フロンティア・アクターズ~私のルートはお断りッ! ヒロインに転生した私はHEROとの恋仲ルートを避けながら町の平和を守ります~   作:北乃ゆうひ/YU-Hi

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22.草薙つむりは、颯爽と

 

【View ; Kirika】

 

「誰かな、君?」

 

 勢いよく飛び降りて、着地した時に足が思ったより痛くない事にホッとしつつ――

 

「毛量は多めだけど、悪くない髪だ……。

 だけど、アレだね。髪に対して体が釣り合ってないね。そのボリューミーな髪に合わせて身体をもっと大きくしないと。

 それに今の髪型と組み合わせると微妙に見えるその大きな胸、削り落とした方がいい。邪魔だよそれ」

 

 顔を上げて前を見て、イケメンなのに生理的に受け付けないというか受け付けちゃいけない気配のする男の人を見て……思わず固まった。

 

 固まったけど、すぐに首を振って気持ちを切り替える。

 

「止まってッ! あの人は知り合いなんでしょうッ!?」

 

 私はすぐに女の子に飛びついた。

 それでどうにかなるかは分からないけど、やめさせることくらいはできるはず!

 

 だけど、それは完全に甘かった。

 女の子は飛びつく私をひらりと躱し、右手を振り上げる。

 

 あまりにも馴れた動きで振り上げられた拳を見て、素人の私であっても直感的に理解が及ぶ。

 

(あ……)

 

 やばい。

 これ、格闘技とかやってる人っぽい。

 

 何のトレーニングもしてない私があんなものを振り下ろされたら、ひとたまりもない。

 

 どうしよう。どうしよう……!?

 いや、何か思いついたって、それを実行するのはどう考えても間に合わない!

 

「はい。そこまで」

 

 だけどそこへ、私に続くもう一人の乱入者が現れた。

 

 女の子の手首を掴み、こちらへと笑いかけてくれたのは大人の女性だ。

 

 カッコいい風の女性なのに、着古されて胸元の伸びたトレーナーや、同じく着古されてよれたブルゾンなんかが色々台無しだ。

 

「また乱入者……いや。お前ッ! お前ェェェッ!」

 

 その女性に対して、生理的に受け付けられない感じの男性は、指を差して叫ぶ。

 

「な、なんだその髪はッ!! 女だろう!? もう少しッ、こう……気を使えッ!

 少々所ではなく髪が傷んでるだろッ! トリートメントはしているのかッ!?」

「ああン? 毎日てきとーに洗っててきとーに拭いてんだからいいだろ?」

「ふざッけるなぁぁッ! てきとーだとッ!? 髪に謝れッッ! 素質のありそうなッ、その髪にッ、謝れぇぇぇぇッ!!」

 

 さっきも思ったけど、あの男の人の言動はちょっと、どうかと思う。

 

「やれやれ。ああいう輩かよ」

 

 うんざりとしたように嘆息しつつ、お姉さんは空いてる手で、軽く自分の耳元のピアスに触れる。

 そこにはカタツムリを模したお洒落なピアスが付いていて……って、カタツムリ!?

 

 見れば動きを止めた女の子の肩には赤いカタツムリが乗っている。

 

「あなたは……!?」

 

 私が声をかけようとすると、彼女は人差し指を口元に当てウィンクすると、男の方へと向かっていく。

 

「立てるかい?」

「誰だか知らないが助かった」

 

 その途中、黒い服のお姉さんに手を差し伸べると、黒い服のお姉さんはその手を取って立ち上がる。

 

「お嬢様は?」

「あたしの能力の一部を使って動きを止めさせて貰ってる」

「そうか」

 

 見ればいつの間にやらアスファルトから伸びている蔦が消えていた。

 能力者である女の子は肩に乗った赤いカタツムリが伸ばした触覚にこめかみあたりをつんつんされている。

 

「自分を省みずみんなを助ける女の子に、自分の弱さを乗り越えて人を助けようとする女の子。

 マンガやラノベの主人公みたいにカッコいい少女たちの活躍を見ちゃうとさぁ……やっぱ大人としてもうちょいがんばろうってなるだろ?」

「面目の立たない言葉だな。それは」

「あんたは気にしすぎだよ」

 

 バツの悪そうな黒い服のお姉さんに、カタツムリのお姉さんは気楽な調子で笑う。

 それから、こちらをチラリと見て、手招きをしてくる。

 

 よく分からないけれど、私はそれにうなずいて、二人のところへと駆け足で寄っていった。

 

「……で? 髪に敬意のねぇテメェはなんなの?」

「あたし? あたしはまぁ……アレだよ」

 

 こちらを睨むように様子を見ていた男に問われたカタツムリのお姉さんは、それに対して不敵に笑う。

 それから自分の横に、殻が研究所のようにもアパートやマンションのようにも見えるモノを背負った巨大なカタツムリが呼び出してみせた。

 

「通りすがりの……」

 

 巨大なカタツムリはすくっと起き上がり、にゅるんっと腕に当たる場所から二本の触手が生え、足にあたる部分が二股に分かれた。

 

「小説家さんよッ!」

 

 そして、二足歩行になった巨大なカタツムリと共にお姉さんは地面を蹴ると、自身の右手と右手代わりの触手を振りかぶり――

 

「は? 意味のわかんねーコトをッ!」

 

 髪の毛の塊がお姉さんを妨害しようとするけど、カタツムリが触覚を伸ばしてそれを制した。

 

 そして、妨害に失敗したのが運の付き。

 

 ――お姉さんの拳と、カタツムリの触手は同時に男の頬へとねじ込まれる。

 

「うらぁッ!!」

「ぶぺらっ!?」

 

 錐揉みしながら吹き飛んで地面にバウンドする男を見ながら、カタツムリの手足を元に戻したお姉さんは、自分の前髪を掻きあげシニカルな笑みを浮かべて告げる。

 

「ペンネームを草薙つむりってんだ。覚えておきなッ!」

 





【TIPS】
 草薙つむりのWEB連載作である悪役令嬢モノが最近書籍化が決まったらしい。
 これで通算17冊目だとか。
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