虹の男と星の娘   作:丸亀導師

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第二十五話

〜sideアムロ〜

次の工程が終われば取り敢えず一段落か…最後の難関はペレットの精製。今の技術で何処まで出来るのか、未知数だな。今日は早めに終わろう、そうすれば少しでも皆の近くにいられるから。

周囲がざわめいている、シャアか。

 

「アムロ、どうだ順調かな?」

 

「順調だったらこんなにも苦戦してないよ、理論と実証は似て非なるものだ。現実、理論と100%同じ条件を作り出すのが、どれ程難しいと思う?

机上のと現実は違うんだ。本来、この技術は後最低でも、20年は必要な技術だぞ?それを今すぐに作ろうとしてるんだ、無理が出てきてもしょうがないだろ?」

 

俺の怒りが解らないお前でもないだろ。俺は、パイロットをやっていただけじゃない。設計や整備を自分でやっていたんだ、お前とは違う。

 

「……一つ言っておくが私もパイロットだけでなく政治もせねばならない立場だったのだからな。何束もわらじを履くことによる苦悩を味わったのは君だけではないことを失念しないで欲しい。……ふぅ、話を戻すが確かに机上の空論という言葉もある。だが、君の設計はそうではないのは、君が一番良く知っている。違うか」

 

違わないから

 

「違わないから、こうやって苦労してるんじゃないか!ハァ、……先ほどつい思ってしまったことについては悪かった…グリプス戦役の最中でブレックス准将を喪って悲しみの中にあったお前にそれまで准将が担っていた重責を全て押し付けておきながら、ろくにお前を支えてやれなかった俺が思っていいことじゃなかったというのに……今日は帰る。今やったところで中途半端になるだけだ、ならやらない方が良い。」

 

「アイ君達のためにも、早めに終わらせたほうが良いんじゃないか?」

 

そうだ、だが。

 

「その前に俺の身体がどうにかなるぞ、そうなったらこの研究も0にもどる。俺の交渉材料だ。

それにだ、前の俺の体と、今の俺の体どっちが頑丈だと思う?当然パイロットをやってる向こうの身体だ。

このままじゃ過労死するよ。一週間休暇を取る、勿論許可はくれるよな?」

 

「あぁ、だが。この世界の地球が我々のいた悲惨な未来に繋がるか否かがこの計画に掛かっているということを肝に銘じてほしい。故に契約だけはきちんと履行してもらう。でなければ」

 

護衛を辞めるんだろ?解ってる。それに俺だってこの世界の地球が前世の宇宙世紀のようなことにはなってもらいたくないからな。

 

 

……

 

 

「ただいま。」

 

午前中に帰ったとして、そこにアイがいるかと言われればいないんだろう。

 

「あ、安室さん。おかえりなさい、こんな早くどうしたの?」

 

「流石に過労死しそうだから戻って来たよ、一週間休暇を貰った。」

 

あらあら、とミヤコさんが俺に対応してくれる。ミヤコさんの方が歳上だけど、有り難いものだな。

 

「あなたが弱音吐くって、相当まいってるのね。駄目よ、きちんと休暇取らなきゃ、身体が資本なんだから。」

 

「母さんみたいだな。ところで、アクアとルビーは?」

 

本当は二人と過ごしたかったんだがな。

 

「彼女達ならこっちでお昼寝中。起こします?」

 

「いや、子供は寝ることが仕事だから。」

 

見ている分には可愛いんだがなぁ、ルビーもアクアも俺を嫌っている。しかも、歳不相応の精神を持って。これは、俺の影響なのだろうか、俺の子供だからそんな精神構造になったのか?

それとも、別人の魂が入っているのか…。

どちらにせよ、俺とアイの子に変わりはないのだから、俺なりに子育てをすれば良いはずだがな。

 

「ミヤコさん。取り敢えずは帰ってもいいですよ、俺が帰ってきたので一週間は何とかなりますから。」

 

「そうも行かないわ。あなた、かなり合理的に子育てしようとするだろうから。言っておくけど、子供は非合理の塊だから。私がお手本見せるから、それからやってね?」

 

そう言われればそうだな、いくら考えていることが、ある程度感じられるとしても、それで上手く出来るとは限らない。

じゃあ家でも仕事をするか?

 

「何か出来ることないかい?」

 

「はあ、あなたがやることは、先ずは休む事。ずっとこんな生活続けてきたのでしょ?アイさん心配してたのよ?アムロは仕事ばっかりやってて、1度も休めてないって。」

 

愛されているんだろうな、だから、俺を愛しているから子供達を愛そうとしている。始まりは嘘、それから愛していこうと。

無償の愛っていうのは難しいから。

 

「ちょっと、一人芝居をやりたいんだけど良いかな?あまり大きい声を出さないようにするからさ、見てもらっても?」

 

「へぇ、劇場の奴を家でやるの?そう言えば、生ではあんまり見たこととかないものね、お金取るの?」

 

まさか、取るわけ無いだろ

 

「劇団じゃないんだから、これは俺の気分転換を兼ねてだよ。」

 

 

 

〜sideアクア〜

 

 

「……マクベスとバンコは、戦いに勝利した帰り道、魔女と出会う。魔女たちは、マクベスがコードルの支配者になり、後にスコットランドの王になると予言する。バンコは自分の運命について尋ねる。

魔女たちは、彼が王になるのではなく、王の父の王になると予言する。」

 

声が聞こえて、起きてみると父様が一人芝居をしていて、それをミヤコさんが息を呑むように見ていた。

あらすじを一息のうちに語り、一人一人の人物を、たった一人で

演じる。

 

その姿に、ふと私は見惚れてしまった。その時の父様は、輝いていた。ライブで見た母様の輝きは人を焦がす一番星のような強い一色の光だったが、父様の輝きは七色の虹のように、私達のこの部屋いっぱいに包み込んでくれるような、そんな優しい光だ。

