仮面ライダーAP外伝 Imitated Devil 作:X2愛好家
「やぁぁぁぁぁっ!」
───!
「後隙は狙わせない……無理に追わないで!」
ニノマエラボ正面ゲートにて、それぞれ新たな適合者を迎えた事で新生したミルバスとレリジェ。左肘から先を欠損するという、かなり大きなダメージを負いながらも未だ倒れる気配を見せない黒死兵との激闘が続いていた。
───……!
状況はライダー側が有利。それもその筈、一人が逃走のタイミングを見極めていた為に、中遠距離での戦いを得意とするにも関わらず、ほぼ1on1での接近戦を強いられていた前適合者二名とは比較にならない程の連携を見せているからだ。
我流とすら言えない見様見真似の戦い方ながらも果敢に斬り込んで行くミルバス。そしてそのミルバスが危険に陥らないよう、的確に援護の矢を撃ち込んでいるレリジェ。ミルバスから片付けようとすればレリジェの矢が邪魔になり、レリジェを始末しようとすればミルバスが割り込んでくる。互いを守ろうとしている琥珀と桔梗の信頼が生んだ、この場における最善手が黒死兵を追い詰めていた。
(すごい……どう動けば良いのか分かる……!)
(感覚が澄んでいく……今ならどんな的にでも当てられそう!)
((これが、仮面ライダーの力!))
ジャスティアシステムに於ける【適合率】の高さは、言ってしまえばドライバーの根幹を成しているコアが装着者に抱く【好感度】のようなものだ。低ければデバイスとして渋々力を貸している事となり、反対に高ければ共に居たい共に戦いたいと前向きになっているという事。そして好感度、もとい適合率が高いという事は、装着者を労りたいとも思っているという事でもある。普段、戦場とは縁遠い二人が何のリスクも無く、街一つ壊滅させる怪人と互角以上に渡り合えているのは、ドライバー側のアシストあってこそ。
「琥珀くん!今!」
「はい!」
思考領域を拡張し、その負荷を軽減する。日常を守る警察機構などでは到底扱いきれないピーキーな仕様のジャスティアシステム。それを乗り越え、悪魔との謁見が叶い気に入られた契約者だからこそ圧倒的な力を手にする事が出来るのだ。
「取ったぁっ!」
───!?
両膝、更にはマウンスが奥の手としていたエネルギー停滞曲射により、時間差で放たれた一矢で右肩を射抜かれた黒死兵が大きく体勢を崩す。その瞬間を待っていたと一気に懐へと潜り込んだミルバスが、全力で両の爪を黒死兵の胸に突き入れる。
沈黙は一瞬。ミルバスクローが抉り抜いた箇所から黒死兵のボディが、グジュグジュと音を立てて溶け落ちていく。「FIVEフィーバー」と呼称されるミルバスの最大稼働スキルが起動し、その効力を遺憾なく発揮している。クローから最大5種類の毒素や病原菌を敵の体内に送り込むという凶悪な技。接近しなければならない分、その効果は折り紙つきである。
───……!……!?!!?
恐らく生物である、という以外はその一切が不明な黒死兵。耐性も並大抵の改造人間の比ではないだろう。だがさすがに生物に対しての適正投与量どころか、致死量を軽く超えた配合のFIVEフィーバーは効いたらしく、不規則に身体を痙攣させ始めた黒死兵。
「倒れ、ろ───っぐぅ!?」
───!!!
このまま全てが壊死していくかと思われた黒死兵だが、何処までも規格外なタフネスを見せる。残された右手でミルバスの首を掴み、異常なまでの力を込めていく。死なば諸とも、離脱の遅れたミルバスを道連れにしようとしているようだ。
「っ……!ぅあ……!」
いくら次世代の強化外骨格といえども、装甲で覆われていない間接部は脆い。意識が遠くなっていく、命の灯が消されようとしている事に焦る琥珀だが、今この場で戦っているのは彼一人ではない。
───!?
