仮面ライダーAP外伝 Imitated Devil   作:X2愛好家

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異界より来る妖しき力


第八話 混沌/来訪者

「っ、くうっ!」

「へぇ~、ただのスナイパーじゃないね?」

 

スタジアムで始まった各々の死闘。得物であるクロスボウを構えては降ろし、エネルギー矢を放とうとしては中断するを繰り返している桔梗ことレリジェ。その理由は至極簡単、彼女を真っ先に狙い突撃してきた双剣を持つ少女の猛攻だ。

 

「体術の使える弓兵なんて珍しいねぇ。エーティエも見習って殴りに行けば良いのに、せっかく筋肉だの何だの鍛えてるんだからさ。ねぇ?」

「その、某さんは存じ上げないですが!」

「っと」

 

二本の剣による同時突きを見切り、やや不恰好ながらも蹴りを見舞うレリジェ。ギリギリで回避され、命中こそしなかったが、少女に「接近戦が出来ないわけではない」という認識を植え付ける事に成功した。それぞれの反撃と回避で距離が生まれ、一旦仕切り直しとなる両者。桔梗はレリジェの仮面の奥で呼吸を整え、それを見た少女は不気味に笑う。

 

(目が良いね。頭も切れるし、着実にわたしの動きを覚えていってる。チラチラ仲間に意識が逸れるのは減点だけど、わたしを捌きながら仲間も見れてる所は大したもの。それに───)

 

(閃影も警戒してるか。感心感心)

 

既に息が上がっている桔梗に対して、未だ本気を出していない様子の少女。その内心は桔梗の動きを採点し、次はどうしてやろう、こう仕掛けてみよう等と目論む教師のようだった。

 

(始めに私を狙ってきたあの動き……どのタイミングで使ってくるの……)

 

少女の予想通り、桔梗が最も警戒していたのは少女が【閃影】と呼んだ開幕の動き。身体能力が高い、だけでは到底説明の出来ない異常なまでの突進速度。弓という専用武器の性質上、索敵に長けたレリジェのシステムが一瞬といえど見失った瞬間移動の如きムーブ。もしあの動きがただ突進するだけの物ではなく、斬り合いの最中に姿を消し、背後に回る事ができるような特殊能力だとしたら。

 

(気が抜けない……!常に視界に捉えていないと!)

 

「覚悟が決まったみたいだね。じゃあ───」

 

(来るっ!)

 

「ちょっと本気、出そうか」

 

左手に持っていた剣をレリジェに向けて投擲しながら駆け出した少女。そのまま空いた手で左腰に提げていたホルスターから本を抜く。

 

「っ!」

 

体勢を低くする事で剣を避けるレリジェ。警戒する閃影でないなら好都合と迎撃の構えを取る。狙うは足、どれだけ素早く動けようとも踏み込みに使う足を傷付けられれば関係無いと判断したようだ。

 

「ボルガノン!」

 

対する少女が取った行動は連撃。軽くステップを踏んでレリジェのエネルギー矢を躱しつつ、保持した本に意識を割く。数秒と経たず、少女の姿を覆い隠す程の火球が発生した。

 

「なっ!?」

 

ボルガノンと呼ばれた火球は瞬く間にレリジェへと迫り来る。回避は間に合わないと判断した桔梗は、可能な限りのエネルギー矢を連射して火球へ叩き込み続ける。少しでも勢いを弱めようというのだろう。

 

「っ!うぅっ!」

 

相殺しきれず直撃を許してしまう。幸い耐熱機能のキャパシティに収まる威力だったのか、戦闘不能は避けられたようだ。直ぐに顔を上げ正面にクロスボウを構える桔梗だったが、そこに少女の姿は無かった。

 

「こっちだよ」

 

背筋に走る寒気。

つい先程まで警戒していた閃影の最悪な予想が現実になったのだ。剣を投げて牽制し、火球で身を隠しつつ攻撃を仕掛け、閃影で背後を取って本命の斬撃で仕留める。見事に少女の術中に嵌められた桔梗に「ちょっとした本気」を止める手段は無く。

 

「うぐっ……!がっ、ハッ!?」

 

背中を斬り付けられ、体勢を崩し、怒涛の連続斬りを見舞われる。ジャスティアの、レリジェの鎧が無ければ今の一連の攻撃で何度死んでいた事か。

 

「うーん、予想より硬いなぁ。弓が得意で体術も使える上に防御力はアーマー並みとか、けっこう欲張りな兵種なんだねぇ」

 

斬り刻まれて転がったレリジェを尻目に、斬った感想を溢す少女。「ちょっと」という言葉通り「全力」ではない事が見てとれる。まだ死ぬ訳にはいかないと立ち上がろうとする桔梗だが、左腕の感覚がおかしい事に気付く。

 

「うっ……あぁ……!」

「まぁ、関節までは守れないよね」

 

各関節の可動域を阻害しないよう、装甲ではなく強化繊維で構成されたアンダーアーマーに覆われている肘や膝などの部位。その左肘関節の部分を的確に斬り裂かれ、血が滲み出ている。今までに味わった事の無い激痛が左腕から伝わり、桔梗の目に涙が溢れてくる。

 

「痛いよねぇ?苦しいよねぇ?分かるよぉ、仮面に隠れてても綺麗な顔が苦痛に歪んでいくのが!もう止めたいでしょ?助かりたいでしょぉ?邪魔な鎧なんて脱いじゃって、わたしにご奉仕してくれるなら終わりにしてあげるけど」

 

どうすれば良いか分かるでしょ?とおもむろに自分の下腹部を指差す少女。同性も好む口だと暗に示し、桔梗に敗北と屈服を迫る。しかし、下卑た発言とは裏腹にその瞳は全く笑っていなかった。

 

(さて、どうする?腕一本で折れるようなら、本当にわたしのオモチャにしちゃうけど)

 