気が付いたら横にルビーがいて、3人でそれを見ていた。

終わった時、自然と拍手をしていた。

 

「相変わらず、凄い技術よね。どうして最近はあんまりやらないの?」

 

「少し、学者の方が忙しんだ。年単位の工程があるから、俳優の方に時間を割けない。それでも、少しだけだけど演れてるのはまだマシな方だよ。

それと、二人共起きてきたみたいだね。ごめんね、起こしちゃったかな?」

 

「ううん、ルビー平気!それよりね、もっと見せて!今のすっごく、面白かったの。ねぇ、もっと見せて!」

 

あの、この男を呪詛の目で見ていたあの妹が、そんなにもあの芝居に魅入られたのだ。この男の実力も恐ろしいものなのかもしれない。

 

「俺は別に構わないよ?でも、もうお昼だからね二人共。

ミヤコさん、お昼ご飯お願いできますか?」

 

今日のお昼は鮭と玉ねぎのおみそ汁……私お魚嫌い。

 

……

 

大っっっ嫌いなお魚を食べて、少しお昼寝をした後。父様は、私たち二人を抱えて、二階に連れて来てくれた。初めての家の二階に、二人して思わず興奮してしまった。一体何があるのか、とても気になる。結構厳重そうな扉の部屋に入っていく私達、そこはとても空気が乾燥していた。

 

「二人をここに入れるのは初めてだったね。

ここは、昔俺がやった舞台演技とか映画やドラマの台本を置いてあるんだけれど、どれが良い?と言っても、そんなに有名じゃないのもあるし、有名どころを出すかな?

二人の年を考えると、そうだな。日本の古典的に、竹取物語、かぐや姫でもやろうか?

これなら、男の俺が一人でやっても意外とすんなり入ってくると思うから。」

 

私はその物語を聞いたことがない、曖昧な記憶ではオペラのような物は見たことがあったのだが、この私のいる国の独自の物語なのだろう。混じり合うはず無かった者たちの、出会いと別れの物語。〘帝〙(みかど)と〘かぐや姫〙の悲愛には正直に涙した。

 

ルビーは、聞いたことある話を真剣な眼差しで、一人芝居をする父様に母様に対するのとは少し違うが、似たような感情を抱いたようだ。私は、父様の姿を見て。何故か、『私にも出来るのではないか?』と思うのだが、父様に教えてもらおうか。

 

 

 

 

〜sideアイ〜

「ただいま〜、アクア、ルビー。それにミヤコさんお留守番ありがとうございます〜。」

 

「アイ、おかえり。」

 

え?アムロがいる…私よりも早く帰って来るなんて珍しい、というか休み取れたんだ。

 

「君と子供達の為だ、奴に無理言って取ってきた。ま、俺自身が交渉材料足り得ることに気づいてね、やっと対等に話せたよ。」

 

そうなんだ、じゃあこれからはきちんと家に帰ってこれるってことかな?

 

「それはどうかな、あそこは閉鎖的だから電話もできないし、一度潜ると出てくるのに、多重のセキュリティがあるから、それは難しいかもしれない。」

 

そっか、そうなんだ。

 

「ちょっと寂しいかな、アムロがいないと。子供達と待ってるだけなんてさ、一緒に何処かに行きたいのに。」

 

「アイも明日から休みが取れているんだろ?二人を連れて、ちょっと遠出しないか?芸能の神様のところに。」

 

でも、良いのかな。私達人質なんだけど。

 

「連中も付いてくるだろうさ。それに、今後家族旅行なんて、出来るか解らないだろ?こういう時に、行くのは悪いことじゃ無い筈さ。」

 

わ〜い、皆で旅行か〜。あ、そう言えば。

 

「二人の洋服買ってあげないと、そろそろ入らなくなって来てるみたいだからさ。」

 

「よく気が付いたね、ミヤコさんも俺も気が付かなかったんだが。」

 

ふふん、胸を張って言えるけど

 

「これでも、2児の母ですから。どう?凄いでしょ。」

 

「正直凄いと思うよ、二人の事を良く見てるね。俺なんて、こんなに大きくなった事を、事後ですら知らなかったりするから。」

 

私達の為に頑張ってくれてるの、私は解ってるからさ、だから二人がアムロの事を嫌いにならないように、教育(・・)しないと…

 

「父様〜、ねぇあれやってよ〜。」

 

「あんまり乗り気じゃないんだけどね、そんなに見たいのかい?」

 

あれ?なんか、雰囲気変わったのかな?なんか、いつもの嫌われてる感じが無いんだけど、何かあったのかな。

 

「あ、これかい?ちょっと一人芝居を見られちゃってね、それでなんか気にいったみたいなんだ。」

 

「ママ、ママ。ママも一緒にやろうよ〜」

 

なんか、必死に考えてた私が馬鹿みたいじゃん。もう、でも良かったかな。

 

「なんか、納得しない顔だね」

 

「大丈夫です〜、どうせ私は仲間外れです〜。」

 

「あの〜、一家団欒の所悪いんだけど、私そろそろ帰らないと行けないから。玄関からどいてもらえると、助かるんだけど。」

 

あ、ごめんごめん

 

「いつもありがと〜ミヤコさん。」

 

「旅行行くのは良いけど、くれぐれも気を付けなさいよ。特にパパラッチとか。」

 

そこは大丈夫なんだよね〜なんか不思議な力で揉み消してくれるらしいから。

 

「ああ、気をつけるよ。ミヤコさんも道中気をつけて。」

 

初めての旅行か〜その前に

 

「じゃあ、明日は服買って。その後行こうか!」

 

一家団欒、宮崎旅行にレッツゴー。

 

 

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