虹の男と星の娘   作:丸亀導師

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第百四話

〜????〜

 

「まあ、そこに掛け給え。」

 

砂丘が出来ていた辺は、真っ白な世界に書き換えられ、何事もなかったかのように、そこにはソファが置かれていた。

二組、対立するかのようにそれは存在し、二人は互いに一つずつそれに腰を掛けた。

 

「さて、この姿にした意味がわかるか?」

 

金髪オールバックの姿となったものは、もうひとりにそう語りかけると、ニヤリと口元を歪めた。

 

「まるでモノマネになっていない、奴ならそんな質問すらしないだろう。俺の敵対心を煽りたいんだろう?」

 

「御名答、君はこの姿に対して随分と時が経っているにも関わらず、今でも哀れみと愚かさを憎しみを感じている。だけれども、私では役不足か?まるで感じない。」

 

睨みつけるように男を見る、互いに冷静だろう。

 

「では、本題に入ろうか。まずは、天寿の全うを心よりお祝いすると共に、君という人物に対して敬意を評する。

さて君は天寿を全うしたが…、どうするかね?」

 

「どうするか?ね、そうだなこのまま行ったら俺はどうなる?」

 

金髪の男は顔を右に向けるとその姿を変え、また野箆坊へと戻ると硝子張りのような物を見つめた。

 

「アレが何か解るだろう?」

 

「人の残響?だが、意志も何も無い?だとすれば、「抜け殻だよ」抜け殻、だとすれば還元されると?」

 

野箆坊は、感情の無い顔を暗くし哀れみの眼差しを以て彼を見つめた。

 

 

 

 


 

〜sideアムロ〜

 

事件から二日経った、家に帰るなり出立の準備をしようとするとアイに停められた。そのおかげが解らないが、冷静に物事を中止することが出来ている。

どっかりと座りながら、あの男が遣りそうなことを想像しつつ一つの結論に辿り着いた。

 

壱護には話した通り、3日間の休暇が直ぐに出ると俺は1人、近くの国立病院へと足を運んだ。

その中でも最も入院患者の多い、一般病棟へと向かう。

到着した頃には夕方になっていただろうか、俺は静かに面談へと病室を叩いた。

 

「ああ、入ってくれ。」

 

聞き慣れたあの声が返ってくる、昔は探すのに苦労したのにここまで簡単に感じられるものなのだろうか?

 

「来ると思っていたよ。しかし、こうも早くに現れるとはな。政府機関も上手く騙せたと思ったのだが、君だけは無理だということか?」

 

「御託は良い、何時帰って来た。」

 

病室衣を着ながら撃たれた筈の脇腹を擦りつつも、窓の夕焼け空を眺めながら彼は答えた。

 

「撃たれたその日だ。向こうの病院にいるのは、影武者だ。妻を騙すのは心苦しかったが、彼女の事だ。私の顔を見るなり、直ぐに勘づいて演技でもしていることだろう。元より影武者の彼とも旧知の仲だし、そこまで心配しなくてもいいだろう。

 

アカデミー賞ものだよ、実に腹の中の探り合いを心得ている。影武者を引き受けてくれた彼にも後で改めて礼と労りを伝えなければな。ここまで来るのにも幾度も彼には助けてもらってきたのだから、足を向けて寝るようなことはできんよ」

 

「その調子なら、子供達には勿論教えていないんだろう?かなり動揺してパニックに陥っていたというのをウチの娘から聞いたが、気の毒とは思わないのか?」

 

その言葉を聞いて彼は振り向き、鋭い眼光を携えて俺を見返した。

 

「気の毒か…。あれ等は私の娘だ、ならばそれくらいのことで折れるような、そんな教育はしてはいない。

気の毒とは思うが、だからと言ってその考えのままでは腹のさぐりあい等出来るものではないよ。

 

娘たちはどちらかというと私よりも妻似だからな。あの子達も人を惹きつける魅力はあるが、キシリアやハマーン、そして君の娘のアクア君のような正面に立って力強く人を纏め上げるタイプではないからな。あの子達はどちらかというと人々の上に立つよりも傍で大切な人を支えることの方が好きみたいだらな。

 

苦いものだよ、私はこの国の腐敗を憂いていた皇族の方々と共謀して、私自身を囮に既得権益にしがみついていた前政権の老人勢力を今回の影武者を務めてくれた彼を中心とするスパイとして送り込んでいた者達に内側から蜂起させることで一掃し、奴らと繋がりのあった各産業に存在する利権を解体して、見込みのある若手を中心に私の意のままに動くそう言う連中を抜擢して政権に就かせた。

 

解るか?これ程の事をしなければ、この時代の人間というものは団結することすら出来ないという、この絶望を。前世の父とブレックス准将もこういう苦悩を抱えたまま志半ばで倒れていったのだと思うとやるせない……」

 

「何時の時代だってそうだろうさ、人類はまだこの星に産まれて一万年程しか経っていない。

そう急ぎすぎてはならない、この地球に比べれば爪先位の長さしか俺達はいないんだ。

進化は試行錯誤だろ、ならそれ程絶望することでもないんじゃないか?