膝をつき、傷口を抑えた状態で動かない桔梗の出方を見る少女。若干の欲望を発露させつつ、偶然力を得ただけの小娘か、それとも悪魔に魂を売ってでも戦い抜こうと足掻く戦士か。お前はどちらかと問い掛け、見極めようと次の行動を待っている。次の瞬間、身動ぎする桔梗。彼女が返した答えは───

 

「っく……!ふっ、うぅっ!」

 

「へぇ」

 

傷付いた左腕から右手を離し、その右手に装着されたクロスボウを少女に向ける事だった。足掻き、戦い、勝って生き抜いてみせると言葉無く吼えた。既に魂は契約の代価として悪魔に投げ渡した、折れる心などもうここには無いと得物を向ける事で示したのだ。

 

「良いねぇ……良いよ!それでこそ!」

 

いつの間に拾ったのか二刀流に戻っている少女。新たな戦士の目覚めに色欲は消し飛び、凶悪な笑みを浮かべ混じり気無しの闘争本能を剥き出しにする。

 

「さぁさぁ楽しもう!こっちも正真正銘の全力で殺してあげるからさァ!!!」

『今回はエンゲージ無しって言わなかった?』

「……ハイハイ、そうですねー」

 

「……?」

 

昂ったかと思えば即座に白け、構えていた両手の剣をだらんと下げる。昂った際の言葉と白けた二言目の間が空いていたように思えたが、気を持ち直して先程までの「ちょっと本気」の型を取った少女を見て邪念を捨てる桔梗。左腕の痛みが集中を途切れさせてくれない為、今まで以上に少女の動きに気を配れるのは不幸中の幸いか。

 

「ゴメンねー?エグルスフムにも殺すなって言われてたの思い出したんだ。という訳で、死なない程度に虐めるからさ」

「えん、りょっ……しますっ!私、は……!こん、な所でっ……終われないッ!」

「はぁ……本当に残念。お持ち帰りも殺すのもダメなんて」

 

 

▽▲▽▲▽▲

 

 

「桔梗さん!っ、ぅあ!?」

「何処を見ている」

 

一方、ボディスーツ風の女性と絶賛インファイト中の琥珀。桔梗のピンチに意識が逸れるが、言葉通り余所見をしている余裕があるのかと鋭い斬撃が襲い来る。

 

「くっ!うぅ!?」

「そらそら、敵を見据えなければ首が飛ぶぞ」

 

桔梗と戦っている少女の両刃直剣とは違い、女性が振るっているのは刀身の反りが特徴的な日本刀。一見乱雑に振り回しているだけのそれは、ミルバスの鎧で守られているはずの琥珀に明確な危機感を抱かせる乱れ斬り。野蛮な太刀筋の中に、熟練の技を隠した凶悪な連撃だ。

 

「だぁっ!」

「っ、ほう?」

 

集中しなければやられる、と桔梗に割いていた意識を目の前の女性に全て向け防御を固めた琥珀。絶え間無い斬撃の最中、一太刀と一太刀の間に「隙間」を見付けた琥珀は、返すならここしか無いと渾身の力をミルバスクローへと込めて日本刀を弾いた。

 

「ふむ……筋は良いな。今の雑な繋ぎは見切るか」

「ハァッ!ハァッ……!ざ、雑……!?」

 

琥珀が見付けた「隙間」は、どうやら女性が意図的に作った隙だったらしい。この程度は見切ってもらわなければ話にならない、という事だろう。

 

「及第点はやっても良いか。8分も過ぎた事だし」

「はち、ふん……?な、何、のことを……!」

「貴様のような新米が死ぬ確率が最も高い時間だよ。厳密に言えば初陣の衛士が、だが」

「えいし……?」

 

時間感覚が優れているのか、はたまたその「死の8分」に慣れすぎたのか。時計類を身に付けている訳でもなく、琥珀以外に視線を向けるでもなく明確に「8分が経過した」と告げる女性。一瞬だけ悲しげに目を細め、日本刀を構え直した。

 

「これで一端の戦士という訳だ。教練は終わり、ここからは殺す積もりで行くぞ?」

「っ!」

「一応言っておくが、今この場で戦っている面子の中で私は一番()()だ。生き延びてみせろ」

 

 

▲▽▲▽▲▽

 

 

「どわぁっ!?あっぶね!」

「速いですね。なかなか」

 

一方こちらはバネVS群青色のスーツを纏った女性。他の二人と違い、状況打開の為には攻めるしかないと積極的に前に出ようとしている春次郎。だが、豹頭の怪人の次に呼び出した五本腕のヒトデモドキが、バネを焼き尽くさんと絶え間無く火炎を放ち回避に徹さざるをえない。

 

「ズリぃぞ!弾切れとか関係無くあっちこっちにポンポン火ぃ付けやがって!」

「必要無いので。SPの心配は」

「ゲームかよ!?クッソぉ!」

 

何処か現実味の無い女性の言葉にツッコミを入れつつ、脚部のスプリングを縮め始める春次郎。狙うは次にヒトデモドキが火炎を放った瞬間。

 

「そこです」

「今だッ!」

 

女性が手を翳し、その先にあったバネの両腕が発火する。ヒトデモドキの火炎攻撃がついに直撃してしまったのだが、それこそ春次郎が待っていたタイミングだった。

 

「おぉりゃあっ!!!」

「なっ」

 

受けた火炎を目眩ましにしながら脚部スプリングの収縮を解放、最短で真っ直ぐにヒトデモドキへと飛び込んだのだ。

 

「うっ……!」

「まだまだァ!続けて食らえ!」

 

怪物じみた見た目に反して防御力は低いのか、スプリングダッシュからのストレートパンチ一発で消滅するヒトデモドキ。更に、召喚者ともリンクしているのか女性にもダメージが伝わり体勢を崩す。常人離れした雰囲気に怪物の召喚、魔法と明言する能力の行使から少なくとも一般人ではないと判断した春次郎。女性を殴る事を一瞬躊躇ったが、戦わなければ生き残れないと追撃を選ぶ。

