フロンティア・アクターズ~私のルートはお断りッ! ヒロインに転生した私はHEROとの恋仲ルートを避けながら町の平和を守ります~   作:北乃ゆうひ/YU-Hi

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45.不思議な感覚の正体は?

 

【view;Syuko】

 

「占い師?」

「そ」

 

 あのあと、倉宮(クラミヤ)彩乃(イロノ)先輩と別れ、私と雨羽先輩は予定通りにラッキー・ドレイクへとやってきました。

 

 ランチを食べながらするお話は、倉宮先輩のことです。

 

「表立って活動はしてないみたいだけど、タロット占いが得意で結構当たるらしいよ」

 

 雨羽先輩は春限定メニューの菜の花としらすのペペロンチーノをフォークに巻き付けながら、そう言います。

 

「あの見た目で、ガンドの呪いに、タロット占い……もしかして、魔女とか呼ばれてません?」

 

 同じく春限定メニューの菜の花と桜エビのクリームソースのパスタを口に運びながら、私が訊ねると、先輩はうなずきました。

 

「ふつうに呼ばれてるよ。本人は気にしてないどころか、そう呼ばれるコトを利用して他人を怖がらせて楽しんでるみたいだけど」

「マイペースというか唯我独尊というか、そういうタイプの人なんですね」

「そうそう。まさに、さっき見た通りの人だよ」

 

 身につけてるアクセサリや、ネイルアートなどからも見て取れますけど、自分のコダワリに関しては他人からどう思われても構わない人なんでしょうね。

 

「ただ――」

「ただ?」

「これはあくまで噂。真相は不明な話だけど……裏では、他人を呪ってお金を稼いでるって」

「急に不穏な噂が出てきましたね」

 

 開拓能力の悪用――というところでしょうか。

 まぁ、先輩が前置くように、あくまでも噂なので、話半分くらいがいいのかもしれませんね。

 

「でも、珍しいですね」

「え?」

「雨羽先輩ってそういう他人のマイナスな噂話はあまり口にしない人だと思ってたので」

「あー……」

 

 そう指摘すると、先輩はパスタを食べる手を止めて、困ったように頭を掻きました。

 

「実際、それっぽいところ見ちゃったからねぇ……。

 なんか怪しそうな大人に、指を向けてたところ」

「…………」

「それが噂通りのコトをしてたのか、さっきみたいに絡まれたからやり返してたかは分からないんだけど」

「もしかして、何となく険悪なのはそれが原因なんですか?」

「ううん。去年同じクラスだったけど……まぁ出会った時からあんな感じだったよ」

 

 そもそもからして、仲良くケンカするような相性だったワケですか。

 本人たちは仲良しなんて言われたら怒りそうですけどね。

 

「善人ぶっててムカツクっていうのが初対面で貰った言葉。

 まるで誰にも気づかれない場所で誰にも気づかれないように正義の味方でもしてるような雰囲気が腹が立つ。自分の天敵だって」

「それはまた……なんと言いますか……」

「初対面で言うセリフじゃないよねー」

 

 そう苦笑する先輩は、だけどどこか嬉しそうでもあります。

 

 この感じ――お互いがお互いを認めあえないだけで、仲の悪い自分たちの関係を楽しんでいるようにも見えますね。

 いわゆる、悪友っていうのはこういうものを言うのかもしれません。

 

「あの時は一緒にいた真衣ってば、それはもうご立腹で、宥めるのが大変だったよ」

「それはまぁ、初対面の相手から友人が悪く言われれば怒りもしますよ」

 

 そう口にしながら、私はふと思いました。

 そういえば、真衣さんとはちゃんとお話ししたことがなかったな――と。

 

 そんなことを考えながら、少し前に垂れてきてしまった髪を指ですくって耳に掛けた時、先輩が不思議そうな顔で私を見ました。

 

「どうしました?」

「鷲子ちゃん。その手、サインペンとかでこすった?」

「え?」

 

 先輩が示す、髪に触れた左手の甲を見ると、確かにペンでこすったような線がついています。

 

「ほんとだ……」

 

 でも、イマイチ記憶にありません。

 そもそも今日、ペンで何かを書くということがほとんどなかった気がしますけど。

 

 お手拭き用のウェットティッシュで軽く拭ってみますが、落ちる気配がありません。

 

「これは、帰ってから本格的に戦った方が良さそうです」

「乾いちゃうと落ちづらくなるインクもあるからねぇ」

 

 苦笑する先輩に、同じような顔でうなずき返します。

 

 この後も、他愛もないお喋りは続き――

 パスタの後は、ケーキを追加注文して堪能したあと、先輩と別れて帰路つきました。

 

 別れ際、以前に草薙先生と食事をした際に感じた、絆成立のナレーションが流れるような錯覚がありました。

 ……もしかしたら、錯覚ではないのかもしれませんが……。

 

 だとしたら、私は主人公と同じように絆によって強くなる力でも、得ているのでしょうか……?

