フロンティア・アクターズ~私のルートはお断りッ! ヒロインに転生した私はHEROとの恋仲ルートを避けながら町の平和を守ります~ 作:北乃ゆうひ/YU-Hi
今年ものんびりとやっていく予定ですがよろしくお願いします。
【View ; Syuko】
――4月8日。木曜日。放課後。
今日は、嘉藤さんと大杉さんがメイズに迷い込む日ですね。
そこでピースに襲われた際に、嘉藤さんが開拓能力者として覚醒。
そのままチュートリアルバトルをした後で、出口を探す……というのが大筋の流れです。
脱出先はご存じの
そこで、モノさんと出会って、システム的なチュートリアルとかもするんですよ。
この時点だと、大杉さんは覚醒しないので、脱出イベント中は基本的に嘉藤さんのソロバトル。
廊下で壁にもたれかかりながら、スマホをいじるふりをして考え事をしていると、嘉藤さんと大杉さんが、通りがかります。
「お前、今日はずっと眠そうだったな?」
「なんか変な夢を見たせいで寝不足」
……ああ、そういえば、前日の夜に鎧武者のようなガンマン――ラスボスの一面――と夢でやりとりするシーンがありましたね。
「変な夢?」
「ガンマンみたいな鎧武者と、いかにもアメリカンな木こりっぽいおじさん二人に出会った」
「マジで変な夢だなおい」
……え? 木こりっぽいおじさんって何ですかッ!?
「二人から、目に見えた絶望に負けず、安易な希望に縋らず、真実を見極めて、未知なる道へ踏み出す勇気を忘れずにとか説教された」
「マジでイミフな夢じゃん」
夢の内容はゲーム通りなんですけど、なんで登場人物増えてるんですかねッ!?
そのまま二人は通り過ぎていきました。
このあと、図書室に行くと思うんですけど……。
うーん……。
想定外――というか、私の知らない出来事が起きているっぽいですけど、これ私がアプローチしてどうこう出来るモノじゃなくないです?
ストーカーっぽいことはしたくないですが、二人の後を少し付けましょうか。
そうして二人が図書室に入ると、空間が歪んだように波打ち、その姿が消えてしまいました。
無事に迷い込んだようですね。
……って、あ。
近くにいたらしい
お世話になっている一つ上の先輩で、彼女もまた開拓能力者です。
元々、正史でも比較的序盤にパーティ加入する人ではあるんですが、ここで図書室メイズに飛び込んでいってしまうとは思いませんでした。
その気持ちは分かるのですが、これで嘉藤さんが覚醒しなかった場合、記憶にあるシナリオチャートが一切の役に立たなくなりそうです。
でも、霧香先輩が追いかけるのであれば、万が一というのも無さそうです。
仮に覚醒イベントがスキップされてしまっても、三人が無事であるならそれでも良いです。
なんてことを――廊下の影で考えていると……。
「お前は。行かなくて。いいのか」
「倉宮先輩」
その様子を怪しんだのでしょう。
これまたお世話になっている先輩――
「霧香先輩が行ったなら大丈夫かな、と」
「ふーん……?」
あ、とてつもなく訝しげです。
何か思案する素振りを見せたあとで、ややして人差し指をこちらに向けました。
相変わらず、綺麗なネイルアートがされていますが……。
「あの、倉宮先輩に指を差させるの怖いんですけど」
「別に。ガンドを撃ったりは。しない」
「分かってはいるんですけど」
倉宮先輩の使う
私自身が、そのトリックを知っているので、詛われることはないと思うのですが……それでも、怖い物は怖いのですよね。
