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彼等は何をなそうとしているのだろうか?と、私は一人思考した。無い頭で考える、この時代には本来なら存在しえないMSの動力源を彼等は作り上げた。
彼等は何を成そうとしているのだろうか、大君と言う議員が首相になった。
数年前まで無名の議員だった彼が、数年の内に若い世代を中心とした議員や民衆の政府への信頼を回復させ熱い支持の基に首相へ成った。
その瞳に私は見覚えが合った、瞳の色も輝きも変わったそれでも私にはその意志が見えた。
憂いも迷いも全てを捨てて、変わってしまったその瞳に私は何が彼をそこまで変えたのか解らなかった。
私には解らなかった、かつてのような自分自身を歯車としてではなく、今や一種の心臓として世界を変えようとする彼の姿を、それでも私は彼に大佐を幻視した。
アムロと大佐が同じ目標を持って前へと進んでいる?
私が死んだ後、向こうで何があったのか私にはとんと見当が付かない。
私がどうしてここに生まれ変わったのか、解らないのだ。そもそも私は転生というものにはあまり良い感情は持てない。また大佐と会う前のような辛い経験を味わうことになりかねないし、何より来世でも大佐とアムロのような自分を救ってくれる人に必ずしも出会えるとも限らないのだから。
死の瞬間、身体を焼かれたその瞬間私は意識を手放し時を見た。人々の進む道を雪崩れ行く、理を。散り散りになっていく意識と、瞬く間にアムロと大佐のそれを見て二人の狭間にいた。
そして、そのワタシと私は別れ私はこうして生まれ変わっているのだと。
そんな私に役割があるのだとすれば、外野から二人を見守るくらいしか無いのだろう。
そう思ってみると、この島国の中に私のような者たちは多くいるのではないか?と思い、意識して見るに幾らかいた。
歴史を動かす人々か、それとも?私には手出し出来ない、前世で大佐と出会う以前のまともな教育を受けられず、貧困に苦しんでいた頃よりは遥かにマシとはいえそこまでの学はない。
だから私は観測しようと、私達を見ているナニカと同じように…。]
〜sideアクア〜
空気が……重い。
私達3人が一同にソファに腰を掛けている、左右別々に母様とその対面に〘高橋 らら〙と言う人が座っている。
高橋さんの方は済ました顔で、出されたお茶に口をつけお茶菓子に出したル・マ○ドを食べている。
齢のほどは、年齢相応に老けていてそれでも何処か上品な雰囲気がある。
でもどうしてだろうか…胸がざわめく、私は会ったことが無いのに。
(私のせいだろう……私は此奴に嫉妬している…。私はこの女のようには慣れなかった。)
至って普通そうに見えるのに、そんなにもこの人は特別な存在なのだろうか?
「とても…立派な家ですね。このような大きな家に入ったのは、こちらの世界では生まれて初めてです。」
「それはどうも…」
母様は、まるで猫のようにこの人に警戒している。家の中に見たこともない人が、苦手な人が来た時のように逃げ場が無い時のように威嚇している。
実際、かなり嫌な気分を持っているみたいだ。
「では、改めまして。私は、高橋 らら、ごく一般的な主婦をやっています。お見知りおきを。」
「こちらこそ、星野アイです。始めまして、タレント兼主婦をやっています。」イライラ
一方的にバチバチと警戒心丸出しだ。
「そんなに警戒しなくても、別に貴女の敵では無いのだけれど?
娘達の目の前でそんなハッキリとした殺意を浴びせるのは、あまり教育上よろしくないのではなくて?」
「いきなり話したこともない人から手紙が来たら、警戒しないなんてできないよ。特に、アムロの関係する人程変わった人達はいないから。」
「ええ、そうね。この都市の中だけでいったいどれだけ私達の関係者はいるのかしら?この間久しぶりに力を使って大まかな範囲で調べてみたところ、記憶の有無は解らないけれど、魂の有り様とかそういう物の根底にあるものが、私達の世界の住人だったりする人達は、それなりに居るのは私のほうでアムロやシャア大佐を始め幾人か確認は取れてるわ。そこにいる貴女の娘さんを含めてね。
でも、それは世界が地続きで魂の有り様が時間という概念の中で循環し時を超えてしまった時のライフサイクルの1つ、私達はたまたま記憶が有るだけのことよ?大半の人たちは元の世界の記憶が無いみたい。
でも、本来はその方が良いと思う。私達の時代は酷い戦火の中にあったから辛い記憶を持ってる人が数多い。誰もが過去を乗り越えられる強い心の持ち主じゃないから、人によってはそのままじゃこの時代みたいな平和な環境に馴染みづらくなるもの。そのせいか私やアムロみたいに元の世界の記憶を持っているのは元々が強い自我の持ち主が多いみたいね。
それに、私の夫は貴女の夫であるアムロ。彼の同級生で一応友人だと自負しているわ?最近でも会っていた様だし。まあ、貴女が知らなくても仕方がないことよ?