 

「デカラビアは弱いのですよ……!物理に!」

「デカ……あ?」

「仕方ありませんね。ホワイトライダー!」

 

恐らくヒトデモドキの名前であろう「デカラビア」という言葉が引っ掛かる春次郎。たしかバネ以外の候補にそんな名前のジャスティアがあったような、と記憶の引き出しを開けかけた所で女性が別の怪物を呼び出す。

 

「アーマーシップです。スキンシップならぬ」

「触っただけじゃ───」

 

白い馬に跨がり、大きな弓を持ち、頭には冠を戴く黒衣の骸骨。ホワイトライダーと呼ばれた死神のような怪物に気を取られた瞬間、女性がバネの胸部装甲に軽く触れた。異常は無いと思われた次の瞬間、明確な【状態異常】が春次郎を襲う。

 

「っ……!?」

 

怖い、怖くて堪らない。目の前の女性が、その傍らに佇む骸骨が、それどころか今もなお戦いを続けている仲間すらも。全てが自分に襲い掛かってきそうな、そしてそれで死んでしまうのではないか、と。春次郎の心は【恐怖】一色に染まっていた。

 

「効き過ぎましたかね。さすがに。では、此方の準備を整えておくとしましょう。今の内に」

 

完全に足の止まったバネを見て、手に持った書物を通しホワイトライダーに指示を出す女性。他の二人やエグルスフムと同じく「殺す積もり」ではあっても「本当に殺したい」訳ではないらしい。バネへの攻撃ではなく、その圧倒的な瞬発力への対抗策を施すようだ。不気味な髑髏をカタカタと鳴らし、弓を掲げて何らかの力を女性に注ぐホワイトライダー。

 

「あっ」

 

「んー?体が軽くなった?」

「感覚が研ぎ澄まされる……何だ?」

「おやおや」

 

やっちまった、と言わんばかりに口元に手を翳す女性。ホワイトライダーが発した緑色の光が、女性だけでなくレリジェと戦闘中の少女とミルバスと斬り合っている女性、更にはフォリアへと変身したエグルスフムにも力を与えてしまったのだ。

 

「ホワイトライダーのは味方全体に効果が出る(マハスクカジャ)のでした。うっかりですね」

 

失敗失敗と誰に向けるでもない無表情テヘペロを披露する女性。未だ動けないバネを視界に捉えつつ、次はどうしようかと大仰にうんうん唸る。無表情のままで。

 

「ホワイトライダーの能力は殆どが全体攻撃ですね。思い返せば。うーむ、どうしましょうか。これから」

 

恐怖に囚われ動けなくなったバネと、特に攻撃するでもなくホワイトライダーを侍らしたまま無表情で悩み始めた女性というシュールな絵面。その周囲では、敏捷性と感覚の鋭さが上がったエグルスフム陣営が今までよりも苛烈な攻撃を仕掛けているのだが、忠義達に申し訳ないという素振りも無く我関せずのまま仁王立ちしている。

 

「どうするのでしょうか。姉様達なら」

 

その金色の瞳は、今この場に居ない誰かに教えを乞うように虚空を見詰めていた。

 

 

▽▲▽▲▽▲

 

 

「そこだっ!」

 

───キシャアッ!?

 

暗闇を切り裂く閃光。硬質な物に何かが弾かれるような音と肉を抉るような気味の悪い音、一拍遅れて呻く人非ざる者。

 

GA-04(アンタレス)に拮抗してみせたパワーには驚かされたけど、技量はそこまで高くない。獲物にしか会った事が無い?」

 

───クルルルァッ!

 

「生憎、わたしは獲物ではなく戦士なんだ!」

 

右手で構えた自動小銃を連射し、深紅の甲殻で全身を守る怪人態ロートを攻撃する黒と金の装甲を纏う女性。唯一甲殻で防御されていない顔面を集中的に狙うが、一度撃たれたからにはロートも対策はする。強靭に変異した両腕で顔を防御しつつのダッシュという、安易ではあるものの効果的な対応だ。

 

だが、それを待っていたのが黒と金の戦士。ロートのチャージを待ち受け、両腕を開きながらのチョップを姿勢を落として回避。更に左手に装着している大型ソードをロートの腹に押し当て、ロートの背後に向けて飛び出しつつ斬り裂いた。

 

───グガァ!?クォアッ!

 

「なっ!?」

 

完璧なカウンターを決めた戦士を襲う衝撃。サソリのようにうねる衝角が生えた尻尾が戦士に迫ったのだ。咄嗟に右手の自動小銃を盾とした事で本体には届かず、カウンターのカウンターを決められてゲームセットという事態は避けられた。

 

GM-01(スコーピオン)が……!」

 

代償に失う事となった自動小銃。飛び道具を破壊した今こそ好機と見たロートは、腹から滴る血など気にも留めず黒と金の戦士に飛び掛かる。

 

「ぐうっ!」

 

───クルァ……!キャシャアッ!!!

 

大型ソードの基部と頭を掴まれ、勢いのまま押し倒される戦士。尻尾が胸や抑えた頭を狙うが、押し倒される直前に引き抜いた武器が間一髪の所で防御に間に合った。左上腕のマウントラッチに備え付けられていたナイフである。

 

「嘗め、る……なぁっ!」

 

───グヴッ……!

 

二発、三発と続く尻尾の刺突を確実に弾き、四発目の尻尾を弾いた直後にロートの口腔へとナイフを突き入れた。堪らず仰け反るロートの腹を蹴り上げ強引に退けた所で仕切り直し。

 

「痛かった?それともGK-06(ユニコーン)が予想以上に頑丈だった?」

 

───クルルル……

 

「身を隠すくらいの知能はあるか」

 

電灯は点かず、外の光も届かないスタジアムの内部裏。うっすらと互いの輪郭が浮かぶ程度の闇の中では、姿を隠し気配を消されると手が出せなくなる。目立つ深紅の甲殻という事を差し引いても捕捉は困難だろう。

 

何の装備も無い人間なら。

 

「修羅場は潜ってるんだ!」

 

───グァッ!?

