フロンティア・アクターズ~私のルートはお断りッ! ヒロインに転生した私はHEROとの恋仲ルートを避けながら町の平和を守ります~   作:北乃ゆうひ/YU-Hi

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9.ヘアー&エイリアン その3

 

「我慢比べと行きましょう。もっとも、自慢げに手の内を開かしてくれたので、私の方がだいぶ有利でしょうけど」

 

 そう告げると同時に、私は自分の髪の毛に対して、自分の能力を使いました。

 

 私の髪の毛は緑色に染まり無数の植物のツタのようになっていきます。

 当然、融合されヘアリアン化した髪も全てです。

 

 彼の能力と私の能力を比べると、私の方がレベル――現実化したこの世界にフロンティアレベルという概念が実在しているかはわかりませんが便宜上こう呼びます――が上だからでしょう。

 

 あるいは、意志の強さのようなものも、関係しているのか。

 その辺りのメカニズムは、まぁ脇へ置いておきましょう。今は、重要ではありません。

 

 私の静かに栄える植物園(プラント・プラネット)は、ヘアー&エイリアンの効果を上書きしていっている。それこそが一番重要なことです。

 

 そして、ヘアー&エイリアンを上書きしていくことで、思考も身体もクリアになっていくのを感じます。

 

「ちょッ!? まじかよッ!? なんだよそれ……ッ!!

 くっそッ! 駅前で俺の腕が木になっちまったのは気のせいじゃなかった……! あれはッ、お前が……ッ!!」

 

 こちらが睨みながら一歩踏み出すと、彼はそれに気圧されたように、一歩後退りました。

 

開拓能力者(フロンティア・アクター)が相手を傷つける目的で開拓(フロンティア)能力を使った時……。

 傷つけられる側もまた開拓能力者であるならば、こういう構図になるものです。別に不思議なことでもないでしょう?」

 

 もう一歩、私は踏み出します。

 

「力を持つというコトは責任を伴うんです。

 暴力も、権力も、財力も、超常の力であっても――どんな力であろうと。それらを自由に使うコトは、責任とセットであって然るべきなんです」

「だったらッ、お前は何なんだよ……ッ! お前だってッ、力を使ってるだろ……ッ!!」

 

 叫ぶ男に、だけど答えたのは私ではなく――

 

「だから言っているだろう。彼女は責任を背負う覚悟がある。君と彼女の大きな差はそこだ」

 

 唯一のギャラリーであるスーツ姿のおじさん。

 これまでのどこか情けない様子ではなく、キリッとした正義感と覚悟を抱いたような面持ちで、告げます。

 

「必要とあれば彼女は私をも殺すだろう。唯一のギャラリーは私だけだ。

 君を殺し、私を殺し――そして彼女の持つ超能力であれば、隠蔽も容易いと思われる。

 加えて、彼女の立ち振る舞いや家訓から出自も分かる。

 その気になれば文字通り、権力と財力をもってもみ消すコトも可能だろうね」

 

 ああ――

  これは――

 

 どうやら一番見られてはいけない人に見られてしまったようです。

 

「お嬢さん……君は世の影から、この手の超能力者を取り締まる側の人間だね……?」

「そこまで明確な目的は持ってませんが――結果としてそうなるコトも多いのは確かです」

 

 この世界ではまだ実行してませんが、フロアクの世界観やシナリオを思えば結果としてそうなるのは間違いありません。

 

 だから嘘は言ってませんよ?

 今回が、十柄鷲子としての初戦闘というだけで。

 

「その答えだけで充分だね、うん」

「ワケのわからねぇコトッ、言いあってんじゃねーぞッ!!」

 

 美容師の男性は立ち上がり――

 

「ヘアー&エイリアン……ヘアナックルッ!!」

 

 そして自分の髪の毛を増毛させて、その毛で巨大な拳を作り出します。

 

「金属バット、バールのようなもの、刃物に、拳銃……。

 結局のところ超能力者だろうと、この手の輩が追いつめられるとこうなるか」

 

 ヘアナックルを見ると、スーツ姿のおじさんは嘆息混じりにそう呟きました。

 しかしおじさんは、焦った様子もなく、美容師を一瞥だけすると、私に一度視線を向け、そして外しました。

 

 その意味を、私はしっかりと理解します。

 目の前の出来事から目を逸らしておいてくれているうちに、まずは決着といきましょう。

 

 私は地面を蹴り、素早く美容師へと踏み込んでいきます。

 それに反応してヘアナックルで真上から振り下ろしてきますが、そんな大振りの攻撃(テレフォンパンチ)に当たるわけがありません。

 

 上から落ちてくるような巨大な拳に対し、姿勢を低くしながら私はさらに力強く地面を蹴り、前に向かって滑るように、美容師の懐に飛び込みます。

 

「……ッ!」

 

 こちらを見下ろしながら驚愕に目を見開く美容師。

 ですが、このタイミングで対応できる術を持たないことは把握済み。

 

 ――何もかもが手遅れですッ!

 

 私は左の拳を引き絞り、すくい上げるようなアッパーカット気味のボディーブロウを美容師の鳩尾にねじ込みました。

 

「……ァッ!」

 

 彼の喉から空気が漏れる音を聞きながら、私はくるりと背を向けて、彼のこめかみめがけて、後ろ回し蹴りを一閃ッ!

 

 こめかみを強打され、その勢いできりもみしながら宙を舞い、彼はみっともなく地面に落ちました。

 どうやら、蹴りの衝撃で脳震盪(のうしんとう)を起こしたらしく、完全に目を回しているようです。

 

 今のうちに、彼の上着を全て蔦にして縛り上げ、目を覚ましてもすぐに動けないようにしましょう。

 ……どことなく触手プレイっぽさが出てしまいましたが、その事実には目をそらします。重要なのは彼を拘束することですからね。はい。

 

 ともあれ――

 

「これで、決着です」

「……決着に超能力を使わないんだね」

「触れたものを植物に変える能力って、戦闘に使いづらいと思いません?」

「そういうものかい?」

 

 ヘアー&エイリアンによって地毛と融合した元毛は、私の能力と彼の能力の複合作用もあったのか、不思議と元に戻ってるっぽいので、結果だけ見れば……めでたしめでたし、ですね。

 

 ……さて、このおじさんはどうしましょうか……。

 

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