虹の男と星の娘   作:丸亀導師

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第九十一話

[普通の9歳の子ってどんな遊びをしているんだろう、どういう生活をしているんだろう。私には解らない、お母さん……ママから途轍もないプレッシャーを感じる。

 

「ねぇねぇ遊ぼうよ…レッスンなんてほっぽり出して一緒に。」

 

「煩いわね、私は仕事があるの!アンタみたいな暇人と違って、私は役者なの。だから遊ぶなんて暇ないの!」

 

嘘である、役者の仕事なんてここ最近は無いんだ。ピーマン体操なんて大嫌いなものを歌って踊ってみせたのも、たった一度だけ評価されてその後はからっきし。

だから私の仕事は無い…昔コイツの父親が言っていた通りになった。

 

「だからさ〜心機一転、役者の事なんて忘れて…」

 

「煩いっ! 良い?私は役者なの、ダンスとかそんなのなんて本当はやりたくないの!だから、演技の練習はずっとやらなきゃならないの、じゃないと昔のアンタに勝つことなんて出来ない!アンタに勝ち逃げなんてさせないから!」

 

コイツと初めてあった時受けたあの屈辱、忘れるはずもない。なのにコイツは、ずっと私に付いてくる。

暇人のくせに、私よりも遥かにあの場所での役割を演じられていたくせに。そして何より〘女の子〙みたいなスカートを履いて。

 

「でも私はそんなに仕事無いよ?不知火フリルって子にみ〜んな取られちゃうから、男の子役とかしか無いし…」

 

「はぁ?アンタ男でしょ何言ってんの?」

 

「ええ?私は女だよ?いつも男の役しか来ないから、皆勘違いしてるけど。」

 

なん…だと…

 

「ちょっといいかしら…」

 

「ちょっ…辞めてよ!」

 

無い…アレが無い。昔パパと、一緒に入った時にみたことあるアレが、この子には付いてない!!

 

 

 

 

後に親友となるこの娘との、ある意味で1番ショッキングな事がこれだった。]

 

 

 

〜sideかな〜

 

目が覚める、陽射しが照って私の顔を彩る。懐かしい…なんか昔の事を夢に見た気がする…。

今じゃあこうして家にまで住んで、それどころか身分的には彼の娘…不思議なものよね。

 

今日は何もない日…アイドルとしてのレッスンも役者としてのスケジュールにも隙間が空いている、そんな日。

学校もなければ劇場に呼ばれているということもない、ただただ休日…。昔は大嫌いだった何もない一日。

 

私は布団の上でゴロゴロする、そろそろ朝食の時間だ。

あーちゃんから貰った兎の寝間着のままに、私は部屋を後にしてダイニングへと足を運ぶ。

どうやら私を呼びに来たのだろうあーちゃんと丁度に出くわした。

 

「おはよう…今呼び行こうと思ってたんだけど、起きちゃったんだ。」

 

「昔ならともかく今のアンタの体格でジャンピングアタック来たら、私は死ぬわよ?」

 

前回起こしに来た時に、私は彼女から手痛い攻撃を食らった。布団の上からだが、ジャンプした後全身で私にダイブしてきたのだ。正直息が止まるかと思った。ったく…小学生の頃とは違うのよ。

 

あんたはタダでさえ体が育ちすぎちゃって普段はあれだけ大人びてるのに…余程良いことか逆に嫌なことかのどちらかの出来事が起きて気持ちが昂ると途端に心が子供帰りするんだから。まあそんな一面をあーちゃんが見せてくれるのは、家族と親友と認めた人間だけだけど。

そうして少し時間を過ごすと、皆で朝食を取りながら私は今日の予定を考えている。

 

「ねぇ、あーちゃんは今日暇なの?」

 

「?う〜ん、そうだね暇だよ。ドラマの撮影も終わったし、次のオーディションまで時間あるからね。別にアイドル本業じゃないしね…。それに、少しでも気を紛らわせないとイラついてしょうがないからさ…こういう時は翡翠が私の心を癒してくれるんだけど、よりにもよってこういう日に限って母様が仕事に連れてっちゃったし……ならいつもみたいに家のプールで一泳ぎしようかとも考えたけど流石に今回の事はそれぐらいじゃ気が紛れなさそうだしさ」

 

ああ、それは間が悪かったわね。翡翠はあーちゃんにとって何よりの癒しだからね…ただアイさんとあーちゃんとお祖母様は翡翠を甘やかしすぎるきらいがあるから私とルビーと嶺さんでその辺のバランス取らないと将来が心配だわ。

 

後ね…いくら家の室内プールだからって全裸で泳ぐのは嶺さんがいる日ぐらいは止めなさいよ。確かに他所の人に見られる心配のない家の中なのにいちいち水着を引っ張り出すのが面倒だってのは私にも分かるけど、父親に見せていいもんじゃないわよあの姿は。