私も最近まで貴女方の住所を知らなかったもの。前世の頃とは違って今の私はしがない一般人なの、気にも止めなかったわ。」
「しがない一般人が、私達の住所をどうやって知ったの?アムロは兎も角、私達の住所は業界の人とか契約上公表されてない筈だし、何より一般人が入手なんて…アムロが教えたの?」
「フフ、ええそうよ?と言っても、夫にだけれどね。アムロでないと頼めないことがあるからと言って会いに行った際に教えてもらったみたい。まさか貴女とアムロが結婚しているなんて事は知らないだろうけれど、あの人そういうところ興味が無いみたいなの、そこが良いのだけれど。」
はて?そんな風に話が始まる。惚気話?真剣な話じゃなかったのだろうか?
「はぁ?そんな自慢話をしにきたの、じゃあ言わせてもらうけれど、その同級生の人って〘高橋 漱石〙って名前じゃないかな?きっとそうだよね。ふ~ん、何?そんな顔しちゃって、私がその人のこと知らないと思ってたの?芸能人だから、一応才能ある人は覚えてるんだから!」
「それは光栄ね。
さて、それはそうとアムロは何処に行ったのかしら?私と会わないように何処かへ行ったと思うのだけれど、どこか知っているかしら?」
「知っていて話すと思う?」
そう言えば何処に行くのだろうか、父様がこういうと時に行く場所というと…都市伝説のバーくらいか?
「そこのお嬢さんは知っているみたいだけれど、正直者ね。
まあ、聞いたところで行く気は無いのだけれど。どうせ大佐と会うつもりでしょ、色々と闇が深い世界がある所も解っています。」
「ママ…闇が深い世界って何?」
ルビーそこ聞いちゃう?聞かせたくないから闇が深い世界なんだけれど、いや駄目だと思うよ流石に。
「ドラマの撮影なんて建前で、実際は踏み絵をさせてるって事を教えないのね。
子供には荷が重いと思ってのことよね、でもこうやって知ってしまうこともあるのよ?」
何を言っているのか、私達にはとんと意味がわからない。母様がその言葉を聞いた瞬間の動揺からその言葉が良い事ではないことを、察せざる負えない。それにしても現在は一般人の立場でしかない彼女が身を置いている場所から動くことなく裏稼業や諜報の世界で生きる人間でさえ掴むことが困難極まりない情報をあっさりと知り尽くしてしまう彼女のNT能力に驚かされる。成り損ないと自嘲するシャアさんはもちろん私と父様とハマーンさんでさえ力をフルに使ってもそんな芸当は不可能であり、私達を上回るルビーの資質を以てしてもそれは至難の業だ。父様の言う通り、彼女の素質は私達の比ではない。
「自分の父親が、いつも命を賭けていることを子供が知らないのは、彼にとって辛いことではなくて?
その子達は、たぶん知りたがる筈でしょ?大人の目線で高い所から子供を見下ろすばかりじゃすれ違いを起こしてしまうわ。だから私達大人は時には子供とは同じ目線を持って物事を見ることを忘れないように心掛けないといけない」
「な…何を言っているか解らないけれど、私は何も言えないよ。ただ、アムロを信じるだけだから。」
母様の顔色は明らかに悪い、それでも心を見せまいと閉ざしている。凄い強固な精神なんだろう、だからこそそこまで隠し通そうとすることとはと、私は物凄く気になるのだ。
それにららさん……ララァさんの言葉は一つ一つがストンと心に落ちるものが多い。確かに私も父様と母様とすれ違ってた頃は相手と同じ目線に立つことを疎かにしていた気がする。今や私とルビーも年齢が親子ほど大きく離れた弟を持つ身だ。
ララァさんの今言ったことは他人事ではない、翡翠とすれ違わないよう子供心を忘れたりしなように肝に銘じておくか。この人が父様とシャアさんに今でも大きな影響を与える女性……ララァ・スンか。
能力の強大さは勿論のことだが、自分が今まで私が見てきたどの人間よりも、ここまで人としても女としても器が大きい人は見たことない。なるほど……昔の父様とシャアさんがこの人に惹かれたのも今ならわかる。正しくこの人こそニュータイプの理想形だ。
「因みにだけれど、今の話は貴女の思考を読んだ訳ではなくて、夫の考えよ?あの人、空想が得意だから悲劇を回避するならば、〘大佐なら〙それを間違いなくやるって。アムロが同調するかどうかは賭けよ?」
「それで?話はそれで終わり?空想をさもあるように言わないでくれるかな?」
声は威勢が良いけれど、内心焦りが酷いね。無理もない、ララァさんと接してると人間としての格の差の違いを思い知らされる……特に同じ女である私達には。母様とハマーンさんは愛する男達の心の中に今でも大きなウェイトを占めている彼女に嫉妬を隠せていない。
「そうね、確かに今の私達には関係ないものね。でも、手遅れになる前に止めたほうが良いんじゃないかしら?
