仮面ライダーAP外伝 Imitated Devil 作:X2愛好家
スタジアムへと舞い降りた仮面の怪人。忠義達は知る由も無いが、病室で光と密約を交わしていた謎の人物だ。
「ようこそ、仮面ライダーの皆様!」
怪人が仰々しく両手を広げ、その動きに合わせて禍々しいマントが翻る。そのまま恭しく頭を下げて一礼。まるで舞台の演者がやるような芝居がかった所作に、桔梗と琥珀は困惑し、春次郎は拍手を送り、忠義は鋭い目を向ける。一言で表せば胡散臭いのだ。そして謎の転移の直後に現れた事も手伝い、忠義の怪人に対しての信用度は早くも下限を突き抜けそうになっている。
更に言えばもう一つ。この怪人は四人全員を指して【仮面ライダーの皆様】と言った。
(俺はともかく、キキョウとコハクが適合者だと知っている……ハルも前線に自分から出て行く好戦的なタイプでもない……)
そう、ニュージェネレーションの一人として「表」で戦っている忠義/オルバスならともかく、実戦経験がほぼ皆無に等しい春次郎や、つい最近まで一般人だった桔梗と琥珀の存在まで知っているような口振り。
(ラボの誰かから情報が漏れた……?戦力としては未熟な三人を闇討ちするでもなく、わざわざ呼び寄せて正面から……まさか───)
(絶対にやらない、とは言い切れない……!)
思考を巡らせていた忠義が辿り着いてしまった「最悪の推測」。それは「ドライバーのデータを取る為に光が仕組んだ出来レースの襲撃」。将来的に脅威となる三人を密かに始末するのではなく、戦いの経験をさせるかのように相手を見繕う。一 光という女ならやりかねない、という悪い意味での信頼が忠義の中で鎌首をもたげたのだ。
「……お前、何者だ?」
「申し遅れました、私はエグルスフム。とある組織……というほど立派な物ではありませんが、それの一応の長を務めております」
そう名乗った仮面の怪人改めエグルスフム。彼か彼女か定かではない異形に忠義の質問が続く。
「そのリーダーさんが俺に何の用だ?」
「貴方だけではなく、残りのお三方にも舞台に上がっていただきますよ。目的は……端的に言えば我々と戦っていただきたい」
「拒否権は?」
「本来ならば強引な手は使いたくないのですがね……今回に限っては無い、と断言させていただきます。この空間から、自力で出る術はお持ちでないでしょう?」
「だと思ったよ……!」
怒り混じりの溜め息を吐き出しながらドライバーを構える忠義。桔梗と琥珀、春次郎に視線を向けながら苦々しく言葉を掛ける。
「悪いが戦闘は避けられそうにない……身を守る事に専念しろ、あの仮面野郎を倒して直ぐにここから出るぞ」
「っ……分かりました」
「はっ、はい!」
「しゃーなしっすね……!」
三人も覚悟を決めたのか、スクールバッグやウエストポーチから各々のジャスティアドライバーを取り出し装着する。それを見届けた忠義もまた、55番目の悪魔、オルバスのドライバーを腰にあて臨戦態勢を整えた。
「おや、貴方は一定の速度を検知させなければ変身出来ないのでは?」
「そこまで知ってるのかよ……ならアイドリングが出来るって事も知っとけ!」
忠義のドライバーは、何故かエグルスフムが知り得ていたように【一定の速度をドライバーが認識】しなければ変身できないというロックが掛かっている。即応が求められる特務警察官としては致命的な為、変身解除時に余剰エネルギーがあれば最大で数十分間はアイドリングさせて即座に再変身が可能という機能が追加されている。つい先程までノバシェードの構成員を追撃していた事が功を奏したようだ。
「やるぞ!」
忠義の号令で一斉に変身シーケンスへ移る残りの三人。桔梗は指で拳銃を形作り、琥珀は鼓動の昂るままに起動スイッチへ手を掛ける。そして春次郎はドライバーと共に取り出したコンパクトミラーを構えていた。それにドライバーを反射させ、起動スイッチを二回押し込む。
契約に基づき、今ここに四体の悪魔が目覚める。
【変身!】
四人の声が重なり、スイッチの最後の一回を押した四人に悪魔が力の顕現たる鎧を授けた。忠義はオルバスに、桔梗はレリジェに、琥珀はミルバスに、それぞれ変身を完了する。
