居たのだが、このコアミラーには護衛らしきモンスターが居らず、マンハッタンの空を埋め尽くす勢いで数を増やしているレイドラグーンすらこの付近には存在していない。
「どういう事……?」
「まさか貴様とはな」
不審に思うプリヘーリヤの背後に現れたのは黒い制服を着用したハンドレッドの幹部。それぞれ意匠の異なる制服を纏っている幹部クラスだが、この幹部の制服は軍服のようでいてファンタジーじみてもいる。どこか、騎士のようにも見える出で立ちをしていた。
「あなたは……!」
「貴様もいずれ殺すと決めていたのだ。ここで出会えたのは僥倖。我が主の無念を晴らす為……その首、城戸真司と秋山蓮の前に貰い受ける!」
何やらプリヘーリヤと因縁があるらしいハンドレッドの騎士。彼女を睨み付けたまま、右手側にあるコアミラーへ手に持っていたカードデッキを翳す。
「そのデッキは!?何故あなたが!」
「あの御方の為なら、喜んでハンドレッドなどという外道にでも魂を売ろう。これこそ我が新しい力!」
黒いカードデッキに龍の頭部のような紋章が刻まれたそれ。プリヘーリヤの記憶に色濃く残る災厄の具現化、使用者を漆黒の龍騎士へと変える力。相手が相手なだけに戦いは最早避けられない。そう確信したプリヘーリヤもまた、自らのカードデッキを懐から抜き、鏡面へと翳していた。
ほぼ同時に二人の腰へ装着されるベルト。プリヘーリヤは右手を立て、拳を握るように指を閉じていき、左手で構えていたカードデッキをバックル部に装填。
ハンドレッドの騎士は、爪を立てて目の前を引き裂くように左腕を下ろしつつ右手に持っていたデッキをバックル部に装填した。
「「変身!」」
変身動作を終えた二人に、鏡像が纏わり付くようにして鎧が装着される。プリヘーリヤは額の一本角が特徴的な白と銀の鎧を、ハンドレッドの騎士は血のように赤い目を兜の奥に隠した黒と灰の鎧を。
戦う医師、仮面ライダーユニコーン。
戦いの権化、仮面ライダーリュウガ。
治し、終わらせる者。
壊し、続ける者。
遥と竜二に続いて、複雑怪奇な奇縁に導かれたプリヘーリヤ。元の世界から続くライダー同士の戦いを終わらせる為、一角獣と共に戦場を駆ける。
▲▽▲▽▲▽
「ハッ!」
「うわっとっと!」
路地裏を飛び出し市街地へと雪崩れ込む遥vsハンドレッドワームの戦い。二人の戦いは遥が優勢のまま推移していた。蜘蛛型のデバイス、アレニエゼクターで遥が変身した仮面ライダーアレニエのマスクドフォームには、蜘蛛の多脚を再現するサブアームが備わっている。それを用いた接近戦時の手数の多さが遥優勢の理由だ。
「こっ、のぉ!」
「読めてる」
「うっ!?」
互いに所持しているゼクトクナイガンからの射撃。次の一手を読んでいた遥が体勢を低くしながら返しの三連射を放ち、ハンドレッドワームの胴体に直撃を見舞う。遥の射撃は全弾ヒット、ワームの射撃は二発回避され、命中コースだった一発もサブアームに弾かれ威力を発揮せず終わった。
「新しいオモチャを貰って舞い上がってた?」
「やられる……ワケないじゃん!」
踞っていたワームの姿がブレるように歪み、一瞬にして遥の視界から消えた。驚愕しながらも防御姿勢を取る遥だったが一拍遅く、襲い掛かってきた衝撃に揺さぶられ地面に放り出される。何が起こったのか、遥にはその原因が分かっていた。
「クロックアップ……!どうやって、マスクドフォームのまま……!?」
クロックアップ。
自分の時間を加速させる物理法則を超越した高速移動。これを使用できるのはワームとゼクターで変身する仮面ライダーだけ。遥が驚いたのはハンドレッドワームがマスクドフォームのままという点。仮面ライダーはマスクドフォームの装甲をパージしたライダーフォームでしか発動できないのだが、ハンドレッドワームが変身したダークカブトは装甲パージを行っていない。どういう事かと思考を巡らせる遥だが、直ぐに答えに辿り着く。
「舞い上がってるのは弱虫ちゃんじゃないの~?わたしはワームなんだよ?こーんなオモチャ無しでもクロックアップ出来るんだよねぇ!」
そう、ハンドレッドワームはマスクドライダーシステムを使っているだけ。自前のクロックアップを行う事で、防御力の高いマスクドフォームのまま人間のルールを無視した高速移動が可能となるのだ。
「でもこのままだと一方的に勝っちゃうからぁ……ちょっとだけ待ってあげるよ。ほら、脱いだら?」
「慢心は命取りになるよ」
「キャストオフ」
【CAST OFF】
アレニエゼクターの腹を折り畳み、装甲の電磁剥離を行う遥。電子音声と共にマスクドフォームの外装が弾け飛び、厚い装甲に守られていたライダーフォームの姿が露となる。
