虹の男と星の娘   作:丸亀導師

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輝き始まる星たち
第五十一話


[2026/7/7

全国一斉七夕デー

浴衣を着た10歳前後の姉妹が田舎の商店街を歩いている。 

シャッター通りと言われたその道は、観光促進によって20世紀の活気を取り戻していた。

一つ一つの店舗の大きさは嘗てよりも大きく、距離は嘗てよりは短いが値段はショッピングモール並み。それだけでなく、ご当地の小料理屋や一流の服飾店が並ぶ。

 

姉妹と一緒に歩くのは、同じく浴衣を着た初老の女。孫を伴いその道を歩く姿は実に微笑ましい。実際、女は微笑み幸せを噛み締めている。

 

「「おばあちゃん(お祖母様)!あれ買って(下さい)!ママ(母様)買ってくれないの!」」

 

女は微笑んで財布を懐から出すと、孫に言われたものを2つホイホイと買ってしまう。後からきっと怒られるに違いないのに、どうしても、孫の笑顔を見たいがゆえに買ってしまうのが祖母の宿命か…

 

二人から目を話す事はできない、嘗て自らが捨てた娘とは違い、彼女等の笑顔を護るのがせめてもの贖罪か…久し振りに短冊に願いを書こう、こんな〘普通な生活が長く続きますように〙

と…]

 

 

 


 

〜sideアクア〜

 

「カンパ〜イ」

 

という音頭と共に、今ガチのクランクアップを祝う。各々が食事を始め、話を始める。

私は、野菜をお皿に盛り付けそれを主食に少しずつ飲み物を飲みながらそれを眺める。

 

一昨日、この身に入れた物の形が未だに心地よい余韻を身体に刻みつけている、私が誰かの女になった証。誰かに見られれば、きっと二人共破滅の道を歩むのではないかと、そういう背徳感とそれでも私を求めてくれる多幸感に、今でも身体がゾクゾクする。

想像しただけで、下腹部が熱くなる。

 

「マリン、ちゃんと食べてる?」

 

「え?えぇ、あかねちゃんこそ食べてるの?私はこの時間帯だから、野菜を中心にしてるよ⤴。今日あまの現場よりも、こっちの方が色々メニューあるから、美味しいものもいっぱいあると思う。私のオススメは杏仁豆腐、あの味好きなんだよ♪。」

 

あかねちゃん…一応の私の彼女みたいな事になってるけど、実質親友って枠組。一夜を共にしてもいいけど、私もまだ経験浅いしあかねちゃんに至っては経験ないと思うから、もうちょっと待ってね?

ケンゴ君とは少しずつ会って行って、その都度経験を積むから、そしたらリードしてあげるからね?……いやいやいや!!待て待て待て!!危うくまた禁断の扉に手を掛けてしまうところだった!女同士の恋愛はあの中学の出来事で懲り懲りになったはずだろ!!

 

クソッ!翼への対策の為に私達も徹底的にこの感情を力と技術を用いて強引に刷り込むしかなかったから、後遺症が思ったよりも酷い。これまでは適応型の演技をしてきたが、これが憑依型の演技か…あかねちゃんはこれをずっとやってきたんだなぁ……改めて彼女の才能の凄さが分かる。

しかし、翼の器の穴はまだ完全には塞がっていない以上、ここで辞めれば君塚翼という器に注いだマシュマー・セロをモデルとした人格は器に空いている穴から流れ落ちる形で自然消滅していき、やがて彼は元の危険人物に逆戻りしてしまう。

 

何とか、穴を塞いで現在の人格が固定化して安定するまでは、この私とあかねちゃんは感情とキャラクター性を維持しなければならない……私たちがおかしくなるのが先か君塚翼が安定するのが先か……あとで父様とハマーンも交えてこちらの対策も考えないと。

さもないと最悪、かなちゃん達にもこれまでのように接することができなくなる可能性がある!

