虹の男と星の娘   作:丸亀導師

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第四十五話

[2025/10/31

夜の帳が下りる、人々は思い思いの服装で街へと出掛けていく。ある人はゾンビのような、ある人は狼男だろうか。中には派手に何やらロボットのような格好まで、多種多様である。

 

今日はハロウィン、本来の意味はお盆と同じ様に死者が家にやってくる、返ってくるというものだ。それ故に家に入れる場合は機嫌を損なわぬように、手厚いご褒美を与えるというものだった筈だ。

 

だが、この国では違う。元より異国の文化、そんなに深い意味があるなんて知らないし、皆が楽しければ別に良い。ドンチャンドンチャン大騒ぎ、その姿は元のハロウィンというよりは、百鬼夜行が最も似合う姿であろう。

そしてそれは、とある一家でもまた起きていた。

 

「「「ハッピーハロウィーン☆彡」」」

 

木霊する声、困惑する男と初老の女。目の前にいるのは痴女と猫又姿の双子である。

男は大きく溜息を吐いて言った

 

「ここが家の中で良かった。アイ、トリックとトリートどっちが良い?」

男は少し怒っている、そんな格好誰かに見られたらどうするんだと、自分だけならまだしも母親の目の前でそんな格好良くできるな、と。

 

「子供の情操教育によろしく無い、トリックを決行する」

 

そして絶叫とともに、夜は更けていった。]

 

 


 

 

〜sideアクア〜

 

今日の撮影も終了、結局のところ翼という存在がいまいち掴めないまま、この番組の収録も折り返し地点を超えた。

今のところ、私と翼の関係は視聴者にとっては良い箸休め程度の評判になっているという。エゴサをあまりしたことがないから、正直解りかねる。

 

夕陽が沈む教室で私は一人黄昏れていた、このままでも良いのかもしれないと。無理に答えを引き出さなくても、現状維持を心掛けていれば悪い方向には進むことはない。

何事もなく行けば、それはそれで良いのだと。

 

そう思案に耽っていると

 

コンコン

 

と教室の戸を叩く音がした。振り向くとそこには森本ケンゴ、彼がいた。案外私も気が付かないものだ、敵意または悪意と父様が言ったがそれを持つ相手程解りやすいものはないと。

逆にこういう何も無い時には、気が付きにくいものなのだろう。

 

「どうしたんだ?こんな時間に一人で黄昏れて。」

 

「なんでも無い。翼君の相手って大変だなってそう思ってただけだよ。」

 

「そりゃ大変だろうな、悪気はないのは分かるけどアイツ子供っぽいところがあるから、俺が止めないとアイツお前にずっと付き纏うからな…。そうだ、ちょっと端末貸して。」

 

彼は徐ろにそう言ってスマホを手に取っていた。どうやら私のそれに何かをしようとしているのだろう、その言葉に無為な警戒は必要ないと思い、言葉に従って手渡した。

何やら操作しているが、どういう事をしているのか。

 

「返すよ、俺の好きな曲を入れておいた。何か悩んでるみたいだったから、お前にやるよ。何かに迷ったときとか、解らない時とかに聴くと、心が少し穏やかになれると思う。」

 

「ありがとう。でも良いの?そういうのって、好きな人とかにやったほうが良いんじゃない?」

 

彼の心は霞がかって良く見えない、彼も悩んでいるのだろうか?心の靄くらいなら私が少し力を入れれば払っていつものようにのぞき込むことは出来るが、この靄はなんかそんな興味本位で払っていけない気がする。なんだろうか、私も悪い気はしない。なら、無理に払う必要はないだろう。

 

「いや、特にそういうのは無いな。後で感想を聴かせてくれ、礼はいらないからな。」

 

「そう…解った。じゃあ、また合った時で良い?感想。」

 

彼は静かに肯定した、その後直ぐに教室を出ていった。

私はそっとイヤホンを耳に繋げて、それを聞く。バンドマンだとか言っていたから、激しめの音楽だと思ったのに、案外優しいものを作るじゃないか。歌も無いのに、天候のような移り変わる物最後には満月のような静けさが心に染みてくるそんな音楽だ。

 

 

……

 

 

「って事があったんだけど…、どうしたの皆?」

 

「いや、だってそれ告白見たいなものじゃん、えぇ何時そこまで進展したの!」

 

「ゆき、それは誤解だよ。別に接点とかあったわけじゃない、そう…翼にちょっかい出された時に、少し助けてもらったりとか有るくらいでさ?そんなに不思議な事でもないでしょ?」

 

あかねちゃんも顔を赤くして、彼は別にそこまで考えて無いだろ?アレだよ、仲間だと思っているんじゃないか?ボッチ仲間。

 

「マリリン甘い、その考えは甘いよ。男の子というものは、自分の心に素直になれない生き物なんだ、だからそうやって何か形として残してくるものなのさ!なんてね。」

 

「そういうものなのか?恋愛なんて興味なかったんだけど、友達が欲しいなぁって位の気持ちで、この今ガチに出演したから…何だろう良くわからない。」

 

「ねぇ、じゃあ翼君のことどう思ってるの?」

 

あかねちゃん、その質問の答えなんて決まってるだろ?