 

背後から襲い来る尻尾。足元を狙ったそれに惑わされる事なく左腕の大型ソードを構え、立て続けに飛び掛かってきたロートの腹に突き刺す。先ほど蹴り上げ、その前にも斬り裂いた位置を正確に。

 

───グルァウッ!

 

「チッ……!まだ!」

 

刺さった途中でロートが刀身を掴んだ為、当初の想定よりも刺さりが甘かったようだ。ナイフで顔を切り落とすか滅多刺しにしてやろうと目論んでいた戦士だが、手に持ったナイフでは刃が届かない。更に抵抗するように蹴りと尻尾で暴れ始めた為、やむを得ずソードを抜いて距離を取る。

 

「しぶといな……!」

 

───グゥオァァァァッ!!!

 

「わたしは怪人に負ける訳にはいかない。いつか来るだろう決別の時の為に……これを託してくれた、元の世界の皆の為にも!」

 

「白銀 陽子は!G-Ex-7は!負けてはならない!」

 

 

▲▽▲▽▲▽

 

 

「おーおー、派手にやってるねぇ」

 

観客席に腰掛けスタジアムの激闘を観戦している男。茶髪にシャツにジーパンにと、やや草臥れた感のある一般人といった風貌の男の名はローランと言う。風除けか上着代わりかポンチョを纏っているのが特徴と言えば特徴だろうか。

 

「社会人からすりゃ、随分とまぁ刺激的な人生なんだろうな。仮面ライダーってのは」

 

「オジサンくさいねぇローランは。そんな歳いってないでしょ?」

 

特殊な夢の見方以外はそこら辺の一般人と何ら変わらないローラン。そんな彼に話し掛ける人物が居た。ローランが座る席の一段上の列に、仲良く並んで座っている中高生ほどの女子四人組。その中で最もローランに近いウルフカットの少女が話し掛けている。

 

「うっせ、大人は色々と大変なの」

「だろうねぇ。先生とか見ててもそう思うもん」

「いや、さすがにそっちのセンセーほど激動に満ちた社会人生活はしてねぇよ?」

 

クスクスと笑うウルフカットの少女、その隣の藤色のボブカットと眼帯が特徴的な少女は複雑そうに顔をしかめ、その横に首から提げた壊れたガスマスクを弄ぶ少女が控えている。最後に車椅子に座った少女が呼吸器の奥で曖昧に笑った。

 

何処か常人離れした雰囲気の四人組。彼女らにはローランをはじめとする一般的な人間に無いモノがある。頭の上に浮かぶ輪、天使の頭上にあるようなヘイローが浮かんでいるのだ。

 

「あー、そういえばさ」

「あん?」

「危ないと思うよ?そこ」

「は?何がよ」

 

ローランが座っている辺りを指差し、次いで上を見ろ、と示す少女。ローランが視線を上げた瞬間それは見えた。というか見てしまった。

 

「だぁっぶねぇ!!!」

 

叫びながら身を投げ出して緊急回避を行うローラン。数秒と経たず彼が腰掛けていた座席に大きな何かが落ちてきた。避けなければ押し潰されていたのは確実だと、粉砕された座席がその衝撃を物語っている。

 

「アハハハッ!ローラン必死すぎ~」

「バッ、おまっ!見えてたんならもっと早く言えよ!危うく死にかけたぞ!?」

「くふっ!ハハハ!あー、おっかしー!本当に先生と同じで簡単に死んじゃうんだねぇ」

「キヴォトス人が頑丈すぎるだけだっつの!」

「それとさ~」

「今度は何だよ!?」

「まだ危ないよ?そこ」

 

ローランのダイナミック離脱を見て腹を抱えて笑うウルフカットの少女。警告は早く伝えろと抗議するローランだが、彼にとっての危険はまだ去ってはいなかった。着弾した何かが、まるで意思を持っているかのように動き出したからだ。

 

まるで、というか持っているのだが。

 

「うおぁっ!?」

 

破片がローランに直撃しかけた瞬間、一瞬にして彼を抱き上げその場を離れた人影があった。瓦礫を飛散させながら落ちてきたモノが立ち上がるのと、影が四人組の後ろに着地したのはほぼ同時だった。

 

去っていなかった危険、それは黒と赤の装甲が絡むように競り合っている二人の狂戦士。レイラの変身したアスモデイと、野性的な青年がボトルを使って変異した漆黒の怪物だ。

 

「うふふっ……!ここまで本気を出せたのはいつ以来かしらァッ!」

「おいおい、この程度で本気だぁ?まだまだイけんだろう?なぁ……女ァ!」

 

普段はブラフと小型武装の取扱いの為に量子格納されている大型腕を、既に両腕に装着しているレイラ。そしてアスモデイの大型腕を超えるサイズの腕部でもって組み合い、拮抗しているのが漆黒の怪物。両者のパワーはほぼ互角のようだ。

 

「シッ!」

「ラァッ!」

 

ブーストユニットで急加速したアスモデイの膝が怪物の腹にクリーンヒットし、それと同時に怪物のヘッドバッドがアスモデイの頭を強く打ち据える。よろめきながら離れる両者。不気味な仮面の奥でレイラは笑い、装甲のように変異した男の口からも悦びの声が漏れる。

 

「へっ、ははっ……!お前とは気が合いそうだ。仲良くなるためには自己紹介からだよなぁ」

「あら、拳と足と頭と武器で語り合ったというのに今さら名前が必要ですかぁ?」

「強い奴は覚えておきたい性分でね。それに、名乗らせるなら名乗らないとな」

 

「オレは芥、ボトルの成分は恐竜だから……ダイナソーハードスマッシュってとこだ」

「ご丁寧にどうも。わたしは暁月レイラ、仮面ライダーアスモデイの適合者です」

 