【CHANGE SPIDER】
頭部と胸部に肩部、そしてサブアームを含めた上半身全体で蜘蛛を再現していたマスクドフォームから一転、頭部と胸部それぞれに蜘蛛の意匠をあしらった軽装姿となったアレニエ。サブアームが変形・合体した双刃薙刀であるツインブレードを装備した今の状態こそ真骨頂、ワームのクロックアップに対抗可能なライダーフォームなのだ。
「おー、すごいすごーい。つよつよになったねぇ、もしかしたらわたしに勝てるかも?」
「クロックアップ」
【CLOCK UP】
アックスモードのゼクトクナイガンを構え、再び自前のクロックアップを行い超加速状態へ移行したダークカブト。対する遥もアレニエのクロックアップを起動しダークカブトを追う。
常識など何処かへと投げ捨てた超高速のバトル。ものの数秒の間に幾度とない斬撃と殴打、蹴りが繰り出され、二人が通常の理へと帰還した時には互いの装甲に無数の傷が付いていた。
【CLOCK OVER】
「ハッ……ハァッ……!」
「ったた……中々やるねぇ弱虫ちゃん。じゃあもう1ラウンド行こっか!」
「っ、クロックアップ!」
【CLOCK UP】
再びクロックアップ状態へ突入する二人。ゼクトクナイガンとツインブレードがぶつかり合い、文字通り二人の間に火花が散る。つい数秒前を再現するようにダメージが積み重なっていく両者だが、マスクドフォームの装甲に守られている分ダークカブトが優勢か。
「隙ありだよ!」
「ぐっ、うっ!?」
【CLOCK OVER】
ツインブレードをすり抜け、ゼクトクナイガンの斧刃がアレニエの胸部を抉る。その痛手もあってかクロックアップが解除され、地を転がっていく遥。一方のハンドレッドワームは、そんな遥を嘲笑しつつゼクターを操作していた。
「アッハハハハ!なっさけなーい!やっぱり弱虫ちゃんは弱虫だねぇ。折角だからぁ……必殺技で逝かせてあげるね?」
「キャストオーフ!」
【CAST OFF】
【CHANGE BEETLE】
ついにその厚い装甲を脱いだダークカブト。上半身を守っていたアーマーをパージし、特徴的な一本角が起こされて二段変身が完了する。電子基盤のような模様が目を引くマスクドライダーシステム0号機、ダークカブトの真の姿である。
「はーい、いち、にっ、さーん!」
【One Two Three】
【RIDER KICK】
ゼクターの脚に当たる部分のスイッチを順に押し込んでていき、ゼクターホーンをマスクドフォーム状態と同じ位置に戻してから再度倒す。それらの動作を完遂して発動するのは文字通りの必殺技、ダークカブトのライダーキックだ。
(と、見せかけてぇ……本命は斧なんだよね!)
後腰へ隠すようにマウントしたゼクトクナイガン。ハンドレッドワームは、密かにアックスへとエネルギーを仕込んでいた。ライダーキックを防御するなり、回避するなりで行動択を絞らせた遥へ本命のアバランチクラッシュを叩き込むつもりのようだ。
(わたしの自前クロックアップもしちゃう!ライダーフォームで操作無しにクロックアップしたら、分かってても驚くもんね!人間ってバカだからさぁ!)
二重三重の罠を仕掛け、内心ほくそ笑みながら遥を仕留めに掛かるハンドレッドワーム。正に絶対絶命のピンチだが、遥は───
(なんて考えてるんだろうけど)
その全てを予測していた。
「じゃあ、ねッ!」
(今だ!)
【CLOCK DOWN】
ダークカブトがクロックアップしたのと同時に遥がジョーカーを切った。アレニエゼクターから電子音が発せられ、目にも留まらぬ高速の世界に移行したはずのダークカブトが、何故か通常の理へと戻ってきた。
「なっ!?」
「ライダーストライク……!」
【RIDER STRIKE】
「がっ!?あっ……ぐっ、うぁ……!?」
アレニエゼクターをマスクドフォームと同じ状態へと戻し、素早く再展開する遥。その操作で発動したのは必殺の一突き、ライダーストライク。ツインブレードで切り裂く、或いは投擲する等のバリエーションがあるが、今回はシンプルに目の前の相手を手に持ったツインブレードで貫く型を見せた。
何が起こったのか分からないまま腹を貫かれたダークカブト。当然だ。クロックアップがいきなり解除され、そうなる事を知っていたかのように強烈な刺突が繰り出されたのだから。
「なっ、に、がぁ……!」
「言ったでしょ、慢心は命取りになるって。人間を甘く見すぎなんだよ」
「くっ……ゴフッ……!」
「クロックダウンシステム。ワーム残党を相手にしてるんだから、これくらいの備えは当然だと思うよ?」