 

「この前の言ったさ本当の事を教えてって話覚えてる?」

 

「勿論覚えてるよ、流石にこんなに人がいる場所じゃ駄目だけど、そうだなぁ。私の家族か、かなちゃんがいる場所なら教えてあげられるよ?」

 

あかねちゃんの顔が少し訝しんだものへと変わった、かなちゃんというキーワード、彼女等には浅からぬ因縁がある。

実は私にもある。正確には父様と劇団ララライにだけど、あかねちゃんはそれを忘れてると思う。実際、父様とあったときは俳優の安室嶺くらいにしか思ってなかったし。

 

「ふぅん。なんでかなちゃんがそこで出てくるのか解らかないけど、重要人物なら私もあってやらなくはないかな?

貴女の家に行った時色々聞こうとしたけど、かなちゃんは何も教えてくれなかったし、良い加減終わりにしたいし。」

 

「じゃあ、3日後どう?かなちゃんも時間あるって言ってたし、父様と母様は仕事でいないけど、ルビーはいるから四人で話をしよ?後はそっちの学校と仕事の都合でね?」

 

あかねちゃんは、かなちゃんと同じ。私には無いものを持ってるし、力が無くてもこんなにも私を信用しようとしてる。それに、もう1段階進む位置にいるんだから、教えても平気だよね?

 

 

……

 

あかねちゃんと離れて暫くプラプラとしている、明日は早いからとあかねちゃんは返ってしまった。ケンゴ君も明日に向けて直ぐ帰っちゃったし、今度の休みのデートの約束は取り付けたけど。

翼はそもそも打ち上げに来てないし。

ゆきとノブも、二人で何処かに行ってしまったしシケこんでるのかもなんて…流石にそこまでリスクは背負えないよね?私と違って。

鏑木Pは………どこ行った!企画担当、自由だな!

 

おやぁ?MEMちょが一人寂しくご飯を摘んでる。手に持ってるのは、アルコール飲料かな?シャンパンかもしれないね、黄金に輝き気泡を立たせてるそれ、ビールとはまた違う果実の香り。あ、普通に炭酸ジュースだ。

 

「一人でどうしたんですか?MEMちょ先輩!寂しくご飯なんて食べてないでさ、二人で食べようよ。」

 

「んにゅ?マリリン、皆帰っちゃったけどこんな時間まで大丈夫?まだ未成年なのに、ご両親も心配するんじゃない?」

 

やっぱりね、隠し事が上手いこと。母様程でないにせよ、嘘の力を知ってる。いや、知っちゃったっていうのが正しいのかな?

凄くしっかりしてる人、どこまでが計算だったんだろうね、年齢詐欺も含めて番組にいた誰よりも嘘が上手かった。

私や翼よりも、とても自然で気が付き辛い。

でも、初見であった父様は解ってたみたいだけど。

 

「大丈夫だよ、まだ門限じゃないし。それに、MEMちょだって、そうなんじゃないの?未成年が深夜までいるなんて、駄目だと思うんだけどなぁ。」

 

「にゃはは…私は大丈夫なんだよねぇ…。じゃあお姉さんが家まで送ってしんぜよう、それでお会い子ってことでどうかな?」

 

私は微笑んで、それを了承した。

道中補導員がいたけれど、何故かMEMちょは気にする素振りもなくそれらを素通りし、

 

「この子、家に送っていく途中ですので。」

 

と大人な対応をしていた。

 

「やっぱり、大人なんですね…なんとなく解ってはいましたけど。」

 

「流石はマリリンってところかな?掛けに出たねぇ…この時間帯だと逆に補導員がいるから、誰かが付き添わなきゃいけない。かと言って、周囲の連中は酒浸りだからアルコールを入れて無くて、正常な判断を出来る大人に自然と君を任せることが出来る…つまり私になるわけって事か…。なんか嫌味だねぇ…」

 

何か…悪い事しちゃったかな。少しでも未成年のように見せようと頑張ってたけど、私が残ったから帰り辛くなっちゃって、最終的にはこうやって行かざる負えなくした。流石に少し負い目があるね。優しい人だから。

 

「流石は2ndライブ世代は違うねぇ、私みたいな1stライブ世代と違って…余裕があるよ。」

 

「それってどういう?」

 

本当に解らない、この人無意識に言ってるねこれたぶん本心だろうけど。

 

