虹の男と星の娘   作:丸亀導師

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2014年時
民法
第1款 婚姻の要件
(婚姻適齢)
第731条 男は、18歳に、女は、16歳にならなければ、婚姻をすることができない。


第十七話

事務所に帰った時最初に感じたのは、軽蔑の眼差しだった。

そこにいるのは、壱護と結婚したばかりのミヤコさん。そして、アイ。

アイは凄くバツの悪そうな顔をして、ひりついた空気の中ソファーへと腰を掛けている。

壱護、凄い雰囲気だな任侠映画で主演貼れるくらいには、迫力がある。

 

俺はスッとソファーの方へ歩き、自然とアイの横へと腰を降ろした。アイは俺の方を少し見ると、謝るような目をしながらも嬉しそうに、こちらを見た。

 

「どうしたんだ?そんな、極道者みたいな雰囲気出して、俳優でも目指したらどうだ?」

 

「お前なぁ、自分が何をしたのか?解ってるんか?あぁ、オイ!!」

 

何の話をしているんだ?俺は、何か悪いことでもしたのだろうか?B小町のスケジュール確認を電話でしたからか?いや、その程度のこと毎回だから、なんだ?見に覚えがないな。

 

 

「一体何の話をしてるんだ?何か気に触ることでも?」

 

激高しているせいで何を考えているのか解らないな。

 

「安室さん。貴方は、アイさんとキスとかした覚えはありますか?」

 

「キスですか?あぁ、正月でしたかね。約束を果たせなかったお詫びにしましたよ?それに何か問題でも?」

 

うん?そうか、この時代のこの国の貞操観念の問題か?UCには、アイドルなんてものはジオンがコロニー落としを行う以前はこちらの地球と同様に一文化を築いていたらしいが、宇宙に移民した自分たちのようなスペースノイドにとっては当時は宇宙開拓で忙しく、その辺の旧来の娯楽文化への関心は二の次三の次にされ、何より少年時代の頃の俺は芸能には全く興味がなく無関心だった。

 

大人になって機械いじり以外にも関心を向けた時には、ただでさえ酷かった一年戦争の破壊の爪痕に追い打ちをかけるようにデラーズ紛争やグリプス戦役、二度にわたるネオ・ジオン抗争と立て続けの戦乱で地球圏が荒廃したせいで旧来の文化の多くが消滅または変質した。

 

この世界で言うようなアイドルの概念も過去の遺物なってたし、そのような戦時下の情勢において俳優や女優を始めタレントの貞操観念は自分達で管理するのが当たり前となっていた。

それこそ、そこまで厳格にする必要はないんだ、なんせ人なんて所詮は動物、そういう事をするために産まれてきているのだから。

 

壱護が、震えている。憤怒の色だ、随分と鶏冠にきているそんなにも不味いことか?たかが恋愛感情だろうに。

 

「社長は、壱護は少し抑えてて下さい?安室さん、良いですか?貴方は自分が売れっ子俳優だという自覚を持って下さい、パパラッチもいつも貴方を狙っています。

勿論、気を付けていられるでしょうが、貴方がキスをした相手はまだ13歳の少女なんですよ?」

 

「確かにアイは13歳の少女だ。だがそれ以前に一緒に暮らす、いわば家族のようなものだろ?それに、一応秘密にしておいたんだが、アイ言っていいか?」

 

「う〜ん、そうだね。私は別に構わないけど、アムロは大丈夫だよね?変なことにならない?」

 

 

壱護は何かを察したのか、更に額の血管が浮き出ている。一発くらい殴られてやるか。

 

「俺とアイは、アイが16になるのを境に、籍を入れる所謂婚約をしている。」

 

「そ、それはどういう」

 

『天才って色んな物が欠如してるって言うけど、こういうところも影響を?』

 

「おい、嶺。それがどういう意味か、解ってんだろうな。」

 

嫌に優しい声だ一周回って冷静になったか?それでも、地獄の釜のようなそんな煮えたぎり方だ。

 

「俺を何歳だと思っています?もう、今年で20になる。伊達や酔狂で婚約をするほど、落ちぶれていません。

それに、法律上女性が16になれば問題は無いはずです。

まさかと言いますが、22と16が結婚するのが駄目で、38と23が結婚するのは良いという事なのか??」

 

「確かに、法律上は良いだろうな。現在はそうしたマイノリティでも法に触れるような犯罪でさえなけりゃ、やりようによってはてめぇの主義を罷り通せる多様性の時代に入りつつある。だがな、アイはアイドルだ。もしそんな事公表すればどうなるか、お前考えたことがないとは言わせない。」

 

議論したって反対される、それが大人と子供の理論か。それか、現実の世界の辛さか。ドラマや映画のように簡単に行くわけがないか。

 

「何度も言うが伊達や酔狂で言ってない、もし万が一子供が出来れば俺はすべてを背負う覚悟だ。たとえそれが公表されようとも、俺は矢面に立つ。」

 

「ねぇ、斎藤さん。そんなに、私達が婚約することが駄目なの?アムロ言ってたよね、16まではって。

それに、私こんなにも人を好きになったことなんて、1度もない。

アムロがいたから、私はアイドルになろうと思ったし、アムロがいたからこうして続けられてる。

それが駄目って言うなら、私はアイドルを辞める!」

 

