〜????〜
「やぁ、軽く三十年ぶりかな?」
真っ白な世界で二人は佇み互いを、10歩のところで睨み合う。
「今更何か様なのか?生憎だが、俺は今それどころじゃ。」
「まぁまぁ、落ち着きなさいな。もう……終わりだよ。君は素晴らしい、偉業を成し遂げ全てを変えた……。だけど、この因果だけは変えられない。そういう物だろう?」
1人顔のない真っ白な頭の男?が、そう言うと男?の左手側に巨大な砂丘と、砂柱がサァサァと流れ落ちていく。
「もう……終わりなんだよ……。」
もう一人の男はそれを聞くと、砂柱へと目を向けた。
〜sideアムロ〜
「ねぇ、皆で何か食べに行かない?」
そう言い出したのはアイだった。
珍しくもその日は全員が家にいて、暇を持て余していたのだ。
俺は、自室で論文を纏めていたのだが果てさて、知ってか知らずか戸を叩き俺にそう告げたのだ。
「今からかい?まあ、別に良いとは思うがだとしても急の来店は俺達が使うような店だと、意外と空いていない可能性もあるが?」
機密保持…と言っても家族関係のプライベートの保持という形だが、俺達にとっての死活問題を眼の前にそういった店は必要だ。
「いやいや、ファミレスだよ!ほら、家族揃って行った事なんて無いじゃん?私達普通じゃないからさ、一度は行ってみたいなぁ、なんてそう思っちゃったりしちゃったりして。」
「……なるほど、わかったよ。君の気持ちもね、四人はそれに対して納得はしているのかい?」
そう聞くと、ツカツカと眼の前に来て親指を立てて勢いよく眼前へと出してくる。ニンマリという顔の節々からなんとも、自信満々に言う姿からどうやら外堀はとうの昔に攻略されているようだ。
「それじゃあ、何処に行こうか?」
事の発端はそんな小さな無警戒だった。
……
「まあ、当然ながらこうなることは予想通りか?」
当日の内にSNSで、俺達家族のことが出回った。パパラッチのような悪質なデマではなく、事実に基づいた。〘食事会〙なのだから、別に何か気にも止めることでもないが、それにしたって。
〘安室は婚姻関係者を秘匿している✕アイは婚姻関係者を秘匿している=婚姻関係にある。〙
という、噂が立った。
因みに十数年ぶり2回目の噂だが、今回はどう見てもプライベートであるから、余計にそれに拍車がかかったのは言うまでもない。だが、この広がり型
「これは狙ったな?」
成る程食事中に大袈裟に、料理に舌鼓を打っていた時のアイの反応は正にそれだったのだろう。
アイも俺も無警戒に変装などしなかった、いやすることすら考えなかった。睡眠というものは大切なものだと言われるが、正にそういう事だろう。
それに最近染めていた髪を戻していた事から、アクアと俺の家族関係なんてものも出回っている。顔立ちは兎も角、アイツは俺に似たところがあるからな。
特に身長は俺譲りだろうし、瞳の色だって、アイよりも俺に似ているからな。その点ルビーは、髪色を変えればアイにそっくりだと、話題になっているところもあるから。
「我慢の限界だと言うなら、少しくらい相談してくれても良いだろうに……?いや、何度か二人きりで話がしたいと言っていたが、成る程こういうことか。」
十中八九、話を聞かなかった俺のせいだろう。まあ、それでもいつかはこうなることは解っていた、だから。
「まあ、なんとかなるさ。」
ここは静観を決め込むことにした。
〜sideルビー〜
「ねぇ、ルビー。なんや、SNSでプチバズしてるらしいんやけど、これどないしたの?」
学校でちょうどお昼を食べている時に、みなみにそう聞かれた。
「う、う〜ん。ま、まぁみなみには話してあるから言っちゃうけど、たぶん何か、ママとパパの間に駆け引きがあったんじゃないかって、お姉ちゃんがさ…」
私はそうヒソヒソと呟いた。
でも、と私は付け加えた。あの二人がそんな事をするだろうか?たぶんママの独断専行で、行ったに決まってる。心配事のないママはそんな感じの人間だし。
パパは最近、何徹かしていたから頭が回っていないのを良いことに、してやられたに決まってる。でも…