それを理由に、自分の子供を蔑ろにするほどの奴だとは、俺は貴様に失望していないが?」

 

窓を向く彼の背中は、何か憂いを帯びていて何処か寂しげなところがある。

 

「貴様と話しているとき、いつも思うことがある。流石にララァの域には及ばないとはいえ、物事の本質というものを見抜く力、私よりも君のほうが遥かに優れていると。

だと言うのに、君は私とは違う道を歩む。何故だろうな、こうも私と君の適性は違うというのに。

私よりも、君のほうが政治に向いているとさえ思うことがある。」

 

「純粋すぎるのも考えものだな、俺に政治は向いていないよ。

家庭の事で精一杯さ、人の憎悪など偶に浴びる程度で辟易するくらいには。NTに政治家は向かない、なり損ないくらいが丁度良いのさ。NTの力は闘いよりも俺の妻と娘がやっているように子育てとかに用いるのがずっといい」

 

それに対して何か思うことがあるのだろう、意外そうな顔をしてこちらを見てきた。

 

「それは褒め言葉か?グリプス戦役の末期にとある男に同じことを言われたことがあるが、だとすれば悪質だな、まるで私がNTで無かったことを嬉しく思っているようだが?」

 

「貴方がNTであったのなら、この世界でも絶望していたんじゃないか?それこそ、カミーユのように心が壊れてしまう程には。この力もそれ程良いものではないからな。

気に入らないか?」

 

「気に入らんな、貴様にもそう言われるとはな。

だが…当事者が言うのだ納得する他あるまい。だが、ようやく解った気がするよ、私は良くも悪くも捕らわれやすい性格だと言うことがな。改めて後悔の念が渦巻いてくるよ、もう少し早く解ってやれていたのなら、カミーユも……」

 

再び俺に背を向けて彼は、夕焼け空を眺めた。

 

「宇宙に出てみたくはないか?」

 

「宇宙に?いきなりだな、何か理由があるのか?」

 

「一連の物事が終われば、私は政界から引退して財界に打って出ようと思う。元より私は政治は嫌いだったからな。その日が来た時の為にスムーズに移行できるよう下準備はしてきたからな。そうしたら、私の右腕として働いて貰えないだろうか?とね。」

 

開拓事業に参加してほしいとでも言うのか?だが、俺にその選択が出来るか?その場合は、芸能界からは引退しなくてはならないが、流石に三束も草鞋は履けないからな。それにコイツの後釜を務めあげられる人間はそう簡単に見つかるのだろうか?

 

ザビ家のジオン公国、その前のダイクン家のジオン共和国、そしてハマーンやシャアが率いたネオ・ジオンがそうだったように強すぎるカリスマの元に集まった集団というものはそれが失われれば瞬く間に空中分解してしまう。

 

「今でなくても良い、将来だ。夢は大きく持たねばな、有名税だと思ってくれ私も矢面に立ち続ける。だから、同志になれ。私の後継者についても有望な若手は既に見出している、とはいえ君の危惧通りまだまだ経験が足りず未熟な所があるから、若者たちが立派に育つまでをバックアップできるよう体制は整えるつもりだ。次代を信じるように言ったのは君だろ?」

 

その瞳にあるのは野心家のそれではない、何処か夢に邁進する子どものようなそんな色を持っていた。

 

 

〜sideアクア〜

 

結局、私の少ない休日はすぐに消化されまた忙しい毎日に、私はあくせく働いていた。

それでも私は満足だ、友人の危機にさっそうと現れるそんな事が出来るというのは、なかなか出来る事ではないし正直あの顔は行かなきゃ、なんか手遅れになりそうだったから。

 

私が彼女を励ましに行った数日後、父様が彼女とそのお姉さん達に会いに行ったようだった。その日の内に、まるで元気な姿に元通りになっていたから、父様が何かしたのだろう。きっと、安全だということが分かったから、それでそれを聞いたのだろう。

良かったと胸を撫で下ろす一方で、父様という人物がいかに私達の想像と違うかを実感する。

 

母様曰く〘普通の人〙である父様は、私達にとっては〘得体の知れない〙だ。何処から仕入れたのか判らないけれど、あの人の情報を各国の報道機関よりも速くに私達に届けてきた。

正直多分だけれど、二人は裏でいつも繋がっていてこの事件も想定の範囲内だったんじゃないだろうか?

 

「考えすぎかなぁ…。」

 

「考えすぎって?」

 

隣にいるフリルの声とともに思考の底から私は引き戻された。今日は抜き打ちのテストがあって、フリルを始めとする一部を除いて皆顔から絶望が溢れている。

私にとってはそんなには難しいものじゃないし、父様から出される問題に比べれば…。

 

「うん?ちょっと疑問があっただけ、別にテストの事じゃないよ?」

 

周囲から、えぇ〜?という声とともに、『何時勉強してたんだよ』という声が聞こえる。

逆に聞きたい、高校も三年にもなって勉強していないほうが悪いのではないか?と。

それよりも私の思考の妨げにならないように……待てよ?

 

テストは学年全体で行われたわけで、それは対策してない奴にとっては非常に不味く、仕事に追われていたりするのは別に身内にいないわけではない、そしてそれは私の相方にも言えるわけで…。

 

今年も私は別のクラスだけれど、やっぱりと思いながらこの世の終わりを見たとでもいうような真っ青な顔でフラフラと目の前に現れるのは、哀れなりわが妹よ。

あれこれと構う内に、私の悩みは忙殺してくる日常に呑まれ何時しか溶けて行った。

 

 

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