 

……まぁそれはさておき家の中にいてもあーちゃんの気が晴れないっていうのなら何処かに行こうかしら、久々に二人でショッピングでも。女同士だし、多少目立ってもアイドルのプライベートって感じでスクープにもならないわ。

 

「え〜!二人して何処かに行こうとしてない?私もっ!」ルビー、君は俺のところに来て遅れている学校の勉強をみっちり教える。だから今日はNOだ。夕方から俺は撮影だから、午前中は目一杯やるぞ。」

 

その発言にルビーがガックシと首を垂れ、トホホとしている。アイドル活動にかまけて、勉強を怠っていた罰よ。幸い赤点こそ免れたようだが小テストの点数が割と悪かったらしく、それを親に隠そうとした罰でもあるようだ。

 

「お祖母ちゃん、助けて…。」

 

「ごめんね…こればっかりは私も無理なの。」

 

「そうそう、勉強しとかないとアイドル引退した後にツケを払わなきゃなるんだから。ソースは、私。下手なクイズ番組で珍回答跳ばしてバラドルになっちゃうぞ?」

 

ルビーとしてはそれだけは嫌なのだろう、バラドルはアイドルの亜種的存在だが本質は別になってしまう。

ファンの人達も恋心とかとは違う、珍獣見たさで集まってくるかもしれない。だからコレは致し方ないのだ。

 

久々のウィンドウショッピング、どんな服が良いかしら?デートって訳でもないし、友達と一緒に行くってなると体のラインとか別に気にしなくてもいいし…寧ろ清楚な感じにワンピースと?

 

変な夢も見ちゃったからなぁ、懐かしい格好で行こうかしら?

白無垢のワンピース。私は何色にも染まる、新たな私の原点。所属していた事務所との最後の契約でやらされた、正真正銘私が否定された曲。

当時はまったく売れなくて嫌なものだったけれど、ああいう努力があったからこそ今の私がある。

 

 

……

 

「お待たせ〜、どう?結構似合うと思うのだけれど…かなちゃん、その服。昔着てたアレと同じ、無垢なワンピースだね。」

 

「そういうアンタは青色コーデね、アンタもワンピースなの。被っちゃったわね、別に何処かデートに行くなんて事でもないのよ?」

 

互にワンピースを着て、更にそこにカーディガンを羽織る。まだまだ肌寒いから、それが丁度いいのだ。

 

「雨もないし、別に良いじゃんそれにさ私だって気晴らししたいんだ、忘れさせてよ。」

 

「解ったわ、こうやってこの格好で行こうなんてさ、何年ぶりだろうね?前はあーちゃん、アンタに誘われたけれど今回は私がアンタを誘ったって事だから、これでおあいこ。

さあ行くわよー、愛久愛海。今日は気合い入れてショッピングよ!」

 

そうして私達は家を飛び出した。

 

 

 

〜sideあかね〜

 

久々のドラマの撮影は恙無く進んでいる。私の登場する場面はそんなに多くないというか、レギュラーな存在は安室さんが一人だけというのがこの原作だ。

 

だから、世界中の撮影映像を見せてもらった時非常に勉強になった。同じドラマで、同じ人が別人として出るのは非常に稀であるから、どんな悪役だろうと別の役者を使いたい。 

それこそ時代劇の斬られ役だとかはさておいて、使いたくは無いだろう。

 

このドラマもそうなんだけれど、それでもその人数は計り知れない。成る程だから、その国その国で纏めて撮影する必要が出てくるのかと、納得した。

年間を通したドラマなんて、昨今では無いから私の背格好への変化だとかも少しずつ差分を作るみたいにしなくちゃならなかった。

一人の人の、四年間を駆け足のように演技するのは大変だ。

特に学生のそれなんてだからこそ選ばれたんだろうけれど。

 

「はぁ〜、やっと明日は休みか〜。疲れたなぁー。」

 

気分転換に何処かに行こうか?でもでも明日が終われば直ぐにまた、収録が始まるしだとしたら…買いたいものも直ぐには買えない…。行こう、今のうちに。

 

……

 

「え〜っと…かなちゃんどうこれ?」

 

「あら?良いんじゃない、だけど少し派手ね。もうちょっと」

 

うわぁ…えぇ?凄い目立っているんですけれどお二人さん?デート?にしては真剣すぎるよね、どちらかと言うとショッピング?

う〜ん?

