虹の男と星の娘   作:丸亀導師

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第二十九話

〜sideアイ〜

玄関の3重鍵のロックが解除され、人が入ってくる。

「ただいま。」

 

「おかえり〜、今日はやけに早いんだね!向こうで何かあったの?子供達は、向こうで寝てるよ!?」

 

アムロが早く返ってくるのは、基本的に仕事で不都合な事があったか、猛烈な疲れを抱えている時だ。

でも、今日の彼の顔は非常に晴れやかで、きっと嬉しいことがあったのは容易に解る。

 

「ああ、終わったよ。長かった、もう懲り懲りだね。あの速度でやらなきゃ、きっと10年はあのままだったろうから、これでシャアの、奴の軛から開放されたよ。」

 

「え?じゃあ、もう何ヶ月も家を開けることはないの?子供達と遊べないくらい疲れて返ってくることも!?」

 

彼は凄くニコニコと、私に笑いかけてくる。

 

「やっった〜。これでやっと普通の家族になれるね!」

 

「そうだね、やっと。だけど、アイツの事を忘れるわけにはいかない。少し話が長くなりそうだから、リビングに行こうか。」

 

シラトリか〜、殆ど音沙汰もなく正直いなくなったんじゃないかなぁ、なんて思ってたんだけど。やっぱり、気になるよね。

 

「これからは、周囲の警備がいなくなるから、自由に動き回れる。反面、自分達の身は自分達で護らなければならない。」

 

「それは、解ってるよ。その為に、今までアムロから色々教わったんだから。」

 

どんな奴が来たとしても、絶対に負けない自身はある。プロの殺し屋なんて来たら終わりだろうけど。

 

「いや、プロは来ないだろうな。来るとすれば、アイ。君のファンや親族だ。」

 

「ファンは、解るけどお母さんは流石に来ないでしょ。」

 

やれやれっていう風に首を振られるけど、そんなに?

 

「いいかい?人間の深層心理っていうのは、今の君を形成しているものなんだ。

つまり、君にとってのトラウマは君の母親そのもの。もし、顔を合わせて抱きついてきたとしても、それは基本罠だ。

そして、君がお母さんに接したらきっと〘動けなくなる〙」

 

「動けなくなる?私だって、あの子達のママになったんだよ?アムロと出会う前の私だったら確かにアムロの言う通りのようなことになりかねなかっただろうけど、今の私ならもう昔の事で、そこまで追い詰められないよ。」

 

私を信用してない?ううん、心配なんだな。確かにお母さんは、私にとっては私を捨てた人、そんな人が近くに来たらきっと怖い。でも、それでもあの子達の為なら動く、なんとしてでも。

 

「決意は硬いようだけど、実戦と言うのは、君の考えている以上に、精神の作用によって生き死が別れたりする。普段君等とやっている組み手とは違う。」

 

「解ってるよ。誰よりも、貴方が戦争を知ってるから。だから、私は出来ることなら、あの子達と一緒に、逃げたほうが良いってことも。」

 

シラトリが狙ってるのはたぶん、私の命かアムロの命だ。私達を手っ取り早く殺す為の準備をしているはずだ。

 

「ああ、俺も同意見だ。それとだが、奴等はルビーとアクアを標的に、事を起こすはずだ。」

 

「じゃあ、あの子達の保育園とかも変えなくちゃ駄目か〜。」

 

アイドル続けられないかもなぁ、そうしたらルビーとの約束も難しいかも。

 

「いや、そう悲観するものじゃない。何故かとは言えないが、シラトリ自身には、おそらく介入まで時間制限があるんだと思う。君には話していなかったが、昔まだ君と肉体関係を持つ前の話だ。

奴は俺に接触してきた、神木ヒカルの肉体を使って。そして、こう言ったんだ〘物語の筋書きをある程度元に戻そう〙と。」

 

「というと?どういうこと?物語の筋書き?」

 

彼は首を小さく縦に振り、物語の筋書きという意味を説明し始めた。

 

「奴の言っていた〘物語の筋書き〙とは、恐らくだが俺や俺達転生をした者たちが変えていった、この世界本来の筋書き。

そして、たぶん君は誰かに殺されるんだと思う。」

 

「殺されるか…じゃあ、あの子達は生まれないって事なのかな。」

 

それは、嫌だなぁ。あの子達が、生まれないことを想像できないよ。

 

「それは無いと思う。君は殺されるなら、主人公は誰だとおもう?」

 

「それは…まさかと思うけど子供たち?でも、それだと。」

 

「ああ、きっと君はアイドルをしていながら、子供を生み。そして、ファンの誰かに殺された。そして、主人公は」

 

「それを観ていた、子供達…。じゃあ、きっと副題は復讐劇になるね…。なんか、妥当な線だね。」

 

それだと、きっと私が死んじゃった日って、一番印象に残った日になるのかな。もし、その世界でも私がアイドルをやってるのなら、きっと通う事務所は同じ苺プロだと思う。

なら、実行日は

 

「そう、ドームライブだ。」

 

幸せの絶頂の果てに、夢叶わず散っていった母親の無念と仇を取るために、人生を使い潰そうとする子供達の物語か…。

そんな物語は嫌だなぁ。あの子たちにはそういったモノに囚われず幸せに生きて欲しい。

 

「トラウマ植え付けるなら、きっと犯行現場は家だよね?