「伏せて!」
突如として解放されるミルバス。ノイズの走る意識が確かに捉えた声に従い、クローを引き抜きながら伏せる。
「これで……!」
レリジェ───桔梗だ。停滞曲射で黒死兵の右腕を射抜き、ミルバスを解放させたようだ。それだけに留まらず、ジャスティアドライバーが通常時よりも活発に機能を始めた。ミルバスと同じく最大稼働スキルを使用するつもりだ。琥珀が退避した事で射線は通った。黒死兵の防御も追い付かない。ならば後は───
「……っ!」
射抜くだけ。
正に必殺の一撃。残されていた右腕が内部から爆散し、最大稼働スキルによって放たれた一際輝く矢が吸い込まれた胸部は、元から何も無かったかのように風穴が空けられている。対象を追尾するエネルギー矢で爆破と毒による波状攻撃を仕掛け、敵を仕留めるレリジェの最大稼働スキル。ホーミングヴェノムが黒死兵の息の根を完全に止めた。
「……っ、はぁ……ふうっ……!」
「や、やっ……た……?」
パワーアシストされてなお蓄積していた疲労が、緊張の糸が切れると同時に襲い来る。寸分違わず黒死兵に狙いを定めていた腕が、だらんと勢いよく下がるレリジェ。耐えきれず膝が笑い出し、尻餅をついて座り込んでしまうミルバス。前レリジェであるマウンスが決死の覚悟でダメージを積み重ね、高い適合率に物を言わせて押し切ったとはいえ撃破は撃破。つい先刻まで殺し合い等とは無縁の一般人だった二人が、街一つ壊滅させかねない最強クラスの怪人を倒したのだ。大金星と褒め称えられても誰も文句は言えないだろう。
「だい、じょうぶ……?琥珀くん」
「ぼ、僕は……何とか。そ、それ、より!きっ、桔梗さん、の方が……!」
生身の状態で前ミルバスこと浅留に投げ飛ばされた事を言っているのだろう。それを言うなら、生身でミルバスに組み付いた君もでしょう?と返され反論できない琥珀。悪魔の鎧は解かれていないまま、微笑ましい空気が流れるが───
「なっ!?ライダーだと!」
「っ!」
「えっ、あっ……!ま、まだ……!?」
弛緩した空気を再び緊張させる声。それは、黒死兵が現れた通路とは別の方向から現れたノバシェードの構成員が発していた。そう、この研究所を襲撃しているのは黒死兵が一体だけ、という訳ではないのだ。むしろ黒死兵が奥の手であり、主戦力となっているのは今しがた現れたような戦闘員達。こちらの方が数は圧倒的に多い。
「仕方ない……!」
「桔梗、さんっ!ぼっ、僕が!前に!」
慌てて各々の得物を構え直し、臨戦態勢を整える。銃火器や変異させた部位を構える構成員の数は見えているだけで九人。数的不利は確定したが、通常火器でジャスティアの装甲を抜くのは難しい。前に出てきた腕力特化型をはじめとする、一部の改造人間にさえ気を付ければ捌けない事はない。
「ふっ!」
「やぁっ!」
「ぐっ、うぉ!?」
「ぎゃあぁぁっ!!!」
開戦の狼煙代わりの手榴弾を避け、左右に散開したレリジェとミルバス。システムアシストもあり、すっかり物にした曲射でミドルレンジに居た構成員の右肩を撃ち抜くレリジェ。自慢の腕を振るう前衛の腕力特化型に肉薄し、防御をすり抜けてアッパースラッシュを繰り出すミルバス。互いにファーストアタックは成功、一瞬にして手傷を負わせた事で他の構成員も動揺している。
やれる、倒せる。黒死兵との激戦を制した今なら目の前の敵も難なく制圧できる。
殺しに慣れた者なら、の話だが。
「……っ!」
「あっ、ぅ……!」
桔梗の視界に映るのは、溢れ出る血を抑え込もうとするように抉られた肩を庇う男。
琥珀の目に映るのは、腹から胸まで切り裂かれ激痛にのたうつ女。
そこでようやく二人は理解する。目の前に居るのは、痛みを感じない機械じゃない。血を流さない化物じゃない。それこそ黒死兵のような人の理に当て嵌められるかすら怪しい存在ではない。
自分達がたった今【傷付け】たのは、自分達と変わらない【人間】だという事。改造されていようが、赤い血を流す人間なのだ。そして二人はその様を見てトドメを刺せる程、殺しに慣れていなければ人の心を失ってもいない。生き延びる為に鎧を纏った───
ただの人間なのだから。
(こ、ろす……?そう、しないと……でも、私は)
(倒す、このまま……!帰れない!なのに!)
