フロンティア・アクターズ~私のルートはお断りッ! ヒロインに転生した私はHEROとの恋仲ルートを避けながら町の平和を守ります~   作:北乃ゆうひ/YU-Hi

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79.あの紳士たち、再び?

 

【View ; Syuko】

 

 夏休みが開けて、すでに二週間ほど。

 そろそろ生徒たちの夏休み気分が抜けてきて、通常の学生モードになってきたかな……といった頃のある日。

 

 授業が全て終わり、各々が帰りの支度をしている時間。

 私も同じように帰り支度をしながら、最近漂っている妙な雰囲気に、僅かに眉を顰めます。

 

 夏休み気分とは別の、あまり良くない浮き足だった空気が、最近学校に流れているような気がするんですよね。

 

 その原因が気になるものの、さりとて調べるにしてもとっかかりがありません。

 ……まぁそうやって首を突っ込もうと考えてしまっている時点で、陽太郎君や、草薙先生辺りに、お人好しがすぎると叱られそうですけど。自覚はあるんですよ。止められないだけで。

 

 気にはなれど、何も出来ないのなら仕方ないです。

 今日は普通に帰りましょうか。なんて思ってカバンを閉めて立ち上がった時――

 

「十柄さん、いる?」

「絃色先輩?」

 

 リコという名前でモデルの仕事をしている絃色先輩が、教室の入り口から顔を出して私の名前を呼びました。

 

「どうしました?」

「ちょっと、相談したいコトあるんだけど」

 

 どこか神妙な顔。

 まるで、以前のラクガキ事件の時を思わせる表情です。

 

 ――となれば。

 

「場所を変えた方が良い話ですか?」

「うん」

 

 いつもの空き教室に行くことにしましょうか。

 

 

 

「――で? 本当のところは?」

 

 いつもの空き教室の扉を開けると、安芸津先輩が富蔵先輩に対して壁ドンしてました。

 

「いやだから知らねぇってッ、マジで今回オレは無関係なんだよッ!!」

 

 何やら富蔵先輩も必死に首を横に振っている様子。

 

「いい加減なコト言うなよ。嘘だったら。(のろ)うぞ」

「嘘じゃねぇから呪うなよッ!!」

 

 倉宮先輩も一緒にいますね。

 ほんと、何があったんでしょうか?

 

「あのー……何をしてるんです?」

「む。おお! 良いところに来た。十柄」

「ナイスタイミングじゃん。十柄さん!」

 

 めっちゃ歓迎されてます。

 本当に、何があったんでしょうか?

 

「絃色もいるのか。どうした?」

「えーっと、十柄さんに相談があって。人目のないココで話をしようって」

 

 なるほど――と、倉宮先輩と安芸津先輩はうなずいた。

 

「その相談、ラクガキ事件リターンズが関係する?」

「まさにそれに関して相談しようかな、て」

 

 ラクガキ事件リターンズ?

 ようするにそれって……

 

「またラクガキ事件が?」

「ああ。だから。最有力容疑者を。締め上げていた」

「そういうコトでしたか。

 それなら、富蔵先輩が壁ドンされていたのにも納得できますね」

「納得しないでくれよ十柄ッ!?」

「それは流石に無理です」

 

 懇願するような富蔵先輩をバッサリ切り捨てました。

 

「どうして富蔵君が容疑者なの?」

 

 絃色先輩の言葉に、富蔵先輩を含む私たち四人は思わず顔を見合わせます。

 

(そういえば。絃色は知らされてないんだったか)

(示談はマネージャーさんと社長さんだけで本人は不在でしたから)

(超能力について教える必要もないもんね……)

(どうすんだよ……)

 

 ヒソヒソと相談(?)したところで解決はしないですものね。

 仕方ありません。開拓能力のことを伏せつつ、軽く説明してしまいましょう。

 

「富蔵先輩は卑猥なラクガキをする趣味があるので。壁とかに」

「微妙にフォローになってなくないッ!?」

「ダメだよ富蔵君。そういうのあんまりラクガキしちゃ!」

「ふつうに信じてるよ! いやそれならそれでいいんだけど!」

 