「積極的に。オカルト事案解決に奔走していたお前らしくないな?」
鋭い……。
倉宮先輩は、開拓能力こそ使えませんが、オカルトの知識に富む上に、頭の回転が速いのもあって、こういう時に誤魔化しづらいです。
前世の記憶なんて気軽に話せないので、どうにか先輩を納得させる理由を口にしないとですね。
「……あまり事件の大小を比べたくはないのですけど……」
そう前置いて、ここからどうやって話を展開させようかと考えていると、先輩は小さくうなずきました。
「そういうコトか」
「え?」
「図書館の歪みも気になるが。今は別の事件を追ってる。だからこそ関わる事件を。増やしたくないというワケか」
あ。何か、勝手に納得してくれました。これは幸いです。
「そんなところです。どうしようかと思いましたが、霧香先輩が追いかけてくれましたので」
「なるほどな。筋は通っている。今回はそれで誤魔化されてやろう」
「…………」
さすが倉宮先輩です。誤魔化し切れてなかったようです。
「去年から。お前は目の前の事件に関わりながら。もっと大きな何かに目を向けている。そんな素振りがあった」
……倉宮先輩と一緒に事件を追いかけた回数はそこまで多くなかったですよね……。
「雨羽 霧香や。それ以外の連中にも。相談した様子は無い。誰にも明かせぬ使命でも。あるのだろうと勝手に理解していた。間違っているか?」
「先輩って実は人の記憶を覗く系の能力持ってません? サイコメトリーとかそういうの」
「そんなもの一切無いが?」
まるで心外だと言うように首をゆるゆると横に振りますけど……本当に謎の先輩です。ミステリアス系ヒロインなら間違いなく、倉宮先輩の方が上だと思うんですけど。
ともあれ、私は観念したように小さく両手を挙げました。
「明かせる情報はありませんが、今聞かされた推測は概ね間違ってはいないと……だけで勘弁してくれます?」
「むしろ。食い下がって申し訳ないな」
倉宮先輩はバツが悪そうに、自身の唇を撫でてから、小さくうなずきます。
「詳細を。聞き出す気はない。だが一人で抱えて一人で隠し通すのは難しいだろう。
だから。ワタシを使え。多少の誤魔化しには。協力してやる」
「いいんですか?」
「これまでの付き合いから。お前に悪意はないのは理解している。
話せる段階が来たら話せ。それを約束できるのであれば――だがな?」
いたずらっぽく、それでいて詛いを掛けるかのような顔で、倉宮先輩がそう告げます。
「全てが終わったあとにしか、お話できないかもしれませんよ?」
「それならそれでいい。終わった後に必ず話すと約束しろ」
再び人差し指を突き出すようにして言ってきました。
私はそれに、ハッキリとうなずきます。
「わかりました。絶対に約束します」
「うむ。契約成立だ。不履行の際は詛うからな?」
「はい。わかりました」
そして、私が差し出した手を、倉宮先輩はしっかりと握ってくれました。
「嘘ついたら針千本飲ます。というのも立派な詛いだと思わないか?」
「言われてみればそうですね」
でも、私が針千本を飲むことはないでしょう。
だって、この約束を違えるつもりなんて、ありませんから。
「さて。お前が追っている大きな事件。ワタシが手伝えるコトはあるか?」
「今のところはないですね。
なので、今まで通り気になる出来事や、変わった出来事があったら、話を聞かせて貰えると助かります」
「了解した。では早速。話をしていいか?」
「え?
……早速あるんですか?
