第二回目のライブ。場所は一度目と同じステージ、だが順番が違う。
どうやらライブイベンターは、彼女達の事をよく見ていたようだ、集客力が他のアイドル達よりも良かったりしたのだろう。何より、彼女達の初ライブのとき他のドルオタ達が帰ることもせず、それに見惚れ途轍も無い熱気を持っていた。
それをイベンターは利用しようとしている、企業のCMではないが、B小町のライブの様子を〘Y○uTube〙や〘ニ○ニコ〙等へと流す許諾をしてきた。これは、会場のCMみたいなものだがそれでも〘この映像に映っている娘達良いな。〙と思わせれば俺達の勝ちだ。
俺達の使っているライブ会場は、多く集客出来ても精々150〜200人が限界だ。
それでも、イベンターがそう判断するということは俺達はかなり買われている。
ただ、俺達としてももっと売れなければならない、そしてこの準備期間ともとれる小さなライブ会場での戦い方、ファンともっとも近いこの環境で、如何に固定層を獲得するかそれが焦点だ。
神秘的なアイドルと親密なアイドルどちらがより、彼女たちにはあっているのだろうか。
目指したいアイドル像は、本人達がどちらを選ぶかで決まっていく。
勿論、社長は神秘的なアイドルというものを目指したいのだろうが、果たしてそれが上手くいくのか。
神秘的なアイドルというものは、謂わば嘘の塊。本音で戦いたいと思っている奴からすれば、全く嫌なものだろう。そして、その神秘的のベールが破れた時、アイドルにとっては致命的な打撃を被る。そして、ファンが過激になりやすいく、賞味期限がある。
リターンとしては、神秘的なものというものは非常に崇拝の対象と成りやすく、集客、固定層の維持には持って来いで短期的なものならば効果的だ。宗教が良い例だろうか、正しく偶像だ。
対称的に親密なアイドルというものは、真実に嘘を織り交ぜ本当の自分というものをさらけ出し、己の技術で戦いを挑む者たち。
バンド等が良い例か?生半可な技術では直ぐに飽きられるが、非常に強固な固定層と憧れの対象になりやすい。
最大のリスクは何かあった場合、攻撃対象は本当の自分であり、それに立ち向かうための強い心が必要になる。
彼女達のライブを見ながら思案を重ねるが、答えは出る前に彼女達が行動に移す。
まだ彼女達には曲が少ない、トークを少し織り交ぜてファンとより親密になろうと、自分達で考えたのか。
はたまた、才能というやつなのか。
特に印象的なのは、あのアイが『ファンの皆のことを愛してる』と、心から言っていることだろう。きっとそれは親愛だろうが、本人の気が付くところではない。自覚がないというのは悲しいことだ、だからこそ話をしてやらないと、彼女はいつか壊れてしまうかもしれない。
それと、ニノ。彼女は歯に衣着せぬ物言いが役に着いてきている。ファンからのからかいの言葉を時に本気に怒り、時に本気で笑う。アイのそれとはまた対称的でダンスという、技術のある彼女にとってそれは、自己表現とし当たり前の事なのだろう。嘘が嫌いな彼女にとって、それは真実だ。
偽りと真実、双璧を成す二人か。良いんじゃないか?だが、これではミネとナベの二人が少しインパクトが弱い。ツインでの歌のパートを創ったほうが良いだろう、二人共歌はアイとニノよりも上手いのだから。
扉の向こうからガヤガヤと声が聞こえる。嬉しそうな心の叫びも。どうやら戻ってきたようだ。
「アムロ〜ねぇ、どうだった?」
入ってきて早々に抱きついてくるのは辞めてほしいものだな。受け止めたあと、降ろすのも結構手間なんだけどね。
「あぁ、皆前回よりもよくできていたと思う。完成度も以前よりも増している。ファンへのサービス、それも皆練習したのかな?良くできていたと思うよ。」
「ふーん?当ったり前じゃない!だいたいファンサービス何てね、アイドルやるんなら出来て当たり前。どう安室さん?私達の事、少しは見直したかしら?」
ニノ、この娘は前からだが俺の前では本音を話さない。ファンの前では本音なのにな、褒めて欲しいのは解るが露骨だな。
「ニノ、君のダンス凄く美しいと思うよ特にステップは。だが、少し庇っているところもあるから、無理せずにね?
