三転生   作:ははもり

1 / 2
飛びます飛びます

 目が覚めるとそこは知らないベットの上でした。

 漫画とかで読む分にはいいがいざ自分が陥ると困るなこれ。

 さて、ここはどこなんだ。そしてなぜ俺はこんな所で寝ているんだ。

 なんて思いながら周りを見渡すとなんだかデカい黄色のネズミと目があった。

 

 「ピカ? ピカッチュウ! ピカピカ!!」

 

 その黄色いネズミは俺に気づくと、勢いよく俺へと飛びつき、「チャ~」なんて嬉しそうな声で俺へと頬ずりしてきた。

 なんだこいつ!?

 いや知ってるけれど!。

 どう見たってあれですよね!?

 日本人なら知らぬものなし、某夢の国のネズミとガチンコできそうなくらい世界的にも有名なあれ。

 

 「……ピカチュウ」

 

 「ピカ!」

 

 俺が名前を呟くと、黄色いネズミ、ピカチュウは勢いよく手を上げて自分を誇示した。

 …………なるほどなるほど、つまりあれは夢じゃなくて、その上俺は。

 

 「異世界転生しちゃったのかよ……」

 

 「ピ?」

 

 ピカチュウは俺の言葉によくわからないとでも言うように首を傾げ、俺はそれを見てうな垂れた。

 どうすんのこれ……。

 

 

 

                                                    ★

 

 

 俺の名は佐藤静(さとうしずか)

 春にある程度の進学校である地元の高校へと入学した俺は暫くして汗の零れ落ちる時期を迎えた。

 そう、高校一年生の貴重な夏休みを迎えた俺は、友人の忍者担当の成瀬当麻(なるせとうま)、バカ担当熱途光(あつどひかる)と共に雄叫び上げながら、ガキの頃からよく遊んでいる家の近場の山を駆け回っていた。

 

 「くたばれゴミ共ォ!! テメーらなにかましてくれてんだボケェエエエ!!」

 

 俺は森にあった手近な木の棒を振り回しながら吠えた。

 キレ散らかしている理由としては成瀬と熱途がやらかしたからだ。

 いつの間に変えていたのか、アラームにAVの音声設定しており授業開始と同時に流れてきたせいだ。

 

 「うるせえボケぇ! テメェも似たり寄ったりだろが!! 俺のスマホにエロゲの濡れ場設定しやがって!! やっていいことと悪いことがあんだろうが!! 授業中に『やらぁ! いくぅうううう!!』なんて音声流れてきた俺の気持ちがわかんのか!?」

 

 「拙者のスマホにはホモビでござるよ!? 一部の女子と男の目が優しくなったのが怖かったでござる!! 殆どテロでござるよ!! しかも拙者保健体育中に先生から『そういうこともあるよな』なんて優しい笑みで頷かれたでござるよ!? 理解してくれたのが泣きそうだったでござるよ! 屈辱もいいとこでござるはボケェ!!」

 

 上から熱途と成瀬がそう言ってブチ切れながら木を振り回してくる。

 俺達は全員クラスは別であるが三者三様共に同じ時間にアラームテロを企てていたらしく、全員授業中に音声爆撃を食らったようである。

 幼稚園の頃からの付き合いではあるがこんなところで息を合わすんじゃねえと言いたい。

 「類友でござるよ」

 

 「ナチュラルに人の心を読むんじゃねえクソ忍者」

 

 「長い付き合いのせいで大体何を考えてるのか顔を見ればわかるでござる」

 

 「キモいな」

 

 「それは拙者も思ったでござるな、どうせならこんな台詞は彼女か嫁にでも言いたいでござる」

 

 「それは言うな……」

 

 この忍者は幼稚園の頃に忍者に憧れて以降口調が忍者口調になった本物のやばいやつであるが、お互い付き合いが長いせいかお互いの考えていることがなんとなくわかる。

 そしてお互いにお互いを嵌めては嫌がらせをする毎日のせいか俺達は非常にモテない。

 むしろ学校の女子からは毛虫でも見るような目で見られるので希望すら持てない。

 

 「ちくしょう……泣けてきた……」

 

 「拙者ら何してるんでござろうな……」

 

 

 俺達は空を見上げこの世の無常に涙した。

 俺達は正直顔面偏差値で言えば高い方である。

 忍者もバカも正直カーストでは上の方の顔をしているのだがやはり顔だけじゃモテないんすね。

 学校カースト最底辺を爆走しており女子に話しかければ叫ばれ、男には「そのままのお前たちでいてくれ」と恋敵の発生を抑止してくる。

 正真正銘のゴミグループである。

 

 「そういえばバカ熱途はどこいったんだ?」

 

 「はて、さっきまで怒り狂ってたはずでござるが、どこかでエロ本でも見つけたでござるかな?」

 

 「いくらバカでもそんなに猿じゃねえだろ、アイツ」

 

 「いや学校のトイレで自家発電するくらいには猿でござるよ」

 

 マジか、知ってたけど。

 しかしいくらそんなやつでもケンカの最中にエロ本を読み漁るバカではないはずだ。

 そう考えていると、熱途バカがどこにいたのかひょっこり顔を出し、手招きしてきた。

 

 「おーいクソ共! これ見てみろよ!なんかおもれーもんあるぞ!」

 

 「なんだバカ、エロ本でも見つけたかバカ。俺にも見せろ」

 

 「バカの上に猿とは救えねーでござるな。拙者も気になるでござる」

 

 「死ねゴミクズ。テメーら罵倒してからじゃないと喋れねえのかビチクソ共」

 

 テメェが言うなサル野郎。

 そうして俺達は熱途の言う場所へ向かうと、薄暗く不気味な心霊スポットのような雰囲気を漂わせるトンネルがあった。

 あまりに雰囲気がありすぎて幽霊でも出そうだ。

 

 「な、面白そうだろ? 今にも幽霊が出そうじゃね?」

 

 そう言って熱途がトンネルを指差すと、忍者の成瀬が顎に手を当てて疑問を口にした。

 

 「……確かに面白そうでござるが、拙者らここら辺でよく遊んでいたというのにこのような目立つものに気づかないなんてあり得るでござるか?」

 

 確かにそうだ。

 幼稚園の頃からの付き合いであり、その頃からこの山を駆け回っている俺達の目に止まらない、しかもこんな目立つトンネルが、そんなことあり得るんだろうか。

 だがバカの熱途はため息をつきヤレヤレと首を振る。

 

 「灯台下暗しとも言うだろ? 自分達の直ぐ側にあるもんには存外気づかないもんだよ。まあバカには分からんか」

 

 「バカのお前に言われるのは癪だが……色々言いたいけどどうせお前が中に入りたいだけだろ」

 

 「そしてあわよくば女の子の幽霊とかいないかなとか思ってるでござるな」

 

 「お前らなんで俺のことそんなに分かってんだよ!!」

 

 「「付き合い長いからな(長いでござるからな)」」

 

 「気色わりぃ……」

 

 それは本当にそう。

 熱途が嫌悪で舌を出しながら顔を歪めていた。

 忍者と俺も同じ顔をしていた。

 嫌なシンクロである。

 さて、そんなバカを放っておいて忍者がトンネルの外縁部触りながら「このトンネル向こう側に通じてるでござるよ」と奥の小さな光を指した。

 それに俺は興味をそそられ見てみると思ったより頑丈そうなトンネルであり、確かに向こう側に通じていそうだった。

 

 「開通はしたものの不要になったトンネルなのかね。忍者とバカはどう思う?」

 

 「そうでござるな。それか一時期だけ使っていたのかもしれんでござるな」

 

 「俺細かいことは分からん! バカだから!」

 

 まあそういった所だろうな。

 いつ頃に作られたかも、どんな目的で作られたかも分からねえがそれを知ってもどうにもなんねーしどうでもいい。

 しかしバカは本当にバカだな。

 まあそんなことより。

 

 「結局こいつはどこに通じてるんだ?」

 

 「それそれ、それよ。幽霊も気になるけどこの先どうなってんだ?」

 

 「山の裏側にでるだけでござるよ。それはそれとしてなんか面白そうだから行くでござる」

 

 この忍者、相変わらずアクティブだな。

 まあじゃねえと本気で忍者エミュなんてしねえか。

 しかしだな、ここは今から行くか行かないかの相談パートに入るとこだっただろ。

 危ないから! とか幽霊でそう! とかビビる所じゃないんですかね?