 

 

 

 

 先輩と別れた後、向かったのはモノさんのところです。

 

 府中野駅から電車に乗って桜谷駅へ。

 そこからいつものルートを歩いて、モノさんのいる濡那原(ぬなはら)神社へとやってきました。

 

 草薙先生に続き、雨羽先輩とのお喋りの時に感じた感覚に関して、モノさんに相談しようと思ったのです。

 

 先生の時は気のせいかと思ったんですが、さすがに二度目となると気のせいで済ませておいてはいけないと思うので。

 

 もちろん、お供え用の庵颯軒のチーズカレーまんは購入済みです。

 

 

 そして、神社でモノさんを呼んで、チーズカレーまんを手渡します。

 

 モノさんが一つ目のチーズカレーまんを嬉しそうな顔で堪能し終えたところで、私の感じた出来事についてお話することにしました。

 すると、モノさんは二つ目に伸ばしていた手を止め――それから神妙な表情を浮かべると、一度姿を消し、ややして本を持って戻ってきます。

 

「これは?」

 

 どの本も抱える程のサイズで、ハードカバーで古めかしい上に分厚い本です。

 

「一応、おじさんにも自室のようなものあるんだヨ。

 この三冊の本は気が付くと、そこにあったんだよネー……」

 

 モノさんすらいつ用意されたのか分からないという三冊の本。

 

 そのうちの二冊は見覚えがあります。

 

 一つは、ピース図鑑。

 これは正史(ゲーム)において、主人公たちが戦ったピースと、主人公の能力によって捕獲したピースが乗せられていくものです。

 まぁゲームにありがちな、モンスター図鑑ですね。

 

 主人公は捕獲したピースの能力を使うことができるのですが、同時に利用できる能力数には限りがあります。なので、新しい能力を得るたびに古い能力を捨てていかないといけないのですが――

 この図鑑に記載されたピースの能力であれば、有料ではありますが再取得できるので、ゲーム的にはかなりのキーアイテムです。

 

 現実となったこの世界で、そこまでの役割を果たしてくれるのかはわかりませんが。

 

 そしてもう一冊が、ゾディアック・コミュニケーションという本。

 こちらは、正史(ゲーム)において、主人公が育んだ絆の状態を表す本です。

 ようするに、人物図鑑であり、そのなかでも仲を深めることで、主人公やパーティメンバーが新しい能力などを会得するような相手に関しては、絆レベルの状況などが記載されているものですね。

 

 どちらの本も、モノさんにも私にも開けないので、恐らくは主人公がここへ来ないことには、開くことのない本なのでしょう。

 

 さて、問題はもう一冊。

 全くの見覚えがない本なのですが……

 

「ゾディアック・コープレイション?」

「ちなみに、作者名のところに君の名前が書いてあってネ」

「……本当ですね」

 

 恐る恐るその本を開いてみれば、そこには私が関わったことのある人物が列挙されています。

 

 主人公のものではない。私用の人物図鑑のようです。

 

「……草薙先生と、先輩の横に、小さな桜のマークが押されてますね……」

 

 名前の一覧のところには桜のマーク。

 その名前の横には恐らくページ数を示す数字。

 

 それに従って該当のページを開くと――

 

 『悪魔たる山羊座(カプリコーン):草薙つむり』

 『節制する射手座(サジタリウス):雨羽霧香』

 

 妙な二つ名と共に、それぞれの名前がありました。

 節制するサジタリウスは正史で見たことありますけど、悪魔たるカプリコーンは初めましてな名称ですね。

 

 そもそも正史では、草薙先生との絆イベントなんて存在しなかったわけですが……。

 

「やっぱり――私用の絆リスト……」

「なんだネ、それは?」

 

 不思議そうに首を傾げるモノさんに、私が正史に関する説明をします。

 すると、モノさんは顎を撫でながらしばし思案に耽り――

 

「本来の持ち主の本も存在している中、君の為に別途用意されているこの状況――とりあえずだネ。

 ゲームのように……とはいかないだろうけど、結べる絆は結んでみたらどうかな?

 もちろん、ここは現実だからネ。簡単にはいかないだろうけど、やっておいて損はないと思うヨ」

「出所の分からない本の使用をすすめるんですか?」

「そう言われると、そうなんだけどネ。

 ――君なら知ってるだろうけど、余は余だけではないだろう?

 そっちの余が作った本なのは間違いないんじゃないかネ?」

「少なくとも二冊はそうですけど、私の本は……」

「おじさんたちが関わってなくても君を関わらせたい何者かが存在しているのであれば、その目的はなんであれ、本としての機能は信用して良いのではないかナ?」

「……モノさん関係ではない何かって……ちょっとおっかなくもあるのですけど」

「そこは仕方がないヨ。

 君という存在がすでに、この世界にとってイレギュラーだからネ」

「…………」

 

 それを言われてしまうと、まぁ確かにそうなのでしょうけど……。

 

 私が悩んでいると、モノさんは意味深な笑みを浮かべて告げました。

 

「未知を恐れず、されど警戒は怠らず、先人に敬意を払い、己が双眸を見開き正しき見極め、己が耳を傾けては正しきを聞き分け、未知なる道を拓く意志を持て。さすれば未知はお前の味方だ」

 

 何とも意味深な言葉ですが、表情がどこか胡散臭いです。

 

「何ですか、それ?」

「ん? なんか良いじゃろ? 今、思いついたんだよネ」

「思いつきですか……」

 

 思わずガッカリしてしまいました。

 でも、遠い過去から現代に存在しているモノさんの言葉ですからね。

 思いつきとはいえ、案外バカにできないかもしれません。

 

 私が前世の記憶を持って動き回っている時点で、すでに現在は未知なる道。そもそも未来が未知でないことなんてありえない――か。

 

「わかりました。本はお預けしておきますが、時々見に来るようにします」

 

 持ち歩くには大きくて不便ですし、何か問題が発生した場合、私よりもモノさんの方が対処できることでしょう。

 

「よかろう。預かっておいてやるので、定期的にチーズカレーまんよろしくネ」

 

 その言葉と共にモノさんが了解を示してくれた時、頭の中に絆成立ナレーションが聞こえた気がしました。

 

 




【CHECK!!】
 雨羽 霧香 と 射手(しゃしゅ)の絆が結ばれました
 ヌラハラノ存在(モノ)天王(てんのう)の絆が結ばれました


【TIPS】
 最近、あとがきにこの項目が無い?
 いやー……この項目、下手すると本編よりも考えるの大変なコトが多いので、サボらせてもらってます。
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