フロンティア・アクターズ~私のルートはお断りッ! ヒロインに転生した私はHEROとの恋仲ルートを避けながら町の平和を守ります~   作:北乃ゆうひ/YU-Hi

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112.HEROと遊ぼう

 

 

【View ; Syuko】

 

 ――4月10日。土曜日。午前中。

 カードゲームショップ『サム・スタァ』デュエルスペース。

 

 私は嘉藤さんとの約束通り、スターランドマジシャンズで対戦中です。

 

「『泥土(でいど)(から)まり(うお)』で攻撃するけど、対応は?」

「うーん……どうしましょうか」

 

 手札や残りライフから考えるに、通してしまっても問題なくはあります。

 戦闘開始後に能力を強化するようなコンバット・トリックをされると、危険な残りライフですが――まぁされたらされたで対応すればいいですね。

 

「通します」

「なら、手札からグリーングロウを唱える。絡まり魚のパワー+5」

「さすがにそれは通したくないので、波濤消破(はとうしょうは)で無効化します」

「カウンタースペル系も入ってるのかぁ」

 

 ちなみに、これで三戦目ですが、ここに至るまでラブとかロマンスとか一切ありません。

 本当にただスタマジで対戦しているだけです。

 HERO補正とかヒロイン補正とか皆無です。

 

 ……いや、それはそれでありがたいはずなんですけど、警戒している自分がバカみたいじゃないですか。

 

「絡まり魚からの2ダメージを受けたので、こちらは残りライフ5です。他は?」

「やるコトないので終了かな」

「なら、終了フェイズにちょっと割り込みます」

 

 でも、全力でスタマジできるのは、これはこれで楽しいんですよね。

 周囲にプレイヤーがいないというのは私も同じなので。

 

 正史(ゲーム)の時にやりこんでたのもあって、手を出し始めたらやっぱりハマってしまったワケですし。

 最初はHEROのOPシーンを覗く為の口実だったんですけど。

 

「即時出現を持っている魔獣『さまよう黄昏(たそがれ)の死』を場に出します。

 元は15コストのカードですが、自分のライフが減っているほど召喚コスト軽減されるので、2コストで召喚できます」

「うげ。相手のターンに出せる2コスのパワー15ディフェンス15って」

「ちなみにコストは軽減されてますけど、15コストカードであるコトには代わりありません。なので『威圧する結界』の5コスト以上のカードが場に出た時の効果は発動できます。ライフを1支払った上で、カードを一枚引き、黄昏の上に+1/+1カウンター乗せます。

 黄昏は自分の上に乗るカウンターの数を二倍にする能力があるので、二つ乗せますね」

 

 こういうコンボがバシっと決まって行く快感は、ゲームが変われど、これが現実であろうと変わりないです。

 続く私のターンで、黄昏に貫通を付与して攻撃。パワーで圧倒して勝利です。

 

「さ、三連敗……」

「どうしますか? もう一戦します?」

 

 なんというか、ふつうに楽しいですね。

 気持ち的にはもう一、二戦したいところなんですけど。

 

「やりたいはやりたいけど……」

 

 そう言いながら嘉藤さんはスマホを開いて、何かを確認しました。

 それから、こちらへとスマホの時計を示しながら言います。

 

「そろそろお昼過ぎるけど、十柄さんの予定は平気?」

 

 あ。そういえば、午後に予定があるという話にしていましたね。

 どうしましょうかね……。

 

 自分の気持ちの折衷案と行きましょうか。

 

「まだもう一戦は出来ると思います。

 このデッキ、作るだけ作ったあとで回せてなかったので、もうちょっと試したいんですよね」

「わかった。俺も対戦できるならありがたいから」

 

 そうして、追加のもう一戦では私の負けで終了です。

 

「ライフロスを戦術に組み込むと、計算ミスした時に脆くなっちゃいますね」

「威圧する結界の効果も、5コスのカードが出せないと回らないし。生かすためには高コストカードのコストを軽減して運用するのが前提になっちゃうから。

 そういうのって、条件揃わないと厳しくなるよね」

 

 こういう感想戦も、カードゲームの醍醐味です。

 とはいえ、午後には予定があるということにしているので、名残惜しいですがここらでお開きにしましょう。

 