 まあ結局行くに決まってんだからあんまり意味は無いんだけど。

 そんなことを考えていた俺をおいて忍者はガンガントンネルの中に入っていく。

 

 「置いてくなよ! 俺も行くって」

 

 「そうだそうだ!お前だけ先に行って女の幽霊にお前が呪われる羨ましいシチュエーションは許さん」

 

 「普通は呪われたくないんもんなんでござるがなぁ……サル過ぎるでござろう……」

 

 今更だ。

 誕生日にTENGAをプレゼントしたら怒るどころか泣いて喜んだやつだぞ、何を期待してるんだ。

 俺と忍者はそんなサルバカをできるだけ視界に入れないようにトンネルへと進

む。

 

 「思ったよりひんやりしてるな」

 

 「まあ基本的に穴の中は冷えるもんでござるからな。それよりトンネルが暗過ぎて面白くないでござる」

 

 壁すらあんまり見えないからな。

 そう思いながらスマホを取り出しライトをつける。

 

 「なんだこりゃ……」

 

 ライトをつけ壁へと光を照らすとそこには異様、というにはあまりにもく知っている光景が広がっていた。

 

 「ポケモン……か? これ?」

 

 壁一面を埋めるあらゆるポケモンの絵。

 現代風のもあれば初代のポケモンのような絵に、アンノーンでわざわざ名前を書いている気合の入れよう。

 全ての種類のポケモンが描かれているんじゃないかというほどにそれは光の先まで描かれていた。

 どこかの暇な大学生がトンネルをキャンバスにラクガキでもしたのか? と思うも、俺はそういうこともあるかと先へと進もうとしてふと気づいた。

 こういうことで騒ぎそうなバカと忍者の声がしないのだ。

 ――――ひやり、とした。

 トンネルの気温が低いからではない、これはどちらかという嫌な予感だ。

 そんな嫌な予感に従い俺は勢いよく振り返ると、そこには誰もいなかった。

 こんなトンネルで、隠れれる所もなく、足音もなく、あの二人が急に消えた。

 

 「……おいおい、マジで幽霊でも出たのかよ」

 

 冷や汗が顎を伝う。

 こんな異常現象、想定なんてしていない。

 俺はこのままここにいると不味いと思い、急いで引き返そうとした。

 だが……

 

 「……入口が……ない……嘘だろ?」

 

 入口が暗い闇に覆われていた。

 入った時は間違いなく明るかった入口の光がまるで底なしの闇に蓋でもされたかのように覆われおり、引き返すと不味いことになるという警告が脳に響く。

 もはや目指す場所は出口しかなくなってしまった。

 しかし、こんなやばそうなトンネルの出口、ろくな結果が待ってる気がしない。

 

 「なんて言っても行くしかねえよな……」

 

 このままここに立ち止まり続けても、結果はろくな結末が待っている気がしない。

 俺は意を決して足を踏み出し出口に向かった。

 少しでもここにいたくないという思いが足を早めたのかあっという間に出口の光が強くなり、暗闇に慣れていた目が光で少し痛くなったころ、外から凄まじい振動とともにビルでも倒壊したかのような轟音が聞こえてきた。

 明らかな破壊音。

 なにかとてつもないものがぶつかりなぎ倒されていく、重機を使った? いや、それよりも爆弾でも炸裂したのではないかと思える音。

 そんな音に、俺の元々怯え竦んでいた足がピタリと止まるには十分であった。

 

 「……外で戦争でもしてんのかよ。あいつら……大丈夫か……? いや俺だけおかしい場合もあるけどさ」

 

 不自然なまでの光で出口から外の景色が見えない。

 だから余計に恐怖が妄想を掻き立てる。

 だが後ろを見ても暗闇しかない。

 俺は恐怖で色々と妄想をしたがしかし、この怯え立ち竦んでいる状況にドンドンイラついてきた。

 

 「なんだよなんだよ!! どうせ行くも地獄帰るも地獄なら進むしかねえよ!! ちくしょうめ!!」

 

 ここでまごついていてももはやどうにもならんと俺は意を決して出口へと飛び出すことにした。

 俺はダッシュで光に目掛けて飛び出した。

 

 「南無三! ってなんじゃありゃ!?」

 

 勢いよく飛び出した先には――――化け物がいた。

 それは、山のような巨体で怪獣の様な見た目のモンスター。

 腕の一振りで木々が倒壊し、鎧ようなゴツゴツとした体と凶悪そうな顔がいかにもモンスターと言える恐ろしい姿。

 あれは……。

 

 「バン……ギラ、ス……?」

 

 それは昔ゲームで見たモンスターだった。

 先程のトンネルを思い出す。

 壁一面のポケモンの絵。

 そしてまるで手招きしているかのようにトンネルの奥へと連れていかんとする異常現象。

 これはまるで。

 

 「……変則的な異世界転生物みたいだな」

 

 だとしても神様もいなけりゃ死んでもない。

 召喚されたわけでもなく妖怪枕返しも出会った覚えもない。

 一体全体俺は何に巻き込まれたんだ?

 俺は明らかな異常現象にフリーズして答えの出ない問いを延々と考えていたそんな時、バンギラスが暴れている原因が目に入った。

 

 「ピカッ! ビィカッヂュ!!」

 

 ピカチュウ。

 日本人ならば知らない者はいないレベルで世界的にも有名なキャラクター。

 そんな小さなネズミがボロボロなりながらバンギラス相対していた。

 何があったのかは分からないがそのピカチュウがバンギラスを酷く怒らせていたみたいだ。

 よくよく周りを見れば食いかけの木のみ。

 なるほど、縄張りに入って勝手に食ったなこいつ。

 

 「グォオオオオオオ!!!」

 

 「ピッカ! ピカピカピカ! ピッカッチュウ!!」

 

 バンギラスのはかいこうせんとピカチュウの素早い動きで外れたはかいこうせんが周りを破壊していく。

 木々が倒壊し、岩が破壊され、地面がえぐれる、正しく地獄の降臨だ。

 俺はその状況を見て、とりあえずの結論を出した。

 

 「とりあえず巻き込まれそうってことは分かった!!」

 

 不慮の事態に巻きこれたら人間動けなくなるものだが、状況が分かれば存外人間って動けるもんなんだな……と冷静に考えながら俺は巻き込まれない位置まで退避しようとする。

 目指すはここ以外のどこかだ。

 俺は今すぐ逃げようと背を向けて走り出そうとした――――瞬間。

 

 「ビガァ!」

 

 「うごぉえ!!」

 

 凄まじい速度でふっ飛ばされたピカチュウが偶然俺のところまで飛んできて俺の背に突撃してきた。

 ……痛みと衝撃で吐きそう。

 

 「グォオオオオオオォオオオオオオ!!!」

 

 しかもバンギラスが俺に気づいたせいで俺もロックオンしたみたいだ。

 バンギラスはなぎ倒した木の上に足をのせ、俺に向かってニヤリと笑う。

 ……これ、絶対絶命?

 

 「くっ、クソがああ!! まだ彼女もいたことないのにこんなところで死ねるかよぉおおおお!!」

 

 神様だが妖怪だか知らんが俺をいきなりこんな訳の分からんところに連れて来やがって!!

 お前らが笑ってこの状況に叩き込んでるならいいだろうよ!

 全力でピエロになってやろうじゃねえか!!

 

 「日本人ならな! ピカチュウの技構成は大体アニポケで履修してんだよ!! ピカチュウ!! 今だけ俺の言う事を聞いてくれ!! この状況なんとかするぞ!!」

 

 「ピカ?」

 

 「一時的なトレーナーになってやる! 俺がお前のサトシだ!!」

 

 「ぴ、ピカ」

 

 ピカチュウは戸惑いながらも俺の真剣な顔を見て気圧されたのか流れのままにコクリと頷いた。

 言葉が通じるのは有り難いそして言うことを聞いてくれるのもありがたい。

 技構成が果たしてサトシさんと同じかは知らんが、もうこうなれば破れかぶれだ! 俺がサトシのつもりで命令してやる!