そして春次郎は───
「ッシャア!」
複数のスリットが入った鉄仮面に騎士のような鎧。その上にやや不似合いなパーカーを羽織り、それらを赤と銀と黒が派手に彩っている。最も目を引くのは両手足に装着、もとい半ば内蔵されているスプリングだろう。これこそ26番目の大公爵、ジャスティアナンバー26、春次郎・リューバが適合した悪魔の力。
仮面ライダーバネだ。
「へへっ、やるからには全力だ!給料とチップの恨みはコエーぞ?4vs1でも文句言うなよ!」
「待て。あいつ確か
「そのようですね……!」
指関節と装甲をパキパキと鳴らしてから勢い良くエグルスフムを指差す春次郎。忠義が相手は単独ではない事に気付くのと同時に、他のジャスティアよりも索敵に長けたレリジェが桔梗へ忠義の言葉が正しい事を伝えた。未だに構えの一つも取らないエグルスフムの背後から、新たに三人が姿を見せたのだ。
「やーっと出番?待ちわびたよぉ」
「生身での戦闘は強化外骨格の方が適しているんだが……まぁアレも自発的な戦闘用ではないが……」
「…………」
現れたのは三人の女性。
最初に口を開いたのは、両手に剣を持ち、腰にホルスターを提げ何らかの本を収納している紫に黒が混じった短髪の女性。服装は明らかに現代では見ないようなファンタジーじみた紫基調の物。首をコキコキと鳴らしながら視線を滑らせ、その淀んだ瞳をレリジェで止めた。
二人目は、一人目の女性とはガラリと雰囲気が変わっている。腰に届かない程度の黒髪を肩甲骨辺りで結った、切れ長の目をした美女。一人目が少女と表しても問題無い外見年齢なのに対し、この女性は明らかに成人している事が分かる。服装……と言って良いのか分からないラテックス素材のようなボディスーツを着用している。所々に装甲こそあるものの、中々に際どい姿だ。
そして唯一無言だった三人目。細められた金色の瞳で、何故かエグルスフムを睨んでいるプラチナブロンドの女性。こちらも一見して成人女性に見える風貌。一人目の物よりも更に大きな本を右脇に抱え、ジャケット無しのビジネスカジュアルで纏めたキャリアウーマンと言った所。問題はビジネスの場に合わない群青色メインの部分と、独特な黄色の模様が散りばめられている所だろうか。
「じゃあ、わたしはあのスナイパーねぇ」
「勝手に……まぁいい、私はあの獅子のような奴だ」
「……ハァ。残りのパーカーですか、ワタクシが」
「来る……!」
「い、一対一を、三組……?」
「バカ正直に乗らなくていいだろ。こっちはバリバリに連携してやろーぜ!……ってか!俺見て露骨に溜め息吐いたろ!?失礼なねーちゃんだな!」
二刀流の少女はレリジェ、ボディスーツの女性はミルバス、群青色が目立つ女性はバネをそれぞれターゲットに定めたようだ。
「じゃあ……戦闘開始!」
「っ!?」
言葉通り幕を切ったのは二刀流の少女。それなりに距離があったにも関わらず、とても一息とは思えない異常なまでの速度でレリジェの懐に踏み込んできた。右腕のクロスボウを構える暇も無く、二振りの剣に押し込まれ後退していく。
「桔梗さ───っつぅ!」
「余所見をしている暇があるのか?」
レリジェに気を取られ、隙を晒してしまったミルバスに斬り掛かるボディスーツの女性。二刀流の少女ほど異常な身体能力を持っている訳ではないのか、普通に走り込んでの斬撃。的確に首を狙った一太刀をクローでどうにか受け止め押し返す。
「おいおい、いきなりピンチかこりゃあ!」
ひとまずレリジェの援護に向かおうとするバネだが、仲間に気を取られてペースを握られたミルバスを見て思いとどまる。自分もファーストアタックを取られる訳にはいかない、と残った一人に目を向ける。
「殴ってみましょう、まずは」
自分より前に突撃した二人とは違い、群青色が目立つ女性は直接戦闘を得意とするタイプではないのか。脇に抱えていた大型の本を手に持ち直し、それを開いて目当てのページに指を滑らせる。すると本が輝きを放ち、そこから豹頭の怪物が現れ、奇しくも少女と同じ二刀流でバネへと斬り込んできた。
「どわぁっ!?何が、殴るだっ!思いっきり斬り殺しに来てんだろうが!」