「くっ……!」
「ぼ、くは……!」
傲慢だと言えるだろう。【命】を感じない黒死兵は一息に倒せて、流血で【命】を感じた改造人間は殺せない。悪魔との契約を成しても、桔梗と琥珀はまだ人間としてしか生きれない。
「何だぁ?噂の仮面ライダー様は生き物を殺せないガキかぁ?」
「この程度でブルっちまうんじゃあ、戦場に立つ資格なんざねぇんだよぉ!」
「おとなしく震えていれば良かったな!」
そんな不安、焦燥を感じ取れない程ノバシェードの構成員は鈍感ではない。民兵よりマシ程度とはいえ、桔梗と琥珀より長く命のやり取りが常の世界で生きてきたのだから。また、一部の者はレリジェから聞こえた女性の声に下卑た感情を抱き始めていた。その鋼鉄の鎧を剥ぎ取って、地獄の厳しさを身体に教えてやろうと。
(せめて……足を止める!動けなくすれば、琥珀くんの負担も軽くなる!)
(ここで……逃げ、て……どうするんだ!桔梗さんを守るって、決めたじゃないか!)
対する二人は闘志を取り戻しつつあった。血を見た常人とは思えない程の復帰の早さ。それは二人が生来の才能として持ち、今まで眠らせていただけの能力なのか。はたまた悪魔が囁き、嗤い、唆した結果なのか。
生き残りたければ殺せ、と。
『シーバードと……軽井か。現着する、避けろよ』
「えっ?」
意を決してそれぞれの得物を敵へと向けた二人だったが、攻撃の直前に通信が入る。現着するというその言葉通り、轟音を響かせながら何かがラボ正面ゲートに強引なエントリーを決めていた。
「琥珀くん!こちらへ!」
「うわっ!?」
「なっ!?」
「どわぁっ!?」
「ぐうっ!」
瓦礫を轢き潰し、重たげなボディをドリフトさせながら突入してきたのは一台の装甲車。派手に粉塵を巻き上げながらの突入とドリフトに驚きながらも、事前の通信があったお陰か退避に成功する桔梗と琥珀。ノバシェードの構成員達も、二人に遅れながら後方に身を投げ出し何とか回避。損害は互いに無いようだ。
「数が多いな……お前が仕留め切れないのは珍しいな、シーバード」
「あ、あの……」
「ん?お前……」
開いた車体後部のハッチから降りてきたのは一人の男。鍛え上げられた肉体を特殊な黒いスーツで包み、それと同じかそれ以上に黒い髪と瞳を持つ男。
「シーバードが簡単に一線を退くとは思えんが……事情は後で聞くと事にする」
「貴方、は……?」
「俺は東方 駿介。ハイパーレスキューの隊長だ」
【ハイパーレスキュー】つい数年前に組織されたばかりの特殊救命部隊。新設部隊の為、知名度はそこまで高くないものの、世界各地で実績を積み上げている人命救助を最優先とした部隊である。確かにこのラボはレスキュー隊を必要としている危機的状況だが、救命隊員であって戦闘員ではない駿介が身を晒して良いものかと桔梗は困惑を隠せていない。
「おーおー、これまた派手にやらかしたもんだ」
「救助活動を開始する。そちらは任せるぞ」
「りょーかい。で?目の前のお客さんは?」
「俺がやる」
駿介に続いて装甲車から降りてきたのは、仰々しいパワードスーツ姿といった見た目の男。右腰に提げていたデバイスに手を伸ばし、それを前面に装着する駿介を見たパワードスーツの男は、そう言うと思ったと溜め息を吐きながら更に装甲車から降りてくる後続に指示を出し始める。
「ま、待って、ください……!あ、危な───」
駿介を止めようとする琥珀だが、彼が自分の腰に装着したデバイスを見て息を呑む。同じ物が自分の腰にも巻かれているからだ。ジャスティアドライバーが。
