フロンティア・アクターズ~私のルートはお断りッ! ヒロインに転生した私はHEROとの恋仲ルートを避けながら町の平和を守ります~   作:北乃ゆうひ/YU-Hi

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60.蛇足メイズ:性癖暴露の商店街

 

《View ; Ikushi》

 

 鳥居をくぐると、そこにはシャッター街になりかけている商店街だった。

 

「見たコトがない場所なのに、見覚えがあるような……」

「マジリバの莉橋(りばし)商店街じゃん! すっげー!!」

 

 その風景に俺が首を傾げる横で、テンション高く騒ぐツユっち。

 

「なるほどなるほど。

 ゲームの影響を受けているだけあって、それを下地にした迷宮になってんだな」

 

 周囲を見回す草薙先生の双眸は好奇心に満ちている。

 

 それを見て、俺は気づいた。

 この先生の目的は、俺たちの引率ではなく、人の心が作り出した迷宮の取材なのだと。

 

 これは、マジで自分の身は自分で守らないとヤバイ奴では?

 

「ロカちゃんいるかなー、ロカちゃん!」

 

 ルンルンした様子で無警戒に歩くツユっち。

 その警戒心の無さは、正直見ていて怖いんだけど。

 

「ロカちゃんって誰?」

「ええっと、瀬尾(セオ) 芦花(ロカ)。マジリバのヒロインの名前です。ちなみに変身すると魔法戦士オセロットって名乗ります」

「モチーフ、リバーシなんだ?」

「ですです。基本的に主要名詞は白黒、オセロ、リバーシ辺りから来てるのが多かったですね」

「確かにモチーフにはしやすそうだね」

 

 ふむふむ――と、特にメモなどは取ってなさそうなんだけど、まるでメモをしているかのように錯覚するように深くうなずきながら、話を聞いてくれる草薙先生。

 

 マジでここへ取材しに来ているんだろうな……。

 

「ぎゃー!」

 

 などと、先生とのんびり話をしていると、勝手に先に進んでいたツユっちの悲鳴が聞こえてきた。

 

「……とりあえず、行くか」

「はい」

 

 二人して呆れたような心地で、商店街へと足を踏み入れていく。

 お店の半分くらいはシャッターがおりてる、シャッター街になりかけの商店街。その雰囲気はリアル寄りだ。

 

 作中ではよく戦闘も発生して、負けたりすると商店街の人たちの前で公開えろ処刑とかされる場所である。

 

 ……ツユっちの公開えろ処刑とかまったく見たくもないんだけど、はてさて、アイツどういう目に会ってんだ?

 

「ふ、二人とも助けてッ! なんかマネキンが襲ってくるッ!!」

 

 こっちへ向けて走ってくるツユっち。

 その後ろから追ってくるのは、彼の言う通り二体のマネキンだ。

 植物のツタのようなモノが絡みつくかのような服(?)というか水着(?)を着ていた。

 

 顔も髪もない頭部を無視し、首から下だけ見れば結構えっちぃ体つきのマネキンで、♂マークと♀マークの形をした武器を両手に一つずつ装備している。

 その武器は○部分を握っており、それぞれを振り回してツユっちに襲いかかっていた。

 

 よく見れば下腹部には、淫紋が輝いており、服代わりのツタからは白百合と黒百合が咲いている。

 

「マネキン型のピースかぁ……。

 あれを見てるとデッサン人形よかリアルでいいなって思うが……でも資料として買うのもなぁ。

 夜、目が覚めてリビング行った時に片隅で佇んでたら悲鳴あげる自信あるぜ」

「あー……わかります。

 ふつうに見る分には怖くないですけど、夜の暗がりとかで見ると怖いんですよね、マネキンって」

「たぶん怖いのはマネキンなんじゃなくて、そういう環境下に存在するリアリティある人影なんじゃねぇかなとは思うんだけどさ」

「あー、なるほど」

「ちょっと二人ともダベってないで助けてよッ!!」

 

 何だかんだでひょいひょいと攻撃を躱しながら、ツユっちが喚く。

 さすがに現役のバスケ部だけあって、運動神経はいいんだろうな。顔も悪くないし……ほんと口を開けなきゃモテそうな奴なんだけど……。

 

「ツユっちってさぁ……ほんと、口と性格が残念だよな」

「イっくんッ!? ここってそれをしみじみ言う場面ッ!?」

「そうだぞ、栗泡くん。とりあえず君の開拓能力で攻撃してみな」

 

 先生に言われると逆らえないよなぁ……。

 仕方ない――と、覚悟を決めて俺は姿無き紳士(インビジブルマナー)に意識を向ける。

 

 うん。結構、俺の意志通りに動いてくれる。

 これなら――

 

「頼むぞッ、姿無き紳士(インビジブルマナー)ッ!」

 

 俺の意志に合わせて姿無き紳士(インビジブルマナー)が動く。

 

「……ってあれ?」

 

 もう少しでマネキンを殴れそう……って距離までいって、姿無き紳士(インビジブルマナー)は足を止めてしまった。

 

「イッくん!?」

「能力によって差はあるけど、本体と能力はあんま距離を取れないからな。近接戦闘するなら、自分も敵に近づかないとダメだぜ」

「まじかー……」

 

 あー……クッソ。

 怖いけど、仕方ないッ!