 富蔵先輩が何とも言えない様子で頭を抱えてますが、まぁ仕方ありませんね。自業自得です。

 

「つーか、マジな話。

 十柄たちにボコボコにされてから、ラクガキはしてねーよ。マジで。

 その辺は十柄が一番知ってるだろ?」

「それはまぁ」

 

 疑わしいは疑わしいんですけど、現状では彼のラクガキ能力は封印されているはず。

 以前のように、他人の身体へ簡単にラクガキをするのは困難なのは間違いありません。

 

「あ、富蔵君。十柄さんに叱られたんだ。

 それはそうだよね。次からは気を付けた方がいいよ?」

「リコちゃんからの気遣いが逆に辛いッ!」

 

 何というか、本当に賑やかな人ですよね。

 

「それはそうと、おめでとう富蔵」

「安芸津……急になんだよ……?」

「十柄さんが来てくれたお陰で君の容疑は晴れた。疑惑九十五%から五十%くらいにはなったよ」

「まだそんだけ疑われてるのかよ!」

「犯人が別に出てこない限り。お前への疑いはそれ以下になるまい」

「マジかよー……」

 

 それに関しては私も同意見です。前科が前科なので。

 

「まぁなんだ……頭から決めつけて疑って悪かったよ」

「本気で悪いと思ってんのかー?」

「さすがに、本当に悪いと思ってるさ」

「それならさぁ、お詫びがてらその二つの膨らみの先っちょくらい触らせてくれても……」

 

 安芸津先輩が謝罪するなり調子に乗りだした富蔵先輩を、私と倉宮先輩は睨みつけました。

 

「お前らの睨みマジ怖いからッ、冗談だよッ!」

「ダメだよ富蔵君。冗談でもそういうのはあんまり……」

「リコちゃんにどん引きされたッ!?」

「むしろ何でされないと思ったの?」

 

 ……なんて言うか、この人がいると話が進まない気がしてきました。

 

「とりあえず富蔵先輩の容疑が晴れ、この場にいてもらう必要がないなら帰って貰いたいんですが」

「そうだな。うん。もう用はない。さっさと帰れ。富蔵」

「容疑晴れたから用はないな。また明日な富蔵」

「お前ら、清々しいまでにオレを邪険にするよな」

「されない理由を探すのが難しいのでは?」

「トドメ刺しにくるなよ、十柄……」

 

 そうして、富蔵先輩は「うわーん、いじけてグレてやるぅぅぅ」などと騒ぎながら帰っていきます。

 いじけることにも、グレることにも――正直、無縁そうな人な気がしますけどね。

 

「さて。富蔵がいなくなったので。カーテン閉じて。教室に鍵を掛けようか」

 

 富蔵先輩が出ていくなり、倉宮先輩がそう告げると、待ってましたとばかりに安芸津先輩と絃色先輩も動き出しました。

 

 ……これ、実はすでに結構被害でてます?

 

「絃色。お前は大丈夫か?」

「うん。わたしは平気だけど……?」

 

 倉宮先輩の問いに絃色先輩は首を傾げました。

 

「そうか。ならなぜ十柄に?」

「友達がラクガキされたって言うから」

「なるほど。うちのクラスか?」

 

 その問いに、絃色先輩が首を横に振ったことで、私は眉を顰めます。

 仮に富蔵先輩の封印が解けてたとしても、クラスメイト以外にラクガキを施すのは難しいはず。

 

 そうなると、やはり富蔵先輩以外にも似たような能力者がいるということでしょうか。

 

「ちなみに、ワタシは被害者だ」

 

 ほれ――と、倉宮先輩はスカートのウエスト部分をめくって、ヘソ下を見せてきます。

 

「ついでにあたしもだ」

 

 同じように安芸津先輩も見せてきたことで、私は口の端をひきつらせました。

 

「以前のラクガキ淫紋と比べるとずいぶんと本格的ですね」

「マジック一発書きって感じじゃなくなったもんな」

 