「物理攻撃は殴る、と表すのでしょう?貴方達は」
計四回の連続斬りを回避し、反撃のパンチを繰り出すバネ。豹頭の怪物にクリーンヒットし怯ませ、さぁここからだと意気込んだ所で怪物が消え去る。
「では、ご希望通り魔法です。次は」
ディフェンスが居ないなら好都合と両足のスプリングを稼働させ、一気に飛び込む算段のバネ。それとほぼ同時に女性の本が再び輝きを放つ。現れたのは中央に目の生えた五本腕のヒトデのような怪物。それが縮こまり、力を溜めたのが見えたバネは直感的に回避を選ぶが───
「そーれ」
気の抜ける掛け声と共にヒトデが身体を開き、力を解き放つ。バネが立っていた場所と、ギリギリ避け切れなかった左足が炎に包まれたのだ。
「うおぉぉぉっ!?」
着地と同時に転がって消火しようとするバネ。幸いにも装甲内の人体には火傷等の損害は無いようだ。
「ふーむ、火炎耐性はあるようで。どうやら」
ヒトデの怪物を戻し、次はどうしようかとページを捲っていく女性。ここでようやくバネ───春次郎は気付く。一番ヤバい相手を引いてしまったのではないか、と。
◇◆◇
「ハル!」
「さて、此方も幕を開けるとしましょうか?」
レリジェを切っ掛けとして、早くも個別に分断されてしまった後輩達。各個撃破という最悪の展開は避けねばとバネの援護に動こうとするオルバスだが、恐らく敵の首魁であろうエグルスフムが動いたのを見て警戒を強める。
「仮面ライダー……ならば、やはりコレですか」
独り言と共に両手を虚空へ翳す仮面の怪人。その両手には、一瞬前までは影も形も無かったはずの物が握られていた。右手にはそれなりのサイズと厚みがある本のような物を、左手には鞘に収まった剣のような物を。
「何を……」
「私にとって最も都合の良い形を取っております」
器用に右手の本を指だけで開くエグルスフム。開帳されたそれから、勇ましくも何処か悍ましい曲と何者かの語りが流れ出した。
【かつて栄華を誇った大国を歴史の闇へと葬った黒き龍、その憎悪に満ちた瞳は今も世界を見据え続けている……!】
語りが終わると同時に本を閉じ、左手に保持していた剣を腰に当てるエグルスフム。ベルトのような物が伸長し、エグルスフムの腰を一周して前面に剣を固定したのを見て驚愕する忠義。
「まさか、ドライバー!?」
「変身」
本を剣と鞘───改め刀剣状ドライバーのスロットに装填、右方向に伸びている柄に手を掛け、変身を口にするエグルスフム。それと共に黒く禍々しい剣が抜き放たれた。
【滅命抜刀!】
【黒龍伝説】
【黒き憎悪に抗う者よ運命の戦争を始めよう!】
最後の起動朗読が終わると同時にエグルスフムの全身が炎に包まれた。離れていても、オルバスの鎧を纏っていても感じる圧倒的な熱に怯み、本能的に防御姿勢を取ってしまう。数秒と経っていないはずなのに、高温環境下に長時間放置されていたかのような錯覚すら覚える灼熱の炎。
一瞬にして消えた炎の中から現れたのは漆黒。
「改めまして、貴方のお相手を務めさせていただくエグルスフム……この姿では───」
「仮面ライダーフォリア、と申します」
左上だけが伸びたアシンメトリーの四本角、背中から生える翼、長くしなやかに地を打つ尾、全身を覆う黒い鱗、触れる者を容易く切り裂くだろう鋭い爪。騎士のように清廉ではなく、かといって蛮族のように粗野という訳でもない。柔らかい口調とは裏腹に、目の前の全てを滅ぼし尽くしかねない異形の剣士が降臨したのだ。
◆◇◆
「へぅあ!?」
「んだよ、いきなりアホみてぇに喘ぐな」
ここがスタジアムで、計八人が戦っているのがフィールドなら、無論それを観戦する観客席も存在する。その中の一席で素っ頓狂な声を出したのは丸眼鏡を掛けた小柄な女性。そんな女性にデリカシー皆無な返しをしたのは、逆立てた髪が特徴のワイルドな風貌をした青年。丁度エグルスフムが謎の本と刀剣状のドライバーを取り出した所だ。
「なっ、なななっ!何ですかあのライドブックは!」
「あぁ?知らねぇよ。オレとしちゃ、あっちの剣の方が気になるね」
「そっ、その!その聖剣も!ですよ!あんなライドブックも聖剣も見たこと無い……!」