「弱虫ちゃん?」
左側のスラップスイッチを二回連続で叩く事で発動するクロックダウン。遥の世界で、ワーム残党が成虫になる事態を想定して試作され、D.R.V.でブラッシュアップされた経緯を持つシステム。自分も含めるのが難点だが、発動するとアレニエを起点として世界中のタキオン粒子に干渉し、それを用いるシステムと生体機能を一時的に麻痺させるというもの。それによってハンドレッドワームのクロックアップが解除され、隙を晒す事となったのだ。
意趣返しとしてハンドレッドワームを「弱虫ちゃん」呼びする遥。対するワームは、屈辱に震えながらもツインブレードを引き抜こうとしていた。
「ニン、ゲンふぜ、い……がァッ!!!」
「っ!」
ゼクトクナイガンを抜き、その勢いのままアバランチクラッシュを繰り出すダークカブト。咄嗟にツインブレードを手放した事でアレニエにダメージは無い。
「グウッ……!はっ、ゼクターが!?」
「その子も目が覚めたみたいだね」
飛び退きアレニエと距離を取るダークカブト。だが次の瞬間、ダークカブトゼクターが勝手にベルトから外れ、変身も解除されてしまう。ゼクターには一種の自我が存在し、本来は資格者を自ら選ぶのだ。遥の言う通り本当に目が覚めたのか、はたまた負けが確定したワームに愛想を尽かしたのか、理由は定かではないがダークカブトゼクターはハンドレッドワームを資格者として認めないという判断を下したようだ。
「ガラクタがぁ……!覚えてろよ人間!次は必ず殺してやる!次こそ───」
刺さったままのツインブレードを抜き、それを投げ捨てるのと同時に本来の姿である成虫態へ戻ったハンドレッドワーム。奇しくも仮面ライダーカブトが最初に戦ったタイプにして、アレニエのモチーフと同じ蜘蛛型のワーム態。腹から体液を滴らせながら、蜘蛛型の姿に違わない素早い動きで後退し、ビルを登っていく。少女態のキャラ作りをかなぐり捨て、捨て台詞を吐きつつ、迎えに来たように飛来したハイドラグーンの背に飛び乗った。
投擲版ライダーストライクで追撃するかと遥が構えた瞬間。【それ】は突然現れた。
「へっ───」
腹まで裂けた大きな口を開き、ハイドラグーンの胴体ごとハンドレッドワームに食らい付いた謎の怪物。ヒラヒラとした装飾のような部位と、凶悪な牙が生えた禍々しい顎がアンバランスな怪物は、あっという間にハイドラグーンを捕食してしまった。間の抜けた音を発し、訳も分からぬまま貪り食われていくハンドレッドワーム。悲鳴も何もかも、全て怪物の口腔へと消えていく。遥はその凄惨な食事風景を眺める事しかできなかった。
───アッ
「っ、来る……!」
遥と視線が交わった瞬間そそくさと飛び去っていった怪物。妙な肩透かしをくらい、ポカンとしたまま怪物の背を見送る遥。一拍置いて我に返った遥は、D.R.V.用の通信回線を開き仲間へ情報共有を行った。
「こちら山城、アレニエ。ハンドレッド幹部との交戦中に謎の怪物の乱入を受けた。こちらには手を出してこなかったけど、ミラーモンスターとワームを纏めて捕食したのを確認してる。各々で警戒しておいて」
手が離せない仲間にも伝達はできた、と通信を終わらせる遥。スクワッドランの力を借りてミラーモンスターを減らす為、可能な限りの高所へと移動を開始する。
「……そういえばクロックダウン使っちゃって大丈夫だったかな。まぁD.R.V.の資格者は私だけだし大丈夫だよね」
「まさか、この世界にタキオン粒子を使ってクロックアップする仮面ライダーなんて居る訳ないよね。うん、それはさすがに無い」
▽▲▽▲▽▲
「屑ヤミー……!次から次へとキリが無い!」
河の近くでポセイドンと戦闘中のバースJ。一刻も早くドラグーンの群れの殲滅に戻らなければならないが、ポセイドンが手駒として出現させた屑ヤミーに足止めされ、離脱どころかポセイドンへの射線すら通せない膠着状態に陥っていた。
「それにコイツらはセルメダルにもならない……無駄弾を使う訳には、っ!」
───どうした?先ほどまでの威勢は偽りか?
セルメダルを割って生み出される屑ヤミー。撃破されても破損したセルメダルしか残らない為、相手にメダルを渡さないで済むという利点がある。そしてその利点は、セルメダルを弾丸と武装展開の為のエネルギーに変換して戦うバースにとって最悪の問題点でもある。元の世界ならともかく、この世界でメダルを利用しているのは竜二とポセイドンだけ。セルメダルを武器として扱いながら補充するには、ポセイドンを構成していると思われるセルメダルを剥がして奪うしかない。
(けど近付けない!)