 

「最初の頃はからかって興味ある風に見せてたけど。彼、私にマジになってるみたいなんだよね、ただ気になるところもあって…

ちょっと皆、耳かして?良い?アレは、何か変だよ。そう、まるで二重人格みたいに……最初の頃のような温和な雰囲気を漂わせていた時の翼君ならおそらく問題ないからこれまで通り接してあげて欲しい。けど、今の翼君みたいな雰囲気に変わった時は気を付けた方がいい。何されるか解らないから。」

 

皆大袈裟だよとか、そういうのは良くないよとか言うが、アイツは本当におかしい。私の中の誰かに呼びかけているような、そんな感覚がある。さっき気が付いたが、アレは〘私〙を知っている、きっとそうだ身近にいたのかも知れない。でも思い出したくない。それを知ったら、私は私じゃ無くなるんじゃないかなって。

 

父様と母様に相談したい。

 

 

 

 

 

〜sideあかね〜

 

 

 

この前マリンちゃんから土曜撮影が終わったら、パジャマパーティーをしようって誘われて、ゆきも参加したいって言ってたもんで、二人でマリンちゃんの自宅に来ています。本当はMEMさんも誘ったんだけど、流石は有名YouTuber、忙しいらしいので今回は来れないようです。マリンちゃんのお友達も一緒に誘っているって事だから、どんな子が来るのか楽しみ。

 

陽東高校に通ってるって言ってたけど結構近いんだね、検索した住所の通りに来てるんだけど…、なんだろうGPSが壊れてるのかな?ここって、俳優〘安室嶺〙の自宅って書いてあるんだけどさ…私の推理もしかして当たってたりするのかな?

ってことは、私のやってることストーカー行為にならない?

 

「ねぇ、本当にここがマリンちゃんの家?豪邸なんだけど、あの子、父様母様言ってたから本当に上流階級の子だったってこと?

良いのかな、私達なんかがお邪魔して。」

 

「ど、どうなんだろうね。」

 

何故だろう、汗が流れてくる。目の前にあるのは2mを超える大きな塀に囲まれた4階建て家、敷地面積は100坪以上は下らないんじゃ……こんなに立派な家、一般住宅じゃないよ。どう見ても上流じゃない。執事とかもいたりするんだろうか、いや流石に四宮家や四条家といった四大財閥程じゃないけど、でもだよ?無断でチャイムなんか押したらどうなるんだろ。

 

「アレ?家に何か御用ですか?」

 

門の前で固まってしまっていたところを後ろから声を掛けられた、金髪で紅玉色の特徴的な瞳。私達と同じくらいの背と愛くるしいお顔。

写真の通りの瑠美衣(ルビー)ちゃん。マリンちゃんの妹だ!

 

「えっと、マリンちゃん…愛久愛海さんに、今日お泊りしない?と誘われたので、ナビで来たんですけど、ここであってますか!」

 

「お姉ちゃんの友達の人……お姉ちゃんの友達!!うわっやった。お姉ちゃんにも遂に、遂に友達が出来たんだね。妹の私も嬉しいよ!」

 

本人から聞いてたけど、想像以上に友達がいなかったんだね。私も人の事言えないけど、それでも社交的なんだから四人くらいは…

 

「いるわけないじゃん、だってあの傑物ぶりと性格だよ?美人で頭良いけど直ぐに周囲の人は仲良くなるのを通り越して従っちゃうんだよ。」

 

なんだろう、今心を読まれたのかな?いやいや、気の所為気の所為、そんな事出来るわけ…

 

「(いけない!)そうそう、心を読むなんて出来るわけ無いよ!勘違いなんだよ、でもこんなところで待ってても埒あかないから、家に入らない?」

 

ゾワゾワっと脚から頭の天辺まで、鳥肌が立つ。

見透かされるとか、そんなレベルじゃない。これはちょっとどころか、マジ者のヤバい案件だって。

 

そこにまた来客だろうか長身で容姿端麗な成人男性が現れた、アレは…安室嶺

 

「ルビーどうしたんだ家に入らずに…。うん?君達は…そうかアクアの。娘がいつもお世話になっています。」

 

「コッこちらこそ、お世話になっております。黒川あかねです。」

 

「鷲見ゆきです。」

 

「うん、そうか。すまないね、まだアクアは帰ってきてないよう(・・・・・・・・・・・・・・・)なんだ。」

 

「……うん、そうなんだ。ちょっと用事があるって言ってたよ。」

 

うん?さっき来たばっかだよね、私達説明してないけど。会話だって今そんなにしてないし、そんな間柄でもないのにどうなってるの?

