虹の男と星の娘   作:丸亀導師

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昔やってたことやると、思い出しちゃう事ってあるよね


第十一話

カチャカチャと音が鳴り響き、俺はドライバーを使って+ビスを締めた。

これで四つ目、実に二月。暇な時間を使ってはせっせと材料を削り出し、基盤の制作から始まった。

ここに、3Dプリンターがあれば外装も楽だったろうに、残念ながらまだこの時代に、一般的な強化プラスチック用のものは無い。

 

球体というものはそれだけに難しく、もはや業者への発注すら行わなければならなかった。

 

普通の家でこんな作業していたら、きっと近所迷惑だと言われても文句は言えない。だが、ここは違う。高校卒業と同時に家を買った、建設が終わるまでは居候だったが、やっとだよ。それまでは社長の家に居候していたからこれでやっと自分の好きにできる。

 

赤、青、緑、黄

それぞれの外装を取り付け、起動させる。耳も正常に動くな、バランサーは…これも良し。足は空間的余裕がないから創れなかったが、この重さなら跳躍でなんとかなるだろう。

 

「男に二言はない。と言っても、久しぶり過ぎるからな少し腕が鈍ったかな?やあ、ハロ。元気か?」

 

《アムロ、元気か?》

 

生体認証、視覚認証の初期化を行って、出来た製品を事務所へと運ぶ。色んな機能を撤廃して、喋るのと付いてくる機能だけにしたが、案外この時代のコンピュータの性能は良くないな。

やはり100年以上の時の流れは、凄まじい壁となる。本当なら、脳波を検知して健康維持機能をつけたしたかったんだが、容量オーバーだ。その分、コンパクトに出来たから良いか。

 

うん?気配がない、事務所に人がいない?…今日は平日で、あぁそうか。社長は今日、スポンサーとの会合だったな。

ミヤコさんは、新衣装について話をしに行っているんだったか?

で、アイ達は中学校に行ってると。他のタレント達も仕事か、じゃあ今日は俺だけか?

 

「急いで損したな。」

 

しかし、事務所に1人とは。何か懐かしいな、俺が親を喪って2年目くらいの時かまだ俺も社長も別の事務所にいた時に、一人になったときがあったっけな。

しょうが無い、時間があるんだ暇だからミノフスキー物理学でも予習しておくか?いつか使うときが来るかもしれないからな。

 

〜4時間後〜

 

で、静止質量が0になるから…もう昼か。夢中になると時間が進むのが速くなるな。

確か、ここにあったはずだが…、そうそうこれだよ。カップ蕎麦、この時代に来て始めて食べた、蕎麦という麺類があったのは知っていたが最近ではこれがまた旨い。食べ過ぎは良くないから、自重しているが。

 

このカップ麺も、あの時代には無かったものな。レトルトと言ったら、あの不味いレーション。民生品はもっとマシだったが、栄養価を気にして味を大切にする文化は、一年戦争のせいで消えた。この時代が羨ましく思うよ。

 

うん?ミヤコさんが帰ってきたのかな?

 

「ただいま戻りました〜…この匂い、誰かカップ麺食べてない?」

 

「やあ、お疲れ様。疲れたときには少量の食事と、酸っぱいものが一番だよ?」

 

すっと、レモンゼリーを差し出す。

 

「ありがとうございます。どうして、こちらに?明後日まで、お休みじゃなかったんですか?」

 

「いや、あの娘達に頼まれたものが完成したから持ってきたんだけど、今日は平日ってこと忘れててね。」

 

そうなんですか〜と言って彼女はテーブルに目をやった。うん?やばいな、大量の紙を置いたままだった。

 

「あの〜、これ何の計算式なんですか?私にはまったくわからないんですけど。」

 

「あ、あぁこれはだね。仮想素粒子の軌道と、速度を求める計算式でね、これがないと実験の時どれ程の衝突速度を与えなければならないとか、諸々の物が算出…俺はなにを説明しているんだ

