〜sideアイ〜
ふゎ〜〜、退屈だなぁ。妊娠ってもっと色々なことしなきゃならないと思ったのに、意外とやることなくって退屈だなぁ。
あっ、お腹蹴った…ふふっもう。暴れちゃだめだぞ〜、ママのお腹痛い痛いになっちゃうでしょ〜ふふっ。
はあ~、アムロ来ないなぁ。暇な時にTVをつけると、いつも彼はそこにいる。色んな番組に引っ張りだこで、仕事がいそがしいんだよねぇ?でもさ、もう少し会いに来てくれたって、良いんじゃない?……
ねぇ、お願いだからさ。私から離れて行って欲しくないなぁ、お母さんみたいにさ、私を置いて何処かに行って欲しくないなぁ。
ポトっ
なんでだろ、ウッ…なんで勝手に出てくるんだろ…。アムロ、私アムロがいないと辛いよ…。
コンコン
「失礼しますよ、アイさん。今日の診察…泣いてるんですか?」
「泣いて…無いです。」
ゴロー先生は、私が泣いてることに真摯に受け止めてくれる。
マタニティーブルーズっていう、妊娠期間によくあることみたいなんだけど、鬱病みたいにすっごく心が堕ちちゃって、どうしようもなく辛いんだって、教えてくれる。
「ねぇ、先生。私を、アムロに捨てられちゃったのかな…。」
「そんな事無いですよ、毎日スマホにメール来てますよね?ただ、仕事が忙しすぎるだけですよ。
いつも、病院に来る時、彼言ってましたよ。今のうちにコネを作って、アイが幸せに暮らせるように下地造りをしておかないとって。焦る気持ちは解るけど、何をそんなに焦ってるのやら。」
うん、そんな事解ってる。私達のために、
「そんな事くらい解ってるけど、でもさもう少しくらい一緒にいてくれても、良いんじゃないかなぁ。」
もし、私が先生にこの事を言ったらどうなっちゃうのかな?先生はお医者さんだから、きっと私の精神がおかしくなったってそう思って、アムロを呼んでくれるかな?
「あ、そう言えばこんな封筒がアイさん宛に届いていました。どなたか、ファンの方にこの病院を教えました?」
え?……私は教えてない、アムロだってきっと、リスクが大きいからって誰にも言わない筈。社長?みやこさん?絶対無い。B小町の皆は?ううん、皆も無い筈。じゃあ、どうして…誰から?
これが…シラトリ?
「先生、手紙貸して下さい。」
「見に覚えがないみたいですけど、大丈夫ですか?処分も出来ますが、元々アイさんのですから、アイさん自身が決めていただければ。」
私は、先生から封筒を受け取ってそれを開けた、中には手紙とフラッシュメモリ?とか言うのが同封されてた。
ご入院された旨を拝聴し、大変驚いております。
長期の入院であるとのことですが、体調はいかがでしょうか。
ライブやB小町の方々のことも気がかりかと思いますが、まずはお身体の回復と、お子様のことを第一に考えてお大事なさってください。
近々病院に伺おうと考えておりますが、取り急ぎこちらにてお見舞い差し上げます。
尚、手紙へのご返信は不要ですので、ゆっくりとご静養ください。
追記
同封されておりましたフラッシュメモリに、シラトリという存在への私なりの考察が記してあります。
嶺氏にお渡し頂ければ、私という存在への回答へも繋がることでしょう。
少しでもお力になればと、こちらに同封します。
B小町 ファンクラブNo.100
セクス・アグノスより、我等が愛しきマーメイドへ。
やっぱり知らない人だ、でもなんだろう。たぶん、善意で送って来てるんだと思うけど、不気味だなぁ。
私の活動休止の原因を知ってるし、教えてもいない病院の場所まで知ってる…怖いただただ漠然とした恐怖、シラトリとはまた違う怖さだ。
5日後、その人が面会に来た。社長とアムロのいない間を突くように。
後ろに黒いスーツの人を二人引き連れて、薄い青色のYシャツにブラウンスーツに青色ネクタイをして、赤紫のモールに菊花模様をしたバッジを左胸辺りにつけて。
「握手会以来ですが、公としてはお初にお目にかかります。セクス・アグノスです。B小町のアイさん。いや、星野アイさん。
お腹のお子様は、すくすくと育っておられるようで安心しました。
こちらはお見舞いの品です、枯れるといけませんので造花ですが、お受け取り頂ければ幸いです。」
「あの、貴方はいったい。」
[そろそろお時間が]
後ろの人がこの人に囁いている。
「私は単なるB小町の一ファンです。それ以上でもそれ以下でもない、ではお体お気をつけて。」
扉を静かに閉めると、その数分後先生が何食わぬ顔で来た。あの人達が来たことを知らないみたいだ、いったい何者なんだろう?
