「千夜、ほら。チョコやるよ」お兄ちゃんの言葉に僕の視線は一瞬で釘付けになった。その手には、評判のスイーツ店のチョコレートがあった。
「さっき物言いたげに見てただろ?」優しく微笑むお兄ちゃん。その微笑みは僕の心をドキドキと高鳴らせる。「まあ、いやなら理由は言わなくてもいいけど、悲しそうな顔すんなよ。これで元気だせ。買ってきたチョコだけどな」お兄ちゃんはそう言ってチョコレートを差し出す。
僕はそのチョコレートを受け取ると、まるでお兄ちゃんの愛情を直接受け取ったかのように心が踊った。お兄ちゃんが僕のために用意してくれたもの。その気持ちだけで僕の心は幸せでいっぱいになった。
「ありがとう、お兄ちゃん」と僕は嬉しそうに微笑んだ。チョコレートを口に運ぶと、その甘さが僕の心を満たした。これがお兄ちゃんの愛かもしれない、そんな想いが僕の心を揺さぶる。だけど、僕はより多くの思いを抱えていた。お兄ちゃんと愛し合いたいという、人には言えない気持ち。その秘密はまだ、お兄ちゃんには言えない。
「〜〜それでさ、向こうは俺に日頃のお礼とか言ってさっきのチョコくれたんだけど、お返しがしたくてさ」お兄ちゃんの言葉に僕の心がハッとした。
「千夜料理得意だろ?チョコ作り教えてほしいんだ」そう言って、お兄ちゃんは僕を見た。その眼差しはまるで、僕を頼ってくれているかのようだった。
僕は嬉しくなった。だって、お兄ちゃんが僕を頼ってくれたんだもの。「うん、もちろん!」と僕は頷いた。
「女の子には手伝ってくれたことちゃんと伝えるしさ。変な見栄はる訳じゃないけど、ちゃんとしたもの返したいんだよね。」そう言うお兄ちゃんの真剣な表情に、僕は少し寂しさを感じた。
でも、僕は嫉妬に負けなかった。だって、僕はお兄ちゃんのために何でもするから。料理が得意な僕は、お兄ちゃんのために一所懸命チョコレートを作ることにした。
お兄ちゃんと一緒にキッチンで過ごす時間。その時間が僕にはとても大切だった。僕は一人の女の子として、お兄ちゃんに愛されたい。そして、僕のことだけを考えてほしい。それが僕の、唯一の願いだから。
ああ、僕は狂いそうだ。この想いが、この痛みが、どれだけ深いか、お兄ちゃんにはわからない。お兄ちゃんが想い人と距離を縮める手助けをしている。そんな自分が、信じられない。
僕たちはキッチンで一緒にチョコレートを作った。お兄ちゃんの手先は、意外と器用で、一緒に溶かしたチョコレートを型に流し込む最後の仕上げは、僕の心を揺さぶった。
「よし、これで完成だな」お兄ちゃんがそう言って立派に完成したチョコレートを眺めた。それを見て、僕の心はどこか嬉しさと寂しさで混ざり合った感情でいっぱいになった。
「あいつ、きっと喜ぶよ。ありがとな、千夜」そう言って、お兄ちゃんは僕に微笑んだ。その笑顔は明るくて、曇りがなくて、それが僕の心をさらに痛めつけた。
「うん…」僕は力なく頷いた。お兄ちゃんのその笑顔は美しすぎて、だけど、それは僕にとっては残酷なものだった。
僕の心が砕け散る感覚。それは、僕が一緒に作ったチョコレートが冷えて固まるのを待つような、甘くて苦い時間だった。僕はお兄ちゃんに愛されたいという、人には言えない気持ちを抱えていた。そして、その秘密はまだ、お兄ちゃんには言えない。