「アスモデイのレイラ、か。覚えたぜ……後はお前の血肉の味を覚えるだけだ!」

「くっふふ!わたしはそう安くないですよぉ!」

 

そうして三度激突するレイラと芥。ハードスマッシュのパワーを遺憾なく発揮しての掴みを潜り、コンパクトなアッパーで芥の顎を捉えるレイラ。純粋な力比べでは若干の不利を背負う事になると判断したのだろう。ボクシングスタイルに切り替え、手数で追い詰める魂胆のようだ。

 

「グッ、ぅ……ッ!ハッハァ!」

「うふふ……!アハハハッ!」

 

「何だアレ……怖……」

 

狂戦士二人の私闘に一般人代表のローランはドン引きしていた。

 

「あのボトルと腰のデバイス、ミレニアムに持ち込んだら幾らで買い取ってくれるかな」

 

飛び散る破片やら残骸やらなど何処吹く風と呑気な発言をするウルフカットの少女。それを聞いた仲間達は呆れる、真剣に考え込む、お金なんてあってもと興味を失うと各々違う反応を見せる。

 

「……それとさ、いい加減降ろしてくんねぇかな?大の男が年下の子供にお姫様抱っこされてんのは、絵面もこっちのメンタルもヤベェんだわ……」

 

未だに抱えられたままのローラン。そろそろ色々と限界だったらしい。だが、至近距離での戦闘が続いていて危険だと判断しているのか、他に理由があるのかは不明だが、少年と思わしき人物がローランを降ろす気配は全く無かった。

 

 

▽▲▽▲▽▲

 

 

「フッ!」

「ふむ」

 

そして、スタジアム中央で激しい剣戟を繰り広げているのは、オルバスに変身した忠義とフォリアへと姿を変えたエグルスフム。変身に使用した刀剣をそのまま武器として振るっているエグルスフムに対し、忠義はこの空間に持ち込んでいなかったはずのエンジンブレードで対抗している。

 

「これは如何です?」

「くっ!」

 

素早い踏み込みから横薙ぎの斬撃。何とか反応し、エンジンブレードの腹で鋭く重い一撃を防ぐ。

 

「へっ……敵に塩を送らなきゃ、今ので仕留められてたかもしれねぇのにな!」

 

そう、忠義が使用しているエンジンブレードはエグルスフムが投げ渡した物なのだ。忠義達四人、更にレイラとロートも含めれば六人もまとめてこのスタジアムに呼び寄せたエグルスフムにとって、無機物一本を個別に取り寄せる事など容易いのだろう。パフォーマンスか能力の誇示かは不明だが、その行動によって必殺のタイミングを逃したと忠義は皮肉りたいようだ。

 

「フフッ、これで良いのですよ」

「なに……!」

 

だが忠義の皮肉を聞いたエグルスフムは不気味に笑う。口と同時に手と剣を動かし、黒い剣とエンジンブレードで斬り結びながら続く言葉を紡ぐ。

 

「かの赤い怪人に後れを取ったのでしょう?」

「っ!」

「私の目的は貴方を殺す事ではありません。貴方に経験を積んでいただく事こそが私の、我々の目的」

「どの立場で!」

「なればこそ、貴方が敗北した理由の一つ……剣士としての実力を磨いていただく為、この姿を取らせていただきました!」

 

剣から派手に金属音を響かせ、オルバスを切り払うフォリア。吹き飛ばされ、体勢を崩された忠義の目に映ったのは、滑るように地面スレスレを飛ぶフォリアの姿だった。

 

「ぐあっ!?」

 

その勢いのまま突っ込んできたフォリアからすれ違い様の斬撃を受け、右肩装甲を切り裂かれる。致命傷どころか剣戟に支障をきたす関節ですらない部位へのダメージ。忠義が咄嗟に躱した訳ではない。エグルスフムが敢えて外したのだ。

 

「お、まえ……!わざと!」

「言ったでしょう?殺す積もりは無いと」

 

言い換えれば、本気ではないと言い切ったエグルスフム。武器が何らかの変化をした訳でも、変わった形のドライバーを操作した訳でもない。自らの技量だけで、欠片も本気を出さず、全力に近い忠義を圧倒してみせている。

 

「テメェ……!」

「さぁ、どうします?」

 

剣の構えすら解き、両手を広げて大仰におどける黒い仮面ライダー。それを見てしまった忠義は悪癖を発露させる。必殺技を焦るという戦場では致命的な悪癖を、あの時と同じように。

 

(同じ……?)

 

【後れを取ったのでしょう?】

【お前らのはそれが軽いんだよ】

【由来通りの悪魔になどならないために】

 

ふと僅かに冷静さを取り戻した忠義の思考。浮かんでくるのは、つい先程のエグルスフムの言葉とレッドホースマンの侮蔑。そして、同じニュージェネレーションライダーの一人である仲間の信念。

 

それらが、一瞬の内に忠義を成長させた。

 

「ッ!」

「残念です───」

 

敵の膝辺りを踏み潰すストンプスタイルで放たれたオルバスの最大稼働スキル。所詮はこの程度なのか、と失望したように回避するエグルスフムだったが、想定外の一撃が飛んできた事に驚愕する。

 

「ッ、だぁぁぁぁあぁぁぁぁっ!!!」

 

スタジアムの地面を踏み砕きながら、やや不恰好ではあるものの斬撃を繰り出したのだ。FIFTYΦブレイクで踏み込みつつ、めり込ませた右足を軸にエンジンブレードを全力で振り抜いた。必殺技を囮として使い、回避を強要した先で本命を叩き込む。シンプルながらも非常に効果的な連携だ。

 

特に忠義の悪癖を知る者に対しては尚更。

 

「ッ!ふっ……くははは!」

 