屑ヤミーが壁となり、ポセイドンへのルートが悉く塞がれている。倒して進もうにも、屑ヤミーは物理攻撃にそれなりの耐性を持つという厄介な性質があり、屑ヤミーの処理に手間取ればポセイドンが放つ衝撃波の餌食。
竜二は決断を迫られていた。
「フー・デァズ・ウィンズ……迷うなんて僕らしくなかったな」
男の仕事の八割は決断、残りはオマケのようなもの。受け売りの受け売りをミレーヌに語られていたのもあってか、竜二の決断は早かった。
「おぉぉぉぉッ!」
銃身下部のセルバレットポッドと、本体後部のセルレンダーが正規品より延長されているバースJのバスター。装填数は多いが、屑ヤミー全てを撃破した上でポセイドンにも潤沢にメダルを使える程の量という訳でもない。狙うは最短ルートかつ一発一殺。雄叫びを上げながら屑ヤミーの群れへと突撃していく竜二。
「一つ!ふた、つ!」
先頭の個体に一発撃ち込んで撃破、続けて後続の二体目も倒し押し通る。
「三つ!っ、よっ……つ!」
右から掴みかかってきた個体の胸にエネルギー弾を命中させて突破、矢継ぎ早に正面の一体。
「五つ……!?」
四体目の奥に居た個体も倒して前進しようとするも、倒れ込むように右足を掴んできた個体に文字通り足を止められてしまった。だがそこはイギリス陸軍の空挺特殊部隊「SAS」にライドベンダー隊、そしてD.R.V.で修羅場を潜ってきた戦闘員。焦る事なくヤミーの首を締めるように足を閉じて拘束し、迎撃態勢を整えた。次々と襲い来る屑ヤミーに対し、姿勢を変えつつセルメダルエネルギー弾を叩き込んでいく。D.R.V.きっての射撃の名手、その面目躍如といった所か。
「今だ!」
最後に足で拘束していた屑ヤミーの頭に一発撃ち込み撃破。そのまま駆け出し、敵の首魁であるポセイドンへと一直線に突っ込んでいく。
───漸く来たか!
待ちわびたとばかりに得物の槍───ディーペストハープーンを回して構え、それを振るって青い光刃を飛ばす攻撃を披露した。足元を狙って放たれた光刃を飛び込むように回避し、ポセイドンとの距離を詰めていくバースJ。
「ハッ!」
───ヌゥン!
銃を使っているのに接近戦を挑もうとするバースJに違和感を覚えつつも、ハープーンの距離に自ら飛び込んでくるなら好都合と迎え撃つ構えのポセイドン。ハープーンの刺突や斬撃に拳撃や蹴りを交えた荒々しいスタイルでバースJを狙う。対する竜二も、バース・プロトタイプを廃棄処分に追い込んだ猛攻を正面から受けきるつもりは無く、回避を重視しながらカウンター気味にバースバスターのエネルギー弾を撃ち込んでいく。
───小賢しい!
「くっ!?」
自分の攻撃を躱し続けるバースJに業を煮やし、バスターの銃撃を受けながら地面にハープーンを突き立てるポセイドン。青い光刃を地中で発生させ、周辺を纏めて吹き飛ばす範囲攻撃として繰り出したのだ。さすがの竜二もこれは防御できず、足元の爆発に巻き込まれ転がっていく。更に追撃の衝撃波。残っていた屑ヤミーも巻き込みダメージが重なっていく。
「滅茶苦茶する……!うっ!?」
───馴染んできたぞこの力……!
爆破と衝撃波によって離れていたはずのポセイドンが目の前に立っていた。首を掴まれ、宙吊りにされる竜二。
「そう、か……!未来のメダル……っ!」
───フンッ!
「があっ!?」
ポセイドンが用いているのは推定2051年という、このAP世界から見ても未来の世界で造られたサメ・クジラ・オオカミウオのメダル。これら未来のメダルは時間停止に近い能力を持っているらしく、その使い方を思い出した事でバースJとの距離を一気に詰めたようだ。
持ち上げたバースJを今度は地面に叩き付けるポセイドン。そのまま右手で持っていたハープーンを両手で構え直し、バースJの腹部に狙いを定める。
───ハァッ!
「うっ、ガァァァァッ!!?」
突き立てられたディーペストハープーン。激痛に絶叫を上げる竜二。勝者は決まったかに見えたが、ポセイドンはトドメを刺す素振りを見せない。
───さて、その肉体を貰うぞ
そう、ポセイドンの目的は本来の自分を知る者の肉体を乗っ取り、記憶を補完し完全体に戻る事。不完全な状態になる懸念や、記憶の欠損の可能性がある以上、竜二に死なれては面倒だと考えたのだろう。
だがその考えが裏目に出る事となる。
「この……距離なら……」
───む?
「外す、方が……!」
【セル ブラスター】
「難しいッ!!!」
従来型の三倍近く伸びたセルバレットポッド、ロングJポッドをいつの間にか銃口部分に付け替えていた竜二。本来のバースが放つセルバーストより有効射程が短く、銃撃主体にも関わらず接近しなければ最大火力が出せないという欠陥を持つバースJ。接近戦は好都合と考えていたのはポセイドンだけではなかったのだ。ポセイドンが違和感の正体に気付いた時には遅く、バースバスターの銃口にエネルギーが集約しきっていた。
「い、けぇぇぇぇ!!!」
───グオォォォオァァァァァッ!!!
超至近距離での直撃。闘争本能の化身であるポセイドンでも耐え切れず吹き飛んでいく。
背中から地面に落ちたポセイドン。その胸から腹にかけて、縁がセルメダルで構成された大穴が空いていた。覗いているのは血肉ではなく、メダルが漂う暗闇の虚空。人の体が見えない辺り、変身したハンドレッドの幹部は完全に呑み込まれてしまったのだろう。
「メダルは、貰っていくよ……」
ディーペストハープーンが腹に刺さったままの状態で近付いてきたバースJ。ロングJポッドをバスターから外し、ポセイドンのボディを構成していたセルメダルをかき集めていく。
───ふっ……フハハ……!良いだろう……!深淵は、常に貴様を覗いているぞ……!