 俺はバンギラスが余裕綽々に木に足をおいて見下している姿を見て、思いつく。

 

 「ピカチュウ!まずはでんこうせっかで近づいて足元の木にアイアンテール!!」

 

 「ピカ!! ピカピカピカピカピッカチュ!!」

 

 「ぐお!?」

 

 バンギラスはなぎ倒しまくった木の上にいたため、いきなり足元を崩された結果バランスを崩したたらを踏む。

 大きくバランスを崩したバンギラスはなんとか体勢を立て直そうと必死だ。

 そのチャンスを逃さず俺は矢継ぎ早に指示を出す。

 

 「今だ! ピカチュウ! バランスを崩したバンギラスの顎にアイアンテール!! からの全力で十万ボルト!!」 

 

 「ピカ!!」

 

 ピカチュウは俺の指示を聞くと、迷いなくバランスを崩したバンギラスの顎へとアイアンテールを放ち直撃。

 あまりの衝撃に目を回したのかバンギラスはぐらつき、倒れそうになっているところ止めの十万ボルトが炸裂。

 バンギラスはそのまま気絶するように地に伏せた。

 ……よかった。

 バンギラスと言えど大した強さじゃなくて。

 これで凄い強いバンギラスなら俺は泣きながら逃げてたね。

 

 「しゃぁオラ!! コレぃ!! 見たかこんちくしょうめ!! 神だろうが妖怪だろうがこの俺がいる限りなんとかしたるわボケエ!!」

 

 「ピカ!!!」

 

 「ぐぇえええ」

 

 俺が雄叫びを上げていると、ピカチュウが俺に向けて突進して嬉しそうに俺の体を駆け回った。

 意識の外からのとっしんは勘弁してくれませんかね……。

 目に光が走ったよ……。

 

 「あいたたた。ちくしょう俺は頑丈じゃないんだから簡便してくれよピカチュウさんや」

 

 「ぴ? ぴかちゃあ〜」

 

 おいおい嬉しいのは分かったから頬を擦り付けんな。

 なんか微妙にビリビリくるんだよ。

 痛くないけど痒い。

 

 「しっかしピカチュウさんや、お前バンギラスの縄張りで勝手に飯食っただろ。怒り心頭だったぞこいつ」

 

 「……ピッカ〜」

 

 そう言ってピカチュウは俺の腕にポスんと収まると反省しているのか、耳をしゅんとさせた。

 かわいいなこいつ。

 

 「まあ反省してるなら良いんだけどよ。次から気をつけろよな」

 

 「ピカ」

 

 「よし、取り敢えずこいつが目覚める前にさっさと逃げ……」

 

 ようと言おうとした瞬間影がさした。

 俺はその影がなんなのかを察しながらもまるでブリキの玩具になったかのようにギギギと振り返るとそこには案の定さっき倒したはずのバンギラス。

 

 「あ、あははお早いお目覚めですね。大丈夫ですか? ケガとかしてません? やっぱバンギラスさんはお強いですね! あの程度すぐ起きちゃう!」

 

 「グルルルグォオオオオオオ!!」

 

 「はいすいませんでした!!!」

 

 やっぱ怒ってますよね!! 

 縄張りに勝手に入ってきてボコボコしてきたやつに殺意全開ですよね!!

 

 「ちくしょう!! 死にたくねえ!!」

 

 俺はピカチュウを抱えたまま、全力で走り出す。

 そもそも腕の一振りで俺なんか胴体ちぎれそうなのにすぐ真後ろとか致死圏内ですよこれ!!

 

 「うぉおおおお走れ!! 俺は風! 今だけ風!! 逃走の風! ウインド!!」

 

 全力でその場を離れようと走る。

 ある程度走っているとバンギラスの足音が聞こえないので追いかける元気はないのか? と思い、ほっとしながら後ろ振り向くもそこにも絶望の光景が広がっていた。

 

 「コォオオオオ」

 

 「やっべえええええあれ絶対はかいこうせん!! 」

 

 バンギラスは口にエネルギーを溜め今にもそれを発射しようとしていた。

 

 「死にたくねえ!! でもどうしようもねえ!!」

 

 「グォオオオオオオオオ!!!!」

 

 バンギラスがはかいこうせんを発射した瞬間俺はピカチュウを抱えながら地面に伏せる。

 直撃こそしなかったが余波で俺は吹き飛び木に頭をぶつけた。

 血が流れていくのが分かる、額が切れたのか血が凄まじい。

 この程度で済んで幸運と思うべきか、それとも死の恐怖が伸びただけの不運なのか……。

 

 「ぐぅ……やべえ……このままなぶり殺しにされる」

 

 バンギラスはのっそりと歩きながらこちらに向かってくる。

 今の俺の状況を見て、舌なめずりをしているその姿はあまりにも悪魔的だ。

 俺は胸の中のピカチュウが無傷であることを確認するとピカチュウに告げる。

 

 「……逃げろピカチュウ……そんでできたら強そうなやつを呼んできてくれ……無理そうならそのまま逃げろ……このままじゃ二人共共倒れだ」

 

 ピカチュウはその言葉に俺とバンギラスを交互に見て心配そうに「チャア……」と鳴いた。

 俺は最後の力を振り絞りピカチュウの頭を撫でると。

 

 「早く行け!! そんで俺を助けてくれ頼んだぞピカチュウ!!」

 

 ピカチュウはその言葉に意を決して走り出す。

 そうしてピカチュウの姿が見えなくなったころ、バンギラスは俺の目の前でニヤリと笑った。

 

 「見逃して貰うとか無理ですかね?」

 

 「グァ」

 

 「あ、やっぱ無理っすか」

 

 首を横に振り足を上げて俺の顔面を踏み抜く体制に入るバンギラスに俺は、神様がいるなら絶対横っ面ぴっぱたいてやると思いながらこの絶対絶命の状況の緊張で気絶した。

 情けないとか思わないで欲しい。

 正直体中の痛みと焦りで精神的にはいっぱいっぱいだったのだ。

 そりゃ気絶もするさ。

 そうして俺は目覚めれば冒頭のベットの上にいた。

 命は無事だったことを喜びたいところである。

 

                                            ★

 

 

 「で、ピカチュウ。俺はあの後どうなったんだ?」

 

 そう聞くとピカチュウはジェスチャーをし始めた。

 

 「ぴか! ぴーかぴかぴかぴーぴかぴっ!」

 

 ふむふむ俺を置いて走った後、直ぐに偶然トレーナーを発見し、急いで戻ってきたと。

 それで俺が今にも殺されそうな所をトレーナーと一緒に助け出した。

 はー危機一髪だったんすねいやマジで。

 むしろ何で助かったってレベルで。

 

 「で、俺を助けてくれたトレーナーは?」

 

 とりあえずお礼をしなければとピカチュウに尋ねるとピカチュウはまたもジェスチャーをした。

 

 「ピカ! ピカピカピッカ!!」

 

 「ふむふむ、買い物に行ってるのね説明ありがとうピカチュウ」

 

 「ピカ! ピカ〜」

 

 そうして感謝と共にピカチュウの頭を撫でてやると目を細めて気持ちよさそうに鳴く。

 かわいい。

 取り敢えず俺を助けてくれたトレーナーに感謝しないとな。

 頭には包帯が巻かれており、泥まみれだってのにベッドに寝かしてくれている。

 マジで礼をどれだけ言っても足りねえ……。

 そうして俺とピカチュウがここのトレーナーが帰ってくる少しの間戯れていると、扉が開く。

 家の主が帰ってきたみたいだ。

 

 「あっ! 目が覚めたみたいね! 大丈夫? ケガとかしてない?」

 

 入ってきた人物を見て、俺は固まる

 

 

 (……どこかで見たことある)

 

 俺はポケモンのゲームは実はそんなにしたことない、でも絶対見たことある。

 

 「ええ、助かりました。えっと俺は佐藤静って言います。お名前聞いても? 」

 

 「あたしの名前はアイリス! 一応ポケモントレーナーやってるよ! あなたを助けたトレーナーでもあるわ!」

 

 アイリス……アイリス……オーヤマじゃなくてポケモンのアイリス……。

 ……………………ああ、思い出した!! 確かサトシと一緒に旅してた女の子だ!

 よくみりゃその子とクリソツだ!

 もしかしてこの子あのアイリス!?

 

 「その節ありがとうございます。助かりました。なんとお礼言ったら良いのやら」

 

 いや本当に。

 しかもアニポケのヒロインでもあるアイリスに助けて貰うだなんてなんて贅沢。

 更にアニメで見るよりかわいい。

 なんかアニメだと生意気過ぎて魅力という面ではそんなになかった気がするのだが。

 まあ初対面だからかもしれないけど。

 

 「そんなのいいわよ! こういうのはお互い様っていうの。それよりあなたはなんであんなところにいたのよ?バンギラスの縄張りってことで有名じゃないあそこ」

 

 「えっと、なんて説明したらいいのか」

 

 俺は取り敢えず大まかな説明をすることにした。

 ポケモンのいない世界にいて、トンネルを抜けたらそこは異世界でした。

 なんて信じて貰えるかは怪しいが俺持ってる情報ってそれしかない。

 だから全部ぶっぱした。

 頭おかしい奴って思われそう。

 

 「ふーんポケモンのいない世界からやってきたねー。今一信じきれないわ」

 

 アイリスは怪訝な表情で俺を見ながらそう言った。

 そりゃまーそうよねー。

 

 「まあそうだよね。俺だって元の世界にいたらマサラタウンから来ましたなんて言われても信じられねえ。」

 

 「仮にその世界から来たとして、じゃあなんのためにこの世界に飛ばされてきたのよ」

 

 「それが分かれば苦労しねえよ……俺だってまだ混乱してるんだよ……」

 

 これが漫画だったりしたならポケモンマスターになれとかチャンピオンになれとか神様に無理難題投げられそうだがその肝心の神様にも会ってない。

 ……どうやったら帰れるのか分からねえ……それにバカと忍者が無事かも分からねえ……一体全体どうしらいいんだよ……。

 俺はこのどうしようもない状況に酷く焦燥し、それが顔に出てたのかピカチュウが俺の肩に登って顔を撫でる。

 ……お前肩に平気で乗ってくるけど結構重いのを自覚してくれよな。

 俺はマサラ人じゃないんです。

 俺は一度ため息つくと、「異世界転生でありがちなウインドと言ったらなんか出ねえかな」呟いた瞬間ブンと空中になんか出。

 