全身全霊で振るわれたエンジンブレードは、フォリアの左翼を中程から切り裂いた先で黒い剣に受け止められていた。届かなかったと悔やむ忠義に対し、エグルスフムは失望から一点して歓喜を露にしている。待ちわびた瞬間がやっと来た、と。

 

「素晴らしい!やはり抗う人間は美しく気高い!怒りに燃え、正義を貫き!一分一秒の間にすら進化を重ねる!これだ!これこそ私が求めて止まない生命のあるべき姿というもの!フハハハッ……!アーハッハッハハハハ!!!」

 

「コイツ……いったい、何を……!」

 

【必殺読破!】

 

危機を感じ、狂ったように笑い始めたエグルスフムから距離を取る忠義。それとほぼ同時に黒い剣をドライバーに納刀し、一度強く押し込む操作を終えたフォリア。それに呼応したドライバーから音声が流れ、剣に黒いオーラが集まっていく。

 

【滅命抜刀!黒龍劫火斬!】

 

「クフッハハハハ!ヒャッハハハハハァ!!!」

 

一切の防御を捨てて突撃してくるフォリア。

その背後に、人非ざる何かを幻視する忠義。

 

本当に幻なのか。

 

翼を広げた黒い龍は、本当に幻なのか?

 

恐怖に呑まれかけた瞬間、極限まで尖らせた戦士としての感覚が警鐘を鳴らす。

 

背中だと───

 

 

「ぐうっ!がぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

腹や胸ではなく、更に一歩踏み込みながら大きく剣を振り、回り込ませた剣で相手の脊髄を叩き割るフェイント込みの一撃。咄嗟に滑り込ませたエンジンブレードでフォリアの剣を受け止めた忠義だったが、文字通り全身全霊のパワーを込められた龍の一撃を止めるには、人間の技術では足りなかった。

 

多少の勢いを殺しつつも、受け止めた刀身の中程からへし折られるエンジンブレード。そして背部装甲を削られながら押し出される形で前に吹き飛ぶオルバス。

 

「ぐっ……かっ、はっ……!」

 

辛うじて生きてはいる忠義。だがオルバスの鎧が、ジャスティアシステムが、けたたましくアラートを鳴らし続けている。これ以上の戦闘続行は不可能だと。

 

「防ぎますか!えぇ、えぇ!それでこそ!さぁお立ちなさい、まだ幕は降りていません!その身が粉微塵に砕けようとも!四肢が千切れ、肺が潰れようとも!命ある限り負けた訳ではないのです!貴方の輝きを……今を生きる命だけが持つ焔を!もっと、もっと!私に見せてください!!!」

 

身を起こすのがやっとの忠義と片翼を斬られただけのエグルスフム。殺すのが目的ではないのなら、既に決着はついたはずの状況。だがエグルスフムは、仮面の怪人は、狂喜の発露と共にタガを外してしまったらしい。

 

今度は剣ではなく、ドライバーに装填している本を操作するエグルスフム。新たなページが開かれ、「炎に沈む廃墟の空で咆哮を上げる黒い龍」から、「溶岩の海に佇む真紅の龍」へと描かれている挿し絵も変わる。

 

【紅龍真章】

 

【運命の解放と終末を告げる紅き龍、その憤怒が滾る瞳は今も世界を見据え続けている……!】

 

狂笑を上げながら剣を収める、ただそれだけの動作すら危険だと、戦士としての───否、生命体として本能が叫んでいる。あの剣を抜かせてはならないと。

 

「グッ……!ヴゥアァァッ!」

 

間に合わない。

今のこの身体では、一歩踏み出す事すらギリギリの現状では。

 

周りでは、エグルスフムの仲間であるはずの三人や、客席の面々すらも焦ったように各々動いている。それだけあの【紅龍】の力は危険なのだろう。青い服の女性が手に持った本を捲り、バネに対して繰り出した怪物すらも凌ぐ何かを召喚しようとした瞬間。

 

それはそこに居た。

 

「めっ、エグルスフム」

 

「……は?」

 

薄灰色のワンピースを纏う銀髪の少女。10代前半に見える幼い容姿の子供がフォリアの前に立っていた。そしてポカッ、と気の抜ける音を右手から発する。ちょうどフォリアの腹辺りに全く力の入っていないチョップを繰り出したのだ。

 

「ほんきは、めっ。せかい、もたない」

「…………」

 

生気を感じられない存在が希薄な少女に諌められ、その動きを止めたエグルスフム。その場の誰もが止められずにいた暴走する龍を、軽い一発で、子供のお遊びのような手刀で止めてみせた。

 

「失礼、舞い上がっていたようです。ご容赦を」

 

そう言いながら本をドライバーから外し、変身を解除するエグルスフム。骨の髄まで、魂すらも焼き尽くさんとする熱はいつの間にか消え失せている。

 

「此度は我々を舞台に上げていただき、誠にありがとうございました。彼女にもよろしくお伝えください」

「かの、じょ……?っ!光、か!」

「一夜限りの特別演目もこれにて幕引き。今回の経験があなた方の未来に活かされる事を願っております」

「待て……!」

 

「ルフさん!」

 

倒れ込むオルバスを支えるバネの腕、どうやら春次郎も戦いの中で恐怖を振り切ったようだ。そのバネの相手だった青い服の女性もエグルスフムの近くに歩み寄りつつあった。その視線はかなり厳しいが。

 

「何者、なんっ……だ、お前たちはっ!」

「ふむ……では最後に名乗らせていただきましょう」

 

「我々は遍在旅団。遍く世界に在る旅人の集まり、マイノリティの居場所、特異点が辿り着く終着点」

 

エグルスフムが言い終わるのと同時にスタジアムが粒子となって崩壊を始める。目的を果たした彼らが去るのに連動して、仮初の舞台もまた役目を終えたのだ。

 

「名残惜しいけどバイバイだねぇキキョウちゃん。また遊ぼうね!今度は殺し合いで!生き残れたらわたしのオモチャにしてあげる!」

 