 

 あと一歩前に出れば届く距離だから――

 

「げ」

 

 そう思って踏み出したら、マネキンの片方が俺に狙いを変えてきた。

 

姿無き紳士(インビジブルマナー)を戻さないとッ!」

 

 俺は姿無き紳士(インビジブルマナー)を大きくバックステップさせて自分の方へと引き寄せ、拳を握らせる。

 

「殴れッ!」

 

 そしてすぐに拳で攻撃した。

 マネキンのボディを捉えて、吹き飛ばす。

 

「よし」

 

 うまくいったことに安堵していると、すぐさまにツユっちの悲鳴が聞こえてきた。

 

「イッくん、こっちもー!」

「自分の能力で殴れって!」

「オレの無邪気な(イノセント・)落書き帳(アーティスト)ってスケブとクレヨンだぞッ!? どうやって殴るんだよ~ッ!」

 

 それもそうか。

 俺は小さく嘆息して、イッくんを襲っているマネキンを姿無き紳士(インビジブルマナー)に殴らせる。

 

「さんきゅー!」

 

 しかし、こうやって化け物と戦えてる自分っていうの……ちょっとテンションあがるな。

 マンガやゲームの主人公にでもなった気分だ。

 

「おーい。二人とも倒せてないから油断するなよー」

 

 ――なんて、調子に乗りかけてた俺の耳、先生がタバコを吹かしながら忠告してくる。

 

「ツユっち、そのクレヨン、ミサイルみたいに飛ばせない?」

「いや無茶言うなって! そんなコト出来たらとっくに……いや、そもそも試してないな。やるか」

 

 起きあがったマネキンたちへ向けて、赤のクレヨンの先端を向ける。

 

「飛べッ、赤いクレヨン!」

 

 次の瞬間、ツユっちの無邪気な(イノセント・)落書き帳(アーティスト)――その本体たるスケブの周辺に浮いていたクレヨンの一つが、マジでミサイルのように発射された。

 

「できた!」

 

 それはマネキンに直撃し、仰け反らせ――るだけで、終わってしまう。

 

「弱ッ、オレのクレヨンミサイル弱ッ!!」

「お。発射したはずのクレヨン、復活してるぞ」

「ホントだ! でも、弱いって! どう使えばいいんだよ!」

「発射した後に数秒後に復活するなら、七本あるクレヨンを順番に発射することで、無限ガトリングとか出来るんじゃない?」

「それだ!」

 

 一発一発の威力が低くとも、ダメージが一でも通るなら、百発当てれば百ダメージ理論。ただのゴリ押しともいう。

 

 でも、この状況でそれをするのは悪い選択肢じゃない――と、思いたい。

 

「いっけー! クレヨン・ガトリング! だりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃ~~~ッ!!」

 

 ツユっちはノリノリでクレヨンを連射しはじめる。

 なんかこう……自分で言っておいてなんだけど、開拓能力をこんなにも使ったことないから想定しなかったけどさ。

 実はMP的なもの消費してたりしない? 透明化をフルパワーで使った時とか結構疲れた覚えがあるんだけど……。

 

 などと、勝手に思っている横で、ツユっちはひたすらミサイルを連打している。

 

 クレヨンの色と同じ爆煙が立ちこめるせいで、どんどん視界が悪くなってるけど、まぁとりあえず効いてるっぽい、かな?

 

 ――そう思っていた時期が私にもありました……! ってかッ!?

 

 ニ体いたマネキンのうち、片方はツユっちが釘付けにしてるんだろう。だけど、無事だった方のマネキンは煙を抜けてツユっちに迫る。

 

 この状況はさすがに俺がフォローしないとマズいだろ!

 そう思って姿無き紳士(インビジブルマナー)を前に出すと、マネキンが地面を蹴って大きく飛び上がると、両手に持った武器を大上段に構えた。

 

「防げッ!」

 

 姿無き紳士(インビジブルマナー)に両手を交差させてそれを受け止めさせると――

 

「痛ってぇぇぇぇぇ……ッ!?」

 

 俺の両腕に激痛が走る。

 

「開拓能力が受けたダメージ。本体にフィードバックくるから気を付けろよ~」

「そういうのは先に言って下さいよ、先生ッ!」

 

 涙目になりながら叫びつつ、俺は姿無き紳士(インビジブルマナー)のボディブローでマネキンを打ち抜く。

 

 マネキンは身体をくの字に曲げて吹っ飛び、地面を転がるものの素早く立ち上がり、再びこちらへと迫ってきた。

 