「その言い方からするに───」
「お前の世界でライダーが使ってた、か?」
ブンブンと激しく首肯する女性。何度も激しく振るせいで、もはやヘッドバンギングになっている。
「へぇ……この世界のライダーとも、オレの世界ともまた違うライダーか……今度頼んでみるか!戦わせてくれってよぉ!」
先程までの焦り様は何処へやら、戦闘狂の気が滲み始めた青年を見て呆れと共に冷静さを取り戻したらしい。
「君の知らない世界……ボクなら見せてあげられるよ?」
「結構です」
座席に座り直した女性の背後からスルリと伸びる腕。そのまま背中から女性を抱き締めようとするも、これまたスルリと腕の中から抜け出す女性。綺麗にバックハグを躱されたのは金髪碧眼の美男子。奇しくも、エグルスフムと激闘を繰り広げ始めた忠義と同じく整った顔立ちをしている。
「おや、オーケーなら何故逃げるんだい」
「日本語って難しいですねイエスもノーも同じく【結構です】と言うんですよこの状況ではノーなんです近寄るな変態植物」
なおも迫る美男子から距離を取りつつ、早口で遠回しに口を挟むなと伝える女性。最終的にストレートな罵倒になったが。
「喧嘩する程ナカヨシってやつかぁ?」
「脳だけでなく眼球も腐りましたか?可哀想に」
「にしてもよぉ……やっぱ見てるだけってのは疼いて仕方ねぇよなぁ……!」
小脇に抱えていた普通の辞書で美男子をボコボコにしながら男性へ哀れみの視線を向ける女性。だが青年の興味は二人の茶番からとうに外れ、フィールドでの激闘に───更に言えばオルバス対フォリアへと向いている。そんな青年に対し、女性はやれやれと大きく溜め息を吐いてみせる。この戦闘狂の悪い癖がまた出た、と。
「奇遇ですねぇ、わたしもそう思っていたんですよぉ。意外と気が合うのかもしれませんねぇ」
少し離れた席から青年に声を掛ける人物が一人。豊かな胸部を揺らし、挑発的な目を三人組に向ける女性、フィールドで戦っている四人と同じジャスティアライダーである暁月レイラだ。
「……旅団員、じゃないですね」
「これはこれは、可憐なお嬢さ───」
「下がってろ」
エグルスフムが招いた四人ではなく、かといって自分達の知己の人間でもないレイラを警戒する女性と、一瞬にして欲望のターゲットを切り替えた美男子。その言葉を遮り、強引に身を乗り出し、凶悪な笑みを浮かべたのは野性的な青年だった。
「同じ匂いがするぜぇ……?あぁ、そうだ!オレと同じ匂いだ!血肉の雨が降る中でしか生きられない化物の匂い!」
「うふふ……気が合いますねぇ。せっかくの舞踏会なのに、他人のダンスを眺めるだけだなんて酷いと思っていた所です。一曲、ご一緒にいかが?」
「良いねぇ!誘っておいて直ぐに壊れんなよ?」
レイラが右手の親指を噛みちぎるのと、男が懐から何かを取り出したのは同時だった。既に腰に巻かれ、待機状態だったジャスティアドライバーが【自傷】を検知し、レイラに悪魔の鎧を授ける。一方、男は取り出した何か───掌にギリギリ収まるサイズのボトルを思い切り振り、内部の成分を【活性化】させ、左手首に打ち付けるようにして挿し込んだ。
レイラは仮面ライダーアスモデイに、男は武装腕等の影響で異形のシルエットとなっているアスモデイよりも、更に一回り大きなメタリックブラックの怪物へと変貌した。
「ふふっ……くっふふふ!見掛け倒しでない事を祈りますよぉ?」
「そのセリフ、そっくりそのまま返してやるよ!さぁ、行くぜぇ女ァ!」
ほぼ同時に駆け出し激突する両者。
文字通りの場外乱闘がここに始まった。
◇◆◇
「まったく、これだから考え無しの脳筋は……それで?そちらの方はどうされるつもりで?」
───クルルルル……
客席で溜め息を吐く女性は、観客席を破壊しながら通路へと縺れ込んで行く二人の戦闘狂を眺めながら、あらぬ方向へと声を掛けていた。一拍遅れて聞こえてきたのは明らかに人間が発する物では無い音。これ以上の隠密は無意味と理解したのか、女性からは死角になっているはずの物陰から異形が這い出る。
「これはまた……随分と生々しい怪人ですね。此方の怪人は全部そうなのですか?」
───キシャァ……!