 

彼女の瞳に困惑の色が浮かぶ、

『この人なに言ってるんだろ?大学の先生方と話をしているの見てたけど、本当は芸能人やってたら人類の宝の持ち腐れじゃないの?』

 

この人はなにを言っているのか、俺はカンニングしているだけだ。人類の宝っていうのは、もっと生産的な奴だよ。俺なんかと違って。

 

「これを見たことは内緒にしてくれないか?あまり、世の中に出して良いものじゃないんだ。」

 

「そうとう危険なものなんですか?」

 

「いや、これ自体は危険じゃない。事はもっと大きい、そうだな地球規模の問題だから。踏ん切りがつくまでは、他言無用だ。」

 

『遅く来た中二病かな?』

 

今は、そう思ってくれたほうが良い。

ぱぱっと、テーブルの上を片付けいつもの形に戻していく。

 

「これが、安室さんの言ってたマスコットですか?真ん丸ですね。」

 

『子供受け良さそうだし、そういう才能もあるなんて多彩でイケメンで頭も良くて、ハァ。一緒の職場で良かった』

 

「そうだ、ハロって言うんだけどね。一応、ペットロボットだよ。」

 

《ゲンキか?ゲンキか?》

 

「これお手製なんですよね?喋るんですか?」

 

それを聞いてくれるか、俄然やる気が出てきたぞ

 

「喋るだけじゃない、顔もきちんと認識して主人を判別するんだ。生体認証も出来る。それに、連れていきたい時は転がりながら後ろについてくる。」

 

自分が造ったものを褒められるのは嫌いじゃないな!でも、それでも、父さんには届かないよ。

 

 

 

〜sideアイ〜

 

「ただいま〜」

 

シ~ンと静まり返った家兼事務所。そう言えば、アムロ出て行っちゃったんだよなぁ。新しい家がやっと完成したって言ってたし、[私もそっちに住んじゃおうか!]なんて言ったら、[今はまだ駄目だ]だってさ。あぁ~あ、これじゃ施設にいた頃と変んないよ。

いや、でも何か奥は明るい。

 

あ、アムロだ!机で何かやってる、紙に何書いてるんだろ。この距離でも気付かないなんて、凄い集中力だ。

 

「アイか?お帰り。」

 

ビックリした。お陰でビクッ!ってしちゃったよ。

 

「ただいま、アムロ。ねぇ、こんなところで何してるの?」

 

「今日は社長が帰ってこないからさ、君が寂しいんじゃないかなって、こうやって待ってたんだよ。」

 

優しいなぁ、本当に。どうして、こんなに私に優しくしてくれるんだろ。自分だって、悲惨な過去があるのに。

 

「ありがとうアムロ。ねぇ、私さ。アムロの手助けになること、出来てるかな。」

 

「急にどうしたんだ?」

 

解ってるくせに

 

「アムロはさ、誰よりも強くて優しくて温かくて、私をいつも安心させてくれる。でもさ、最近解った事があるんだ。貴方が、時折遠い場所を見てるみたいだなって。」

 

「気の所為だよ、俺はいつも目の前のものしか見えない。手の届く範囲でしか物事を変えられないからな。」

 

嘘、だって佐藤さんはいつも言ってた。[アイツ、身体が人より頑丈だから良いけど、かなりの無理してるはずなんだ。普通なら過労死しかねない事やってんだぞ?絶対に見習っちゃ駄目だ]って

 

「俺がいない場所で、そんな事言ってたのか。」

 

「あんまり無理しないでね、約束護れなくなっちゃうと嫌だよ?」

 

「大丈夫だよ。こんなの戦争に比べれば…いや今のは忘れてくれ。」

 

いつものアムロと今日は雰囲気が違う気がする。憂いを帯びてるっていうか、何かを懐かしんでるっていうか。

だから、なのかな。今にも居なくなっちゃうんじゃ無いかって思って、気が付いたらアムロの頭を抱いてた。

 

 

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