 「なんか出た!?」

 

 「なにそれ!? 手品!?」

 

 「ピカ!?」

 

 俺はアイリスやピカチュウの言葉をそっちのけで慌てて空中に出てきた画面へと触れる。

 画面に表示されているのは何やら掲示板のようなもの。

 そしてそこには二つの名前があった。

 

 「バカと忍者……あいつらの名前……しかもなんかえらい書き込まれてる」

 

 掲示板を見るとバカ熱途が

 

 『なんか俺ロックマンエグゼの世界っぽいとこいんだけど!? お前らどうなってんの!?』

 

 と書き込まれており忍者からは

 

 『拙者NARUTOっぽい世界にいるんでござるが……しかも幼い姿で、なにこれ罰ゲームでござるか? 木ノ葉崩し怖いでござる』

 

 と書き込まれていた。

 後はお互いの近況が書かれておりどうやらあいつらはあいつらで別の世界にいるらしい。

 そんな元気にいつも通り馬鹿やってるあいつらの書き込みを見て、俺は「ハハ」と笑いが溢れた。

 

 「あいつら……そうか……生きてたか……なんか……不思議と安心した……」

 

 俺が死にかけたせいか。

 どこか日常感じるそのやりとりになんだか涙が出そうになる。

 でもそうだ。

 こんなお互いを確かめるようなツール、明らかに神様だか妖怪だかの作為的なものを感じる。

 ということは帰れる方法がもしかしたらあるかもしれない。

 そう感じるだけで、すっと心が楽になった。

 

 「すいませんアイリスさん。俺旅に出ます。もしかしたら無いのかもしれませんが、帰れる可能性があるかもしれないことが分かったんです。俺、色々探してみます」

 

 俺はベットから飛び出し外へと向かおうとした瞬間、アイリスに押し戻されベットに座りなおすことになった。

 なにしやがんでい!!

 

 「よくわかんないけど、何かが見つかったならそれはよかった。でも、あんたこの広い世界から何を見つける気なの? そもそもこの世界の土地勘はあるのかしら? なら一度腰を据えて色々と準備しないと駄目なんじゃないの? 」

 

 「………………仰る通りで」

 

 見た目俺より完全に年下の、中学生くらいの女の子に冷静に説教されるのは意外に精神ダメージでかいな……。

 俺も中学上がりたての高校生だが、俺よりしっかりしてる。

 

 「ピカ」

 

 俺の頭をポンと叩いて首を振りながら彼女が大人なだけだよと慰めてくれるピカチュウ。

 お前は空気読みすぎててなんか腹立つなおい。

 もっと動物らしくしろや。

 

 「よし! ならあなたの旅を手伝ってあげる! あたしこう見えて暇だし! やることたまにしかないし!! なんかさっきので異世界ってのが現実味を帯びたような帯びてないような気もするし!」

 

 「あやふや!? いやいやいや、何を言ってだアンタは。見ず知らずの俺を助けてくれたのは有り難いが。見ず知らずの俺のためにそこまでするのはお人好しとかじゃくて危機管理が足りてないだけだぞ!」

 

 「危機管理? あなたなにか悪いことでもするの?」

 

 「しないですけどそういうことじゃなくて!」

 

 この子、自分がカワイイ部類の女の子であるという意識が無い!

 というかそういう性知識もないのではないだろうか?

 男なんて一皮むけば皆狼なんだよ!

 もし不意に俺が手を出したくなる場面が出たらどうするつもりだ!

 

 「大丈夫よ。あなた体を張ってピカチュウを守ったじゃない。そんな人が悪いことする人だとは思えないわ」

 

 「その評価は嬉しいが。俺は結構自分勝手な人間ですよ。ピカチュウを逃したのだってあわよくば助かりたい思いだし」

 

 「でも、あなたはピカチュウに守って貰おうとすることもできたよね? でも最後にはピカチュウの安全のために逃した。それはあなたが優しいからよ」

 

 「優しくても魔が差すときはあるんです!」

 

 「そんなこと言ったらどんな人にもあるじゃない!」

 

 「あー言えばこう言いやがる!」

 

 「それはあなたでしょ!!」

 

 「ピカァ……」

 

 ヤレヤレみたいな表情で首を横に振ってるところ悪いがお前も止めろよ。

 男の子ならこの気持ち分かるだろピカチュウさんよぉ!

 

 「いいから! あたしもついていくの! どうせ暇だしやることないもの! あなたについていったほうが楽しそうだもん! それに異世界ってのが本当なら面白そうだし!」

 

 「テメエそれが本音だろ!」

 

 「そうよ! 悪いかしら!」

 

 「悪くないけど今は悪い!」

 

 「なんでよ!」

 

 以降三十分くらい揉めた。

 

 

 

 

                                                ★

 

 

 

 アイリスが地図を指しながらにこにこ笑顔で語りかけてくる。

 

 「そうそう、それでこの道を通ればカノコタウンにあるアララギ博士の研究所につくわ!」

 

 「ちくしょう……押し切られた……」

 

 あの後、揉めに揉め倒したが、アイリス結構無防備な服装をしている癖に俺に抱きついて「やだやだいーくーのー」と駄々こねながら揺すってきたので俺の若い性欲が爆発してしまう前に許可をしてしまった。

 ……女の子の体は柔らかくていい匂いがします。

 小さくてもあるんすね……。

 

 「しかし、アララギ博士のところに行ってどうすんだよアイリスさんや」

 

 ポケモン図鑑なんて貰っても俺は埋める気はないぞマジで。

 帰るのに必要なら埋めるがまあいらないだろ。

 そう思っていたが意外とまともな理由が帰ってきた。

 

 「そりゃトレーナー登録と旅立ちのポケモンを貰いに行くに決まってるじゃない。あなた、トレーナーじゃないと入れない所に無断で入る気なの?」

 

 「なるほど、そういうのもあるのか」

 

 トレーナーしか入れない場所、そういうのもあるのか。

 あとポケモンを貰えるのは正直有り難い。

 バンギラスの件もあるし身の安全のためにもポケモンを育てるのは大事だ。

 ピカチュウは野良のポケモンだし、ついてくるかは不明の中確実にポケモンが貰えるというのは心強い。

 それにトレーナー登録これ実は身分証にもなるらしく、住所不定無職の俺からしたら必須級のアイテムだ。

 そもそもこの世界で産まれた痕跡すらないのだからないと確実に困るものだろう。

 そう考えるとアイリスが同行してくれるというのは実は頭を下げて感謝するべきことなのでは?

 そう思うと俺は居住まいをただし、正座した。

 

 「…………なにしてるのシズカ」

 

 「ははっ! アイリス様への感謝を示しております!

 

 取り敢えず土下座で感謝を示したら引かれた。

 そりゃそうだ。

 アイリスは取り合えず旅に必要なものを揃えましょうと立ち上がると俺の手を引く。

 

 「出発の前にモンスターボールとキャンプセット買いに行くわよ!」

 

 キャンプセットはわかるがなんでモンスターボール?

 

 「ピカチュウがあなたに凄く懐いてるじゃない、一回捕獲してパートナーにしてあげないと可哀想でしょ」

 

 「ピカ! ピッカ!」

 

 ピカチュウがそうだぞ! と言わんばかり抗議してくる。

 お前一度助けたくらいで懐きすぎだろ。

 俺に都合が良すぎて神様的なやつが用意したポケモンに見えてくるレベルだ。

 今はありがたいけど。

 

 「でもピカチュウ。お前は俺がトレーナーでもいいのか?」

 

 「ピカ! ピカチュウ!」

 

 当たり前だろと頷くピカチュウ。

 

 「あははトレーナーとして優秀そうだからついていきたいって」

 

 「思ったより現金なやつだった」

 

 こいつ思ったより打算的だな。

 しかしあの一回の指示で強そうだなんてもしかして俺トレーナーの才能ある?

 参っちゃうなーこんなところで才能が開花しちゃうなんていやー帰っても使えない才能にいやー本当に参っちゃうなー。

 

 「なんかニマニマし始めた……」

 

 「ピカぁ……」

 

 「後悔しても遅いよピカチュウ。あれがあなたのトレーナーよ」 

 

 「ピカァ……」

 

 なんだテメエら! 俺が喜んじゃいけないってのかよ! 顔がキモい? 傷つくからやめろ!!