赤い甲殻を纏い、人と虫が半々になっているようなグロテスクな顔をした大柄な怪人。
レイラという悪魔に魅了され、汚れた愉悦の道へと堕ちた幼い命。ロートと呼ばれた少女の真の姿だ。
「やる気ですか?来るなら退きますよ?」
───クルァ?
「そんな怪物フェイスで器用にポカンとされても……私は直接戦闘タイプじゃないので。余りにも体力が無さすぎてストリウスに見限られ、剣士全員に忘れられたポンコツメギドですよ?……自分で言ってて悲しくなってきた……」
自らの発言に肩を落とし、アクロバティックな精神的自傷を披露した女性。だがそんな事はお構い無しにロートは歩を進め、その鋭利な鉤爪を女性へと向ける。悪魔に唆され、情操教育を受ける前に道を踏み外したロートには、獲物の心の機微などどうでも良いのだ。ただ襲い、切り裂き、抉り、美しい悲鳴を奏でてくれればそれで良い。
一撃で仕留めないように、それでいてなるべく苦痛を感じるように。振り上げた鉤爪を女性に向けて勢いよく振り下ろした瞬間───
「っ」
───グゥッ!
ガキンッ、と金属音を響かせながら鉤爪が止まる。女性の肩に鉤爪が突き立てられる直前、何かが鉤爪に絡まり止めてみせたようだ。
「お見事ですね」
「……!」
顔を上げた女性の視線はロートの背後に注がれていた。ロートの鉤爪にはまた別の鉤爪───フックが引っ掛かけられており、そのフックと使用者を繋げるワイヤーも鉤爪に巻き付いていた。
ワイヤーフックでロートの攻撃を止めた者の姿は、奇しくもロートの同型として作られたもう一体の怪人と同じ漆黒に染まっていた。だが、鎧として纏う物はロートと異なり、明確に人の手によって造られた装甲だ。金の縁取りと、仰々しい黄金のアンテナが目を引く漆黒の戦士がそこに立っていた。
───グゥアッ!?
「っ!ハッ!」
少女の姿をした人間態からは想像もつかない異形と化した怪人態のロート。だが、金と漆黒の戦士は、体格差など物ともしないパワーを見せロートを女性から引き離してみせる。体勢が不安定だった事を差し引いても、かなりの力を誇っているようだ。
───ケシャァッ!
「チッ……!」
ワイヤーフックを巻き取りつつ、左腕に装着されている大型ブレードを展開してロートを両断する構え。だがロートも易々と倒れるような怪人ではない。サソリの尾のような部位を伸ばしブレードを弾きながら、引かれた勢いを利用してバク転。振り向き様に漆黒の戦士を蹴り飛ばした。
「興味が移ったようなので後はお任せしますね」
「いけしゃあしゃあと……どうせ視えていたのだろう」
「さぁ?どうでしょうね。陰ながら、ついでに応援していますよ」
そう言いながら安全圏へと離脱していく女性。その気も無い応援に怒気のこもった言葉を返す漆黒の戦士。その鎧から聞こえてきたのは以外にも高い声。どうやらこちらも女性のようだ。
───クルルルァァァッ!!!
「これだから怪人というのは……!」
相手が女だろうが男だろうが、そんな事は関係無いと咆哮するロート。明確にターゲットとされた事で漆黒の戦士も改めて覚悟を決めたようだ。右腕のワイヤーフックをパージし、空いた手で右大腿部から引き抜いた自動小銃を握る。
観客席での場外乱闘、レイラの第一試合から遅れてロートの第二試合も始まったのだった。
異境の強者達、その実力は
【エグルスフム】
忠義/オルバスの相手を務める仮面の怪人。
声色は男性のように低いが、性別は不明。それどころか人間なのかも怪しい。血のように淀んだ赤と、冷えて固まったマグマのような黒が混じる禍々しいマントで身を包んでいるのが特徴。
光の誘いに乗り、忠義と実戦経験の浅い三人を謎のスタジアムへと転移させゲームを始めた。
【仮面ライダーフォリア】
エグルスフムが変身する「ライダーの存在する世界で最も自分に都合の良い姿」。
「命運剣滅命(めいうんけんさだめ)」と銘打たれた刀剣を収めたドライバーに、「黒龍伝説」という本のようなアイテムを装填する事で変身する。
【漆黒と黄金の戦士】(原案:守次 奏 様)
観客席でロートと戦う事になったパワードスーツ姿の戦士。声色からして装着者は女性。
ワイヤーフックや大型ブレード、自動小銃など現状だけでも多彩な武装を持っている。
左肩装甲には「Ex-7」というマーキングが施されているようだが……?