 

「アレ?アカネちゃん?お〜い!」

 

嘘何でバレたの、私の変装は完璧なはず。

 

彼女は私に手を振ると、こちらへと歩いてくる。そして終いには…

 

「捕まえた。全然完璧じゃないよ、その程度なら直ぐにバレちゃうよ?やるなら髪色を変えるくらいはしないとな。

 

後ろから羽交い締めにされて、髪の匂いを思いっきり吸われながら、そういう台詞を吐いてくる。

周りの目を気にすることもしないで、この娘の性癖はいったいどうしてこうなっているのか。

振り解こうにも彼女の方が力が強いと言うか、身体の使い方が上手いのか力が…入らない。

 

「無駄よあかね。あーちゃんは体格に恵まれてるのに加え父親仕込みの護身術を教わってるから、中学時代に学校で幅を利かせていた質の悪い先輩共のグループを丸ごと叩きのめしたこともあるわ。それにあーちゃんこそあんまりからかっちゃ駄目よ。周目の的よ。」

 

「ふふん、かなちゃん。あかねちゃんと私は公式カップルなの忘れちゃった?一応まだそれ生きてるんだよぉ。ねぇあかねちゃん。」

 

それはそうだけれど、普段の私が周囲に見られるのは恥ずかしいというか、とにかく離れて欲しい。

注目されてるって、顔が熱くなるよ〜。

 

「す〜っと、はいおしまい。それにしてもどうしたの?一人でこんな所にさ、なに?誰かと待ち合わせ?」

 

切り替え早いな。

 

「いや、最近忙しくてどこにも買い物とか行けなかったし、偶に良いかなぁって、そしたら二人がいたの。それにしても、良くその格好で堂々としていられるね。絶対に解っちゃうよ?」

 

「プライベートのアイドルが友達と一緒にショッピングしている…良い絵じゃない?」

 

成る程、かなちゃんの宣伝も兼ねてということか。そこまで考えていたなんて。

 

「それは建前で…ちょっと耳貸しなさい。あーちゃんね、破局したのよ。憂さ晴らしに突き合わされてるの、私も少し思うところがあったけれど。

 

うわぁ、じゃあケンゴ君と顔を合わし辛くなりそうだね。結構いい雰囲気だったのに、恋愛って解らないね…?

そう言えば私は恋愛したことってなかったな、あれ?もしかして…私って年齢=彼氏いない歴?

冷や汗が背を伝う。

このまま一生一人ってことないよね?そんなの嫌だよ。

 

「それは…どうだろうね。ま、大丈夫でしょう。それよりも、さあ私達と一緒に目立つのです。」

 

そして私はお揃いのワンピース服に着せ替えられて、一緒に買い物をした、物凄く目立ってたみたいで正直顔が赤かった。

 

 

〜sideルビー〜

 

「はぁ〜、わたしも行きたかったなぁ〜。ねぇ、本当に行っちゃだめ?」

 

「駄目だ、最低でも7割取るまでは。」 

 

はぁ〜、問題自体はそんなに難しくないみたいだし、計算とか教えるのはパパは本当に上手いし問題文も面白いから、御蔭で学校の先生の授業とは違ってきちんと頭に入ってくるけれど…それでも心残りだなぁ。それにしても

 

「ねぇ、どうして3人(・・)で行かせたの?それもあかねちゃんなんて、自分が誘導されてることたぶん解ってないよ?」

 

「誘導なんて人聞きの悪い、息抜きをさせに行っているだけだよ。」

 

ドラマの最中、何度か緊張の糸が切れかかった事があるらしい。丸一日撮影に費やして、休憩時間もあかねちゃんは役に成り切るために色々と創意工夫をこらしたんだって。

でも、それで倒れられたら元も子もないと言うことで、息抜きをさせているらしい。

 

「ただ、悪いけれど彼奴等が動くかどうかの確認も兼ねてね。」

 

「優しいんだか、利用してるんだか解らないね。良し、ところでさママの新しい仕事ってなに?」

 

私はタブレットデータをパパに送信して、答案の確認をしてもらいながらそう言った。

 

「そうだな、ネットバラエティらしい。深掘れワンちゃんだったか?レギュラーでと言われているぞ?

おっここは良いな、全体的に点数が良くなったな。もう一度別の問題を出すから、それで合格ラインだったら終わりだ。」

 

「えぇ〜まだやるの?ママのそれってさ、日程とか大丈夫かな?翡翠の事一人にしちゃうと嫌なんだけれど。」

 

あの子は私たちとは違うから、きっと母親がいないと絶対に駄目だと思うんだ。私とかな先輩は今が頑張り時だから、今日みたいな休日以外はママとお姉ちゃんとお祖母ちゃんに翡翠の世話を殆ど任せがちだし……幕張での合同ライブが近くなればお姉ちゃんも私達と一緒にレッスンに加わるから忙しくなる。そこにママまで昔みたく忙しくなっちゃたら翡翠の面倒をお祖母ちゃん一人に押し付けることにある。

 

「そこはスタジオ側が融通してくれるらしい、なにはともあれ問題はないよ。」

 

ならいいけど……みんな早く帰ってこないかな〜。

 

 

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