この人が来たのは、出産予定日の3日前だった。
〜sideアムロ〜
ノーベル賞受賞、心からお祝いさせていただく。
総理大臣からの表彰も近々あることだろう。
君の活躍は画面の外から良く拝見させてもらっているよ、研究者としても俳優としても。
君が大局を動かす事を、私はこのような形でその力を発揮したことを、実に誇らしく思う。
この暗号化された文章など2日もかからずに解いていることだろう。
さて、本題に入ろうと思う。
君の事だ、
シラトリ
なる存在から既に接触があったと思う。アレに関して、私は君よりも良く調査していると自負している。奴の趣向、人物選定の条件、そしてその目的のことを。
詳しい話は下記の日付と座標で話し合いたい。なに、君の仕事は既にキャンセルしている、心配することはない。アイ嬢の護衛も私の方から手配しておこう。もっとも、病院に貼り付けるには私とは物理的に距離が離れすぎているために、出産予定日には間に合わないだろうから、それまでは君が守ってやって欲しい。
では、幸運を祈る。
Casval Rem Deikunより
我が宿敵であり同士である君に
A°B 'C"N D°E'F"E
7/ 08
言われなくても、守ってみせるよ。癪に触るが、手を貸してくれることには感謝するしか無いか。
だが、目下の問題は出産に間に合うかだな、
「もっとスピード出ないのか?」
「無理ですねぇ、何せ山道です。お客さんが急いでくれと言ったんです、近道と言ってもこういう道はスピードを出せないものですから。動物が飛び出したりも、オオッと。馬鹿野郎、飛び出してきやがって、轢いちまうぞ!」
フードを被った人物が焦って車道に飛び出した、ぶつかりそうになりながらも、離れていく。
その後ろから見知った人物が現れた。
「雨宮先生!?どうしたんですか、こんなところで」
「え?安室さん、いや病院の近くに不審者がいたので追ってたんです。」
どう考えても誘い出されてるぞ。
「こういう時は深追いしないほうが身のためです、ああいう手はそうやってこっちを油断させる。今日は出産予定日でしょう?
先生の本分は助産の筈です、一緒に行きませんか?」
「そうですね、ついカッとなってました。医者には医者の本分がありますから。」
彼の電話がなる。始まったんだ。
「急ぎましょう。」
車で数分すると病院へと到着し、先生は直ぐにお産のために着替えに行く。俺も立会のため、一緒に中へと入る。
既にお産が始まっている、彼女は痛いのだろう。泣き叫ぶ、時折俺の名を呼ぶ彼女に俺は手を握り答える。物凄い握力だ、出産とはそれ程力がかかるのか…長い生の中でも始めて見る。
そして、産声とともに2つの命がこの世に現れる。
「おめでとうございます。元気な
「良かったぁ、無事に産まれてきてくれて。」
看護師が彼女の傍らに二人を連れて行く
「この娘は
先に産まれた娘。姉が愛久愛海、妹が瑠美衣か。一生懸命考えたんだろうな、彼女の意見を尊重しよう。
この世に生きてきて、初めての自分の子供。この子達のためにも、戦わなくちゃならない。例え、ヤツの手駒に成り果てようとも。