「今。校内で妙なアプリが流行りだしている」
「アプリ?」
私が聞き返すと、倉宮先輩が自分のスマホを取り出しました。
「正直。怪しいアプリだったので。スクショだけした」
「どう怪しいんですか?」
見せられたのは、どこかのダウンロードサイトのスクリーンショットです。
ここから、インストールをタップすればダウンロードが開始されるのだとは思いますが。
「いわゆる紹介性のアプリのようだが。友人から送られてくるQRコードの行き先が。それだ」
「あー……」
なるほど。
それは確かに怪しいです。
「なので少し調べてみた。まず主流のアダムストア。そこに登録は無い。次にグーゴルストア。ここにも登録は無かった」
「わざわざ専用ページに飛ばす時点で、正式登録アプリではないのでしょうね」
もうその時点で怪しさ満点です。
こういうのって、ネット黎明期に触ってた人たちからすれば警戒の対象になるレベルです。
いやそうでなくても警戒するべきといいますか。
あからさまに怪しいサイトの怪しいアプリなんて、触れないに越したことはないのですけどね。
友達からの紹介ともなれば精神的なハードルが下がってしまうのかもしれませんけど。
そのハードルを下げることなく、友達からの紹介だろうと、ちゃんと警戒して色々と調べる倉宮先輩は、素直にすごいです。
「なので少し調べ方を変えた。素直にグーゴルで検索しただけだが」
「どうでした?」
「このアプリに関する情報は一切なかった。様々なアプリの使い心地。それらを評価するタイプの記事などでも触れられている記事はない」
「つまり完全な新規アプリ……というコトでしょうか?」
「もう一つ。気になる点がある」
「先輩の手際が良すぎて怖いですね」
「バカが勝手にバカやって個人情報抜かれたりトラブったりするのは構わん。だが身内がそれに巻き込まれるのは我慢ならないからな」
本当に、露悪的な振る舞いが多いのに、根は真面目というか優しいというか。お人好し――が一番近いかもですが。
「それで。もう一つ。気になる点だが」
「はい」
私がうなずいて、先を促すと、少しだけ言いあぐねる素振りを見せてから、先輩が告げます。
「まだ確証はない。だが。恐らく。このアプリはこの学校の生徒の間でのみ。流行っている」
「それは……確かに奇妙な話です」
うちの学校だけに流行っているアプリ。
それは間違いなく、奇妙な話と言えるでしょう。
「倉宮先輩。間違ってもインストールしちゃダメですよ?」
「当たり前だ。まだ落としてない知人にもそう言い聞かせている。聞く耳持たんやつは知らんが」
それはそうですよね。
警告するだけ優しいですし、それを聞き入れないのであれば自業自得と言えるでしょう。
「ところで、これってどういうアプリなんですか?」
「一見するとふつうのSNSだな。見せてもらった限りでは
ただ。なんというか。どうにもフォロワーの数やイイネなどの数で。優遇されるシステムがあるようだ。
なのでどいつもこいつもバズ狙いの投稿が多く見えた」
ふむ。
なんといいますか――
「怪しくなくてもやる気の起きないSNSですね。バズると優遇されるだなんて、バカブラー行為を量産しかねないでしょう。ましてや高校生を中心に流行るだなんて」
アイスクリームケースに入ったり、厨房で全裸になったり――そういう行為をWarblerに投稿してバズって大炎上した件は前世だけでなく、今世でも見ていますしね。
そういうのが、バカブラーと呼称されて、ネタにされるのも前世と同様ですね。
「同感だ。その危機感が足りないモノたちばかりのSNSなど。呪いや悪霊よりも恐ろしい」
「なんであれ、関わり合いになりたくはありませんが……」
「そうだな。だが広がり方がおかしい。ラクガキ騒動を思い出す」
「……倉宮先輩の懸念、理解しました」
ラクガキ騒動。
それは去年、学校中で騒ぎになった事件ですね。
ラクガキを作り出す能力者と、それとは別に怪しい刻印を使う能力者の二人が関わっていた大規模な事件でした。
あれと同じ気配を感じるということは、本当にこのアプリ――能力者の類いが関わっている可能がありそうです。
「現時点だと動きようがありませんが、調べてみます」
「そうしてくれ。お前の使命にとっては横道だろう。だがそれを邪魔しかねん事態になれば。無視はできないだろう?」
「はい。教えてくださりありがとうございます」
そうして、倉宮先輩と別れて教室に戻りました。
アプリ事件。
これが本当に何らかの能力者によるモノだとしたら……。
嘉藤さんたちの成長の阻害になるようであれば、確実に摘んでおく必要があるでしょう。
考えることは山盛りですが、やっていくしかありませんね。
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倉宮 彩乃 と 蠍の絆 が成立しました。