「若獅子の。人間を相手取る感覚は掴めたか?鍛練は続ける事だ。技は習得に掛かった時間の数倍の速さで腐っていくからな。最期まで人として生きろ」

 

「此度の件は報告させていただきます。我が主に。では春次郎様、貴方の旅路に多からん事を。幸が。善き客人に巡り会える事を祈っていてくださいませ。ワタクシが」

 

そして各々の対戦相手に激励か微妙な言葉を残して去っていく面々。エグルスフムの言葉通りなら、彼女達もまた世界から弾かれた特異点なのだろう。この世界に存在していないはずの旅人達の姿は、始めからそこに居なかったように消え去ってしまった。

 

「結局死ねなかったなぁ!互いに!久々に楽しめたぜぇレイラァ!」

「えぇ、わたしが仕留められなかったのは貴方で三人目ですぅ」

「んだよ……その微妙な格付けは……まぁ良いや、お前はオレが殺す。それまで死ぬなよ?」

「うふふ……そっくりそのまま返しますよぉ。わたし、食べ残しはしたくない主義なので」

 

「しぶとい怪人だ……」

───クルルゥ……!

「残念だが、わたしが関われるのは此処までだ。お前が真に世界の敵とならない事を祈っている」

───ガァ?

 

客席の一区画とその基盤部分を丸ごと破壊し尽くしたレイラと芥、陽子とロートも決着はついていなかった。常人なら震えあがる程に悍ましい笑みと凄みを放ち、狂戦士二人もまた別れを告げる。言葉の意味を理解できないままレイラの元へと戻るロートと、それを見送り自らも歩き出す陽子。

 

「命が幾つあっても足らなそうだなぁ……ここもよぉ……」

「ねぇローラン、暇ならGBN行こうよ。リェーミアが大きいコトが起きるかもだってさ」

「若いって良いねぇ……」

 

無事だった観客席でも帰り支度を終えたローランと四人組が去っていく。少年はいつの間にか先に帰っていたようだ。

 

「では、私達もこれにて」

「ばいばい」

 

「待っ───」

 

エグルスフムが芝居がかった礼をし、白い少女がヒラヒラと手を振った瞬間。

 

全てが闇に呑まれた。

 

 

▲▽▲▽▲▽

 

 

「───ん?ウェルフリット隊員!」

 

「はっ」

 

開かれる視界。夢から覚めたように顔を上げた忠義の前には、心配するように顔を覗き込んでいる警官の姿があった。

 

「大丈夫ですか?先の戦闘で怪我でも……?」

「あ……?い、いや。大丈夫だ」

「それなら良いのですが……何かありましたらお声がけください」

 

そう言いながら自分の本来の持ち場に戻っていく警官。彼以外にも複数の警官や救急隊員が慌ただしく動き回っている辺り、どうやらスタジアムに呼び寄せられる直前まで居た大通りらしい。

 

「戻って……きたのか……?」

 

しかもノバシェード構成員を制圧してからそれ程時間は経っていないようだ。

 

(背中に違和感も無い……本当に夢、だったりすんのか?)

 

だが夢にしては余りにも現実味が残っている。つい先程まで命のやり取りをしていた、そんな嫌な現実味が。

 

「ん?」

 

ふとジャスティアドライバーを確認して気付く。あれは夢などではなかったと。再変身用のアイドリングエネルギーが空になっており、更には近くに真っ二つに折られたエンジンブレードも転がっている。Gチェイサーのマウントにノバシェードとの戦闘で使ったブレードが残っているにも関わらず、だ。

 

「夢、じゃないみたいだな……」

 

【今回の経験があなた方の未来に活かされる事を願っております】

 

「……上等だ。夢だろうが何だろうが関係ねぇ。必ずモノにして活かしてやるよ、お前らの技!」

 

折れている方のブレードを拾い、それをトランクに仕舞いながら独り呟く。奪われたドライバーを取り戻す為、ひいてはレッドホースマンに借りを返す為。見て受けた技を己の糧として吸収する事を選んだ忠義。そんな彼の決意を待っていたかのように端末が着信を告げた。

 

「縁……」

 

メッセージの送り主は光の助手である縁。内容は奪われたドライバーの行方が幾つか判明したというもの。縁や光に聞きたい事は山ほどあるが、今はドライバー奪還が最優先。先程の警官に声を掛け、現場を任せてから次の目的地へとGチェイサーを走らせる。

 

(これが終わったら聞かせてもらうぜ。光!)

 

エグルスフムが見せた踏み込んでから背後へ繰り出す斬撃。それがオルバスの、忠義・ウェルフリットの技として花開くのは、もう少し先のお話。

 

 

▽▲▽▲▽▲

 

 

こくりゅうが、めざめる。

でんせつのせだいが、でんせつにいどむ。

にんげんがでんせつをのこすか。

でんせつがにんげんをけすか。

みにいく?エグルスフム。

 

 

やぁやぁエグルスフム。

日課の散歩をしていたら面白いのが居てね。

とある世界の巨人。

名前は確か……アキレスとメディスだったかな?

タルタロスが見付ける前に、ね?

 

 

さて、次はどちらに赴くとしましょうか。




それは旅人。

【遍在旅団】
エグルスフムが一応の長を務める集団。
旅団と言っても陸軍の部隊単位ではなく、旅をする者達の集まりという意味合いで名乗っている。
マイノリティの居場所、特異点の集積地と表されるように「世界から弾かれた者」「終わりに瀕した世界の者」をエグルスフムの趣味に基づいて保護している。
基本的に各々が好きに世界を飛び回って暇を潰しているが、一応ルールも定められている。
・滅びの因子がある世界である事
・世界の趨勢に関わる者ではない事
・その世界からの誘いが無い限りは干渉しない事
など。今回はエグルスフムが光の誘いを受けた事で現れたようだ。