「正直私としては嬉しかったよ?だって、家族で普通のお店なんて始めて入ったから。」
「そうなん?でも、色んなお店結構行っとるんと違うん?」
「いっつも、どっちかが変装して連れて行ってくれた。パパは限られたVIPしか入れないような豪華なお店で食事されてくれていたし、ママはネットでも余りさらされていない穴場なスイーツ店を紹介してくれたよ。
でも、家族皆でなんて、始めてだよ?しかも変装無しでさ、お忍びじゃない本当のファミレスなんて。それまではお姉ちゃんやみなみとフリルちゃん、B小町のみんなを始めとする友達としか普通のファミレスで食事したりは出来なかったからさ。だからみなみには、判らないかも知れないけれどちょっと複雑だから。」
何やら渋い顔をしてる、というかそうだよね。それに最近は私もお姉ちゃんもみなみも顔が売れてきてるせいで会員制じゃない普通のお店とかでは変装が必須になって、友達同士のオフですら迂闊に素顔を表立って晒せなくなってきてるし。
「う〜ん、家庭の事情は仕様が無いとは思うんやけれど、そう言う突き放す言い方は辞めてほしいわぁ、私とルビーの仲なんやで?」
「あっ……、ごめんね?配信でもそういう質問あったりするからつい。」
ここにお姉ちゃんがいたら、注意されてただろうな。無意識だけれど私も少し疲れてるのかな?
「今度、何処かいかへん?気分転換に、二人きりで。」
「え?良いよ〜、じゃあどこ行こっか!」「できれば、アクアちゃんも一緒に誘いたかったとこやけど今は無理そうやしね。今日もお休みやし」「そうだね…水戸黄門がヒットしてからお姉ちゃん、スケジュールが今月いっぱいは埋まってるって言ってたから。来月以降に改めて何処かに誘ってみようよ。」
そうやって一日は過ぎていく。
何も考えないでどっしり構えているのも、また良いことだよね?
〜sideアクア〜
「疲……れた……。」
「はい?どうしたのアンタいきなり。」
口から魂が出てきてしまうのではないか?そう思わずにはいられないこの状況、水戸黄門に出演してからというものスケジュールがパンパンだ。
昔の人はこのスケジュールをこなしたの?殺人的なんだけれど、年間を通した撮影って、しかも主要人物の1人ってこんなにも大変なのか?
これってもしかすると、大河並みにいやそれ以上にハードなのでは?
「そのくらいでヘタっているようなら、アンタもまだまだね。
良い?役者たるもの、自覚を持つべきなのは当然だとして、撮影に赴くのならまず……って、聞いてる?」
「聞いてる聞いてる、でもさドラマとかって最近だとワンクール物が殆どだからあれだけどさ、これ長すぎるよ。休む暇が無い!学校に行くのも難しいのだけど!」
これが撮影場所がリニアモーターカーが主流じゃなかった頃の状態で昔と同じ琵琶湖周りだとか、京都だったらどれだけ酷いことになっていただろうか?
いや、京都ならリニア中央新幹線で東京から新大阪まで片道1時間だから、それならまだなんとか……いやいや、それでも往復とか考えると東京周辺エリアじゃないときついかも…。
あぁ、フリルの気持ちが何となく解ってきたなぁ。いざという時はプライベートジェットが使える君ちゃんと光生君がホント羨ましいよ。早く家に帰って翡翠と会いたい。ケンゴ君との仲もまだ微妙な状態ある中、あの子の存在が今の私の最大の心の支えだ。
「今更泣き言言ったって、違約金が発生するだけよ。それよりもアンタ、X見た?大分燃えてるわよ、特に嶺さんの方が。」
あぁ、なんだそんな事か。父様がその程度で気をやることなど、毛ほども無い。鈍感というか、感覚がおかしい位の人だから大丈夫だろう。
「どうせ、二人で話し合って決めたことだと思うから、そんな深く考えなくても良いよ。それよりさ、大学受験どうなの?」
かなちゃんの高校卒業が差し迫る中、彼女の進路の心配を私はしている。もっとも、学力は申し分無いし口は悪いけれど、人柄も最近では落ち着いてきてなんというか、大人になってきたといえば良いのかな?