そんな言葉を残し、メダルの山へ変わるポセイドン。まるで意思を持っているかのようにドライバーからコアメダル三枚が外れて浮遊し、セルメダルを回収したロングJポッドの中に収まった。
「僕の身体は諦めてないって事か……油断も隙も無い奴だな……」
変身が解除され、その場に座り込む竜二。
弾丸となるセルメダルは回収し、敵幹部は撃破。オマケに戦力増強に繋がるかもしれないコアメダルまで手に入った。この勢いのまま、と行きたい所だが、いかに訓練を積んでいるとはいえ竜二はただの人間。多少の休息は必要だ。
「肉を切らせて骨を断つ……さすが母さんの国、良い言葉だ。まぁ……!今の僕は、腹を抉られメダルを撃つ、だったけどね……」
▲▽▲▽▲▽
「っ!」
「どうしたソコロフ!それでもライダーバトルを生き抜いていた騎士か!それとも仲間が居なければ何も出来ない臆病者か?」
市街地中心部で続くユニコーンvsハンドレッドリュウガの戦い。遥と竜二が互角かそれ以上に渡り合っていた一方で、プリヘーリヤは苦戦を強いられていた。
それもそのはず、プリヘーリヤが変身するユニコーンは戦闘が得意なタイプではなく、他のライダーが持たない回復・治癒のカードを用いる支援型なのだ。対してリュウガは元の変身者ありきとはいえ、ライダーバトルの黒幕でもある最強のライダー オーディンにも匹敵しかねない根っからの直接戦闘型。ミラーモンスターも交えた乱戦になりやすい元の世界ならともかく、今のような1on1では最初から不利が確定する。
(それでも諦める訳には……!)
「ふん……他の連中が居なければこの程度とは」
【SWORD VENT】
他のライダーよりも低いトーンの読み込み音が鳴り、鏡面から青竜刀のような武器が飛来。リュウガの右手に収まった。
「フンッ!」
「くっ……!」
黒いドラグセイバーの振り下ろしを自らの召喚機であるユニコーンホーンを使って防御する。だがリュウガのパワーは圧倒的であり、徐々に押し込まれつつある。ユニコーンが押し返そうとした瞬間リュウガの蹴りが炸裂。武器を持っていない状態でも、仮面ライダーガイをほぼ完封していた戦闘能力はハンドレッドコピーになっても健在らしく、素で高いスペックを活かした格闘攻撃はそれだけで脅威となる。
「うっ!?」
「ハァッ!」
防御姿勢を崩された所に繰り出される横薙ぎ、振り下ろし、斬り上げのコンボスラッシュ。グランメイルから火花を散らし吹き飛ばされるユニコーン。
「くっ、うぅっ……!」
【HEAL VENT】
「させるものかよ」
【CONFINE VENT】
ユニコーンが傷を癒すヒールベントを使ったのに合わせてカードを使用したリュウガ。ブラックドラグバイザーに装填され、効力を発揮したのはコンファインベントのカード。相手が発動したアドベントカードを無効にするという反則じみた効果を持つ。治癒の光が消えて驚愕するプリヘーリヤだが、その驚きはコンファインベントの効果に対してではない。
「何故そのカードを……!?それはガイのデッキにしか入っていないはず!」
「このリュウガはハンドレッドが造った模造品。カードの種類など簡単に弄れるのだろうさ」
【STRIKE VENT】
どうにか立ち上がったユニコーンへの追撃を緩めるつもりは無いらしいリュウガ。今度は龍の頭を模したような手甲型武器ドラグクローを召喚し、右手に装備する。そこから放たれた青黒い炎、ドラグクローファイヤーでユニコーンを焼き尽くさんとするが、プリヘーリヤも黙ってやられるほどヤワではない。
「ふっ!」
「躱すか。それ位はしてもらわねばな!」
ドラグクローファイヤーを回避しながらリュウガとの距離を詰めていくユニコーン。契約モンスターの角を模した形状ゆえ、武器としても扱えるタイプの召喚機ユニコーンホーン。一息に駆け寄り、槍としてそれを振るいリュウガへと打ち込んでいく。
「はっ!せいっ!」
「チッ……!」
刀剣のドラグセイバーならともかく、打突武器のドラグクローは槍との打ち合いに向かない。追撃を急いだ結果、武装選択をミスしたリュウガを追い詰めていくユニコーン。ユニコーン自体は直接戦闘型ではないが、変身者であるプリヘーリヤはそれなり以上の経験を積んだ戦場の医者なのだ。有利な武器での打ち合いならそうそう負けはしない。
「ぐっ、うっ!?」
ドラグクローを弾き飛ばし、ユニコーンホーンによる渾身の突きがリュウガの胸を捉えた。先ほどとは逆にリュウガが吹き飛ばされていく。
