ざまあされ悪役王女の崖っぷちTS転生譚   作:サニー★

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幼少期編:10 提案

 *

 

 

 

さて。

覚悟を決めたはいいが、差し当たっては何をするべきか。

 

 

俺はまだ十歳だ。中身がどうあれガワが子どもなのだから、大人同士の争いをどうにかするのは無理だし、そもそも二十歳になるまでは王位は継げない。なら今俺のすべきことは、身の丈に合わない無茶ではなく、王太女候補として相応しい人間になることだ。

 

そして、子どもでもできることは、やる。

 

 

 

「――アンベール伯爵の三女を王の養女に?」

「ええ。実は聖女様に頼まれ、以前から魔力の多い少女がいないか調べていたのです。新しい聖女はだいたい、十二歳から十八歳の少女から選ばれることが多いでしょう?」

 

俺は自分でまとめた少女たちの情報を目の前の人物――宰相エクラドゥール公爵に渡す。無理を言って、執務の合間を縫って面会してもらったのだ。

 

――宰相は俺の知る中で、最も賢く、人格もしっかりした男だ。

 

執務における有能さは言うまでもなく、若い頃は大学に通って、魔物と魔術の研究をしていたらしい。研究は当主業の片手間だというが、彼は優秀な学者でもあるのだ――実際、執務室にも魔物や、魔術に関連する資料が数多くある。

 

「聖女様は、次の聖女への引継ぎを円滑に進めるための準備をしたいとおっしゃっていました。自分はもう、いつ神々の御許へ召されてもおかしくない年齢だからと……」

「聖女様がそんなことを……」

「月の神子となる少女は、魔力が多い少女から選ばれることが多いでしょう? ですから、候補となりそうな少女を見つけ出したかったのです。そうしたら、件の伯爵の三女が、稀有な魔力保持者だと判明しました。……彼女が、次の聖女の可能性があります」

「それはわかりましたが殿下。何故養女に? 伯爵家は中級貴族です。たとえ身内にするとして、侍女でよいのでは? 彼女を王族にする必要はないのではないですか?」

 

 よくぞ聞いてくれた。――ここからが正念場である。

 

「もちろん、聖女を王族から出すためですよ」

「……と言うと?」

「今の王族は、力が薄弱で、発言権も弱いでしょう。でも、聖女が王族から出れば話は別です。月の神子、聖女は、王族とはまた別に、国中の敬愛を集める尊い存在で、非常に大きな発言権を持っています。もしも聖女が王族から輩出されれば、王族は国民の信頼と尊敬を取り戻すことができます」

 

 宰相は眉間に皺を寄せたまま表情を変えない。

 まだまだ!

 

「アンベール伯爵令嬢は、妾腹の娘だからと、家族に大層ひどく扱われて過ごしていると聞きました。ですから今彼女を引き取り、王族の姫にした上で、彼女が聖女だと発覚すれば、民は『今の王族には先見の明がある』と思うでしょう。危機的状況にあった聖女を助けたのが王族であるということは、とても大きいと意味を持つと思うのです。

 姉が女王に、妹が聖女になれば、王族は安泰。女神の思し召し通り、また親政に戻れる。そうは思いませんか、宰相閣下」

 

 宰相は難しい顔で考え込んでいる。……王族や、それに近しい公爵にとっては、たかが伯爵の、しかも妾の娘を王の養女にするということは非常に抵抗があるだろう。

 

 だが譲れない。

 王に、シャルロットを養女にしてもらうためには、彼の口添えが必須だ。

 

 シャルロットが王女になれば、魔国の王子アインハードとて連れ去って結婚、なんて暴挙も難しくなる。別に世界にはルネ=クロシュと魔国しか国がないわけではないのだ。

 

 魔族の太子とて、他国の王女を勝手に攫って結婚、なんて、たとえ当人と合意があっても外聞が悪すぎる。魔国はルネ=クロシュとは不仲でも、一応交流を持っている国はあるのだし。

 

(あの子とも約束したんだ。俺は、王女として、出来る限りこの国を守る。魔族の王子なんぞに国を滅ぼされてたまるか……!)

「……ですが、それはアンベール伯爵令嬢が聖女であるということが前提でしょう? もし彼女が聖女でなかったらどうするのですか?」

「でも、見てください、この数値を。次代の聖女でなくば、なんだというのですか」

 

 貴族の子は七歳で貴族として認められ、正式に戸籍が登録される。その時に魔力も測定するが、シャルロットは子どもでは到底有り得ない力を示しているのだ。

 

「それに、閣下。彼女は実家で家族に虐げられています。公爵家や王族、富豪の貴族は家庭教師をつけるので子女を貴族学院には入れませんが、伯爵家の子女は普通学院で学ぶでしょう。でも、彼女はきっと教育を受けられません。――これほどの才能の持ち主が、教育の機会を与えられないなんて、国の損失ですよ」

 

 実際に原作でも、シャルロットは中級貴族なら普通は通う貴族学院に通わせてもらっていなかった。だから本来優秀であるはずの彼女が、貴人の侍女としての仕事すら卒なくこなすことができず、王女の勘気を買っていたのだ。

 

「たとえ聖女じゃなかったとしても、ここまで魔力が多ければ、他国の王族から側室にと望まれるかもしれません。魔力を国の礎にしているのは、我が国だけではないのですから。交流のある国の王の后がねとして育てる、という口実ができます」

 

 当然、今、俺の頭にあるのはアインハードの顔である。

 

 ……そうだ、そうだよ。

 もしアインハードをうっかりシャルロットに近づけてしまっても、シャルロットにはうちから正式に嫁いでもらえばいいんじゃないか?

 

 そうすれば魔国と王国は晴れて同盟国だ。攻め入られることはないし、神事も、通いで行ってもらえればいい。『他国に嫁いだ人間に生かしてもらうのか』とか言う奴らも出そうだけど、俺がシャルロットと仲良くできれば、基本心優しい彼女のことだ。きっと無条件で助けてくれるはず。

 王女としてやっていくことを決めても保身は大事! ここテストに出ます。

 

「……なるほど、一理ある」

 

 宰相閣下は顎に触れ、ぽつりと呟くように言った。そして笑みを浮かべ、俺を見る。

 

「わかりました。私の口から陛下へ進言しましょう」

「ありがとうございます、閣下!」

 

 

 これで勝つる!!!!! 

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