 

 「それじゃあ買い物と今後の方針を固めてから出発しましょうか!」

 

 「おっし! 行くぞピカチュウ! 先ずはモンスターボールだ!」

 

 「ピカ!」

 

 そんなこんなで買い物を済ませた俺達はフレンドリーショップで買い物を済ませると、キャンプセットと念願のモンスターボールを手に入れた。

 取り敢えずアイリスの家に帰り、モンスターボールを取り出す。

 ドキドキしながらそれをピカチュウへと向けると、ピカチュウはてこてこと近づいてきた。

 

 「ピカチュウ、もしかしたら短い旅になるかもしれない。でももしよければ俺のパートナーになってくれないか?」

 

 「ピカ! ピカピカ!!」

 

 ピカチュウは俺の言葉を聞いて大きく頷くと自らボールの開閉スイッチに触り、ボールの中に吸い込まれていった。

 そしてボールが二度と三度揺れる。

 この瞬間はアニメだろうがゲームだろうがドキドキする瞬間だ。

 そしてボールからカチリと捕獲音が響く。

 俺は初めてポケモンゲットしたことになんとも言えない喜びに満たされボールを天にかざした。

 

 「ピカチュウゲットだぜ!」

 

 小さい頃、一度は言ってみたかった決め台詞。

 なんとも言えない感動に胸が満たされる思いだ。

 そう思っているとボールからポンという音が響き、ピカチュウが飛び出してきた。

 

 「ピィカ~……」

 

 なんだか酷く不快そうな顔をしている。

 なんだ? モンスターボールに不具合でもあったのか?

 

 「どうしたピカチュウ? なんかあったのか?」

 

 「ピカピカ!」

 

 え? モンスターボールが? 狭い?

 

 「うーんピカチュウはボールの中にいるのが嫌いみたい。外に出てたいっぽいね」

 

 「そんなとこまで似ないでいいだろうに」

 

 まるでサトシのピカチュウだ。

 ただでさえ技構成もそれっぽいのに。

 まあでもピカチュウと旅をするのもアニポケを見てる身からしたらちょっとした憧れみたいなものもあるし、これはこっれでいいか。

 

 「よし! ピカチュウもゲットしたし、旅をしよう!」

 

 「ええ! 取り敢えず私のポケモンで博士の研究所までひとっ飛びよ!」

 

 「いやそれができるならあの地図の説明はなんなの!?」

 

 「ノリと勢いよ!」

 

 なんかあのバカの熱途と同じ臭いがするなこいつ。

 取り敢えずアイリスのカイリューに乗って向かうことにした。

 うわーすごいぞーカッコいいぞー。

 やっぱドラゴンポケモンってカッコいいね!

 

 

 

        ★

 

 ※とある掲示板

 

 バカ『俺、なんか知らんが孤児として引き取られることになったぜ! 体が小学生くらいになった上に戸籍もないから施設預かりだってさ!』

 

 忍者『大変でござるなーちなみに拙者戦災孤児扱いで施設行きでござる。同じく体が幼くなったせいで施設行きでござるよカブトのいない施設でお願いしたいでござる』

 

 クズ『おめーら大変だな。因みに俺は体は小さくならなかった上にあのアニポケでも出てたアイリスって子と旅をすることになったぞ』

 

 バカ『この格差はいったい……』

 

 忍者『死と隣り合わせな世界で孤児な拙者とか超ハードモードでござるのに……方や女の子と旅……許せないでござる……』

 

 クズ『まあお前らゴキブリよりしぶといしなんやかんや生き残るだろ。因みに俺はすでに一回死にかけた。バンギラスに殺されかけた』

 

 バカ『死にかけるの早すぎんだろ!』

 

 忍者『ポケモンの世界って思ったよりハードモードでござるな!?』

 

 クズ『手持ちもいないし、奇跡が重ならなきゃマジで死んでたね。まあお互い生きて元の世界に戻ろうぜ!』

 

 バカ『そうだな頑張るぞー』

 

 忍者『元の世界に戻る方法を考えるでござるよ。とりあえず時空間忍術を研究する必要性がありそうなので死亡フラグ満載の忍を目指すでござる。もう忍者って時点でハードモードでござるよ』

 

 バカ・クズ『『可哀想に……』』

 

 忍者『どうせ死亡フラグ満載ならSAOがよかったでござるよ……』

 

 バカ・クズ『『可哀想に……』』

 

 

 

         ★

 

 アララギ博士の研究所に到着した俺は、カイリューにお礼を言った。

 カイリューはクールなタイプなのか静に頷くとアイリスのボールに帰っていく。

 空を飛べるポケモンっていいなー俺もどうせならカッコよくてデカい空を飛べるポケモン欲しいなーと思いながらアイリスに声をかけた。

 

 「しかしあれだな存外空を飛んでても寒くないんだな」

 

 「うん。カイリューの場合は体温を調整して暖かくしてくれてるから上空で寒くないんだよ」

 

 「気遣いの鬼。カイリューさんマジでリスペクトっす」

 

 因みにピカチュウは上空で興奮しすぎて落ちかけた。

 ビビったのか俺の腕の中で涙目で震えている。

 かわいい。

 でもお前が落ちかけた時俺を引っ掴んだせいで俺ごと落ちそうになったので許せぬ罰ゲームで頭ぐりぐりしてやった。

 そんなこんなでアララギ研究所。

 なんの研究をしてるかは全く知らんがとりあえず偉い博士の研究所らしい。

 俺ポケモンの博士ってオーキド博士かウチキド博士くらいしか印象にねえよ。

 ウチキド博士は親父が薄い本持ってたから印象に深いだけでなんの博士かは知らねえ。

 

 「じゃあ行くわよ! アララギ博士ー新人連れてきたよー」

 

 アイリスはバン!と元気よく扉を開けて研究所へと突入していく。

 カッテシッタルなんとやら、我が家のかのようにずかずか入っていくその姿に流石アニメでヒロインやってただけあって物怖じしねえな……なんて思いつつも続けて入っていく。

 すると研究所の奥から「あららー」なんて声と共に女性の声が聞こえてきた。

 

 「あら、アイリスちゃんじゃない久しぶりね! 新人トレーナーってどういうことかしら?」

 

 出てきたのは三十代くらいのすんげー美人だった。

 出るとこ出たプロポーション、短いスカート、一応身だしなみとして軽く化粧をしているのか薄く塗られた口紅など全部がエロい。

 こんなの旅立つ前の若い男の子は一部が旅立とうとしてしまって動けなくなってしまうだろ! このスケベ博士め!

 

 「あらら? どうしたのその子」

 

 「あの人たまに思考の中に入って変なこと考えてるんで放っておいてあげてください」

 

 「ふーん若いっていいわねー」

 

 なんだいその生暖かい目は!

 美人だからって許さんぞ!

 だが今は許してやろう、動けねえ。

 

 「初めまして佐藤静という言います。えっとトレーナー登録?ってのをしに来ました。よろしくお願いします」

 

 「あら、若いのにしっかりしてるわね。それと私はアララギ。この研究所でポケモンの起源を中心に研究してる博士よ」

 

 はえーポケモンの起源ですかーなんかアルセウスってのがポケモンの起源じゃなかったけ? 中途半端な知識だからたぶん細部とか色々と違うだろうし言わんけど。

 半端な知識で人の研究に口出すキモいやつにはなりたくねえからな!

 

 「これはどうもご丁寧にありがとうございます。それで突然で悪いんですがトレーナー登録ってどうしたいいんですか?」

 

 「ああそれはね、そこのパソコンで住所氏名年齢電話番号に経歴やどこの学校を卒業したのかとか長所や短所などを記入してもらうとできるわ!」

 

 「なにそれ履歴書!? 思ったよりガッチガチなんですけど!? 住所不定無職の俺もう詰んでない!? 話違くない!?」

 

 ポケモン世界って10歳で成人だからもっとふわふわした感じだと思ってたのに思ったより現代的だった!?

 この世界に来た時点で敗北者じゃん!

 敗北者の息子の父親より敗北者じゃん!

 

 「あわわわわ、ど、どないしよ! どないしたええどすかアイリスはん!」

 

 俺はあわあわと挙動不審になりながらアイリスへと視線を向けると大爆笑してた。

 

 「アハハハ! 博士あんまりシズカを困らせないであげてよ、シズカ本当に困ってるんだから」

 

 そう言ってアイリスは笑いながらアララギ博士へとツッコミを入れていた。

 おいおい冗談かよ、心臓飛び出るかと思ったぜ危うく始まる前から終わるところだったぜ。

 

 「え? 本当よ? 最近法律が変わってそこら辺厳しくなったのよ」

 

 「嘘ぉ!? 前まではそんなことなかったじゃない!?」

 

 アイリスも寝耳に水かよ!?

 どうなってんの!? 

 というかポケモン世界で法律なんて言葉初めて聞いた!

 もっとサンリオみたいにふわふわ世界じゃないの!?

 いやサンリオも黒いときは黒いけど!

