フロンティア・アクターズ~私のルートはお断りッ! ヒロインに転生した私はHEROとの恋仲ルートを避けながら町の平和を守ります~   作:北乃ゆうひ/YU-Hi

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86.許せるラインなどとっくに過ぎて

 

 9月28日(土) 想定期限(タイムリミット)まであと10日

 

【View ; Syuko】

 

 二日ほど学校を休んでしまいましたので、本日は土曜日。

 朱ノ鳥学園高校は、土曜は基本的に休みですので、明日も合わせると結果として四連休になってしまいました。

 

 まぁ、現状はあまり学校に行くメリットがないので、どうしたものでしょうね。

 お父様には報告してありますし、藤枝さんからも理解して貰っているので、家にいる分には問題はないのですが。

 

 ただ、お父様も藤枝さんも、だいぶ殺気を漲らせていました……。

 犯人次第では、血の雨が降ったり……しませんよね?

 

 そんな感じで今日の予定について考えていると、陽太郎くんからLinkerにメッセージが届いていました。

 

 午後三時に、濡那原(ヌナハラ)神社に来て欲しい――ですか。

 問題はないので、わかりましたと返しておきましょう。

 

 ならば、その約束の時間まで何をしようか――と考えていると、和泉山さんが部屋にやってきました。

 

「お嬢様、頼まれていた資料。集めてきました」

「ありがとう。もう集まったんだ」

「一般人の情報収集など、我々には造作もありませんので」

 

 和泉山さんに頼んでいたのは、朱学(アケガク)の先生たちの情報です。

 

 人を操る能力を無条件に好き勝手使えるとは思いません。

 強力な効果ほど制約があるのだと考えれば、『対象が女性であること』のほか、『触れる』『目を合わせる』などの近接条件があるというのが推測できます。

 

 そこから踏まえると、学園内での淫紋の広がり方は、生徒のモノとは考えづらいです。

 

 となると、教師。

 また伊茂下先生も、不自然な嫌われ方をしているという情報もありました。

 

 そのあたりの人間関係から、教師たちを調べれば分かるのではないか……と思ったのです。

 

 陽太郎くんとの待ち合わせの時間までは、この情報の精査を優先してやっていきましょうか。

 

 

 

 

 時間が迫ってきたので、和泉山さんに車を出してもらい濡那原神社へと向かいます。

 

 先生たちの経歴なども見てみましたら、あまりピンと来るものはありませんでしたね。

 強いていえば、織川先生が引っかかったくらいでしょうか。

 

 あの人、見た目通りというか何というか、エリートコース歩んで教師になられたようですね。

 でも、なりたくてなった……というよりも、そのコースで手っ取り早く地位を得るのに教師になったという感じがしなくもないです。

 

 経歴だけみると伊茂下先生も似たような感じです。

 こちらも、流れに身を任せていたら教師になっていたような……そういう風に思えます。

 

 だからでしょうか。

 織川先生は、伊茂下先生に良い感情は持っていないようです。

 同族嫌悪なのか、もっと別の要因があるかは分かりかねますが……ただ、伊茂下先生の方は、織川先生のことはあまり気にされてない様子。

 

 その相手にされていない感のようなモノも、織川先生には面白くないのかもしれませんが……。

 

 ……こう列挙していくと、織川先生が子供っぽいだけなようにも感じますね。

 

 つらつらと考えているうちに、濡那原神社の近くにあるコインパーキングに到着です。

 ここに車を停め、和泉山さんと濡那原神社に向かいます。

 

 約束の三時にはまだ十分ほど早いですが、すでに陽太郎くんと栗泡先輩はいますね。

 

「来てくれてありがとう、鷲子くん」

「いえ。それで話とは?」

 

 横にいる栗泡先輩の顔がかなり険しいことを見ると、あまり良いお話ではなさそうですが……。

 

「最悪の事態が起きた」

 

 陽太郎くんの声が重いです。これはよっぽどのことなのでしょうか……?

 

「ツユっちが……富蔵露定が、昨日、病院に搬送された」

「病院に?」

「家庭科調理室が爆発した。ツユっちと、女子生徒の二人がそこにいたんだ。

 ツユっちは全身ヤケド。特に背中が酷いらしい。しかも、明らかにヤケドとは異なる原因による左腕の骨折があった」

「…………!」

 

 思わず、息を飲みます。

 それは……つまり……彼は犯人に……。

 

 とりあえず、一番危険な峠は越えたそうなのでひとあんしんですが……。

 

「ツユっちと一緒に入院した女子生徒は――彼女は言動がブレブレで警察も頭を抱えている」

「どういうコトですか?」

 

 訊ねると、栗泡先輩はどう答えようとか悩む素振りを見せました。

 そこへ、陽太郎くんが補足するように口を出します。

 

「富蔵に押し倒され、富蔵がイタズラをした結果、調理室が爆発したという証言を一度していたんだ。

 ところが、もう一度同じ質問をされた時、涙を流しながら首を振った。

 その日の放課後の記憶はあいまいで、気がつくと富蔵が自分に覆い被さっていて、周囲は煙と火に包まれていた、と。

 背中に大怪我を負い、骨折した身体で自分を助けてくれた人が、自分を押し倒しただなんて思えない……なのに、なぜか自分は彼が押し倒して火をつけたと、気を抜くと口にしてしまうんだ、とな」