虐待を受けてた身から言うけど、日常生活の中の何気ない場面が一番トラウマなんだよね〜。だから、今でも白米苦手なんだけどさ。

前までの私ならたぶん、チャイムが鳴ったらそのまま出ちゃうと思うから、やられるならそこかな?」

 

「朝方か、いい線だね。なら、ドームライブの余韻に浸っている、帰りがけも殺られる可能性はあるな。もしくは帰宅直後だな。全て終わった後が一番気が緩むから、そこが最も危険だと言える。」

 

なるほど、一緒に歩いている時にか家に帰ってきたばかりの時か、それもそうだね。

そして、その日付が

 

「「シラトリの行動範囲」」

 

「それ以上は、私達には手出しできない。寧ろ、規定世界?の方の殺人犯だけになる?」

 

「ああ、そうなるはずだ。だから、監視が消えたにも関わらず奴は動いていない。最初からそう決まってたんだ。」

 

それなら対策は

 

「確実にやって行こう。」

 

私達は始めた、私達を殺す相手と戦う準備を。あの娘達の未来のためにも。

 

 

 

 

〜sideルビー〜

 

トイレに起きて廊下を歩いていたら、リビングからパパとママの話し声が聞こえてきた。

〘ぼうじんべすと〙だとか〘ケブラー〙とか聞き慣れない単語を使いながらそれを、パパがママに使い方とかの説明をしてる。

 

一体何の話なのか、私には解らないけど、1つだけ言えることはとても物騒な話をしてるってことだ。

ドアの隙間からそ~と覗いているのに、二人は夢中になっているのか気が付いていない。

 

「ねぇ、何かしてるの?」

 

「お姉ちゃん、パパとママが物騒な話ししてるんだよ、ナイフで何処を刺してくるだとか、ガードの仕方だとか。」

 

演劇の演出とかの話とはまだ違ってるよね、だってあんなに真剣な顔でパパの話を聞いてるママ、見たこと無いもん。

 

「入っちゃだめかな?」

 

「二人共真剣だから、邪魔しちゃまずいと思う。」

 

ええ〜気になるじゃん、よ〜し行くぞ!思いっきりドアを開ける。

 

「パパ、ママ、何の話してるの?」

 

「あ、ルビー起きてきたんだ、それにアクアもおはよ〜。う〜ん、ちょっとしたお仕事の話かな〜。ドームライブ成功したら、B小町のみんなで何処か旅行行きたいね〜って。」

 

う〜んママにしては嘘が下手だな〜、いつもみたいに堂々としてない、なんか覚られちゃいけない事でもあるのかな。

 

「父様、劇の稽古して欲しいです。」

 

「ああ、良いとも。ただし、今日は厳しく行くからね?」

 

パパがママに目配ししてる、絶対に何か隠してるんだ。

 

「ママ、ダンスのお稽古しよ!」

 

「じゃあ、パパとおんなじように今日は厳しくしちゃうぞ〜。」

 

 

 

…………

苺プロのダンススタジオで、やってたけどママの体力お化けすぎ。

 

「もう駄目〜。ママ、体力凄いね。」

 

「フッフッフ、そうだぞ〜ママは凄いんだから、だけどねルビー。無理しちゃ駄目だよ?ママみたいに凄くなるには、いっぱい練習しなきゃ駄目だし、色々経験しなきゃならないけど。

見習っちゃ駄目なところもあるからね?特に、人と接する時、嘘はあんまりついちゃ駄目だよ。でも、時間と場所や相手によってはホントの事を言う方が駄目な場合もあるから、そこは気を付けなきゃいけないけどね。」

 

そうだね。嘘ついちゃ駄目だからね…

 

「じゃあなんでさっき嘘ついたの?本当は、ライブの話じゃなかったんでしょ?今ママが言ったようにホントの事を言っちゃいけない場合ってことなの?」

 

「うっ…痛いところ突かれちゃったね〜。う〜ん、そうだよ。だからまだ言えないや、ルビーもアクアも愛してるからだから言えない。これは嘘じゃないからね。だから、まだ秘密♡」

 

ママの卑怯者、教えてくれたって良いじゃん。

でも、ママのその顔かわいい〜。

 

 

 

〜sideアクア〜

 

「で?なんで私の事務所に来るの!アンタ、父親が有名俳優なんだから、勝手に一人で稽古すれば良いじゃない!」

 

「だって、父様の演技指導って直感的で解りづらいんだもん。かなちゃんと一緒に練習したほうが、絶対自分磨きできると思ったんだ。」

 

父様に連れられてかなちゃんの事務所に来た。父様は、事務所の、人とバチバチに話し合いをしながら、かなちゃんの事を褒めたりしてる。同時に事務所の社長さんとその隣にいるかなちゃんのお母さんに向かって「あの娘の才能を褒めて伸ばすのは良いですが、周りの人への態度などを早く改めさせなければ、あの娘の輝きをあなた達の手で潰すことになりますよ。あの娘の才能ばかりだけでなく心を育てることにも目を向けてください」と厳しい言葉を投げかけていた。

 

「だいたいね、アンタは私の商売敵なの!そんなのと一緒にできるわけ無い!」

 

「でも、本当は一緒に仕事したいんでしょ?だって、かなちゃんと、一緒に仕事してると楽しいもん。」

 

あっ、顔紅くなった照れてる照れてる。

 

「わ、私は別に楽しくなんか無い!あ、アンタは私のライバルなの!だから、アンタに私の技術盗ませないんだから!」

 

そう言って夕方まで付き合ってくれてる癖に。

 

「アクア、そろそろ帰るよ。かなちゃん、アクアの相手ありがとね。これからも色々と迷惑をかけると思うけど、同世代同士、アクアの事をよろしく頼むよ。」

 

「わ、解りました。でも、私の方が歳上です。だから、私の言う事聞きなさいよ!」

 

わ〜、でも照れてる。顔真っ赤、かわいい〜。

 

「後、携帯買ってもらったら連絡先教えなさいよ!」

 

「解った。」

 

 

バイバイかなちゃんもしかしたら、また会えるのずっと後になるかもしれないけど。

 

 

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