フロンティア・アクターズ~私のルートはお断りッ! ヒロインに転生した私はHEROとの恋仲ルートを避けながら町の平和を守ります~   作:北乃ゆうひ/YU-Hi

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27.メイズに挑戦――する前に

 

 バス横転事件から、一週間経った日曜日。

 私は、濡那原神社にやってきています。

 

 ちなみに、和泉山さん、草薙つむり先生、雨羽先輩の三人も一緒です。

 和泉山さんはともかく、二人まで首を突っ込んでくるというのは、正直思っても見なかったのですが……。

 

 まぁ、あの場であの会話を聞かれてしまったのが運の尽きといいますか、乗りかかった船のようなものでもあるのですけれど……。

 

 

 

 ともあれ、錐咬があの場に現れた理由というのは、単純なものでした。

 

 世間を騒がせている男を逮捕してきた冴内さん。

 ただ、冴内さんは署内ではあまり好かれてはいないそうで――彼が手柄を立てることそのものがあまりウケないそうです。

 

 警察としてどうなんだそれ――と思いはしますが、とにもかくにも、冴内さん自らが取り調べをするつもり予定だったものの、権力的な横やりによって別の方が担当することになったそうで。

 

 開拓能力だ超能力だと口にしても通じないだろうから、髪の毛を用いた特殊で危険な技術を持っている男だから、手錠ははずさないようにと警告した上で、交代したそうです。

 

 まぁ最終的に、その交代した刑事さんは手錠を外し、署内の女性の髪の毛を利用されたというのが真相のようで。

 さらに彼の逃げ延びたい一心が、ヘアー&エイリアンを第三段階であるヘアーマンに進化させた、と。

 

 署内の女性が操られ人質にされている状態で、それでも冴内さんの後輩――安藤(アンドウ) 公彦(キミヒコ)さんというそうです――が交渉。

 女性たちを解放してくれれば、署内から逃げ出すのを自分の責任で見逃すと言って人質を助けたそうです。

 

 なんで逃がすのを是としたのか――と訊ねて見ると、彼が逃げ出すところまでは冴内さんの考えのうちだろうと判断したから、と言っていました。つまり逃げ出した後でもすぐに捕まえる手段が用意されているのだろうと、想定しての交渉だったそうです。

 安藤さんもなかなかですが、やっぱりあの冴えないおじさん、見た目の冴えない雰囲気とは裏腹にかなりやり手のようですね。

 

 そんなワケで、基本的には横槍と脱走は想定内だったんでしょう。

 バスの横転事故までは想定できなかったそうで、そこだけは頭が痛いと言っていましたが、こちらも物理的に頭が痛かったのでおあいこです。

 ……何がおあいこなのか、自分でもよく分かりませんが。

 

 そして、無事に逃げ出した彼を確保したところで、冴内さんから、錐咬の能力の消去をお願いされました。

 

 了承した際に、私達のやりとりをそばで話を聞いていた草薙先生と雨羽先輩も、メイズに興味が湧いたようで――

 少し悩みましたが、一人でメイズに入った時の危険性と二人を連れていった時の危険性を天秤にかけ、連れていくことにしました。

 

 護衛として和泉山さんも一緒に来ると言って聞かなかったので、結果としてこの四人です。

 

 あとは日時の約束を取り交わし、解散となりました。

 もちろん、お二人とは別に、本来の警察とレスキューもやってきましたよ。

 

 幸いにして死亡者・重傷者なしの横転事故として処理をされたようです。

 

 

 

 

 ……そんな経緯で、私たちはこの神社に集合しているワケです。

 

 みんなにモノさんを紹介。

 モノさんにも二人と出会った経緯とこれからやりたいことをしっかりと話ました。

 

「メイズに挑戦するのは構わないのだがなぁ……」

 

 差し入れした庵颯軒(あんさつけん)のチーズカレーまんをもぐもぐしながら、モノさんは少し困ったように天を仰ぎます。

 

 ちなみに皆さんに濡那原存在(ヌナハラノモノ)様こと、モノさんを紹介した際、驚きはしたものの普通に受け入れていました。

 超能力が実在しているのだから、神様が実在してても不思議じゃない――とか何とか。

 そう言われちゃうと、確かに――と思わなくもないです。

 

「一週間前から、メイズの規模が大きくなっててな?