「フフ、私達の業界用語。B小町が1stドーム公演を行った12年前からファンやってたのが1stライブ世代。

引退ライブとなった、2ndドーム公演やった6年前が2ndライブ世代。ってね、最近の子は知らないだろうけど。」

 

あぁ〜、なるほどね。そりゃ違和感あるわけだよね、最低でサバ読んでるのかな…。私に対しても嫉妬の感情が見えるね、それにこれは未練かな?アイドルになりたかった…って、そうなんだB小町に憧れがあってか…。迷惑かけちゃったし、ここはお詫びも兼ねて人肌脱ぎますか。

 

「ねぇ、MEMさんはさ今日まだ予定とかあるの?良かったらなんだけど、この前家に泊まりに来れなかったし、夜も更けてきてるから泊まっていかない?」

 

「うにゅ〜、そうだね〜。まぁ、良いけどね?録画したのを自動配信にしてあるから、今日はこの後空いてるし。お言葉に甘えても良いのかな?」

 

私は笑う、彼女が来てくれることを精一杯に祝って。

 

 

 

〜sideMEM〜

 

高校生のお言葉に甘えて家に泊めてもらう、25歳の大人か〜。全くと言って良いくらいに威厳がないね。

にしてもこの子、出来てる子だよね。私が同い年の頃は、ここまで前を見て進んでたかな?進んでたいと思いたいよね。

 

アイドルを目指してオーディションを受けて、必死にレッスンとかも歌の練習とかもしたあの日々、今になると懐かしいものがある。最近では歌枠配信くらいで、歌なんて下手でも皆に受けるから、まともな練習もしてない。ダンスくらいだよ、マジで練習してるの。

 

夢は諦めちゃったけど、今はこうして暮らしていけるから、少しは満足できてるよね?これは妥協じゃないって胸を張れるよね?

自分に嘘を付いてるんじゃないかって、偶に思うことはあるけどそれでもアイドル(・・・・)みたいな事できてるからさ…。

 

「とうちゃーく、ここが私のお家です。どうですか?とても立派でしょ、父様が一代でここまで築き上げたんですよ!」

 

考え事してたら、いつの間にか目的地に着いてた。それにしても本当に大きな家だな…動画映えしそう。この子は親というか、境遇に恵まれてる。この子にとっての当たり前は、私にとっては手に入れたくても入れられなかった環境…羨ましいね。もし、同じ様な環境だったら私もアイドルに成れてたのかな?

 

「「ただいま〜(おじゃましま〜す)」」

 

お・か・え・り!アクア!こんな時間まで戻らないなんてお母さん心配したんだから!それに遅くなるなら連絡くらい…あれ?MEMちゃん?始めまして〜アクアのお母さんの星野アイです。いつも配信見てるよ〜。」

 

えぇぇ?星野アイ?元B小町の、あの星野アイ!!!なんで、えっとそっかどうして今まで気が付かなかったんだろ。

ラストライブのとき、確か言ってたじゃん。《結婚してるし、子供もいる》って、なんで忘れてたって言うか…あれ~?

確か、マリリンが16歳でアイが公式で32歳って事だから…えっ?嘘っ!16歳の頃に産まれた子供!マジッ、ヤッベこんなのスキャンダルじゃん。どうするよ私、誰も知らないような事知っちゃったじゃん!

 

「お姉ちゃんおかえり〜。あっMEMちょだ!ねぇねぇ握手して、やったーこれでまた推しの一人と手を繋ぐって夢叶えたぞ〜。」

 

この娘、マリリンが倒れた時の撮影の時にいた娘だよね…名前知らなかったけど、もしかしてマリリンの妹?

 

「あ、えっと。私、アクアの妹の星野 瑠美衣です。姉がいつもお世話になっております。気軽にルビーって呼んで下さい!後、一応苺プロでアイドルやってます!よろしく!」

 

なんか…色んな事がいっぺんに起きて、ワケワカメだよ。今日って、エイプリルフールじゃないよね?これ以上の事が起きたら、キャパオーバーで頭が沸騰しちゃうよ!