そう思っていると、
パコン
そうやって頭を叩かれた。
「親の心配はしないって訳ね、良くも悪くも親子ね。それと、あーちゃん、貴女に心配されるほど私も落ちぶれちゃいないわよ。
アイドル・役者・受験生。全ての肩書を引っ提げて片手間で合格して見せるわ。」
とか言うけれど、本当は少し緊張しているのだ。
もしも、があった場合どうすれば良いのか、不安で不安で仕方が無い。そんな感じだ。
「そう、応援してるから頑張ってね。」
少し冷たいかもしれないけれど、過度な期待はしない。それくらいが彼女にとっては丁度良いだろう。私はかなちゃんが落ちることを、微塵にも考えていない。
お祝いに何を買おうか?そうだ、あかねちゃんも卒業するからそっちも一緒に考えないと。二人とも同じ大学に入るんだし。
「あーちゃんも、身体には気を付けなさいよ。疲労が溜まったら仕事どころじゃなくなるから、特に口から言葉が出辛いアンタの事だもの。皆に気遣ってもらいなさい。」
余計なお世話だよ。
そして、あっと思った。もしかすると私がこうなるのを解って二人はやってくれたのかと、そう思い。
フンッ
と鼻で笑った。
〜sideアイ〜
「アイさんこれって本当なんですか?」
番組の収録中に聞かれたのはそんな言葉だった、SNS上で私達の家族疑惑というものが頻繁に流れている。
その中で一番インパクトの有るものを、コソッと共演者が聞いてきたのだ。
〘星野姉妹、アイの子供疑惑〙
もしそうなら、私が16の時に二人を産んだことになる。そういう話題に食いついてきたのだ、と言っても私はそれを事実としているわけで、安易に否定したくないし今回の騒動はそれを狙ったところもあるから、思わずニンマリとしたくなる。
そこをグッと堪えて、
「どうだろうね?でも、私から言えることはそれを、信じるか信じないかは貴女次第ってくらいかな?」
なんて言ってみると、目を丸くして私を見る。撮影合間のその顔は心底面白いけれど、喉を鳴らして撮影開始を知らせると直ぐに顔を元に戻す。流石はプロだね。
それを見た後、私は撮影時の〘わたし〙を作り出す。本当の姿を偽る、でも真実も出す。そうやって、ルーティンをこなしていく。
……
撮影が終わると皆が私の周りに集まって色々と質問してきたりしてきた。
その問答には先程と同じように返す。っと、その時だ目の前の1人の人物、その人が確信を持ったような顔で私の事を見ていた。質問も何もしてこない。
『やはりあの時のアレは演技ではなかったのでは無いか?』
とでも言いたげな顔で……?そう言えば、この人とは結構長い付き合いだったっけ?
そうそう、赤ちゃんドッキリの最初の被害者の人。最近地上波から離れてたから何となく、忘れてたけどこの人アレで人間不信に陥ったって前言ってたっけ?
あー、これは確信した顔だ。目を細めて薄ら笑いしてる、うわぁなんか公式発表したら真っ先に
〘私は最初から知っていました!確信があったんですよ!〙
なんて言いそう。まぁだけど。
「お母さんにお願いされちゃったんだから、しょうがないよね。」
子供達の我が儘、私達の結婚式を挙げたいんだってでも、このままじゃ大きなものはできないし、何より小さくても身内だけっていうのはつまらなさそうだし。だったら、土壌くらいは作ってあげないとね。
フフッ…ホント楽しみだなぁ……結婚式も終えたらそのまま新婚旅行もしよう!その際には翡翠にも弟か妹をプレゼントしてあげちゃって……そんな未来の為を実現する為にも今は頑張らなくちゃ!