虹の男と星の娘   作:丸亀導師

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第四十四話

[2025/8/6

 

全国的な鎮魂の日、世界的に見てこの鎮魂に意味はあるのか?

 

80年前この地に一つの火が灯り全てを焼き払った。だが、それも過去のこと、今この地に立つ男はそれを知りながらも一切の同情を見せず、ただただ淡々とその行事を執り行う。

 

その傍らにはいつも、一人の女の姿があった。顔面偏差値だけは高いのか、その顔は美しいと言える。女の歩き方はお世辞にも奇麗とは言えない、どちらかと言えば一般人のそれだろう。国事行為に出席することもあまり乗り気ではないのだろうことは、それを見れば明らかであるが、支える人物の為ならばと意気込みが見える。

 

その傍らにはいつも三人の子供がいる、きっと二人の結晶なのだろうことはそれだけでわかる。

彼女にとっての彼は、昔から付き合いのあった幼馴染であり、頼りのないただただ普通の平凡な男である。

 

そして、彼の最近の悩みは娘から〘薄情もの!軟弱者!父上の馬鹿、解らずや〙等と言われ、〘アクアちゃんとルビーちゃんの父上に謝れ!〙等と言われることである。]

 

 


 

 

 

〜sideアクア〜

 

君塚翼、奴は心を閉ざしているが、どうやら父様が言う上級者ではないようだ。

気をそらせれば、相手が次どの様に動くのか、奇策を読まれないようにするには、囮をどう配置するのか。

 

父様は酒の匂いをさせながら帰ってきて、直ぐ様私に言った。流石は役者といったところだ、酒の量を最低限にして相手だけに飲ませたみたいだった。

 

撮影の合間、アイツは私にちょっかいをかけるようになった、それは私へのマウントだとかそういう類ではない。

そう、なんと言えば良いのだろうか、気になる女子に何か嫌がらせをする男子小学生のような、何だこいつは。

 

互いに思考が読めないと、こうもなるのだな。互いに相手の出方を見なければならず、何をして良いのかさっぱりだ。なるほど、これが普通の感覚か、まるで目と耳を防がれたように、当たり前の物が出来なくなるというのは、こうも不自由な事か。だが、新鮮だな。最近は、力の抑えを緩めてたから尚更な。

 

そんな私と翼の行動は、視聴者には初々しいものを見るように映っているらしい。高校生になっても未だに小学生の恋愛を見ているように見える、そんな評判だ。

互いに意識しあっているのは事実であるが、それが恋かと言われればハッキリと違うと言える。

 

だが、彼のそれは私に対してというよりも、私の内面への攻撃なのだろうか。

私の無くなった記憶を引き出そうと、そうやってれば私を〘あの女〙、のような凍ったような女に出来るとでも思っているのかな?

 

というか、もしかするとコイツは前の私と接点があるのではないか?そうすれば、この力を持っているのも合点がいくというものだ。しかし、妙なのはまだ今のようにキャラが切り替わる前の翼君だった頃は確かに純粋さと誠実さを感じて、心にやましいものは何もなかったのだ。

 

だから、その切り替わりまでは感じていた彼の善性が偽物だとまでは私には思えなかった。母様の胸の中で泣き終わって感情を整理した後、奴への対策を授けてくれた父様にも改めて翼君からヤツに切り替わった際の出来事を伝えて相談してみたのだが、これには父様も思わず目を見開いて「そんなバカな…」と言って驚きを見せていた程。

 

私達と同じ力を持つ者同士では、時空を超えてありのままに共感しあうその性質上、心を隠すことはできても騙すことは不可能であると。父様そう言って

 

「どうやら彼の素性を調べただけでは足りないようだ。ちょっと相談しなきゃいけない相手が出来たから行ってくる」

 

と言って再び家を出て行ってしまった。こんな私達以外の人間に言っても信じてもらえないような出来事を相談できる相手なんているのか?……まさか父様には私とルビー以外にもこの力を持っている知り合いが他にいるのだろうか、そう考えれば説明がつく。

 

まったく父様も秘密主義はもういい加減にしてほしい……そんなんだから私も一人で戦うしかないと思い詰めてしまったっていうのに。

 

そんな思考を巡らせながら、乳繰り合う私達を傍から見るとどうなのだろう。好きあってると思うのだろうか?