 

 陽太郎くんの話で、私も状況を理解しました。

 本心とは別の言葉を口にすることを強制されている――その人も能力の影響を受けているのですね。

 

「女子生徒を押し倒していたのは、淫紋事件の犯人」

「ああ――そう思う」

「同感だ」

 

 それを富蔵先輩が目撃し、調理室の爆発に繋がったのでしょう。

 

「オレが助けた時点で、ツユっちは意識を失ってたんだけど……救急車に運ばれる途中で、一瞬だけ目を覚ましたんだよ。そん時、左手とヘソにラクガキしておいたって言って、また気を失っちまった。

 誰の――とは言わなかったけど……」

「聞くまでもありませんね」

 

 能力の封印が解けた彼は、自分を襲った犯人へとラクガキを残した。

 

「彼の能力によるラクガキは、彼が消そうと意識しない場合、最長で三十日は消えないハズですね?」

「ああ」

 

 実際、能力を意識して使ってない時や、睡眠時にも消えてなさそうですから、気絶してようが――最悪死んでしまったとしても、ラクガキは消えないのでしょう。

 

「犯人の予想はできてますか?」

 

 陽太郎くんは首を横に振りますが、先輩は少し真面目な顔でうなずきました。

 

「顔は見てない。だけど、理科準備室にある伊茂下先生の机に何かしてたやつなら見た。背格好からして、たぶん織川だ」

「先輩は、どこでそれを見た?」

 

 陽太郎くんに問われると、栗泡先輩は困ったように頭をかきました。

 

「雰囲気に流されて、伊茂下が犯人かなって思って……ちょっと準備室覗きに行ったんだよ。

 ただ誰もいなくて、ちょっと拍子抜けしながら準備室の中を見て回ってたら、人が入ってきたんだ。だから慌てて隠れて」

 

 その入ってきた人というのが、織川先生ではないかと思ったそうです。

 

「雰囲気がさ、尋常じゃないっていうか、伊茂下先生を潰してやるって感じまんまんでめっちゃ怖くて……うっかり物音立てて誰だ! って言われて、見つかったらやばい……! って思った時、姿なき紳士(インビジブル・マナー)が復活して、事なきを得たよ……」

「命の危機でも感じたんですか?」

「感じた。上手く説明できないんだけど、誰だ! っていう問いかけは殺気の塊というか、そういう感じで」

 

 その後、何かしようとしていた人が準備室を出ていったあと、能力を解除したタイミングで伊茂下先生に見つかってしまい、色々と言い訳をしたそうです。

 

「鷲子くん。タイムリミット関係なく、犯人を早々に捕まえるべきだと思うが?」

「同感です。バレた時に、目撃者を殺すコトにためらいもない相手を野放しにしておくコトはできません」

 

 状況によっては栗泡先輩も大怪我をしていた可能性があります。

 

「現状、私は学校へ行っても役に立てないと思いますので、能力を消滅させる為に、メイズ攻略を優先します。

 こちらが、能力の核を破壊するタイミングで、織川先生を追求して頂けると助かります」

 

 陽太郎くんはメイズを知らなかったので、軽く説明します。

 それを理解したのか、彼は小さくうなずきました。

 

「ふむ。まだ織川先生が犯人だという確定情報があるワケではないが、そのつもりで動こう。

 雨羽くんはそちらに回す。その代わり、花道くんはこちらで使う」

 

 おや?

 

「えっと、華燐さんも協力してくれているんですか?」

 

 私が訊ねると、陽太郎くんはわざとらしく、今思い出した調子で言いました。

 

「ああ――そうだ。彼女から伝言がある。

『ゴメンは全てが終わったあとで。そしたら、また友達に戻してください』だそうだ」

 

 はらはら……と、気がつくと私の目から、自然と涙が流れてきます。

 慌てた様子でハンカチを差し出してくる和泉山さんから、それを受け取り、私は目頭に当てました。

 

「やる気、いっぱい出てきました」

「何よりだ」

 

 いつもの澄ました顔の中に、わずかな笑みを宿して陽太郎くんがうなずきます。

 

「お嬢様、キリカがメイズ攻略に参加するというのでしたら、白瀬も呼びましょう。髪の毛メイズを攻略したときの少数精鋭で、最短突破を推奨します」

 

 涙を拭った私からハンカチを受け取りながら、和泉山さんが提案してきます。

 

「そうですね。可能なら明日のうちに、メイズの最奥手前まで攻略しておき、月曜日の放課後に核に向えるようにしておきたいですね」

 

 その為には、今日中にカギとそれが適合する入り口を見つける必要がありますが……。

 

「目標が定まったなら話は早いな」

 

 陽太郎くんの言葉に、私はうなずきます。

 

「頼りないかもしれないけど、オレも協力できるコトはする。

 ツユっちは、なんやかんやで友達だしな。あんなケガさせるような野郎を野放しにはしたくない」

「ありがとうございます」

 

 さぁ、反撃といきましょう。

 

 まだ確定でないので名指しはしませんが……。

 悪夢を作る淫紋能力者と、その能力である鳥かご男さん。

 

 私たちが、誰にケンカを売ったのか、身を持って教えて差し上げますので!

 

 





【TIPS】
 物陰から見ているモノさん。
 誰もチーズカレーまんを用意してなさそうなコトに、不満を抱いている模様。
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