虹の男と星の娘   作:丸亀導師

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第三十四話

見渡す限りの大草原、空高くを飛ぶトキ、池の魚を喰らう鶴。その姿は、失われた日本古来の関東平野。

しかし、そこには黄色い旗を背中に差し1団とそれに向かい合う、別の色を差した1団がズラリと横隊で並び槍を叩きあう。

 

数回の後、黄色い方が他方を突き崩し他方は散り散りとなり、方方へと逃げていく。

その姿はまるで、戦国の世もかくなるか。昨今の大河や時代劇とは一線を画すその情景は当に歴史的資料であろう。

 

旗指し物に(あお)き旗をはためかせ、それら黄色い者達を指揮する者あり。

その男は黒き甲冑を身に着け、腰に太刀を履きし当に戦国の武士、侍である。

 

その男を狙う者、草葉の影に二人あり。その二人、幼き子供に気取られる。居場所を知られ破れかぶれに火縄を撃ちし、しかして外れる。甲冑の男、子供に感謝をし共に住まう場所へと帰路につく。

 

「カッートッ!」

 

その声とともにいくつもの角度で置かれ、見事にカモフラージュされているカメラが姿を現す。

そう、これは映画の撮影。戦国時代の関東平野の様に見えるが実際は違うのだ。

 

そう、これは映画なのだ。だから登場する国は勿論の事、登場する人物も歴史とは一切関係がないのだが、その撮影の仕方がかなり凝ったものである。まず、合戦に使用される武器これは歴史的に見て、当時と寸分違わずのものである。

勿論の事、使用される火縄銃はモノホンで一応鉛玉が出て来るシーンも実際に撃ったものだ。

それどころか、対火縄銃用の竹束なんてものまである。

 

この映画を撮影している監督は、五反田。五反田泰志、売れない映画監督、業界では有名な実力派だが一般的には知られていない。

 

そして、主演俳優の一人甲冑の男。体格良く、身長もある技巧派で、様々な監督のリクエストを完璧に答える。アドリブすら使いこなす俳優、なんで俳優やってるのかわからない男、安室嶺。

 

 

 

 


 

 

 

〜sideアムロ〜

「どうだ?こういう、大きな金を動かす映画悪くないんじゃないか?」

 

「悪かぁねぇけどよ…俺なんかがこんな大金使って良いのかって、今でもこの手が震えてるぞ。」

 

俺もこの人生で二度目となる100億を超える制作費の映画だ。手が震えないわけがない。ちなみに1度目はハリウッドだ。

この映画の撮影目的は、資料映像は勿論のこと、CGや特撮、殺陣スタント等ありとあらゆる資料としての意味合いがある。

 

特にこの映画は、合戦物の中でも異質な部類だ。エンターテイメント性を残しつつリアリティを追求する。

黒澤映画のような側面のある、実に金のかかるものだ。だからこそ、俺はこの映画の監督に五反田を推薦したんだからな。

 

ただ、今回の映画を撮っていて分かったが、こいつは職人気質で凝り性が過ぎて時々ブレーキを掛けたり、軌道修正してやらないと自分の世界に入り込みすぎて迷走または暴走に陥ったりしたことからその都度のフォローには劇中の危険を承知で行ったアクション演技等よりも苦労させられることが多かった。

こいつが何故これほど才能に満ちているにも関わらず今まで日の目を見れずいたのかがようやく理解できた気がする。

 

「いいじゃないか?こういう映画取りたかったんだろ?大人の事情を気にすることなく一人のアーティスト及びクリエイターとして自分が好き勝手して、やりたいところをとことん追求する。そんなものが。」

 

「そりゃそうだけどよ?リアリティを出すっつって、こんだけ大量の資料を送り付けてきた、大学教授たちヤバいぜ?どうやったら、あんな人数来るんだよ。」

 

貴方達の研究成果、映像に残して見たくないか?と言ったら、無償で快諾してくれただけなんだがな?

