生年月日を1984年から1994年に変更しました。
『』の文を心の声
「」の文を口に出した声
とします。
オムツのCMの撮影からはや2年、俺は2歳となり言葉を解する事ができる年齢になった。そして、俺の親の事も同時にある程度理解できていた。
俺の親父、安室・リム・アレックス。ロボット工学を研究する生粋の研究者。
コイツは基本、家に帰ってこない。親父の書斎の中は所狭しと本が置かれ、紙の資料や様々なデータがファイルで閉じて置かれている。本棚はパンパンだ。
母親は安室 美由紀 売れないSF小説作家。その昔は、日本SF大賞という賞にノミネートされる小説を書いた天才と称されていたようである。最も、昨今は才能は枯れ果てスランプ状態。書斎は綺麗に整頓され、埃を被っている。長い事、使っていないのだろう。
最近のマイブームは親父の書斎に勝手に侵入して、論文を片っ端から読み漁ることだ。
やはりというか、この年代に二足歩行機の研究をするやつは珍しいのか、二足歩行機に関する論文はあまり無かった。過渡期と言うやつだ。
その中で異彩を放っていた親父の論文もあった、学会では異端児なのだろう歩行機の論文ばかりが散見された。
論文を読むのに夢中になり周囲が見えなくなっていた、親父がこっそりと近付いてくるのが解った。解っていたが、身体は言うことを利かない。子供の好奇心とは肉体を縛るものなのだ。
『こんな子供が、私の論文を読んでいる?不思議なこともあるものだ』
そう思っていることが容易に解った。NTでなくとも解るだろうが、それでもこの感覚は慣れ親しんだものだ。
「お前、それが理解できるのか?」
どう返せば良いだろうか、読んでいるのは明白だ。ならばと、首を縦に降る。
「そうか!そうか!そうか!ハッ。じゃあ、試しにだがこちらはどうだ!」
新しい紙が出てくる、それの概説をいった。
「これは、これは大変な才能だ!お前は学者になるべきだ!」
ものすごい形相だ、身体のうちから黒いものが湧き出ているように見える。あれは、闇か?
そんなことが起こった次の日、両親は大喧嘩を繰り広げた。
俺の将来を決めるだなんだと、二人から出てくるのは己のエゴで子供を塗り固めようとする口上。
こういう喧嘩は本当に嫌いだ。俺が技術者や学者になるか俳優になるかなんてのは俺が決めることだろうに。
「二人共、僕の将来の事を話すのは良いけど。僕が目の前にいるのに、そんなに怒鳴り合わないでよ。」
それを聞いてハッとしたんだろう、子供にそんな事を言われるなんてと言わんばかりだな。
そんなことがあったのだが、それからというもの合間を見ては親父は俺に数学を、母は様々な文学を俺に入れ込み身体を鍛えようとした。競い合うように。
親父の英才教育のおかげか、はたまたこの身体が優秀なのか数学をスポンジのように吸収し今では国立大学の問題すら解ける。
母親のそれは、俺のこの身体に動く喜びを演ずる喜びを教える結果となった。
何もかもが順調で、何もかもが楽しく。時間はあっという間に流れた。
そんな喜びも6歳になった頃に潰えた。
母が急性心不全で帰らぬ人となった、その日俺はとある映画に出演するために、家を離れマネージャーの斉藤さんと共に現場へと赴いていた。
父は、ちょうど学術会議へと呼び出されていた。意味のない会合なんかと、いつも愚痴を零していた。
母親が死んだ程度で、心を壊す奴はあの世界にはいない。俺は泣くこともせず、ただ淡々とそれを受け入れた。
親父にはそれができなかった、半身を喪った哀しみはとてもではないが耐えられるものではなかったのだろう。酒浸りとなった。
そして、運命は残酷なまでに俺に追い打ちをかけた。親父は俺を置いて一人米国、ワシントンDCの会議に参加して航空機事故に巻き込まれた。
俺はたった一年で孤児になった。
周囲から同情の眼差しが射し込む。可哀想にだとか、どうしてこの子だけにこんな試練をだとか。そんな、口だけの事を口々に出して、内心ホッとしている奴もいる。
そりゃ、そうだ。同業者なら嫉妬も妬みもある、アイツはあれでおしまいだとか、心の底から聞こえてくるよ。
芸能界は暗い、連邦の腐った高官達程ではないがそれでも、悪意に満ち満ちている。俺の保護者は誰になるのか、はたまた施設に放り投げられるのか。正直解らない事ばかりだ。
葬式場でのそんな俺を発見したのは斉藤さんだった。
『どうしてコイツにはこんな運命が待ち受けてるんだ。』
「お前は両親が死んで悲しくないのか?」
悲しんだところで、人は生き返らない少し悲しんだら前を向くしか無い。前に進むためには、振り向かないことも必要だ。
「お前は!…、せめて今くらいは悲しんだって良いんだぞ…」
哀しみは、昔充分に味わった。
「今は前を向くときだよ、哀しむのは後でも出来る。二人の願いを叶えた時に、充分に哀しめば良い。」
だからこそ進まなければならない。
「養子縁組制度。」
「は?」
察しが悪いな。
「俺をあんたの息子にしてくれないか?向こうは説得する、どうせ俺は気味悪がられているからね。厄介払いが出来て、せいせいするはずだ。答えは2つYESかNOか。」
「お前、本当に六歳かよ。」
知り合いの方が色々とやりやすいだろ。親父のやり残したこと、きちんと片付けるからさ。
お袋の小説、それの主演になって欲しいと言う夢も叶えてやりたいからさ。
まだまだアイは出てこない。