 

「まあ、ここで立ち話も何だしあがって。お茶菓子も出そう。

アクアの友達とは、想像以上に良い関係のようだね。俺も嬉しいよ。」

 

 

………

 

 

マリンちゃんのお父さんに案内され、一般住宅にはありえないエントランスホールを抜けて広いダークな色みで纏められたリビング…パッと見た所70畳くらいはあるかも…床も石材式で家というより高級ホテルのロビーみたい。そんな案内されたリビングの真ん中にある見ただけで分かる高級そうなテーブルとソファーにゆきと一緒に座って待っていると自らお茶菓子を運んできてくれたマリンちゃんのお父さんが本物の執事顔負けの上品な動作で目の前に置いてくれる……うわぁ、私の好きなお菓子が出て来たけど…ゆきも好きなお菓子なんだろうなぁ。

家も凄いけどおもてなしも凄いなぁ~…なんで解るんだろう〜(お目々グルグル)

じゃなくて、やっぱりおかしいよね確かに100点満点。紅茶も美味しいし、このビスケットだって紅茶に良く合うんだ。それなのに、それなのに。どうして、私達の好みを知ってるの?誰かに聞いたの?

 

「娘から良く、君等の事を聞くよ(喋っているわけではない)。君等のお陰で彼女も、やっとまともな友人を持てたと思う。」

 

「マリ…娘さんは、そんなに友達がいないのでしょうか。あんなにも明るく、周囲との話も結構饒舌な彼女がそんなにも。」

 

どうしてだろうか、マリンちゃんが友達に括ってるのってそんなにも欲しい物ということなんだろうけど、今の彼女を見ても友達がいないなんて思えないのに。

 

「それは俺よりもルビーの方がよく知ってると思うが、優秀すぎるのも考えものだと言うことだよ。彼女は俺に良く似て周囲を惹き付けるのは上手だけど、溶け込むのが下手なんだ。ルビーとは真逆だよ」

 

いやいや、貴方ほどの役者がそんな事無いと思いますよ。だってそれだったら、脇役とかも出来ないでしょう。それにマリンちゃんもあなたのマクベスの一人芝居を観たのが切っ掛けで役者になったって。

 

「君の考えも最もだ。だが、彼女は自分を見せるのが下手でね、実はなりたい自分がないんだ。あの子が役者をやってるのは確かに俺の影響なんだが、あの子のそれは…言い方が悪くなってしまうが刷り込みに等しいのさ。

 

生まれたての鳥の雛が始めて見たものが何であろうと親だと思い込むように、あの子も物心つくかつかないかの頃に俺の演技を見たからそれに倣い添う形で役者の道を突き進んでいるんだ。

 

別にそれは悪いことではないんだが、問題は役者になってその先に何を得たいのかってのが欠けているんだよ。このままでは仮に役者の頂点にたどり着いたとしても待っているのは虚しさけだだ。

 

そうなってしまったらそこから先のあの子の人生が停滞して、やがて迷走してしまう。だから俺はいつも本当にこのままでいいのか?もっと色んなことに挑戦してもいいし、別の道を見つけたっていいんだと言っているんだが、言っているんだが頑固な性分からまともに聞いてもらえなくてね。

 

加えて俺と妻が仕事柄、多くの人を喜ばせる光景と同時に幼くして芸能界に足を踏み入れたせいで人間のエゴを始めとした心の闇を良くも悪くも見てきた影響から、誰かの為に都合のいい自分を見せる。

 

そうしていれば周囲は満足するからそれでいいだろう誰も困らない、そう考えたあの子は恵まれた桁外れのポテンシャルの高さで普通の人間ではまず挫折や妥協せざるえないようなことを打破出来てしまったものだから、今みたいなごく一部の人間を除いて自分の弱さを決して見せない子に育ってしまった。

 

だからこそ、君等のような友人は彼女にとってかけがえのないものになるはずなんだ。

あかねちゃんだったかな?君の知り合いとも友達なんだ、だから仲良くしてあげて欲しい。友人同士が啀み合っているのを見たくはないはずだから。」

 

よく子供の事を考えてるんだと思うけど、過保護だなぁ。

 

「さて、そろそろか。ルビー」

 

「何?う〜ん、そろそろお姉ちゃん、みなみちゃんと先輩と一緒に来るはずだから、お願いして良い?」

 

「そうだね、書斎に籠もっているよ。彼女もきっとアクアの友達と会いたいだろうし、帰ってきたら俺を呼んでくれ。」

 

凄いね、この会話。断片的過ぎて何を言ってるのか考えが追いつかないんだけど。

 

「あの…俳優の安室嶺さんが、マリンちゃんのお父さんで良いんですよね?あの…私達がゴシップに売らないって確証があるんですか?」

 

ゆき、それ凄い攻めてるけどそれ言っちゃうと本当に危ないと思うだ。

 

「ルビーやアクアが信頼している人がそんな事するわけ無いだろ?そういうことだ。」

 

子煩悩ここに極まれり、そこまで自分の子供を信じられる大人って滅多にいないよ。

 

 

 

 

 

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