あかねちゃんに聞いてみようか?心を見るんじゃなくて、言葉で聞けることは聞こう、一人で完結するのじゃなくて二人で共有すれば良い。

 

「ねぇあかねちゃん、ちょっと良い?」

 

「え?どうしたのマリンちゃん、翼君を置いて何処か行くの?」

 

「ちょっとした作戦会議、後。MEMちょもゆきもそこで見てるのバレバレなんだから!後で後悔させてあげるから、覚悟しておきなさい!さっ、行こっか。」

 

カメラマンが私達二人を追ってくる、父様が言うにはこういう相手を巻くには、頭の中に地図を描くのが良いと言ってた。

学校の中だからそんな事しても意味ないけど、今度練習してみようかな?

 

「えっと…それで話って何かな?」

 

「なぁ、今度撮影が終わったら私の家に遊びに来ないか?」

 

おお、耳まで顔を赤くしている、どうしたというのか彼女の反応は実に予想外だ。恥ずかしがっている、可愛い反応をするな。だが、根底には私の素性を知りたいと、そう言う心根が力をOFFにしていても分かるほど見える。

 

「私ずっと気になってたんだけどね?マリンちゃんってさ、実は女の子の事が好きなんじゃない?」

 

「私が?ハッ、好きって恋愛目的でってこと?いやいや、私はきちんと男が好きだ。と言っても、男性経験が皆無だからどういいのかなんて説明出来ないが。むしろ女同士の恋愛は絶対に勘弁してほしい。中学時代ちょっとそれで散々な目に……はぁ、話が逸れたから戻すよ。

 

予想が外れて戸惑ってない?プロファイリング、多用するのは良いけど相手に何やってるのか見られてやると、効果が減るよ?やるならもっと空想の人物をモデルにした方が、やりやすいと思うよ?

 

それと、ここだけの話、実は私はあかねちゃんを騙してた。本当は翼君のこと好きでもなんでも無い、ただ別の意味で気になっているだけなんだ。」

 

戸惑いと歓喜、想定していた私と今までの私とのギャップがあり過ぎたというところか、やっぱり私のことを彼女は探っていた。だが、彼女は裏がある様で、その実役作りに専念したいのだろう。

翼という人物がどういったものなのかということも、彼女は探っている。

 

共演者全員を良く観察し、真似ることで自らの役を作ろうとしているようだが、1から100まで真似る複製者としては私とかなちゃんでも太刀打ちできない程の天才でも、0から全てを創作する創造主としての才能は彼女にはない。情報を集めた上で、空想で他者を創り上げることを、穴を埋めることを得意とするか…。

 

だからこそ彼女の性質は危険だ、彼の事を追い過ぎれば消されてしまうかもしれない。私が巻き込んだのだ、だから私は彼女に知られないよう立ち振る舞う、態と私の素性を知らせればきっと彼女は、私以上に本来有るべき私を創り上げるだろう。

 

「別の意味?どういう事なのか解らないけど、それって言えないくらいの秘密なの?」

 

「ううん、言えなくはない。だけど、あんまり人に話しても良い顔はされないと思う。もしかすると、あかねちゃんは、私のことを嫌いになるかも知れない。

 

でも、私は友達としてあかねちゃんの、応援がしたいんだ。

この今ガチで爪痕を残せないと、舞台でも自分がパッとしない人間として終わるんじゃないか…なんて、そんな風に考えてるなんて誰も、ううん。翼君と私しかわかってない。」

 

自分を見透かされるのは、本当に嫌なことだよね?でも、だからこそ私は言おうと思う。

 

「翼君を振り向かせる方法、そういう役をあかねちゃんに創って貰いたいんだ。捻くれなかった、理想の私の姿を。」

 

 

 

 

〜sideあかね〜

 

 

星野アクア。

本名星野愛久愛海(アクアマリン)、2歳の時に五反田泰史監督のノミネート作品〘世にも奇妙な物語〙で子役として初デビューこの時から男子役をやってたと、コレは私よりもはやく映像作品に出たんだね。

 