 気が付けば、ツユっちのミサイルガトリングも止まっている。

 

「ツユっち?」

「なんかすっげー疲れた……」

 

 やっぱりMP的なモンとかあるんだな……。

 そう考えると、クレヨンミサイルのグミ打ちはどう考えたって燃費が悪いだろう。

 

「ミサイル飛ばせないなら、これで……!」

 

 とはいえ、そこはバスケ部員というか何というか……。

 疲れていようとも動こうとするのは流石と言っていい気がする。

 

 クレヨンの一つを飛ばさず突き刺すように、迫ってくるマネキンへと繰り出した。

 だがそれをうけたマネキンは微動だにせず、それどころか自分にぶつかってきたクレヨンを握る。

 

「いだだだだだだだだ!?」

「ツユっちッ!?」

「ミサイルの要領で握られてるクレヨンを切り離すんだ」

「や、やってみる……!」

 

 瞬間、マネキンの手の中でクレヨンが弾けた。

 おかげでクレヨンを握っていた手も砕いたけれど……。

 

「たぶん、スケブとクレヨンは見えない糸で繋がってるんだな。

 ミサイルとして飛ばすときはその糸が切り離されるんだろうけど……それが繋がっている状態だと、身体の一部として扱われて痛みがフィードバックする、と」

「手首が砕けるかと思った……」

 

 なにやら重要そうな考察をしてくれている草薙先生なんだけど、肝心のツユっちは聞いてなさそうなのが、また……。

 

「まぁ初戦はこんなもんか」

 

 後ろ頭を掻きながら、気安い調子で草薙先生は俺たちより前に出る。

 瞬間、片手を失ったマネキンが武器を振り上げ――

 

「ふッ!」

 

 ――た瞬間に、草薙先生の肘がマネキンの鳩尾に刺さっていた。

 しかも、当たった場所にヒビが入っていることから、俺の姿無き紳士(インビジブルマナー)のパンチよりも威力がありそうだ……。

 

 そして、肘を受けてマネキンが怯んだ直後、先生のカタツムリが横から思い切りブン殴る。

 

 吹き飛んだ先には、クレヨンのグミ打ちを受けてボロボロのマネキンがいた。

 ニ体のマネキンは絡まり合って転がる。

 

「すげーなー、ありゃ吹っ飛ばす位置にもう一体いるってちゃんと把握してやってるぜ」

 

 そうなんだろうなー……ぐらいには思ってたけど、ツユっちは確信を持って言っているのでそうなんだろう。

 

「格闘技だけじゃなくて、たぶん……バスケやサッカーみたいな人が入り交じってやるスポーツ強そうだな、先生」

 

 どこに誰がいて、ボールがどこにあるのか。

 そういうのを把握するような能力が高いんじゃないかと解説してくれるツユっち。

 その姿は、本当にお前ツユっちか……と言いたくなる。

 

 ともあれ――先生はニ体のマネキンが絡まり合うのを確認するなり、カタツムリを背負うかのような姿で地面を蹴った。

 

 そしてカタツムリの拳と自分の拳を重ね合わせると、思い切り振り下ろし、マネキンをニ体まとめて粉砕するのだった。

 

「ふむ。レベル的には十から十五ってところか?」

 

 煙のようになって消えていくマネキンを見ながら、何事もなかったかのように紫煙を吐く先生は、そんなことを口にする。

 

「何のレベルですか?」

「ん? こいつらのピースとしての強さ?

 あたしがよく遊びにいくエリアだと、体感三十から四十くらいのが彷徨(うろつ)いてるんだけどさ」

 

 レベルの基準は受け売りらしいけど……そんなことより……。

 

「イっくん……オレたち、強くないんだな……」

「そりゃそうだよな……。十柄や花道と比べたら、ほら……」

「あー……」

 

 なんていうか、開拓能力に覚醒したからって、リアルで調子に乗りまくってすみませんでした……。

 

「ちなみに、あたしが知る限り最上位レベルの開拓能力者は十柄鷲子ちゃんね。

 あれでまだ能力は第二形態らしいからなー。

 なんて言うか人型やそれに近い像が出てくるのって、能力の第三形態というか最終形態らしいんだよね」

 

 それってつまり、俺たちはこれ以上進化しないってことじゃん……。

 

「さて、自分たちのランクは自覚してくれたかな?

 それじゃあ、探索の続きと行こうか。理想としては最奥にいるボスを倒したいところなんだけどさ。行けそう?」

 

 笑顔で訊ねてくる先生に、俺とツユっちは顔を見合わせてから首を振る。

 もちろん。そんな拒否の意志なんてもの、先生は考慮してくれなかったんだけど……。

 

 




【TIPS】
 鷲子曰く、メイズ:髪々の愛した桃源郷 に出現するピースたちがだいたいLv30~40くらいのようである。
 以前、草薙先生と一緒に遭遇した石像の間に出てきたピースとは戦ってないので、その強さは不明。
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