 

 「ホントよ、トレーナー資格を無差別に与えすぎてポケモン保護区とかで乱獲するトレーナーや卵を孵化させるだけさせて捨てるトレーナーが増えたせいでね、親の同意書かジムリーダーや一定以上にトレーナーの推薦、それかポケモン研究やポケモンセンターなどで一定以上働いた子に資格を与えなさいってなってね。15歳以上だと同意書はいらないけど面接と履歴書みたいなもの書かされたりするようになったのよ。世知辛い世の中になったわよねー」

 

 「確かにそういうのが社会問題になってるって聞いたことあるけどそんなことになってたのね……バンギラスもピカチュウもそういうトレーナーのせいで増えてるって聞いたわ」

 

 そうなの!? おのれクソトレーナーめ! 見つけ次第俺のクソを煮詰めたクソ団子食わしてやる!

 

 「まあアイリスちゃんの推薦でいいなら住所とかなくてもトレーナー資格の発行はできるけどそれでいいかしら?」

 

 「ええっとはい。それでお願いします」 

 

 「じゃあちゃちゃっとやっちゃうからアイリスちゃんのトレーナーカード貸してね控えとるから」

 

 そう言われてアイリスは自分のトレーナーカードを渡した。

 なんか連帯保証人みたいで嫌だ。

 すげえ申し訳ないことしてる気分。

 

 「昔は孤児とかの救済措置的な意味合いもあってゆるかったんだけどね? 今だとそういうのも少なくなってきたでしょ? ポケモンに優しい運営をするには締めるところは締めましょうってなってね? そういうことになったのよ」

 

 はーポケモンの世界はポケモンの世界で刻一刻とルールとか変わってんですね。

 これアニメとかの知識だけで行くと痛い目見そうだな。

 この世界の新聞とかちゃんと読も。

 

 「はいできた! これがあなたのトレーナーカード。アイリスちゃんの推薦だから悪いことしたらアイリスちゃんも怒られるんだから気をつけなさいね」

 

 「はい、肝に命じます。アイリス助かった。もう何度も助けて貰ってるのに本当にありがとな」

 

 「うん、それはいいんだけど。まだあたしビックリしてるわ。これがジェネレーションギャップってやつかしら」

 

 「現役世代もいいところだろお前。ジェネレーションギャップを感じるには若すぎだ」

 

 そんなこんなで紆余曲折あったものの無事身分証ゲットだぜした俺は、アララギ博士からお祝いと旅立ちの餞別としてポケモンをいただくことになった。

 

 「ごめんねミジュマルとかの初心者のための三匹のポケモンは今いないのよ。ついさっきトレーナーが旅立ったばかりだから予定の数しかいなくてね? だから今渡せるポケモンは一匹しかいないのよ」

 

 そう言ってアララギ博士は申し訳無さそうにモンスターボールを取り出した。

 本音を言えば正直御三家なら水タイプがいいなとか悩んでたりしたが、仕方ない。

 ポケモンがいただけるだけありがたいこった。

 

 「いえいえ旅立ちのポケモンをいただけるだけありがたいことです。ただピカチュウと気が合えばいいなーとは思いますけど……ってそういやピカチュウどこいった」

 

 いつもピカピカ言ってるのになんかえらい静かだなとは思っていたがどこにもいねえ。

 あいつどこいった。

 

 「ピ~カ~あむ……チャ~!」

 

 「あ! あれ私が戸棚に隠してた秘蔵のもりのヨウカン! 休憩の時食べようと思ってたのに!」

 

 なんか研究所のマッサージチェアで気持ちよさそうにマッサージされながらボリボリ人んちのヨウカン食ってた。

 こいつバンギラスの頃からなにも変わってねえな。

 

 「すいませんすいません! うちのバカネズミがすいません本当にすいません!」

 

 土下座する勢いで平謝りした。

 

 

 

 

                                          ★

 

 

 アララギ博士の機嫌が目に見えて急降下し、「ポケモンが悪いことしたらトレーナーの責任なんだからしっかりするように!」とお小言を頂いたあと、博士はモンスターボールからポケモンをだした。

 

 「ラッキー!」

 

 飛び出してきたのはこの地方にはいないはずのラッキー。

 いやそれを言うならバンギラスもピカチュウもいないはずなんだけど、これもたぶんさっき言ってた社会問題が寄与するんだろうなとは思いつつ俺はラッキーを見て首を傾げた。

 あれ? ラッキーってこんな色だっけ?

 

 「おほん、この子はたまごポケモンのラッキー。見ての通り色違いでね。最近カントーに行く用事があったからサファリパークに寄ったら偶然捕まえちゃったのよ」

 

 社会問題関係なかった!

 そのラッキーは青と白が混ざった色違いであった。

 確か昔見たラッキーは薄いピンク色ぽかったから間違いなく色違いなんだろう。

 

 「で、この子は通常の色違いとも違ってね? 普通の色違いは薄い茶色のような感じなんだけど、この子はどうにも本当に突然変異みたいで色違いの色違いと言ってもいいくらいに珍しいポケモンなの」

 

 「へーなんでそんな珍しいポケモンを俺に? はっきり言って俺初心者もいいところですよ? こんな珍しいポケモン、下手すれば奪われて可哀想なことになるかもしれませんよ?」

 

 例えばロケット団みたいな奴らに奪われるとか、実力不足な俺にはそんな奴らから守れる自信ないですよ?

 いやマジで。

 

 「それはほら、実力者のアイリスちゃんが隣にいるし、それにこの子いつも旅立つトレーナーとポケモンを羨ましそうに見ててね。どうせなら一緒に冒険とかさせてあげてほしかったのよ」

 

 「ラキラキ!」

 

 ラッキーはふんすと鼻息荒く、足で纏いにはなりませんぜと言わんばかりのやる気だ。

 しかしアイリスってどんだけ実力者なの?

 アニメヒロインだからそこそこ強いのかな?カイリュー持ってるし。

 うんまあそれなら……。

 

 「ラッキー、俺、まだまだ頼りないトレーナーだけど一緒に旅をしてくれるか?」

 

 そう言うとラッキーは嬉しそうに踊りながら抱きついててきた。

 ぐう、結構勢い強くて痛いです。

 

 「ラッキー! ラキラキ!!」

 

 「なんだか嬉しそう。良かったねラッキー」

 

 「ラッキー!」

 

 アイリスは喜びを分かち合うようにラッキーと手を取り合い踊りだした。

 かわいい。

 特にアイリス。

 

 「ラッキー! ラキラキ!」

 

 「ん? なになに? 自分の、ニックネームが欲しい?」

 

 「ラキ!」

 

 ニックネームか、そういえばそんな文化あったな。

 サトシさんニックネームつけない派だからすっかり忘れてたぜ。

 

 「しかしニックネームか……俺名付けにセンスねーからな……昔ゲーム主人公につけた名前もブリリアント・ドス恋なんて巫山戯た名前にしたくらいだしな……」

 

 あれゲーム主人公に全く感情移入できなかったくらいには酷い名前だった。

 ヒロインに告白されてもブリリアント・ドス恋の事が好き! って言われても欠片も感動できなかった。

 しかしうーんうーん、ニックネームか……うーん。

 見た目が青くて、丸くて、そんでポケットがついてて……うーん。

 

 「駄目だドラえもんしか出てこねえ……」

 

 「ラッキー! ラキラキ!!」

 

 「え!? ドラえもんがいいの!? やめとけやめとけ! お前には荷が重い名前だ。国宝級のキャラクターだぞ」

 

 「ラッキーラッキー!!」

 

 ドラえもんが相当気に入ったのかすごい勢いで掴みかかってくるラッキーに俺は嫌な顔をしつつしぶしぶ認めることにした。

 

 「えーじゃあ今日からお前ドラえもんな」

 

 「ラッキー!!」

 

 そうしてラッキーの名前は今日からドラえもんになった。

 酷く重い名を背負わせてしまったぜ。

 勿論アララギハカセとアイリスはドラえもんという個性的すぎる名前に微妙な顔してた。

 それは俺もだ。

 そうして一段落ついた俺達は一度盗み食いしたピカチュウに拳骨を落とし、アララギ博士へとお礼を伝えた後、ポケモンセンターで宿泊の準備をするのであった。

 

                                          

 

                                                  ★

 

 

※とある掲示板

 

 クズ『ということで俺ピカチュウと色違いドラえもん、もとい色違いのラッキーを連れて旅することになったぜ』

 

 バカ『なにがどうなってラッキーがドラえもんになったんだ。お前昔からネーミングセンスないよな』

 

 忍者『青いラッキーだからドラえもんとか安直すぎでごるな。昔からセンスゼロでござる』

 

 クズ『うるせえな。じゃあお前らならどうすんだよ』

 

 バカ『ブルータス』

 

 忍者『忍者ブルー』

 

 クズ『お前らに聞いた俺が馬鹿だった』

 

 

 

                                                  ★

 

 

 

 夜も老けて俺達はポケモンセンターの食堂へと来ていた。

 勿論夜ご飯を食べにだ。

 しかしトレーナー資格があるとポケモン含めて飯がタダなんてこの世界の経済どうなってんの? 絶対利益出てねーだろポケモンセンター。

 ピカチュウとラッキーがポケモンフーズを貪り食っているのを横目に俺はアイリスと向かい合いながら白身魚のムニエルを頬張りながらどうでもいいことを考えていた。

 しかしこの白身魚ってなんの魚だろ。

 コイキング? 美味いの?