その後は色んな作品に出てるみたいだけど、その中性的なルックスから度々男子役をやってる。第二次性徴期に入ると、一度撮影後に貧血で倒れてる。コレは、たぶん役に身体がついていってないんだね。でもその時の演技が映画評論家や大御所の監督とかの目に留まって、以後端役から脇役にステップアップしてる。

 

身長は170cm 体重66kg 身体自体は日本人男性の基準では標準的、でも日本人女性の基準では大柄であり、寧ろバストのサイズは人並み以上、体重が胸からのところもあるね、それが男性並みの身長と上手く合致したおかげで正に人体の黄金比を現わしている抜群のプロポーションだ。ホント羨ましいくらいだけど、こんなに有るのにやっぱり男役ばかりをやってる。

色んな人がいるけど、自分から異性が好きって言ってたしトランスじゃ無いと。私としても彼女がノーマルと聞いてホッとしたよ。

 

学生の頃には様々な行事を指導して、成績は常にトップ。全国共通テストでも、10本の指に入る。私よりも遥かに頭が良い、妹さんの方はそうでもないみたいだけど。

 

普段着は男物をよく着てたらしいけど、撮影現場への初日だけは清楚な少女らしい格好をしているから、たぶんそれなりの家柄。ファッションとかも意外にセンスがあって、高身長から裏打ちされた姿はファッションショーとかでいそう。

 

普段から自ら手作りしたお弁当とかを食べてる姿から、箸の使い方もフォークやナイフの使い方から、礼儀的な置き方。歩き方も歩幅まで全てを網羅している。

貴族とか上流階級とか、そんなお伽噺の世界の人たちかな?そのくらいのレベルだ。

 

ということは、家はそんなに悪くない。寧ろお嬢様というよりも、自己犠牲も厭わないその姿勢から気高き英国貴族かな?

そのくせ、部屋はファンシーなものもあるから…ノブレス・オブリージュを体現した貴族令嬢か…。

 

なんか掴みづらいな。

 

本人の話から、父親は俳優。それも俯瞰に基づく技巧型で何よりも即興から指示型まで幅広い演技力がある、台本を丸暗記出来るようなタイプでもあって、何より台本を違和感なく書き換えるほどの文才。

ただし、演技指導が下手である所から直感型と。

ほぼオールラウンダーね。役者としてのタイプは没入型の私とは正反対だけど、性格は彼女の話から推察するに、真面目で優しく誰にも分け隔てない、それでいて静かに怒るようなそんな人。

 

普通そういう人の子供なら結構有名になってないとおかしいのに、公表されてないそんな子供が彼女。

逆に考えよう、結婚と子供がいることを公表していて、交際相手を公表してない俳優…いるね。一人だけ、結構有名なんだけど誰も子供を知らない俳優、なるほど名馬の子供なんだ〘安室嶺〙がマリンちゃんのお父さんか〜。 

 

そうなるとかなりのお嬢様だよね、総資産額で言ったら。なんで俳優とかやってるのかわからない人だから、マリンちゃんも大物芸能人以外にも色んな財界人や政界人といったそういう人たちと合ってるはずだから、社交的な服装とか、礼儀作法とか、色々仕込まれているんだろうなぁ。

 

それでお母さんは誰かって話でもあるよね、この分だとどんな人でもお母さんは務まりそうだけど…どんな結婚したとかなんの情報もないし、そもそもマリンちゃんはなんで、星野姓?

星野…星野アイか…なるほど、サラブレッドだね。

 

星野アイって言えば、アイドルからマルチタレントに転身したっていう、若手の部類の女優なんだよね。

確か今年で32歳……いや、ちょっと常識的に考えろ。それだと16歳でマリンちゃん産むことになるから、法律上結婚年齢は18歳だからおかしいよね。

 

でも、16年前だと法律上はOKなのかな?それでも15歳でエッチしちゃったってことになるから///ちょっと早すぎじゃない?

 

でも、天才とかそういう人達って頭のネジがおかしかったりするらしいし、このくらいのことなら日常茶飯事何じゃないかな?