【ヘゼル】
桔梗/レリジェの対戦相手。
黒と紫が入り交じる短髪が特徴。
「指輪と紋章」の世界出身。人の形をしているが人間ではなく邪竜の子の一体。
兵種は専用の「邪竜ノ剣」で、剣の二刀流と魔道書を扱える。
愛しい「妹達」の為に父親を裏切り、その妹達を庇って致命傷を負った。妹とその仲間達を先に進ませ、独り孤独に朽ち果てようとしていた所でエグルスフムに拾われ旅団入りしたらしい。
同性好きだが一部の異性もイける口。
「変異する無双の指輪」を持ち、それに宿る「修羅の紋章士」の力も行使できる。レリジェとの戦いで見せた「閃影」もその一つ。

【錆音 美世】
サビネ ミヨと読む。
琥珀/ミルバスの対戦相手。
「あいとゆうきのおとぎばなし」の世界出身。
腰より少し上くらいまで伸ばした黒髪を肩甲骨辺りで結った切れ長の目の美人。「空の向こうから来た絶望」を相手に戦争をしていたらしく、旅団の中でも珍しい正規の軍人だった。
本業は「戦術機」と呼ばれる人型機動兵器のパイロットだが、訓練を受けた軍人らしく生身での戦闘にも秀でる。元の世界では作戦行動中行方不明、いわゆるMIA認定されている死んだはずの人間。
2001年から遥かに進んだ世界、異星体の侵略など起きない世界に若干の嫉妬を抱いている模様。

【ツギハギ】
春次郎/バネの対戦相手。
青いパンツスタイルのビジネススーツにプラチナブロンドの髪、金の瞳が目を引く女性。おかしな倒置法で喋るのも特徴。
「アルカナの旅路」の世界を観測し続けている。
ツギハギというのは偽名で、真の名前は「主と姉様、いつか現れる客人以外に明かすつもりは無い」との事。
手に持った「全書」から、「オセ」や「デカラビア」等の悪魔や「ホワイトライダー」といった御使いを召喚して戦力とする。
エグルスフムの危険性に気付いており、「いつぞやの悪神と同じ危険な存在」と判断して排除しようとしたのが旅団との最初の出会い。だが、彼女の主が隣人として様子を見ると決めた事で、現在の協力者兼監視者のポジションに落ち着いたようだ。

スーツの上着は着用しておらず、本人曰く「未熟な自分に正装は早い」との事。「力を司る者」「青い部屋の住人」の中では一番下の実力しかないと自称している。

【芥/ダイナソーハードスマッシュ】
乱入してきたレイラ/アスモデイの対戦相手。
ノースリーブにダメージ加工がされたカーゴパンツを纏う野性的な青年。
「パンドラボックスとボトル」の世界出身だったが、新世界創造の余波で弾かれ次元の狭間を彷徨っていた。
ダイナソーフルボトルを使ってハードスマッシュへと変異する。また、ハザードレベルもかなり高く、ギリギリ人間の枠に収まっているだけの怪人。
北都の三羽カラスに先んじて生み出されたプロトタイプであり、その好戦的な性格と高いハザードレベルを危惧され、実戦投入前に廃棄処分とされた過去を持つ。その為、出身世界のライダーとの戦闘経験は無い。

野生の直感に頼る事が殆どであり、同じく別のライダーが存在する世界から弾かれた「メギドの女性」と「ジャマトの美青年」とは方針の違いからよく対立する。

ダイナソーハードスマッシュとしての戦力は、光波推進で加速し強引に飛翔する事も可能なテラフォトンウィング、電磁加速で両肩の杭を打ち出すケラトリニアバンカーバスター、自在に分離・再合体が可能な尻尾状の打突武器レクスプラズマテイル等を持つ。

【白銀 陽子】(原案:守次 奏 様)
怪人態ロートの相手を引き受けた少女。
「とある2020年を起点とした未来世界」「2030年」出身であり、アナザーアギトと呼ばれる怪人に対抗する特殊部隊に属していた。主戦力のG3システムでは全く歯が立たなかった事から、人間が到達し得る限界点を模索する為の試作ユニットが設計され、その装着者に選抜された。
最終的に「時の魔王」の決断で世界が元通りになり始め、陽子の世界に繋がらなくなり、世界の基盤が不安定になっていた所でエグルスフムに拾われた。
ツギハギと同じくエグルスフムの危険性に気付いており、何れ本当に解り合えなくなる日が来ると確信している。その引き金を引くのは自分だと決意を固めているが、当のエグルスフムからは「非力な人間が滅びに抗う姿は愛おしい」程度の感情しか向けられていない。

【仮面ライダーG-Ex-7】(原案:守次 奏 様)
読みはジーイクスジーベン。
G3やG4とも異なるアプローチで製作された新たなGシステム。未確認生命体4号が見せた可能性の一つ、「凄まじき金」をモデルに開発されており、そのスペックは彼女の世界におけるパワードスーツの中でも最高峰。
装備類はGM-01 スコーピオン等をはじめとしてG3-X等と共通している。
唯一、陽子の専用武装として鍔の無い日本刀型の超振動ブレード「GEx-09 アルデバラン」を追加装備している。

【ローラン】(原案:朔紗奈 様)
遍在旅団の一員。観客席に居た一人。
どこにでも居る草臥れた社会人だが、明晰夢という形で他の世界を訪れる事が可能という特異体質。訪れた先で死亡しても目が覚めるだけだが、その世界には二度と行けなくなるという制約があり、基本的に命のやり取りアレコレが無い世界を観光している。他の旅団員は「夢で会ったサークル仲間」という感覚。

【スピラエ】(原案:麻婆炒飯 様)
エグルスフムを制止した少女。
外見年齢は10代前半。
存在そのものが希薄な「幻」のような存在。
「竜と狩人」の世界に居る事が多く、姿を見られた際は雷光と共に一瞬にして消える。
旅団の中でもかなり古参の部類らしいが、彼女がいつ頃から在籍しているのか、どういった経緯でエグルスフムと知り合ったのかは当の本人達しか知らない。
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