「……ッ!」
右手を左胸───心臓の前に持ってきて、思い切り握り込む。ギリギリという音まで聞こえる程に力が込められた拳を、ドライバー上部の認証スイッチに半ば殴り付ける勢いで触れさせる。
「変身ッ!」
契約者の合図を聞いた悪魔が、喜び勇んで鎧を渡す。鋭い瞳と逆立つ髪に負けず劣らずの黒き鎧。重装騎士の如き圧倒的な威圧感を放つそれの背から、漆黒のマントが飛び出る。スリットの奥に覗く複眼は目の前の敵を射抜き、虚空に翳した手には身の丈を超える程の馬上槍が持たされる。
ここに推参するは勇猛なる魔の戦士。
ジャスティアNo.66 キマルスである。
「この人も……」
「仮面、ライダー……!」
「救える内に救うぞ」
▽▲▽▲▽▲
「へ、へっ……!アーマーは立派だが、んな長物でどうしようってぇ!」
「ぬぅんッ!」
「ぎっ、がぁっ……!」
先制攻撃とばかりに突き出されたキマルスの馬上槍。所詮は「点」でしか威力を発揮しないと、嘲笑いながら穂先を避ける先頭の一人。だが駿介は、自身の腕力とキマルスの力を持ってして攻撃の軌道を強引に変えてみせた。見るからに硬質な槍の腹を横から打ち付けたのだ。その動き事態は予想できたが、想定以上の勢いで襲い掛かった槍を避ける手段が無かったらしく、吸い込まれるように脇腹へとクリーンヒットする馬上槍。
ミシミシと嫌な音を発しながら吹き飛ばされ、壁に激突した男は一拍置いて激痛にのたうち始めた。
「うぁ……」
それを見た琥珀はドン引きしている。自分に出来なかった事を一切の躊躇いと容赦無く実行した駿介に対し、戦士としての畏敬と一般人としての畏怖の念がない交ぜになった視線を送っている。
「はぁ……自分で怪我人増やしてどうすんだって、毎回言ってんだろうがよ……」
琥珀の横に並んだのは、指示出しを終えたらしき先程のパワードスーツ姿の男。やれやれと再び溜め息を吐き、今度は通信機の操作を始める。
「あっ、の……あ、あな、た……は?」
「ん?俺?俺はあの脳筋のお目付け役。副隊長とも言うな」
「そのスーツ……貴方も仮面ライダーなのですか?」
「いや?元になったのはニュージェネの奴と警察が使ってる物だが、厳密には仮面ライダーじゃない」
そう言ってコンコンッと胸部装甲を軽く叩く。正に今この瞬間、世界の何処かで戦っているであろうニュージェネレーションの一人を話題に出しながら説明に入る男。
「これはメディカレイダーっつってな?災害やら事故現場やらに投入する為の特殊強化服なんだよ。救助・救護がメインだから、戦闘前提の仮面ライダーじゃないってワケ。ほれ、武器とかも付いてないだろ?」
「なるほど……」
その場で回ってみせたメディカレイダー。確かに銃や砲塔等の「一目で武器と分かる」モノは装備されていない。だが───
「で、でも……その……ドリル、とか……」
「いやいや、武器じゃないぞ?瓦礫とか鉄骨とか障害物を粉砕玉砕……する為のモンだから。武器じゃあないんだなぁこれが。まぁ、障害物の定義は?その都度違ったりするし?ドリルの先にたまたま怪人が居たり?するけど?」
人差し指を口元に立てて「これ内緒な?」と言外に含ませる副隊長。要は武器ではなく工具として装備している物だが、敵に向ければ武器としても使用可能という事だろう。何とも小賢しい理屈である。
「巽!」
「サボってねぇって!指示出し終わって道空き待ち!」
「ならば!」