 

だからアイさんは私の見当違い…だったらいいんだけどなぁ。

まあ、私の脳内設定としてアイさんが16歳、安室さんが22歳の時に産まれた娘だとして、確か双子の妹さんもいるって言ってたから、それも入れてと。

 

ご両親は、どちらかと言うと幼少期から思春期にかけて結構苦労をしてきてるから、親としてはそんなに子供に苦労かけたくないだろうし、それなりに甘やかしてると仮定して。

 

ちょっとわがままだけど、社交的だから周囲に溶け込むことも技術としてあって、特に私達と合うときは猫を被ってるはず。まあ、基本的には今とそんな変わらないんだろうけど…何か引っかかるんだよな〜。理解が早すぎると言うか、もしかすると心が読めたり……そんな非科学的な事あるわけ無いっか。

 

よいしょっと、電気を付けて探偵ごっこは終わりにしてと。

よし!だいたいこんな感じだね、撮影日にちょっとやってみよ!

それで、答え合わせだよね。

 

 

 

〜sideルビー〜

 

 

うへぇ〜疲れたよ〜、ママたち元気過ぎ。アレで32歳とか私達の立場はどうなるの?

私は今教室の机に突っ伏している、身体の至る所が筋肉痛で正直このままじゃ死んでしまいそうだ。

誰か〜ダズげて~。

 

『また懲りずに授業中寝ちゃいそうだな〜』

 

「大丈夫かえ、ルビーちゃん。なんや、身体から疲れたよオーラが出てはるんやけど。」

 

「うー、そうなんだよ。最近マ…トレーナーさんたちが物凄く扱いてきて、このままだと身体がバラバラになっちゃいそうで。」

 

『アイドルになるのも大変そうだ。』

 

「そう言えば、アクアはんガチ恋と学校でかなり口調が違っとりはるけど、どないしたん?」

 

「男装に飽きたんだって、そりゃそうだよ。みなみちゃん見たいな、大っきい大砲持ってるんだよ?女の子したいんだよ。」

 

『確かに、言われてみればガチ恋のアクアちゃん胸あるもんね、私くらいありそう。そうだよね〜、私がアクアちゃんの立場だったらサラシがきつくて耐えられないと思う。でも、同い年で私くらい大きい人って始めて会ったから今度改めて色々話してみたいな。事務所の先輩たちとはどうしても年齢の上下関係があるし』

 

「そうやよね〜、女の子やもんね〜。」

 

うん……、お姉ちゃんの気持ち少し解ってきたかも。こんなに、解るとたぶん会話の中の正解を導き出した方が、諍いとかそういうの起きなくなるから、コレに頼り切りになるよね…。

 

お姉ちゃんもパパから力に依存しないようにっていう忠告にはいつもみたいに反発せず素直に従って、ガチ恋に出て一時期おかしくなっちゃうまでは学校では力をなるべくOFFにして、仕事場ではONにしても快不快が分かる程度に力をセーブしてたっていうから。私も二人を見習ってきちんと口に出そう。

 

「アレで運動神経も良いし、頭も良いんだよ?しかも昔習ったダンスも錆び付かせない為に時折思い出したかのように踊る程度の練習に止めているにも関わらず私並だし、特に歌に至っては元々音痴の私と違ってカラオケで百点満点を叩き出すんだもの、正直私に勝ち目ないよ、いや〜姉がアイドル目指さなくて良かった〜。」

 

「そないなこと言いてはりますと、言霊っちゅうもんで現実になりはりますよ。」

 

『可愛いのはルビーちゃんの方だから、アイドルとしては絶対に負けないと思う。あっちはどっちかと言うと奇麗さを活かした、ファッションモデル向きだし。胸が大きいから、ファッションモデルも出来ないかもだけど。ただ、もしアクアちゃんが私と同じグラビアアイドルになられた場合はとてもじゃないけど勝てる気しない。

 

それどころかノノン先輩やクレハ先輩といったウチのキャノンファイアの主力でも太刀打ちできるとは思えない。グラドルの世界にアクアちゃんが飛び込んでくれば間違いなくカリスマ化は待ったなしだよ……その辺についても今度聞いてみようかな』

 

確かにカッコよさと奇麗さ、そして色気では叶わないよ、でも可愛さと親しみやすさなら私は絶対に負けない自信はある。けど、お姉ちゃんのキャラクターとしての最大の武器であるあのギャップ萌えには勝てるかな。う〜ん正直不安になってきた。

 

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