 私の感想に、安芸津先輩はうなずきます。

 

「二人もラクガキされてたんだね」

 

 絃色先輩はのんびりとした感想を言っていますが、これは少々厄介かもしれませんね。

 

「これはわりとマジモノの呪いだ。

 ワタシのオカルト趣味が高じた。詛いなんかではない」

「実感としてどうですか?」

「今のところは何とも……。変な夢を見るくらいか」

「…………」

 

 変な夢――と口にした倉宮先輩の顔が珍しく朱に染まってみえます。横でうなずいている安芸津先輩の様子もどこか恥ずかしそうです。

 そのことから思うに、いやらしい夢でも見せられているのかもしれません。

 

 だからこそ、実感として本物だと――倉宮先輩は口にしているのでしょう。

 

「初期段階、ですかね?」

「だろうな」

 

 私の疑問に、倉宮先輩が即座にうなずきました。

 

「それの影響が強くなってきた時、私はお二人の言葉を信用できなくなりますね」

「可能性としてはあるだろうな」

「それってマジで薄い本展開がありえるってコト?」

 

 うへー……と安芸津先輩が青ざめます。

 まぁ、ああいうのはフィクションだから楽しめるワケですしね。

 

 色欲に狂って友人を売るようなことなんて、誰だってしたくないはずです。

 連鎖堕ちに巻き込まれるのも勘弁してもらいたいところですし。

 

「最近、学校中に妙な雰囲気が漂っていたのはこれのせいですかね?」

「お前も感じていたか。恐らくはそうなのだろう」

「それだけ被害が広いってコトかもしれないね」

 

 これは、富蔵先輩たちの事件とは比べものにならない出来事ですね。

 

「十柄。無理無茶承知だ。早急に頼む」

「協力できるコトはしたいけど、今の時点で信用度下がってるんだよね。

 ……あー、厄介な状況だなぁ……」

 

 頭を下げる倉宮先輩と、頭を抱える安芸津先輩。

 そんな二人を見て、絃色先輩はよくわかってなさそうですが……。

 

「陽太郎君は必要ですね。

 最悪を想定すると、女子より男子の方が動きやすいかもしれません」

「何であれ。十柄が堕ちたら負けだな。間違いない」

「倉宮、潔すぎない? まぁわからなくもないけど」

「なんか私の責任が重すぎませんッ!?」

 

 とはいえ――

 主人公(HERO)との恋愛(イチャイチャ)ルートを避けたい私ですが、それ以前に主人公と遭遇前にバッドエンドになるのは勘弁したいところ。

 

 そうならないように、立ち回っていくしかありません。

 

「実際重い。その点でも十柄には悪いと思う。

 だが悪いついでに。もう一つ背負ってくれ。二週間以内に解決を頼む」

「その期間に意味は?」

「カンだ。カンだが……。この文様の効果が。取り返しの付かないところまで浸透する期間を。そのくらいだと想定した」

「先輩ほどのオカルトマニアのカン。馬鹿にはできなそうですね。わかりました」

 

 これは、モタモタしている場合ではありませんね。

 

「了解しました。可能な限り可及的速やかに解決したいと思います」

 

 舞台が学校だと、権力での介入も第三者を利用した人海戦術も難しいのですけど……。

 開拓能力者と、開拓能力に理解のある人たち全員に、協力してもらいましょうか。

 

 





【TIPS】
 淫紋によるえっちな悪夢は結構深刻らしい。目が覚めた時、疲労感があるんだとか。その手の情報に馴れてないと、平時もそっちよりの妄想もしやすくなってしまって大変だという。
 安芸津と倉宮に余裕があるのは浸食度が浅いだけでなく、その手の話題や妄想に耐性があるから、らしい。

 安芸津
「え? みんなそういう妄想ってしないの? NL、GL、BLどれでもいいんだけど、そういうのであれこれ妄想しない? アニメとかマンガだけじゃなくて、クラスメイト同士とかでかけ算と妄想するでしょ? しないの? しないのか。そうかー……」
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