アムロなら、どんな事でも出来るけれど、それでも限界がある事は貴女も知っているでしょ?
特に、大佐と袂を分かったらどうなると思う?
彼の過去を知っているなら絶対は無い、だからこそ子供達には話しておいて損な無いはずよ、それが彼への楔になるはずだから。
話はそれだけよ、お茶とお菓子ありがとう、美味しかったわ?また、お会いできれば良いのだけれど、その時貴女の選択を教えてくださいな。」
私達はそう言って出ていく彼女を見ている他無かった。ハマーンさんとは違う意味で敵わないなぁ……ララァさんのような女性にはなりたくともなれそうにないもの。あかねちゃんの時のような自分にはない才への敗北感やハマーンさんの時のような傑物に対する畏怖とは違う……もはや挑むことさえおこがましい畏敬の念というものをこの時始めて私は抱いた気がした。
〜sideアムロ〜
「マスター、バーボンをストレートで」
真っ昼間から、開いているバーで酒を飲む。正直言って良い奴のやることじゃない、何より身体に良くない事は明白だ。
だが、今は少し酔いたい気分だ。
「朝から酒ですか……どうぞ、ホットミルクです。」
「頼んだものと違うんだが」
「はい、ですからホットミルクです。」
どうやら昼間は酒が出せないらしい、それか今の俺の姿を見てそう思っているのだろう。
砂漠のあの地で出会った人と似ている、このバーテン。姿形は似ていても、俺等の事を真実の意味で知っているわけじゃない。
それでも、決めたことは守ろうとする実直な人だ。もう、10年以上の付き合いになるか。あの人も…ランバ・ラルもこっちの世界の何処かに生まれ変わっていたりするのだろうか。今は無性に彼かブライトやカイ、ハヤトといった元ホワイトベース隊の誰かと飲みたい気分だ。
「赤い人からあなた宛のシャンパンです。」
シャンパン一瓶、俺の前に置かれる。ラベルは見たこともないものだが…透かしてみれば解るか…。
「日時と場所か…重鎮ともなると忙しいんだな。この国で、仕事をしなくて良かったよ。」
「お仕事の話は存じ上げていますが、それ程大変なのでしょうね。秘密も多いと何かと大変では?私が貴男に
ここで止まる訳にはいかないが、やり過ぎればどうなるだろうな。この時代に来てシャアに再会した際に共振を通して見せられた俺達亡き後の宇宙世紀の世界が辿る最悪の末路……人間が人間を食らう畜生にまで身を落とすという俺の記憶にあるコロニー落としの光景すら霞ませたあの地獄絵図の結末が訪れることだけは防がなければならない。だからこそ、奴が思い詰めて地球を潰そうとした時のような暴走しないとも限らない、その時は…
「悪い事は考えるだけで声には出してはなりません、言霊は必ず帰ってくる。私の左アキレス腱のように。」
「アドバイスありがとう、昔のことを思い出してしまってついね。それじゃあ気を取り直して軽食でも頼もうか?今日のオススメは何かな?」
「オムライスとコーンポタージュのセットです。サラダもつけますよ?」
「あぁ、それを頼む。」
暫く待っていると誰かが戸口を開いて中に入ってきた、背は高いが細身でパーカーでフードを被りここには似つかわしくない格好。色々な人が来るが、こういう姿の奴は少ない。気を取られている内に、飯が来る。
一人孤独に飯を食べる、そんな俺の後ろにはいったい誰がいるだろうか?
敵ではないけれど、ここには相応しい年齢じゃないそんな人がいるのだと。
「森本君と四宮君だったかな?俺に何の用かな?」
後ろを振り向かずに俺はそう言った。一人ではない、二人いる。背の高い細身の黒いジップパーカーの少年の後に続いてダンボールパーカーを着た小柄な少年が無為に暴れるような者達ではないのだろうな。二人とも悪意や殺気といった俺を害する気持ちは欠片も持っていない、そのまま俺の隣の席に座るとそれぞれカルピスウォーターとホットサンドを注文するのと同時に語り掛けてくる。『初めまして、アムロ・レイさん』彼も俺と同じニュータイプだ。
やっとルビコン3から帰ってこれた。3周は大変だぞ