既に五人ほど打ちのめし、余裕が出来た駿介が振り返りつつ巽と呼ばれた副隊長を呼ぶ。いつの間に到着していたのか、装甲車とはまた異なる大型車両から白が目立つ衣服の面々も降りてきている。そちらへの指示も出し終えた為、後は駿介が目の前の敵を片付けるだけなのだろう。
「あー、お前らも疲れてんだろ。ここは俺らがやるから休んでな」
「ですが!」
「見た感じ素人だろ。無理すんな、はこっちのセリフ。ほれほれ下がった下がった、後から来た方の車が救急車みてぇなモンだからそっち行けよー」
いとも容易く桔梗と琥珀が戦い慣れしていない一般人だと見抜き、ひらひらと手を振りながら駿介に合流しようとする巽副隊長。口調こそ軽薄だが、本気で二人を戦わせるつもりは無いらしい。
まだ戦える、と食い下がろうとする桔梗だが、白い衣服の人物に行く手を遮られ装甲救急車へと退かされてしまう。駿介や巽が障害を排除しつつ救助を行うレスキュー隊員なら、この白い衣服の面々は傷病者の応急手当てや治療を行う医療従事者なのだろう。ライダーの力で抵抗して怪我をさせる訳にもいかず、装甲救急車の中に入るしかない二人。
若き戦士の初陣は、ひとまずここで終わりを迎えたのであった。
▲▽▲▽▲▽
「んっ……っぅ……」
「はぁ……」
装甲救急車の内部、壁に備え付けられた座席に腰掛ける二人。既に変身は解除し、互いの素顔が見えている状態だ。
(そんなに時間は経っていないのに……随分と久しぶりに琥珀くんの顔を見た気がする……)
自分よりも若い琥珀の顔。これがマウンスの言っていた「人の世に戻れなくなる」という事、戦士の───否、悪魔の世界に足を踏み入れてしまったという事なのだろうかと、今になって暗い思いが押し寄せて来る。
(なっ、なななっ!何で!?なんでそんなに見つめてくるんだ!?変!?何かついてるのかなぁ!)
一方で琥珀はというと、間違いなく美人の部類に入るであろう桔梗に見つめられ絶賛パニック中だった。
「……」
「ひゅいっ!?」
ふと琥珀の手に自分の手を重ねる桔梗。悲鳴一歩手前の変な声まで出た琥珀、このままでは頭が爆発するのではと思える程に混乱していたが、重ねてきた桔梗の手が僅かに震えている事に気付く。
(そっ、か……怖かった、よね……)
琥珀の変身、もといドライバー強奪の切っ掛けとなったのは桔梗の危機。自分よりも先に命を危険に曝されていたのだから、その恐怖は自分の比ではないだろうと考え頭を冷やす事ができた。
「あ、の……桔梗、さん」
「っ……ごめんなさい、急に……こんな」
「連絡先、教え、て……くれません、か」
「えっ?」
桔梗の手に更に自分の手を重ねて、優しく、それでいて力強く包み込む琥珀。生来のあがり症を発揮しながらも、驚く桔梗の瞳をしっかり見据えて言葉を紡ぐ。
「僕、が、桔梗さんを……守り、ます。一人でなん、て……背負わせ、ない、ので!」
「琥珀くん……」
「何処に、いて、も……!駆け付けます!だから、その……連絡先、教えてもらえ、ないか……なぁって」
意気込んだは良いものの、途中から微妙なナンパのような事を言っているのでは?と思い始め、どんどん声が小さくなっていく。それを見た桔梗は最初こそ呆気にとられていたものの、途中から可笑しくて仕方ないと噴き出す。
「あっ……あぅ……」
「ふふっ、うふふっ!ごめんなさいね?可笑しくて、つい……!」
「でも、ありがとう琥珀くん。そう言ってくれて、本当に嬉しい」
慈しむように優しく琥珀を抱きしめる桔梗。互いの命を預け合い、心を通わせたからこそ生まれた絆が二人を繋いでいた。
(あっ、わわっ……!柔らか……じゃなっ、ぼっ、どうすれ、ば……!?)