 

「世の中の偉いことは、変人が動かしてるってことだよ。」

 

「変人代表が何言ってんだか。」

 

この映画の撮影も佳境に入った。時系列としては始めの方だが、エキストラ含め、俳優・女優の息がもっとも合致した時期に取るのが一番だ。

ラストシーンが本当にラストになるとは、俺も思わなかったが。

 

「このラストシーンなんだが、俺は撃たれて死ぬわけだが、弾は何処から飛んでくるんだ?斜め後ろだが、敗軍の方向とは真逆なんだが。」

 

「ああ、そりゃアレだよ。よく言うだろ?歴史の修正力とかさ、そういう超常的な力?1度は使ってみたいじゃないか?」

 

まあ、現代人がタイムスリップしている時点で、超常的だがな。しかし、歴史の修正力か…。懐かしいな、もう12年も前か。

 

「そうだ、お前が撃たれるのを辞めさせろってアイちゃんから苦情が来てんだよ、個人的な奴だがな。身分違いの実るはずもなかった恋を描くのも、またいいじゃないか。」

 

「アイにも困ったものだな。共演だからって、結末を変えるわけにはいかないからな。元々〘身分差のある時代の、叶うはずのない夢物語〙がテーマなだけにね。」

 

彼女がどんな演技をしてくれるのか、非常に楽しみだ。

 

「確か、アイ視点の定点カメラと俺視点を同時に撮るんだろ?どうやるんだ?」

 

「それはお楽しみ。じゃあ、撮影に戻ってくれ。」

 

この仕事が終われば、みんなと一緒に何処かに行きたいな。後、アイとも個人的に、二人きりの時間を取ってやらないとな。そろそろ三人目も欲しい頃合いだろうから。

 

 

 

〜sideルビー〜

 

私がスカウトを受けた事務所から連絡が来た、曰く、所属タレントに対する引き抜きとも取れる言動に対する抗議が、来たという。それに伴い、スカウトの話を破棄するとの事を…。

 

目を疑った、私が何処かのプロダクションに所属している?何てことはあり得ない筈なのに、だって私の家族は私以外は全員何かしらの仕事をしていて。私だけ、今までオーディションとかで落ちてばかりだったから、そんな事ができなかった。

 

なのにだ、どうして今になって、私が所属している何ていう事が起こっているのだろうか。

誰がこんな事を、私の夢を邪魔するんだろう…。

お姉ちゃん?ううん、お姉ちゃんはこんな事絶対しない、罵倒とかしてくるけど、小学生の頃お互いの夢の話をしたときは応援してくれるって言ってたから。するとすれば…、

 

「ママとパパなの?どうして…」

 

1度はっきりと聞きたい、善は急げ。私の好きな言葉、急いで苺プロに向かった。

付いてみてミヤコさんに事の事情を説明した。私が何故苺プロの所属になっているのという疑問を。

 

「う〜んそれね、ちょっと待ってなさい?用意するものがあるから、その間はソラの相手してくれる?寝たばかりだから。」

 

ミヤコさんと壱護社長の間に産まれたお子さん、(ソラ)君二人の間に長らく出来なかった子供、パパが二人に休日を一ヶ月単位で取らせてつくった、結晶。

 

「あったわよ、貴女の契約書。」

 

これ、六歳のときの歌番組で1回B小町の曲をやったときのだ。「…一時契約だったって聞いてたんだけど。」

 

「あらそう?う〜ん、確かに内容的にはそうかもしれないわね、でもこれが更新されたのつい最近よ?知らない?」

 

そんなの聞いた事ない、じゃあまさか私がオーディションとか受けても審査とか通らなかったのって…

 

「貴女、色々な事務所にオーディション受けてたみたいだけど、これじゃあ落選するわね。だって、これじゃあ引き抜き行為だと思われるもの。でも、これ誰が…壱護は知ってるだろうけど、私にくらいちゃんと説明してほしいものね。これも、アレの件なのね。」

 

「え?じゃあ、パパもママも嘘ついてたの?みんなが皆で私を騙してたの?アレの件って何?」

 

心臓がギュッと締め付けられ、頭に血が登って行くのがわかる、怒りたい、でもミヤコさんに言っても無駄だ。だって、ミヤコさんは悪くないもん。パパとママが悪いもん

 

「苺プロがアイドル事業から撤退して、もう6年くらい経つのかしら?それで何だけどね、最近の家も経営が安定して中堅という立場でね?余裕がある時期に、もう一度アイドル事業に挑戦しようっていうプロジェクトよ。貴女はそこの第一候補にされてるってわけ、まさかと思うけど誰も説明してないの!?」

