日本生まれ、グランバハマル育ち。   作:痩せ型のオーク顔

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「1秒もかからず敵対したよ」

「おじさん!福丸さん来てますか!」

「おお、藤宮。あの人ならすでに奥でコーヒー飲みながら演出考えてるよ」

 

あの衝撃映像の、ほんの次の日。

エルフさんの話ともあってすっかりウキウキ気分だった藤宮は大学終わりと同時に部屋にやってきて、そのまま奥の部屋で座る。

 

「……エルフさんと知り合った話」

「うん。映画とか見てカメラワーク考えてた!……すごいねえ、ケータイで映画が買える時代なんだねぇ!」

 

随分とこっちに順応し、すっかりスマホまで使うようになっている彼。

そんな彼が手を振ると、再び画面が表示された。

 

パーカー姿のエルフさんはどこかカジュアルな雰囲気だが、それでも美人なのだから凄いと思う。

 

『あっ、お姉さん!ドルド山への行き方教えてほしいんだけど』

『私も教えてほしいな……どんな神経して再び目の前に現れたのだ?』

 

「……ん?」

 

──聞き間違いかと思うレベルで、めちゃくちゃに刺々しい言葉を紡ぐエルフさんの声。

 

その直後、突如として彼の頬にナイフが突きつけられた。

 

「あっはっはっは!すごいよねぇ、1秒もかからず敵対したよ!

「なんで……っ!?」

 

ケラケラと笑う福丸さんに、思わず突っかかる。

すると、画面の中にいた彼が潔白を証明するように果物籠を掲げるのが見えた。

 

『あの女は連れていないか。一人でケリをつけにきた事だけは立派だな』

『ちょっと!……ボクはこの人に()()()()()()他人だよ!』

 

そこで、気づく。

彼の姿は完全にリンゴを奪った二人組の男のもので、そういえば誰かを騙したような話をしていた。

 

「……あっ!あの、昨日の二人……」

「そう!後で知ったんだけどさ、エルフさんこの人たちに騙されて金取られてたらしいんだよね……」

 

この人は、本当に間が悪すぎる。

彼は画面の中でしばらく口論になっていたの倍速にしていたが、今度はエルフさんに何かを吹き込まれたのが見えた。

 

『……【貌】の魔法の初歩、魂と同じ形に肉体を矯正する魔法だ。それを使って知らない他人の姿になったなら……本物と信じることにする』

『わっ……わかった!むむむ……』

 

「おお、なんかそれっぽい!」

「って事は、これが初めて使った魔法なんですね?」

「うん。そういうことになるね……」

 

光に包まれて、少年の肉体に戻る福丸さん。

……少し『二人分』の記憶が混ざったせいなのか小1にしてはかなり大人びているが、面影はある。

 

その姿を見たエルフさんは、胸に手を当てて頭を下げた。

 

『申し訳ない。騙されたこともあって気が立っていた、非礼並びに子供相手の暴言を詫びさせてくれ』

『いいよいいよ!……で、ドルド山の祠っていう場所に参拝したいんだけど……』

 

「……ここからしばらくエルフさんと話しただけだから」

「見せて!マジで見せて福丸さん!」

「お前……」

 

序盤を早送りにしていた福丸さんが、俺の声に応えてか慌てて等倍に戻す。

思わずがっついて藤宮に呆れられたが、致し方ない。

おじさんの時は珍しかったファンタジー溢れる会話を期待すれば、自然とがっついたりもしてしまうモノだ。

 

2人は意外と険悪そうでもなく、表情は柔らかい。

 

『ドルド山の祠に行きたいと言っていたが、不二郎は異世界の戦士なのか?』

『うん!グランバハマル、なんて聞いたこともないからね!エルフだっていないし……でもその服は見たことあるよ、故郷の店で!』

『……ッ!?まさか、あのオークも……いや、まさか……』

 

「って感じなんだけど、頂上までは特に面白くも……」

「聞く。見る。全部」

「たかふみはこういうの好きなんです。もうちょっと見せてやって貰っても……」

 

異世界と現実世界の入り混じるような他愛のない会話をし続けた後、祠で知識を得た福丸さんの映像。

 

……バトルも無双もなかったが、なんとなく映像の雰囲気や神との邂逅やら、色々と見ていて楽しいものはあった。

 

 

「──って感じだね。この後残りの祠も巡ってから別れたよ。エルフさんはその間におじさんに指輪貰ったって言ってたな!指輪してなかったけど……」

「いい……!導入はアレだったけど、凄くいいぞ……!」

「まぁ、確かに異世界がどんな世界なのかは理解しやすかったかもですね」

 

記憶魔法を閉じ、評価を聞いて優しい笑みを浮かべる福丸さん。

おじさんのとは違う王道っぽいファンタジー路線に少し気分をよくしていると、そのままおじさんが片手を掲げた。

 

「そうだ、お前もアイツと仲良かったんだよな。ダンジョン踏破の指輪は何個手に入れた?」

「うん。ダンジョンに入って……陽介みたいな天星石のはなかったけど、それなりのは結構持ってるよ!陽介に貰った人魚の涙のを除いたら5つくらいだね!()()1セットかな?」

 

……聞き捨てならない発言。

確かに福丸さんの右手薬指にハマったリングを見た時は少し頭を抱えそうになったが、しかしそこで気がつく。

 

「……ペア?」

「うん。片割れはメイベルに渡した

「えっ……」

 

「「えええええっ!?」」

 

団地の軽量鉄骨に声が響き、僕と藤宮はお隣さんから生まれて初めてのクレームをもらう事になる。

 

だが、衝撃の事実が判明した。

目の前の福丸さんは。

人畜無害、純真無垢、どこか幼さすら感じさせた目の前の青年は。

 

──メイベルさんと、デキていた。

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