アイは、斎藤の最大の弱点だ。斎藤は、アイに魅入られている、斎藤がアイを贔屓しようとするのは、それが理由だ彼女はそれを良く解ってる。

 

「ふ〜はぁ~。解った、認めてやるよ。ただし、アイがアイドルを辞めるような事になったら、安室ただじゃ置かないからな。」

 

「長い付き合いだ、解っているよ。

話は変わるが12月B小町で予定が空いている週があるだろ?そこで皆を宮崎に連れていきたいんだが、出来るか?」

 

眼光が鋭い、昔の眼に戻ってるみたいだ。

 

「出来るかか、ちょうど16日の週がクリスマスイベント前に空いてる。何をするつもりだ?」

 

「単なる慰安旅行だよ。今日ももう遅い、帰るよ。迷惑かけたな。」

 

事務所を出て、二人で家まで歩いて帰る。変装してるから、一応バレることは無いと思うが。

 

「アムロ、ごめんね。隠しきれなかった、私とアムロがキスしてたの見られてたみたいでさ、その話をしてたら佐藤さんが来ちゃって。色々問い詰められちゃった。ごめんね」

 

「別にそんな事で、俺が怒ると思うかい?こういうのは身から出た錆びっていうんだ。俺が軽率だっただけさ。」

 

トボトボと歩く彼女の足取りはとても不安そうだった。

 

「皆、私の事嫌いになっちゃったかな?」

 

「ならないさ、寧ろもっと好きになるさ。隠し事をしないってことは、人を信頼するってことだ。相手の本当の事を知って、喜ばない奴は、週刊誌やネットを悪用して自分の物差しだけで人を貶めるのを趣味にしてるクズみたいな大人くらいだよ。」

 

 

彼女はギュッと俺の手を握った、もう何も失いたくない。それが彼女の根底、愛を知りそしてそれを失うのを恐れる。

それが、普通だ。俺みたいに、様々な物を失ってなんとかなる様な奴は、基本いない。あの人間としては一見完璧に等しいシャアでさえララァの死を最後まで乗り越えることができなかったのだから。そういう意味では、俺が異常だな。

 

「今日は何を食べようか、俺のために創ってくれるかい?」

 

「うん。今日は、ペコリーノ・ロマーノを使ったカルボナーラ。それと、今朝作ったサラダの残り。時間がないから、一品だけだけど、それでも良い?」

 

この子は、優しい。本当は嘘が嫌いにも関わらず人を思いを慮って嘘をついてしまう。

だからこそ、俺は彼女を護らなければならない。

 

「あぁ、作ってくれるだけでも嬉しいよ。俺は、料理と片付けだけは苦手だからね。」

 

 

〜sideアイ〜

 

「お休みアムロ。」

 

「あぁ、お休みアイ。」

 

アムロの家に居候するようになって、初めて佐藤さんに怒られた。前々から色々と言われてきたけど、今回は本気で怒ってるのが解った。

 

B小町の皆は、私の事を笑って茶化してるように話してたけど、内心どう思ってるんだろうって思うと。

 

「全然、眠れないんだよねぇ」

 

暗い天井を見上げると、施設にいた頃を思い出す。あの時の私はずっと怯えてた。お母さんに裏切られてからは誰の事も信じられなかったし、信じたく無かった。

そんな時、アムロの電話番号を思い出して初めて電話をかけたっけなぁ。

 

私が名前を教えてないのに、私の名前を知ってた不思議な人。アムロ

私が唯一本音で話せる相手はこの人しかいないって、彼に纏わり縋った助けて欲しいって。

アムロはそんな私を助けてくれる

 

でも、なんでアムロは私なんかを助けてくれるんだろう?もしかしたら、私を利用しているだけなんじゃないか、いつかは捨てられるんじゃないか。ねぇ、どうして。どうしてなの?ねぇ…

 

 

 

 

 

 

あぁ、考えてるうちに寝ちゃったんだなって解った。

また、あの夢だ。

 

夢の中の彼は私にとってはヒーローだ、どんなものにも立ち向かっていった彼は、耐え続ける彼は、私なんかよりもずっとずっと苦しみに、孤独に耐えている。

 

でも、あの少年が、青年になって都合良く使われて、飼い殺される夢。都合の良い待遇、都合の良い一日。教官として使われて、監視されて、娼婦をあてがわれ、骨抜きにされていく。

飼い殺し、抵抗する気力さえ失われていく。

 

 

私はそんなのを見て、だんだん周囲の人達が憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて。彼にどうしようもなく涙を流した。

 

 

あんなにも苦痛に耐え孤独になっていた彼は、そんな日々に嫌気が差して、全てを諦めるようになっていった。

ある日、彼にお客が来た。幼馴染〘だった〙彼を裏切った、憎い憎い憎い相手。

でも、そんな彼女を彼は受け入れた。妊娠してた、彼の子供じゃない、あの裏切った奴の子供を!

 

逃げられない言い訳をした彼を私は、見たくなかった。眼を閉じたかった。

 

「母にとってあなたは、ヒーローだったんですよ!」

 

 

でも、そんな言葉を聞いた彼を、私は希望を持って見た。もし諦めていたら?そんな絶望を思いながら。それでも、まだ諦めた眼をしていなかった。本当に彼はヒーローなんだって、そう思えた。

 

 

 

 




無償の愛を疑わずに受け入れられる人は、いるか?いや、いない
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