だが、その一連の接近戦はハンドレッドの騎士に仕組まれたものだった。ダメージを受けながらブラックドラグバイザーの上部をスライドさせ、地面を転がった際にデッキからカードを引き抜いていたのだ。ふらついているように見せかけながらバイザーにカードを仕込み、ユニコーンが走り寄ってきた瞬間そのカードを発動する。
【ADVENT】
「なっ、あぁっ!?」
リュウガの影から現れたのは漆黒の龍。仮面ライダー龍騎の契約モンスターであるドラグレッダーと同種のドラゴン型ミラーモンスター。
ドラグブラッカーだ。
「ぐぅっ!がっ、はっ!?」
不意を突いて出現し、ユニコーンに噛み付いたドラグブラッカー。鋭い牙の生えた顎でユニコーンを咥えたままビル街を飛び回り、あちこちに激突させダメージを与える攻撃に出た。
「あぅっ!」
「終わりだ。死ね!」
効力はまだ切れていなかったのか、弾かれたドラグクローを拾い直して右手に装備するリュウガ。投げ出されたユニコーンに狙いを定め、ドラグブラッカーに攻撃を指示する。もう一つのパターンで放つドラグクローファイヤーだ。
「ま、だ……っ!」
【RETURN VENT】
先ほどの意趣返しのように、隠してカードを引いていたユニコーン。使用したのは、コンファインベントによって打ち消されたカード効果を再発動させるリターンベント。これによって、無効化されたヒールベントの効果を呼び戻し回復。幾分か傷を癒した事で本来のパフォーマンスを取り戻し、ギリギリの所でドラグクローファイヤーを回避した。
「流石のしぶとさだ。ライダーバトルを千日手に陥らせただけはある」
「…………」
「だが貴様では私に勝てない。戦いを終わらせるなどと嘯きながら、長引かせる事しかできない貴様ではな!」
───ガオォォォォォッ!!!
揺さぶりをかけた所で仕留めるか、とリュウガが構えた瞬間。ドラグブラッカーの物ではない雄叫びがビル街を揺らした。何事かとリュウガは周囲を見渡し、ドラグブラッカーも警戒を露にしている。そしてプリヘーリヤもまた、別のミラーモンスターが乱入してきたのか、或いは遥の前に現れたという謎の怪物かと声の主を探す。
それは鏡の中に居た。
───グルルルル……!
「ライオンの、ミラーモンスター?」
漆黒の体が特徴的なドラグブラッカーに負けず劣らずの黒いボディ。不規則に体のあちこちへ伸びる金色のライン。そして何より目を引く雄々しい鬣と牙。
黒獅子、と呼ぶに相応しいミラーモンスターが鏡面世界からリュウガを睨んでいた。
「馬鹿な!何故ドラグーン以外のモンスターが!」
驚愕しているリュウガ。その口振りからして、侵攻に使われているコアミラーからは、レイドラグーンとハイドラグーンしか生まれてこないのだろう。唯一の例外がアドベントカードで呼び出す契約モンスターなのだろうが、この黒獅子型のミラーモンスターはそのどちらでもないらしい。
───グゥゥゥゥッ……!
(リュウガ……いえ、ハンドレッドと敵対している?こちらに敵意を向けてこない……)
黒獅子型モンスターは、何故かユニコーンには目もくれずリュウガとドラグブラッカーを威嚇している。理由は不明だが、状況の打開にはあのモンスターの力が必要と判断し、プリヘーリヤは切り札にして奥の手をデッキから抜く。
「来て!」
「契約のカードだと!?」
コントラクトのアドベントカード。
文字通りミラーモンスターとの契約を交わすカードであり、本来は各ライダーのデッキに一枚しか入っていない。バトルのカンフル剤として参戦した仮面ライダー王蛇のデッキには三枚も投入されていたが、それは例外中の例外。だからこそ、王蛇以外に複数枚コントラクトを持つライダーだったユニコーンに対して、リュウガは動揺を見せたのだ。
───……!オォォォォッ!!!
喜んで契約に応じるように、ミラーワールドから飛び出してきた黒獅子型モンスター。コントラクトカードに吸い込まれるように姿が消えていき、契約完了の合図としてコントラクトがアドベントへと変化した。
「シュヴァルレオ……よろしくね。早速だけれど、力を貸して!」
【ADVENT】
黒獅子型モンスター改めシュヴァルレオ。姿形は変わらないが、ユニコーンの契約モンスターとしてマンハッタンに再臨した。
「手駒を増やした所で!やれ、ドラグブラッカー!」
(契約したとはいえミラーモンスターである事には変わりない。現実世界での活動には制限がある……取るべきは速攻!)