琥珀はまたパニクっていた。
▽▲▽▲▽▲
「よし、終わりだな。巽、崩落が酷い区画を重点的に」
「もう動かしてるよ」
「さすがだな。医療班はこの正面ゲートを拠点として動け、第三救命班は医療班の護衛だ」
『医療班了解』
『第三救命班、了解!』
「俺はこのまま第一試験場に向かう」
「無理はすんなよ?襲撃犯のリーダーって事は、トンデモな護衛が居るか本人がメチャクチャ強いかだ」
「或いはその両方だろうな」
正面ゲート通路で構成員達を全て撃破した駿介。驚いた事に、転がって激痛に呻いている構成員に死傷者は居ない。生かしたまま無力化したのだ。
「こいつらも治療、で良いんだよな?」
「無論だ。俺達はハイパーレスキュー、人殺しはしない」
「弱い人間と一緒にするな、らしいけど?」
「それでもだ。俺達は命を救う為に動いている」
たとえ悪人だろうがテロリストだろうが、救える命は救う。それがハイパーレスキューの理念であり、超法規的救命組織にも関わらず色々と疎まれている理由でもある。なぜ敵を、消し去るべき悪を救うのか、と。やや強引ではあるが、人々の安寧を脅かす改造人間を救命する最も手っ取り早い方法でもあるのだ。命を奪わず倒し、治療をしてから然るべき裁きを受けさせる。
それこそ、駿介が悪魔の剛槍を振るう理由。
「相変わらず青臭いねぇ」
「何度でも言うさ」
「……はいはい。さ、お仕事お仕事っと」
「任せる」
「任された」
数人の部下を引き連れ、別の通路へと消えていく巽。琥珀と桔梗に対して見せた軽薄さは駿介相手でも変わらないが、その言葉の中には年下で青臭い理想を掲げる男への確かな信頼があった。
「……すぅっ……っし!」
ジャスティアのパワーアシストに物を言わせ、自らの目標地点とした第一試験場へと駆け出す駿介。
「待ってろ!生きていろよ、ウェルフリット!」
▲▽▲▽▲▽
「っ、ぐあぁっ!?」
「どうした?そんなモンかぁ?新世代の力ってのは」
「…………」
ひび割れた深紅の鎧、立ちはだかる真紅の怪人、倒れ伏した白き王。第一試験場は地獄の様相を呈していた。
急ぐ騎士、迫る死。
【東方 駿介】(原案:Megapon 様)
世界を股に掛ける特殊救命部隊ハイパーレスキューの隊長。年齢は30歳。
救える命は誰であろうが救うという理念を掲げる熱き物を内に秘めた男。組織としての実績は着実に積んでいるものの、その超法規的な救命行為とノバシェード構成員ですら救命対象という活動に反感を抱く者も多く、どちらかといえば疎まれている。本人をはじめとしてハイパーレスキューに属しているメンバーは気にしていないようだが。
活動を開始したばかりの時期に、ノバシェードとの戦闘で重傷を負ったキマルス適合者を救った事がある。その際に強い適合反応を見せた事から、正式にキマルスの適合者を引き継いだ。それ以降キマルスは駿介専用の装備となっているが、あくまで「救命」にこだわる駿介の意思を尊重し「戦士」であるニュージェネレーションライダーとしてはカウントされていない。
そのニュージェネレーションの中に、血の繋がった妹が居るとか何とか。
【巽・D・仁】
ハイパーレスキュー第二救命班のリーダー。
実質的に駿介の副官であり部隊の副隊長。年齢は駿介よりも上の35歳。
粗野な男という印象を抱かせる見た目だが、実際は飄々とした気の良いおっさんといった所。駿介がキマルスを受け継ぐまでは隊長だったとか。
試作された特殊救命機動外骨格メディカレイダーを操り、涼しい顔しながら無理を通す駿介のサポートや危険地帯での救命活動、テロリストから要救助者を護衛するなどを全力でやってのける。