 あまり長く嘉藤さんと一緒にいすぎると、私のルートに入りかねない危険性もありますし。

 

「さて、もうちょっとやりたいのはやまやまですが、そろそろ時間ですので」

「うん。ありがとう。楽しかった」

「こちらこそありがとうございました。楽しかったです」

「また対戦してくれる?」

「ええ。機会があったら是非」

 

 とはいえ、スタマジで対戦できる仲間は貴重ですので、時々はいいですよね。

 

 そうして私は席を立って、お店の入り口へと向かう。

 

「……あら? 妙斗(タエト)くん?」

 

 すると、よくこのお店に出入りしている小学三年生の男の子が私を睨んでいた。

 どうやら今、お店にやってきたところみたいだけど。

 

「どうしたの?」

「おれと対戦してくれないの?」

「ごめんね。今日は午後から用事があるから」

「むー」

 

 むくれてる彼にごめんねともう一度告げて、私はお店を後にする。

 

「兄ちゃん! おれと決闘(エルッターブ)しろー!」

「いいけど、なんで怒ってんの?!」

「うるせー!」

 

 どうやら、嘉藤さんと妙斗くんは仲良しのようだ。

 二人のやりとりの聞こえるお店の扉を閉めて、私は階段を降りていくのでした。

 

  ・

  ・

  ・

 

 栗摩センター駅から電車に乗って府中野(こうや)駅まで戻ってくると、駅前で草薙先生と遭遇しました。

 

「お? 鷲子ちゃんじゃん。これから食事行くとこだけど、どう?」

「完全にナンパみたいになってますけど、お腹空いてるところですし是非」

 

 草薙先生が連れて行ってくれるお店は大体アタリなので、どこへ行くにしても楽しいのですよね。

 

 そうして、草薙先生が連れてきてくれたのは、雑居ビルの隙間にあるような細い道の奥にあるお店です。

 

 その路地の突き当たりは少し広くなっていて、有名なドカ盛り系ラーメン店と、老舗っぽいスナック兼食堂。そして、目的のお店が軒を連ねていました。

 

「毎度のことながら、よくこういうお店見つけますね」

「お店に入るかどうかはともかくさ、気になった路地とか覗いてみると楽しいんだぜ?」

 

 地元の駅前にこんな場所があるなんて初めて知りましたし。

 

 目的のお店は、造花とはいえエキゾチックな植物で囲まれた入り口をしていました。

 本格タイ料理の店――らしいです。

 

 中もかなり現地の雰囲気を踏襲しているのか、海外にいるような気分になる内装をしています。

 

 注文をし、お冷やを口にして一息つくと、草薙先生が楽しそうに訊ねてきました。

 

「駅から出てきたけど、どこか行ってたの?」

「ええ、まぁ」

 

 うなずきながら、ここ最近の話を報告するかどうか考えます。

 学校で起きている事件なので、草薙先生が直接関われるようなモノはないでしょうけど、共有はしておくべきでしょう。

 

「ふーん。話せそうなコト?」

 

 事件のことも、今日のことも、別に伏せて置く必要はありませんしね。

 

「別に隠すようなコトではないですよ?

 栗摩センターにあるカードゲームショップに行っていただけですし」

「ゲームの主人公が時々行くっていう?」

「はい。この近辺だとスターランドマジシャンズの取扱店があそこくらいなので」

「鷲子ちゃん、HEROに様子を伺う為とかそういうの関係ナシにハマってるやつ?」

「そんな感じです」

「まぁそういうコトもあるか」

「露骨に詰まらなそうな顔をしますね先生」

「だってHEROと何かあったのかって思うだろー?」

「確かに嘉藤さんもいましたけど、ふつうに対戦しただけですよ?」

「……いたのかよ。しかも対戦したの?」

「四戦ほど」

「楽しかった?」

「お互い対戦相手に餓えてたのもあって、とても」

「……そうか、楽しかったかー……」

 

 どういうワケか、草薙先生は呆れたような頭を抱えるような様子を見せるのでした。

 

 あれ? 私、なんかやらかしてます??

 

 

 





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 嘉藤 楽太 と 天秤の絆 が 結ばれました!
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