でも、この規模の家。アイさんなら納得しちゃうかもな。

 

「父様は?今日帰ってくるって言ってたよね?」

 

「ごめんね〜、たぶんアクアと入れ替わりで鏑木Pと新企画のドラマの話をしに行っちゃってさ、帰ってくるのたぶん0時くらいになっちゃうって…。

ま、玄関で立ち話も何だし入って入って。」

 

お父さん…こっち側の人なんだ。しかも鏑木さんと対等に仕事の話できる人だから、界隈だと結構の知名度持ってる人なんだろうなぁ。

 

こ、このソファ。高級雑貨店のだ。確かキャン○スの時価総額200万円を超える…そしてこのソファのあるリビング広すぎ!叫べば声が響きそうだし、内装も高級ホテルのそれに等しいし一軒家ってレベルじゃない……相当金持ちだよこの家!ヤバい、汗流したく無いのに出てきちゃうぞ!

 

「はい、どうぞ。ゆっくりしてってね。今お風呂沸かしてるからね〜。MEMちゃん、唐突にだけどなんかお困りのご様子で?出来れば相談に乗ってあげるよ?」

 

「い、いえ畏れ多いですよ。私なんかが、大物タレントのアイさんに相談」アイドルになりたかった。」え?」

 

何を言っているのか解らない、アイドルなんて私が成れるわけ無いのに、だってもう25歳のババアなんだから。そんな夢、叶うはず

 

「25歳だからって、夢を諦めたいけど諦めきれないんでしょ?

コレ、MEMちゃんの願書だよね?」

 

そうやって私に見せてきたのは、6年前最後の挑戦だって。お母さんの看病の合間に送った最後の一通その、破れた願いが込められた苺プロへの願書だ…。今更、こんなの見せてきたって私にはもう…

 

「今さっきさ、ルビーがアイドルだって言ったでしょ?実はね、今定員割れしちゃってるんだよね?だからさ、」

 

そう言うと、私の前に白紙の願書が置かれた。

どういう事?私にやれと?夢を破っておいて今更、私に成れという事か?

さっきまで冷静だった頭が急に怒りで沸騰しそうになる、なんでもっと早く来れなかったんだろう、そうしたらきっと……

あれ?涙が出てくる、悔し涙?それとも…

 

「夢、諦めきれないんだよね?6年前、私が立った舞台。私が引退した舞台に、貴女は立ちたかった。これが本当の最後のチャンス。貴女の事、ちゃんと見てたから。貴女のチャンネルを通して、貴女のことを。どうする?このチャンス、手に取る?それとも…」

 

私はどうすれば良いのかな?

 

 

 

〜sideアムロ〜

 

「それで?これがそのドラマの脚本か…第一回目の撮影は…

イタキ島?おい、まさかと思うがコレ海外ロケがあるやつなのか?」

 

「そうなんだよ、いや〜。身長もあって、それなりの体格で尚且つ身体能力の高い俳優なんて、君くらいのものだからさどうやって撮ろうか迷っていたんだけど。いやー良かった。」

 

元SASサバイバル教官の大学非常勤講師 

 

「だから俺が貴方に持ちかけた時、喜んでいたのか。正直に言って以外ですよ。顔で選ぶと定評の貴方が、そこまで固執するなんて…」

 

「実写で撮るなんて殆ど無理だろ?どんな俳優だって、そこまで専門的な戦い方は出来ないし、軍隊格闘を知ってて尚且つ殺陣も出来る。おまけに特殊部隊員並みにタフな君だからこそだよ!

これで予算は通る、晴れて私の夢を叶えられるってわけさ!」

 

これは…アイに怒られそうだ。また海外ロケなんてやったら、今度こそ本気で泣きついてきて、おまけに付いてくるって言いかねない…。どうしたものかな?いっその事、俺達のことを公表したほうが早いか?

 

「因みに5ヶ国語対応の作品だから、そこよろしく頼むよ。」

 

喋れない訳じゃないが…イヤにグローバルな企画だな、これは裏があるな。スポンサーが誰になるのか気になるところだな。とりあえず、用心をしておくに越したことはないか。

 

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