 

 「無事トレーナー資格ゲットできてよかったねシズカ!」

 

 「全くだ。本当にアイリス様々でごぜーますよ。もう足向けて寝れねえな」

 

 「これくらいいいのよ。それにシズカの目的のためにも絶対に必要なものでしょ?」

 

 「くぅ、優しさが染みるぜ、同い年なら絶対に惚れてるくらいにはいい女だ。よっ! イッシュ地方ナンバーワンの激マブ女子! 懐の深さはまさに聖母! まさに母なる海!」

 

 「ちょ、やめてよ。恥ずかしいじゃない! それにそんなにまっすぐ褒められると照れるわよ」

 

 「いやいやそれだけ感謝してるってことだよ。アイリスが俺を助けてくれなきゃ今頃ゴーストタイプになっていたか、困ってホームレスになっていたよ。本当にありがとな」

 

 俺は改めて頭を下げる。

 この世界に来て、間違いなく最高の出会いだったのはアイリスとの出会いだ。

 もしアイリスに困ったことがあれば、全力で助けてやろうと思うくらいには恩が積み重なっている。

 何から何まで世話をしてもらって感謝してもしきれないくらいだ。

 キャンプセットもモンスターボールも全部金を出してくれたし、殆ど、どころか完全にヒモ状態だ。

 金を稼いだらちゃんとお返ししたいぜ。

 

 「前にも言ったでしょ、持ちつ持たれつよ。シズカが私に恩を返したいって思ってるなら、シズカは他の困っている人を助けてあげて、それが持ちつ持たれつってものよ」

 

 「ああ、肝に命じる。でも少しは恩を返させてくれよな。いつになるかはわかんねえけど、お前が困った時、絶対に俺が駆けつけてやる」

 

 「ふふ、楽しみにしてるわ」

 

 そうして俺達は飯を食い終わると予約していた部屋に向かうことになった。

 予約はアイリスがしてくれたので何度もお世話になって申し訳なく思いつつも、どんな部屋なんだろうとワクワクしながら向かうと、アイリスはここよと指をさす。

 

 「ほーなんかビジネスホテルみたいだな。ベッドはシングルか。一人一部屋ってところか?」

 

 そう思いながら部屋に入ると、アイリスも同じ部屋に入ってくる。

 ん?どうしたんだ?

 

 「ほら、さっさと寝るわよ。明日はついに旅立ち日なんだから寝不足だと締まらないわよ」

 

 「ああ、そうだな。で、アイリスは自分の部屋に行かないのか?」

 

 「? ここよ?」

 

 「? じゃあオレの部屋は?」

 

 「ここよ」

 

 ほーアイリスがここに寝て、俺もここで寝るのか。

 つまりあれか? 俺は風呂場で寝ろってことか? こんなところで禁書の上条さんの気分を味わうことになるなんて思いもしなかったぜ。

 

 「そうかそうか。じゃあ俺は寝るからお休み行くぞピカチュウ」

 

 「ピカァ!?」

 

 「おらっ、嫌がるなよ……お前も道連れに決まってんだろ……ここ初めてか? 力抜けよ……」

 

 ピカチュウは本気で嫌がってるのかお互い綱引きのように引っ張りあいになる。

 パートナーだろうが! 一蓮托生だろうが!

 どれだけ嫌がって連れてくぞ!

 俺だけ風呂場はヤダ!!

 

 「いやいやいやいや待ちなさいよ。なんで今から寝るのにお風呂場に直行してるのよ!?」

 

 アイリスが俺達の喧嘩を止めるように間に割り込み、そんな事を言ってくる。

 はーやれやれ。

 そんなん決まってるだろ。

 

 「アイリスはベットで寝るから俺は風呂場で寝るんだろ? それくらいは弁えてるぜ」

 

 「何言ってるのかわからないけど寝る場所はここよ。ほら一緒に寝るわよ」

 

 「ピカピカ!!」

 

 おっ、まてい!(江戸っ子)

 いやいやいやいやそれはおかしい。

 あとピカチュウ! テメエいくらベットで寝たいからってそっちにつくんじゃねえ! お前のパートナーは俺だろうが!

 

 「お前男女が同じベットで寝るのはおかしいだろ。女の子なら危機感もて。俺男の子、君女の子、同じベットダメ。おわかり?」

 

 「なんでよ! どうせ部屋も一個しか余ってなかったし狭いけど我慢するべきでしょ! ほら、端っこで寝てあげるから」

 

 「そういう意味じゃねえよ! 何こいつワガママねみたいな顔しやがって! 男女の同衾はよくありません! 男は狼もといヘルガーなんです!」

 

 というかこいつ寝巻き姿が結構際どくて薄いからこんなのが隣りにいると寝れる気しねえわ! 

 意識してまうわ! 

 普通にエロい! 

 あと髪の毛おろしてるのも可愛いから超意識する。

 良い匂い!

 マジで良くない!

 

 「やだやだやだやだ! あなたがお風呂場で寝てるとか気になって眠れないでしょ! いいから早くベットにはいりなさい! さもないと私がお風呂場で寝るわよ!」

 

 「こいつ、あー言えばこー言いやがる!」

 

 「それはあなたでしょ!!」

 

 「いーやお前だね!」

 

 このあと三十分くらい揉めたあと痺れを切らしたピカチュウのでんきショックくらった俺達は気絶した。

 もはや女の子を意識する余裕もなかった。

 

 

                                                      ★

 

※とある掲示板

 

 忍者『【悲報?】拙者ナルト達と同期でござったよ!【朗報?】 死亡フラグがやべーでござる!』

 

 バカ・クズ『『可哀想に』』

 

 忍者『正直忍界大戦中で無かったことを喜ぶべきかこれからやべーことが頻発することを悲しむべきか微妙でござる』

 

 クズ『まあ取りあえずナルトと友達になればいいんじゃない? フラグと優秀な上忍の宝庫やで』

 

 忍者『死亡フラグの宝庫でもあるでござる! でも研究するなら一番近道な気もして悩ましすぎて吐きそうでござる』

 

 バカ・クズ『『可哀想に』』

 

 バカ『ああそう言えば俺もネットナビゲットしたぜ。って言っても心がないから殆どプログラムだけの命令通りに動くロボットだけど』

 

 クズ『へーでもバスティングの練習にはなりそうだな』

 

 バカ『おう、というかこれ転生特典なのかなんなのかはしんねんだけどさ。このロボットみたいなナビと俺フルシンクロできるみたいでさ。俺元々格闘技最強クラスじゃん?』

 

 忍者『名探偵コナンの京極真みたいな動きを普通にやってのけるくらいには化け物でござるな』

 

 バカ『そうそう。で、フルシンクロでそんな動きしたもんだからアホみたいなバスティングレベル叩き出しちゃってさ』

 

 クズ『なんか読めた気がする』

 

 忍者『奇遇でござるな。拙者もでござる』

 

 バカ『そうしたら偶然施設に来てたオフィシャルに目をつけられちゃった♡』

 

 クズ『やっぱり』

 

 忍者『後先考えないところがらしいでござるな』

 

 バカ『来季から炎山と同僚になるみたいなんだわ。仕事忙しそうで彼女作る時間なさそう。泣きそう』

 

 クズ『一生泣いてろあとお前は暇でも彼女はできねえ』

 

 忍者『バカは暇でも彼女はできないから安心するでござる』

 

 バカ『お前ら表出ろ!デリートしてやる!!』

 

 

 

                                             ★

 

 

 昨日の疲れがすんごい。

 旅立ちの準備して空飛んで研究所に行って履歴書が必要ですと言われて焦って、なんとかなってポケセンで薄い寝間着のアイリスにドキドキして喧嘩して披露で寝る。

 中々ハードな一日だ。

 こんな日々が続くと思うとげんなりするが、まあ正直女の子にドキドキするのと空を飛ぶ以外はありふれた日常でもある。

 あのバカ共とつるんでるとアホな騒動に巻き込まれるのなんてザラだったから余計にそう感じる。

 そんな事を考えながら瞼開き、起き上がる。

 

 「ぶっ!」

 

 昨日同じタイミングくらいに寝たアイリスが隣いるだろうとは思っていたがこいつ、寝相が悪いのかただでさえ薄い寝間着がはだけでおり、色々なところが見えそうになっている。

 

 (……我々男子高校生は弱い、だからあまり誘惑しないでくれ)

 

 俺はできるだけ見ないようにシーツをアイリスにかけてやる。

 これは優しさではない、目に毒すぎてパトスを開放しそうになるのを抑えるためだ。

 ここに来てから自慰もしてないしすんごい溜まっているのを感じるし、なにかの拍子に溜まっているのを開放してしまう可能性があるからできるだけ目に入れたくない。

 溜めて開放理論は野球だけでいい。

 性欲でやったら彼女でもない限りただの犯罪者だ。

 つまり何が言いたいかというと。

 

 (オナニーできる場所が欲しい……割りと切実に……)

 

 そもそもポケモンの世界、モブでも可愛い子が多かったというのにいざ来てみればマジで水準が高すぎる。

 ポケセンのジョーイさんとか見てみろよ、現実世界にいたらアイドルスカウト待ったなしの美人さんやぞ!