リュウガとドラグブラッカーはハンドレッドによる改造複製である為か、現実世界で戦闘を続けても崩壊を起こす気配が無い。だが、シュヴァルレオはイレギュラー的に発生したらしいとはいえ通常のミラーモンスター。ミラーワールドから現実世界に出て活動できる時間は限られる。そして、更に言えばユニコーンと最初に契約したモンスターも同じ。シュヴァルレオのカードに書かれていたATTACK POINT 6000という高いパワーを信じ、リュウガとの早期決着を狙うプリヘーリヤ。
「タアッ!」
「ぬうっ……!嘗めるな!」
ユニコーンホーンとドラグクローによる接近戦。今度は小細工無しだと猛攻を仕掛けるユニコーン。ドラグクローファイヤーを放つ隙を与えず、巧みな槍捌きでリュウガの攻撃をいなし、カウンターを叩き込んでいく。二人の周囲を飛び回りながら、シュヴァルレオとドラグブラッカーが激闘を繰り広げており、空を飛べる分ドラグブラッカーが有利だが、シュヴァルレオもビルを垂直に駆け上がって飛び掛かる立体的な動きで互角に渡り合っている。
「っ……!」
「チッ!」
【STRIKE VENT】
【GUARD VENT】
同時にベントインする両者。リュウガは黒いドラグシールドを召喚するガードベントを、ユニコーンは今まで所持していなかったはずのストライクベントを発動した。シュヴァルレオの顔と鬣の一部を模したシュヴァルクラッシャー、これを持ってしてドラグクローをもぎ取り無力化。追い打ちのユニコーンホーンはドラグシールドに防がれてしまったが、趨勢はユニコーンに傾きつつあった。
「ぐうっ!くっ、そぉ!こんな、こんな奴に!私はしくじる訳にいかんのだァッ!!!」
「終わりにしましょう……この戦いも、その妄執も!」
【FINAL VENT】
【FINAL VENT】
これで最後と二人が発動したのはファイナルベント。契約モンスターの力を借りて放つ、そのライダーにとって全身全霊を懸けた最強の一撃。空中で縺れ合いながら、飯綱落としのように落下してきたレオとブラッカー。互いの契約者の背後へ飛び退き、必殺技の構えを取る。
エネルギー体となったシュヴァルレオを纏うユニコーン。ドラグブラッカーと共に浮遊し飛び蹴りの姿勢を取ったリュウガ。一瞬の静寂の後、黒獅子と黒炎を纏った両者が激突した。
数時間にも錯覚するような、実際には数秒のぶつかり合い。制したのは黒獅子と共にユニコーンホーンを突き出したプリヘーリヤだった。リュウガを押し退け、その背後に居たドラグブラッカーを爆散せしめた。地面に墜落し、契約モンスターを失った事でブランク状態に戻ったリュウガ。それを尻目にプリヘーリヤは別のカードをベントインする。
【FINAL VENT】
「エルコーン!」
シュヴァルレオと分離し、別の───本来のファイナルベントを発動したユニコーン。待っていたとばかりに嘶きミラーワールドから飛び出してきたのは、レオとは正反対の純白のボディを持つ馬型のモンスター。
エルコーンだ。
「ハッ!」
その背に乗り、騎乗状態から繰り出す突撃。ホーリーライドブレイクの矛先はまともに動けないリュウガ、ではなく商業ビルに向けられていた。
───ヒヒィィィンッ!
「これで良し、ね」
勢いのままミラーワールドへ突入し、護衛の居ないコアミラーを粉砕したのだ。同じガラスを通って現実世界へと帰還し、一仕事終えたエルコーンを撫でるプリヘーリヤ。これでドラグーンの増殖も止まるだろう。
───グルル……
───ブルルッ
「仲良くね?」
ユニコーンが背中から降り、名残惜しそうにミラーワールドへと戻っていくエルコーン。シュヴァルレオも連れだって戻る素振りを見せたが、活躍したのは自分だ、とでも言いたいのかエルコーンをガン見している。
「さて……っ!」
投降を呼び掛けようとしたリュウガがいつの間にか消えていた。二体のミラーモンスターが反応していない事から、ミラーワールドに逃げ込んだ訳ではないようだ。
「……貴女は、まだ戦い続けるというの?」
コアミラーの破壊には成功した。これでミラーモンスターによる侵攻は弱まり、コマンドランとスクワッドラン達に殲滅されるだろう。だがプリヘーリヤの心は、次第に青さを取り戻していく空とは逆に曇天のままだった。
戦いはまだ終わらない。
【城山 遥】(原案:Megapon 様)
年齢は21。
仮面ライダーカブトの世界出身。
ZECTに所属していた戦闘員であり、彼女専用となっているアレニエの完成前はゼクトルーパー隊の一人だった。
ネイティブとの戦いも事実上終結し、散発的に現れては人間に危害を加えるワーム残党の殲滅に従事していた所でD.R.V.に誘われ加入した。
今回戦った蜘蛛型ワームとは元の世界から因縁があったらしく、アレニエの最終調整が完了する前に襲撃を受けた模様。
戦闘員としての能力は高い反面、生活能力が極端に低いズボラ女。D.R.V.の拠点となっているスペリオルフォートドランの私室は常に物が散乱しており、汚部屋率は堂々のワースト1位。
【マスクドライダー アレニエ】
遥の生まれたカブトの世界で開発された蜘蛛型ゼクターの資格者が変身した姿。元々はホッパーと同じくネイティブ対策として秘密裏に製造されていた物で、ゼクターの中でも最後発のロット。
マスクドフォームは四本のサブアームが特徴で、これを活かした手数の多い接近戦や、高所への移動、不安定な足場での姿勢制御などを得意とする。
アレニエゼクターの腹を折り畳む事でキャストオフし、ライダーフォームへと二段変身。サブアームもパージされ、それら二本を合体連結したツインブレードを武器とする。
必殺技はツインブレードによる刺突、二刀流斬撃、投擲などのバリエーションがあるライダーストライク。
元の世界で試作されたクロックダウンシステムを搭載しており、D.R.V.が擁する他世界の技術で完成・ブラッシュアップさせた経緯がある。D.R.V.のマスクドライダーシステムはアレニエだけの為、ワーム撃滅の為に使用したが……?