 

「初耳なんですけど!何?私ってなんか色々言われてないこととかあるの!?」

 

ミヤコさんが溜息をついてる、「アイツ等まったく」とか言ってるのを見るに、ミヤコさんは私の味方だ。

 

「よーく解ったわ。ルビーちゃん、後でアイツ等を怒ってあげるから、自分からは言わない事、良いかしら?」

 

「ありがとう。ミヤコさんだーいすき。」

 

これで私もアイドルとして、やっと一歩を踏み出せる!そして、ママやパパ、お姉ちゃんを見返してやるんだ!後でお婆ちゃんにも連絡しとこ〜っと。

 

 

 

〜sideアクア〜

 

「こんにちは〜」

 

事務所に帰った私の声が廊下に響く、何故か声が返って来ない。薄暗い廊下を歩いていくと、部屋に灯りがついているけど、何か入り難い。中からプレッシャーを感じる。

 

「失礼しま〜す…?」

 

中に入ると母様がソファーに座って項垂れ、ミヤコさんが対面に堂々と座し私を待っていた。

 

「アクア、ここに来て座りなさい。」

 

そう小さく言い放つミヤコさんの声には、逆らえない気迫が籠もっていた。

ソファーに座ると、小さくなっていた母様が私に目配せをする。援軍が来てくれたことを嬉しく思う仲間?違うこれは道連れだ!

 

「とりあえず二人が揃ったのね、嶺さんは?」

 

「もうそろそろ来ると思うんだけどねぇ…」

 

そんな話をしていると、父様が入ってきた。

 

「済まない遅れた、まだ話は始めて無いんだろ?」

 

「ええ、嶺さんが来るのを待ってました。」

 

バツの悪そうな顔でミヤコさんを見据える父、何かしらの対抗策を講じてそうだ。

 

「まずは皆お疲れ様、壱護は出先だからいないけど話を始めます。ルビーの件についてです。

新アイドル結成プロジェクトを、彼女に話したことのある人は、挙手して下さい。」

 

誰も手を挙げないのである、それはそうだ。まだ早いと思ってたから、ルビーが進学の話をする時に取っておきたいって母様が言ってたし。

父様も、母様に賛同してたみたいだし。

でもなんか、母様が汗を流してる。

 

「はぁ、どうして誰も言わないの?あの子心配で、今日ここに来てたんだから、まったく。あの子も、もうすぐ受験でしょ?あの子の今後を決めるのに、一番大切な事でしょ?」

 

「あの〜、それ言い忘れたの私なんだ〜、てへ。」

 

「アイだけじゃない。俺にも責任がある、仕事にかまけて説明しなかったんだから、弁解のしようもない。」

 

「私も、ル…アイツに言わなかった。ずっと色んな事務所に行ってたから、ルビーが真面目にやってるのに水差したくなくて。」

 

「あなた達ね〜」とか言われて呆れられてる。あぁ、家族だな〜って言うところだ。ルビーもこういう感じになったことがあるから、皆似た者同士。

 

「良いわ、私が言っといて上げたから。ただし、今後は直ぐにこういう人生の分岐点はきちんと教えてあげること。

嶺さんもアイも、育ちが特殊だから解らないかもしれないけど、普通はもっと深刻に思ってあげてね?」

 

皆揃って家へと帰る、父様の運転する車で。家に帰って父様が真っ先に謝り、何かを代償としてルビーから強請られていた。

母様は、ルビーに一日甘えても良い券をあげて、私は

 

「ルビー、黙っててごめんね。」

 

「ううん、皆忙しいから仕方ないよ。私だけだもん、仕事してないの。」

 

「ルビー、これあげる。」

 

私の一番大事なキーホルダー、かわいい雀のキーホルダー。小鳥コレクションの1つ。

 

「ありがとう、でもこれってペアルック何でしょ?じゃあこれでお揃いだね!」

 

妹の笑顔が見れて良かったけど、かなちゃんにあげたかった物が無くなっちゃった。小鮫コレクションをあげよう。

 

 

 




アッパレ!戦国大合戦は資料に良いね
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