 くそっ、俺でこうならあいつらも溜まっているはずだ! 聞いてみよ!

 

 

                                             ★

 

 クズ『おめーら自慰ってどうしてんの? 致す場所無くない?』

 

 バカ『いきなり何を言い出すかと思えばお前はアホなのか? 俺はトイレだ』

 

 忍者『拙者幼年体なのでそもそも精通してないでござるよ!』

 

 クズ『そうかバカはトイレなのか。施設の共用トイレでやるとかテロリストじゃん。絶対察してるやついるって。忍者はムラムラしても出せないとか可哀想』

 

 バカ『マジで!? 皆なんにも言わねえから気づいてないと思ってたんだけど!? あと忍者は本当に可哀想』

 

 忍者『臭いが結構残るでござるし女性ほどそういうのに敏感でござるからな。男女共用トイレだった場合、気づいてて黙ってる人は結構いるでござろうな。あと余計なお世話でござる』

 

 クズ『人気のない山でするって方法もあるがやってる間にポケモンに襲われたら死んでも死にきれねえ』

 

 忍者『情けなさすぎて涙止まらなくなるでござるな』

 

 バカ『間違いねえ、いやそれより俺もこれからどこでやればいいんだよ! トイレ男女共用の上に個人部屋なんてねえぞ! 俺もこれから苦しまないといけないんだが!?』

 

 クズ『バカな小学生のふりして皆の前で見てみて!なんか白いの出てくるの! とでも言ってろバカ』

 

 忍者『施設の大人の間で会議まったなしでござるな。お似合いでござる』

 

 バカ『おめーら元の世界に帰ったら絶対にデリートしてやるからな!!』

 

 

            ★

 

 

 なるほど碌な解決策はなしか。

 やはり次からポケセンで寝泊まりするときは部屋を別々にするしか方法はないか。

 あとどこかでオカズを入手しなければいかんな。

 しかしその前に。

 

 「腹減った。とりあえず飯でも食うか」

 

 「……ぴか?」

 

 「お前も起きたか、朝飯でも食いにいくか?」

 

 「ちゃぁ〜………………………ピカ!」

 

 ピカチュウが一度伸びをして元気よく行く! と言う。

 流石に今のはジェスチャーなしでも分かったぜ。

 俺はピカチュウを引き連れながら食堂に向う。

 朝飯はトーストにスクランブルエッグ。そしてソーセージとサラダ、そしてコーヒー。

 これこれ朝飯といえばこういうのでいいんだよ。

 やっぱ朝飯食わねえとリキでねえからな。

 どうせガッツリ動くんだからガッツリ食っとくに限る。

 やはり朝はいい、食堂といえど皆静かで施設ならではのゆったりとした音楽が不快にならない音量で流れている。

 俺はコーヒーを啜りほっと一息つく。

 

 

 (朝のこの静けさはとてもいい――――)

 

 「ああああ!! こらポカブ! それは俺の飯だぞ! お前にはポケモンフーズがあるだろうが!!」

 

 「ちょっとツタージャ!! サラダ勝手に食べないでよ!! それ私のなんだけど!?」

 

 (―――しばくぞ。朝から騒ぎ倒してるバカはいったいどこのどいつだコレぃ!!)

 

 俺は朝っぱらから騒々しいテーブルへと目を向けると、そこには頭にホイールを二つつけた女と毛量が増えたリクームみたいな野郎がそこにいた。

 まあ? 二人共年下みたいだし? あれだぶんイッシュ地方の御三家みたいだし? 様子をみるに初めての旅で初めてのお泊りだからテンションあがっちゃったのかな?

 まあええやろ、流石にこれ以上騒ぐと注意するけど、自分の手持ちに翻弄されてるだけだし、ここは大目に見てあげようじゃねえか。

 人のこと言える歳じゃねえが、子供なんてあんなもんよ。

 ここは海よりも広い心で見逃してあげようじゃねえか。

 なんか飯の取り合いでツタージャとポカブが喧嘩してるけど許そう。

 なんかツタージャがたいあたりしてポカブが吹っ飛んだけどそれも許そう。

 そんでそのポカブが俺の飯の上に落ちてきてぐしゃぐしゃになり服もえらいことなった上にピカチュウのポケモンフーズも全部吹っ飛んだけどそれも許……ゆる……ゆ……

 

 「俺の静かな朝を邪魔しやがってこの腐れガキ共が!! オメー等一列に並べ!! 順番に拳骨落としてやる!!」

 

 

 「ビカ! ビカビカ!」

 

 許せるかボケェ!!

 泣くほど痛い拳骨食らわせてやる!!

 俺はダッシュでホイール女とリクーム男子に向かい勢いを乗せた拳骨を食らわせた。

 ポカブとツタージャにはピカチュウがアイアンテールで地面にめり込ませた。

 

 「いたたたたたす、す、すいませーん……」

 

 「ごめんなさーい……」

 

 頭を擦りながら涙目であやまる男女に俺は一喝する。

 

 「じゃがしいわホイール女とリクームもといパイナップル野郎! 自分のポケモンくらいちゃんと面倒みんか!!」

 

 「すいません気をつけます……ってホイール女!?」

 

 「以後こうならないようにしますってパイナップル野郎!?」

 

 「だまらっしゃい。いいか、お前たちはまだガキとはいえ一人前のトレーナーとして旅に出てんだ。なら、人様に迷惑かけるなんて言語道断。ポケモンが勝手にやったこととは言え。それを止めるのも君たちだ。ちゃんとしろ、ちゃんと」

 

 俺は怒り心頭のまま説教をかました。

 

 「たく、トレーナー以前に人間としてどうなんだって話だ。そもそも自分のポケモンの言うことを聞かせられないなんてトレーナー以前の問題。悪いことはちゃんと教えないとだめでしょうが」

 

 そう言って俺は肩で息を切らしながら言い終わると、ポンポンと肩を叩かれた。

 なんだ?と思いながら振り返るとそこには青筋を浮かべたジョーイさんがいた。

 え? 何事?

 

 「あの青いラッキーはあなたのポケモンですか?」

 

 「へ?」

 

 ジョーイさんが窓の外を指差し、そこに視線をむける。

 すると、そこにはいつの間にモンスターボールから出たのか芝刈り機を使い何故か俺にそっくりな似顔絵を芝生にいくつも誕生させる楽しそうなドラえもんの姿がそこにいた。

 俺はゆっくり目を閉じ。

 膝をたたみ、ジョーイさんへと頭を下げた。

 

 「申し訳ございませんでしたぁああああ!! ちゃんと消しときますんで本当にすいませんでしたぁああ!!」

 

 鮮やかな流れで生み出される初手土下座。

 その姿にジョーイさんも感動したのか

 

 「ちょ、あなたこんなところでやめなさい! いや本当に! 周りの視線が! 許します! 許しますから! 頭を上げてください!!」

 

 「ありがとうございます! ありがとうございます!! 気が済むなら頭を踏んでくれてもいいです!!」

 

 「しませんから! もう逆に謝るんで頭をあげてください!! ごめんなさい!!」

 

 そう言って逃げるように去っていくジョーイを横目に俺は立ち上がり、ホイール女とリクーム野郎へと視線を向ける。

 

 「少年少女よ、これが謝罪だ。誠心誠意謝り倒せば許してくれるもんだ」

 

 「「それはもう逆に脅迫では?」

 

 「正直焦ってたんだ。説教してたことがそのまま返ってきたから頭真っ白になったんだ。いつも学校の女子にしてた謝罪がでてしまったんだ」

 

 「どんな学校ですかそれ……」

 

 「オコリザルみたいな女の子だらけなのかな?」

 

 オコリザルというよりオニドリルとオニスズメの群れかな。

 一度怒らせると土下座するまで許してくれねえ。

 まあ大体俺が悪くて俺が怒らせてるから恨みもないが。

 ただバカが俺のクラスの女子に執拗にナンパをして矛先が俺に向いた時は泣くかと思った。

 日頃の行いって大事だね。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。