ミネにナベ、君達はもっと歌が歌いたいんじゃないか?ツインのパートが多い歌の発注を社長に、俺の方から言っておく。
アイ、君は歌もダンスもどちらも良くできている。唯一の汚点は、笑顔が顔に張り付いているように見えることかな?たぶん俺以外はまだ、気がついていないだろうが、今のうちに練習したほうが良いぞ?」
アイは少し不満そうだな、独占欲というものが出来て来ているのかも知れない。中学生にもなると、承認欲求も人一倍だろうし少し心配だな。
「ねぇ、アムロ。あのさ、この前のライブの時、お詫びの印になにか考えておいてくれって言ってたよね?私達さ色々考えたんだ。」
「私は、私達のグループに似合う何かマスコットみたいなの欲しいと想ったわけ。」『でも、動物とかはありきたりなのよね』
「衣装も、これだけだと何か味気無いから歌に合わせて切り替えたいなって。」『早着替えってどうやるのかな?』
「私達の事をもっと紹介したいから、インターネットのブログとか開設もしたい。」『You Tubeとか動画配信したら受けるかも』
それぞれ、思い思いだな。
「それで、私としては皆のグッズを創りたいの!」
『本当はアムロと家族になりたいなぁ』
「解った、社長の説得は任せてくれ。」
〜sideアイ〜
「それで、何故アイだけを推すような贔屓を計画している?」
「全体を押すよりも、一番輝いている奴を推して行けば自ずと全体を牽引していく、そういうのを俺は知ってるし良く見ているからな。」
佐藤さんとアムロが話してるのを、私は見守るしか出来ない。社長の私贔屓は、私をスカウトした時から始まってた。
私がアイドルになるのは確定していて、他の三人はきちんとした面接。
歌い出しと、重要なフレーズはいつも私。ダンスも私を全面に出す。かなりの贔屓、アイドル始めて3ヶ月しか経ってないけど。それでも、皆それを解ってた。
「良いか、お前は何処まで行ってもここの所属タレントで広報。アイドルの歌とかダンスとか、そういうのは俺の仕事なわけだ。」
「解ってるよ、だから!言わせてくれ、アナタのやり方では少なからずとも2年以内に、B小町は破綻の危機に陥るぞ?」
私の事だけじゃなく、B小町の事を思ってる。解ってるけど…複雑だなぁ。
「内輪で揉め事が起きれば家族は成り立たない。芸能界でもアナタは確かに指折りのマネージャーだ。だが、今は事務所の社長。司令官だぞ?売れることだけ考えて、全体を見ることが出来なくなったら、意味がない。お前はもう兵隊じゃないんだ。」
「ほお、言うようになったな。お前さ、自分の仕事自分で取ってきてるだろ?ミヤちゃんいつも愚痴で言ってたんだがな、私を頼りにしていないのか?だってよ?お前こそ、俺達を信頼してないんじゃないのか?」
う〜ん、嫌な空気。正直ここに居たくないよ〜。私の家はここだから、のんびりするためにここにいるしかないけど、こんなの見たくない。
「信頼はしているさ。ただ、ミヤコさんは俺と一つしか変わらない新人で、俺のほうがこの世界が長いから教えてあげているだけだ。」
「はあ、解ったよ。掛け合うよ、ツインのデュエットパートの多い曲。だがな、マスコットや服は難しいぞ。歌と違って衣装は生産品だ、時間も労力も足りない。」
「服の件は、少し後回しにするよう俺の方から言っておく、もし良ければ、ミヤコさんにそれをやってもらうのが良いと思う。マスコットは、俺に腹案があるから任せてくれ。それと、アイ聞いてるんだろ?ちょっと二人で話がしたい後で良いか?」
なんの脈絡?もないのに、なんだろうなぁ。確か、彼処は小さな音楽ブース。皆で使うには狭すぎるから使ってないんだよねぇ。
「それで?話ってなんなのかな。そろそろ、練習に行く時間なんだけど。」
「あぁ、本音で話してくれないかな?どうして、俺と家族になりたいんだ?」
アハ〜やっぱり嘘は無理なんだよねー。本当に感が鋭いと言うか、心を読んでると言うか。本当に怖いくらい。
「前にも話したけど、私のお母さんさ私を捨てちゃったじゃん?それでね?私さ、普通の家族っていうの知らないんだ。だってそうでしょ?シングルマザーで捨てられた子供、普通の家族知る方法無いじゃん?それにさ、ふんっ。私さ、ウ。アムロ以外と話すとさ嘘付いてるのか、解んなくなっちゃうから。
だから、もし私が家族になるならアムロなら私の事ちゃんと、見てくれるのかなって!」
「そうか、良く話してくれたね。その問いに対してだが、今は無理だ。」
どうして?
「君はまだ、12歳。まだまだ子供で色んな事で迷う時だ。一時の感情に流されてしまうこともある。
だから、もう少し大きくなったら。そうだな15歳ぐらいかな其れくらいになって、もし君の気が変わってなかったら。君の家族になろう。」
「約束だよ?絶対だからね?」
彼は微笑んでいった。
「勿論さ、嘘をついたって意味が無いよ。君は泣いているより笑っていたほうがかわいいからね?」
あぁ、やっぱりこの人のこと私スキなんだなぁ。