ざまあされ悪役王女の崖っぷちTS転生譚   作:サニー★

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女王編:51 覚醒

 そして、たった三百を別働隊としただけで、敵が僅かとはいえ弱体化し、しかも誰にも気付かれずに移動して俺たちの背後を取ったとなれば――三百の騎士全員が隠密の魔術で気配を消していたということだ。

 つまり後ろから奇襲を仕掛けてきた奴らは、精鋭だ。

 

「居たぞ! あれだ!」

「女王を殺せ――!」

 

(まずい!)

 

 既に疲労が半端なかったが、次々と飛来する魔術攻撃を防ぐべく障壁を張る。なんとか防いだが、これが何度も続くとなるともたないぞ。

 

「魔術攻撃第二波来ます!」

「陛下、お下がりを――がっ」

「ヒッ……」

 

 今度は矢の雨。俺を庇うように前に出た護衛が、なすすべもなく頭を矢で貫かれ、落馬して死ぬ。生暖かい血が頬に跳ね、ざあっと顔から血の気が引いた。

 

 ――死んだ。今の今まで会話していた人が。俺を守るために。

 

「殺せ!」

「中距離魔術攻撃用ー意!」

 

 敵騎馬三百のうち、前方にいる数十騎が、協力して魔術を編み上げていく。

 数十人による混成魔術だと? 誰も満足に防壁を張れない今の状況でそんなものが放たれたら、後方は文字通り俺ごと壊滅だぞ!

 

「止めろ!」

「あれを発動させるな!」

 

 予備兵力が魔術発動を妨害しようとするが、他の敵騎馬に阻まれる。

 

 ……本当にまずい。このままでは。

 するとその時、シャルロットがこちらに駆けてきた。

 

「お義姉様! わたしの後ろに!」

「シャルロット!? どうしてここに――来てはダメ! 逃げなさい!」

「できません! ……もう魔術障壁を張る力は残っておりませんが、今ある残りの魔力を全て放てば、あれを打ち消すことくらいは――」

「無茶よ! やめなさい! そんなことをしたらあなたがどうなるか――」 

 

 シャルロットは俺の制止を聞かなかった。指を組み、祈るように目を閉じた彼女の身体から、紫色の光が漏れ出す。

 

 ダメだ。全魔力の放出なんて、そんなもの、自爆と同じだ。

 だが何もしなければ、あの中距離魔術で吹き飛んで死ぬ。

 

 どうすればいい。

 ……いや、どちらにしても、シャルロットは無事では済まない。

 

 万事休すだ。

 

(嫌だ……)

 

 死にたくない。

 ――死なせたくない。

 

 よい国にするとあの子と約束しただろ。

 シャルロットのことは俺が守ると誓っただろ。

 

 何も出来ないまま死ぬのか? 優秀な兄を死なせ、悪魔にずっと騙され続け、その上即位しても家臣に侮られ続けた間抜けな為政者として死ぬのか、俺は?

 

 ――何のために転生してきたのか、ずっとわからないでいた。

 けれど、何か意味があるはずだと信じて生きてきた。

 

 それなのに。

 こんなところで終わるのか。

 

(そんなの、絶対に――)

 

 

 嫌だ!

 

 

 ――心の中で叫んだその瞬間、辺りが白く眩く光った。

 あまりにも強いその光に、敵も味方もぎゃあっ、と、悲鳴を漏らしている。

 

 至近距離で何かが光っているのか。シャルロットが放っていた光は紫色だったからシャルロットではない。……しかも、どれだけ待っても攻撃が来ない。

 

 ややあってから光が止んだ。

 

 ……なんともない。シャルロットも無事だ。

 一体何が起きたのかと、彼女も困惑しきりの表情である。

 

「バカな。何が……何が起きた」

 

 別働隊である騎馬隊の隊長を務めていた男が驚愕で声を漏らす。

 

 

「攻撃が――掻き消されただと!?」

 

 

(え……?)

 

 攻撃が掻き消された?

 俺たちは何もしてないぞ。

 

 なら奴らが魔術の発動に失敗したのか? 

 ……いやでも、この土壇場でさすがにそれはないだろうしな。

 

 だとしたら――?

 

「くそっ、なら、もう一度だ!」

 

 敵がまたも魔術攻撃を仕掛けてこようとする。

 しかし女王軍後方は皆、今の謎の現象に半ば呆然としていて、また上手く攻撃を止めることがかなわなかった。

 

「くらえ――!」

 

 雄叫びとともに、騎馬隊から魔力の塊が放たれ――刹那、またあの光が弾ける。

 

 うわっと叫んで、また目を瞑ったが、今度はすぐに光が止んだ。

 そしてやはり、また敵の攻撃が掻き消されている。

 

 うそだろ? なんなんだ、本当に。

 

「何が起きて……一体誰がこんな……」

「お、お義姉様……その首筋の傷痕は――」

「……え?」

 

 思わず呟くと、よろよろと寄ってきたシャルロットが、愕然とした様子で、ぶるぶると震える手で俺の首を指差した。

 

 首の傷? 首なんて怪我をした覚えはないぞ。

 困惑しながら手鏡を取り出し首筋を映して、そして思わず叫ぶ。

 

「――は!?」

 

 首筋を手で押さえる。

 

 ……おかしい。

 だってこんなもの、さっきまでなかったぞ。

 

 首にこんな――赤くて丸い痣なんてものは。

 

(しかもこの形、ただ丸いんじゃない。これは……)

 

 

「太陽――?」

 

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