【竜二・L・ロジャース】
(原案:オリーブドラブ 様)
年齢は24。
仮面ライダーオーズの世界出身。
イギリス陸軍空挺特殊部隊SASを経てライドベンダー隊所属となったハーフの青年。D.R.V.きっての射撃の名手であり、外す事の方が珍しいとさえ言われる。
恐竜グリードとの最終決戦やその後の幾つかの戦いを終えた所でD.R.V.に勧誘された。
ライドベンダー第7小隊の隊長という経歴もあり、前線指揮官としての才もある戦闘のプロフェッショナル。今回はミラーモンスター殲滅の為、コマンドランと共に出撃した。
性格は生真面目でやや堅物。オーズや先任バース二名には最後まで追い付けなかったが、努力を続けない理由にはならないとして自分を鍛え続けた。
【仮面ライダーバースJ】
中破したバース予備機を規格落ちのジャンクパーツで補修した現地改修型。装甲各部がリベット打ちされているのが特徴で、鮮やかな緑色の部位も燻んでいる。
ジャンクパーツで補修されている関係上、本来のバースより防御力に劣っている。武装もバースバスター一丁のみだが、内部機構はバース・プロトタイプと同一の為、理論上はCLAWsの装備も可能。
使用するバースバスターは、セルバレットポッドとセルレンダーを延長した専用カスタムの施された物。特にセルバレットポッドはロングJポッドと名称も変わり、銃口に取り付けて放つセルバーストも威力を高めたセルブラスターとなっている。その反面、有効射程は短くなった。
【プリヘーリヤ・ソコロフ】
(原案:リオンテイル 様)
年齢は39。
仮面ライダー龍騎の世界出身。
旧ソ連出身の女医で、学会絡みで来日した際ライダーバトルに巻き込まれた。
D.R.V.でも貴重な「大人」であり、外科治療だけでなくメンタルカウンセラーの心得もあるため、D.R.V.メンバーのほとんどが心を開いている。動物に好かれる性質も相まって、スペリオルフォートドランが主以外に懐いている数少ない人物。契約モンスターであるエルコーン以外のミラーモンスターとも心を通わせた事があるらしい。
今回戦闘を行ったハンドレッドリュウガの変身者とはライダーバトルの中で知り合い、彼女が「主」と仰ぐ存在の計画を龍騎、ナイト、ユニコーンが阻止した事で恨まれているらしい。
【仮面ライダーユニコーン】
プリヘーリヤがミラーモンスター、エルコーンと契約した事で変身可能になったライダー。
白いグランメイルで全身を覆い、その上にシルバーアーマーを纏う。騎士や戦士というよりは医師や看護士のような印象を抱かせる姿をしている。
額から伸びる一本角が特徴。
直接戦闘よりも補助・支援に長けており、城戸真司らと協力してライダーバトルを千日手に陥らせた。それに業を煮やしたオーディンがタイムベントを使用した事で巻き戻しが発生したのだが、所持していたカードの影響で世界から弾かれてしまい、特異点と化した。
所持カードは
・アドベント
・ヒールベント
・キュアベント
・リザレクトベント
・リムーブベント
・リターンベント
・ファイナルベント
【コマンドラン】
スペリオルフォートドランの眷属。
背中に「バックユニット」と呼ばれる主翼の無い戦闘機のような物を接続しており、ここに搭乗者を乗せて飛翔する。
似たような運用をされるシュードランよりは年齢が上らしく、主な搭乗者兼パートナーである竜二の操縦に応えて即座に最適な行動を取れる。
【スクワッドラン】
コマンドランの幼体。
こちらにもバックユニットが存在するが、主にコマンドランとその搭乗者との連携を重視して動く。
体色が群青、藤色、茶、水色の計四頭が存在し、各々の性格も異なる。
【シュヴァルレオ】
突如としてユニコーンとリュウガの前に現れ、プリヘーリヤとの契約に応じたライオン型ミラーモンスター。何故か、最初からハンドレッドリュウガとコピードラグブラッカーを敵視していた。
アドベントカードに記載されたAPは6000。
この契約によって、攻め手に欠けるユニコーンにシュヴァルレオ由来の攻撃的なカードが追加された。
ストライクベントが二種類あるのが特徴。
・ストライクベント(顔と牙、鬣の一部を模した手甲型武器シュヴァルクラッシャー)
・ストライクベント(両前脚と爪を模したガントレット型武器シュヴァルザッパー)
・ガードベント(鬣を模した装身具を首周りと肩に装備し、放出した光波で身を守るマント型防具シュヴァルローブ)
・アドベント
・ファイナルベント