 そろそろ現実を浸食し始めるぞ、あれ」

「まさかそんなレベルに……?」

 

 それは由々しき事態です。

 現実浸食レベルとなると、攻略難易度も跳ね上がりますからね。

 

「あー……鷲子ちゃん。モノさん。

 二人で盛り上がる程度にやばい状況なのは分かったんだけど、まったく理解が追いついてないんだわ。

 あたしらにも理解できるように、メイズってやつについての説明をしてくれねぇかな?」

 

 困ったような声を上げる草薙先生。

 でも、確かに何の説明もしてませんでしたね。

 

「一応、RPGのダンジョンっぽい場所――とは聞いてるんだけど、それだけだとぜんぜん分からないし」

 

 草薙先生の言葉に、雨羽先輩もうんうんとうなずいています。

 

「まずは、メイズなるものの基本知識と、開拓能力消去との関わりなどをご説明願えませんか?」

 

 続けて、和泉山さんもそう言ってきました。

 確かにそうですね。その通りです。

 

「分かりました。ではメイズについての説明からさせてもらいます」

 

 そうして、私は出来るだけ分かりやすくなるように説明を始めることにしました。

 

 

 

 メイズとは――人の心が生み出した迷宮(ダンジョン)です。

 

 基本的には開拓能力に目覚めるも暴走させてしまった人が作り出す大規模な迷宮で、それが肥大化していくうちに現実に影響を与え始めているものを言います。

 

 ただ錐咬 香兵のように、開拓能力を得たことによる欲求の肥大化――自己の制御が甘くなった場合。

 あるいは、開拓能力を得ながらも、精神が迷宮化するほどの心の迷いに苛まれる場合。

 これらの場合は、能力の暴走とは関係なく、その能力者の思いが色濃くこびり付いた地点を中心にメイズが発生する場合もあります。

 

 言ってしまえば、心の歪みや迷いが形になった迷路。まさに迷図。ようするにダンジョンですね。

 

 そしてメイズには、そんな歪みや迷いに惹かれて集まってきた、心の欠片――ピースと呼ばれる……言ってしまえばモンスターが徘徊しています。

 

 奥にはメイズのコアと呼ばれる、メイズの持ち主の心あるいは持ち主の心の歪みの根源が異形化した存在がいて、これを倒すか説得するかすることでメイズは消滅。

 倒して無理矢理消滅させた場合、メイズの持ち主は開拓能力を失います。

 

 まぁ錐咬の場合、コアを説得というのはほぼほぼ不可能だと思いますし、あのような危険人物に能力を持たせ続けるというのもよろしくないと思いますので、強制消滅させる方法を取るつもりですけれど。

 

 そして、皆さんには伏せる余談ですが、フロンティア・アクターズというゲーム内ではメイズが定期的に発生し、攻略していくことでシナリオが進んでいくようになっています。

 

「――とまぁそんな説明で理解していただけましたでしょうか?」

「一口にメイズと言っても他にも色々あるのだがな。今回攻略するコンプリクト・メイズについての知識があれば十分じゃヨ」

 

 そういう余計なことは言わない方がいいと思うんですけど。

 だけどこの場には、そういう話にツッコミを入れて無理矢理聞こうとしてくるタイプの人はいなかったようで、特に反応する人もいませんでした。

 

「暴走によって生じたメイズであれば、開拓能力者なら出入り可能なのだがネ。歪みによって生じている場合は、カギが必要なんだよネ」

「カギ?」

「今回は余にも容易に作れるものだったが、今後は作り出す為のヒントや素材が必要になるコトもあろう。そこは了承しておいてくれヨ」

 

 そう言いながらモノさんが差し出してきたのは、髪切り用のハサミのようでした。

 分かりやすいと言えば、これ以上ないほど分かりやすいカギだと言えるでしょう。

 

 ハサミを受け取り――そして、草薙先生は顔をしかめました。

 

「おいジジイ。このハサミ、カレー付いてっぞ」

「お? すまんすまん」

 

 まったく、モノさんも困ったものです。

 

「それで、このカギをどうすればいいんですか?」

 

 草薙先生からハサミを受け取り、それを持ってたウェットティッシュで拭いながら、雨羽先輩が訊ねました。

 

「うむ。あの男の心の歪みの中心たる思念が色濃く染み着いた場所へ持って行き、メイズの入り口が開くよう念じるのだ」

「つまり、歪みの中心地とやらを探さないといけねぇのかよ」

 

 面倒くさそうに草薙先生は言いますけど、今回は比較的簡単ですよね。

 

「美容室ですよ。あの人は自分のお店を持ってましたから。

 あの能力で、カギがハサミ。なら、恐らくはあの人のお店がそれでしょう」

 

 ここまで断言して違ったら恥ずかしいですけど、さすがに間違ってないと思ってます。

 

「なので、まずは桜谷駅前に向かうとしましょう」

 





【TIPS】
 お主ら、余にことを『庵颯軒(あんさつけん)のチーズカレーまん』をプレゼントすれば色々してくれる便利キャラだと思っておらぬか?
 ……まぁ我がコトながら否定できないのが困りものだヨ。
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