虹の男と星の娘   作:丸亀導師

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第五十六話

[2029/6/3

関西のとあるテレビ局、京○の大○ビジネスパークで撮影される。とある討論番組、様々な論客を呼びある事ない事に対して、それぞれの意見を言い合う。

そ○までいって委員○、本日のテーマは現実味の無い話。

 

「はい、始まりました、そこまでい○て委員会。本日特別ゲストには、俳優で発明家にして素粒子物理学者の安室嶺さんに来ていただいております。

それと、五反田監督ねよろしく。」

 

「いや、俺の扱い軽くないですか!五反田泰史です、よろしくお願いします!」

 

「はい、今日はよろしくお願いします。」

 

ゲストの彼等は周囲の人物と比べれば若い部類に入る。

 

「あのー一つの良いですか…今日のテーマって現実味の無い話なんですよね。もう、ここにっふいるじゃないですか、現実味のない俳優兼発明家兼素粒子物理学者っていう、一番現実味のない人が。」

 

「そう、何だよね。そう言えば風のうわさで聞いたんだけど、アカデミー賞受賞おめでとうございます。な・ん・で・す・が、受賞式見事に欠席したって話、特にテレビとかニュースで報道されたんですけど、どうして参加なさらなかったんですか?」

 

彼はしばし考える、正直に家族のことを話すべきか。少しオブラートに包むべきか。彼の選択は。

 

「私用ですね、というよりも。自分結婚して子供がいると以前発表していたんですが。実はこの前、小学校の卒業式と中学校の入学式に行っていまして。それで、授賞式を欠席したんです。

アカデミー賞なんて、これからの人生でまだ取る事は可能でしょうから、子供の成長を実感するほうが大切だと思いまして…」

 

にこやかに笑う彼の顔は、お茶の間に衝撃を与えた。いつも役にのめり込み生真面目に語り、堅物を思わせる彼が顔を綻ばせる。人間味があるその一面を見た、視聴者たちに名誉よりも家族を重んずるその姿勢は彼への好印象を抱かせることに成功し、それは決して悪いことじゃなかった。

 

「もう一つ質問いいですか?戦闘機で航空自衛隊と在日アメリカ空軍の両軍を相手に模擬空戦やって、パイロットに勝ったって本当ですか?」

 

「それですか?勝ったと言っても所詮は模擬空戦です、一個編隊がそもそも格闘戦で1機に群がることなんてないでしょ?一応勝ちましたけど、結構楽しかったですよ。」

 

彼の頭のネジは外れているのかと、そう思われた。後に偶々現場を訪れていた元総理大臣の大君清一郎ともシュミュレーター

(流石に彼の立場上実機によるものは認めてもらえなかった為)で対戦し、常軌を逸したレベルの空中戦を互いに一歩も譲らぬ互角の激戦を繰り広げたことから両軍のエースパイロット達でさえ放心状態にしてしまったという。]

 

 

 


 

〜sideアクア〜

 

「あ〜!アクア!どうしてここに…横の人誰かな?この前家に読んだ人の中にはいなかったよね、でも今ガチにいたよね。えっと、ちょっと待ってね今思い出すから…。う〜んと、え〜と、け・け・けんた君?じゃなかった、えっとそうかケンゴ君だったね。いや〜ゴメンね〜、私人の名前を覚えるの苦手でさ。

あ、勿論仕事とかでなら別に、その場その場で覚えられるんだけど……ま、プライベートだからね許して♡?

 

それは、置いといて二人はどうして腕を絡ませているのかな、アクアなんて胸を少し意識するように触るか触らないかの距離に、置いてるけど。」

 

不味い…母様だ。まさかこっちに気が付くなんて、どうしてこう間が悪いというか、運が無いというか。私達の直ぐ側にいるのは解ってはいたけど、それにしたって見つけるのが早すぎるよ。

 

「えっと、彼とは」はじめまして、森本ケンゴと申します。お嬢さんとは、彼氏彼女としてお付き合いさせていただいております。」

 

あの母様と面と向かってるのに臆すること無く話をしてる…ハァカッコいい♡私なんてアワアワしちゃって焦っちゃって、何も出来てないのに頼りになるなぁ♡。

 

やっぱりこの人は正解だよ、私のことを守ってくれる…でも私のことをもっと深く知って欲しいなぁ。

ただ、日本で知らない人はまずいない母様を相手にこの度胸……ちょっと不自然なまでに学生離れしてる気がする。

 

彼がどうやってそれだけの胆力を育てたのかが少し気になってきたな……考えてみれば私も彼の事をまだよく知らない……っとそれよりも

 

「わぁ、初めまして。愛久愛海のお母さんの星野アイです、ご丁寧にどうも〜。いや〜まさかアクアの彼氏さんに会えるなんて、最近ソワソワして髪なんか前よりも気にしてたから、どうしたんだろうなぁって思ってたけど、これなら納得だね。アクアも女の子なんだねぇ…。

ということは、あかねちゃんとはブラフなんだね。悪い子だ!」

 

「母様それは後に話しませんか?今は、ルビーのステージに集中しましょうよ。」

 

「そうわ言うけどさ、正直言って今のルビーのあの姿どう思う?」

 

今の会場は熱狂の中にある、殆ど全ての観客は壇上の3人に魅入られていると言ってもいい、けれどその中で一人だけ若干浮いている人がいる。そう、それがルビーだ。

 

「アレってたぶん、私の真似だよね?ふ〜ん、こっち側からは私ってああ見えてるんだね、でもあれじゃあアイじゃないね。

魔法はそんなに長くは続かない、特にアレは紛い物だからね。

参考程度にしてくれると良いんだけど、憧れであんなの見せられるこっちとして嫌かな?憧れてちゃ駄目なんだよ。」

 

母様にとってのアイドルは仮面、内側の自分を隠して本当の自分を見せることのない、全く別の存在。

家の中で見せる完璧でもなく、究極でもない〘星野アイ〙、それと区別するための〘女優星野アイ〙と〘B小町のアイ〙母様やメンバーは、それを一人一人が作り上げて練り上げた。

 

今のルビーは、そんな殻を間借りしてるようなものだから、サイズが合わなければ違和感も出る。

そうなってしまえば、単なる母様のコピーに終わってしまう。その本質は解る人には解ってしまってこのままではそれなりに売れるアイドルで終わってしまう。父様と私もそれが一番の懸念だった……特に母様にとってはそれが何よりも嫌なんだ。

 

「でも、2曲目よりも3曲目の方が、音程も抑揚も良くなってきていますよ、本番の中で成長してるんです。偶にいるんですよ、こういう人が。」

 

母様に彼が反論している、バンドマンとしてはさっきの言葉に何か思うことでもあったのかな?母様はそれを聞いて、別にムッとするということもないけど、明らかに反論されたことに対して嬉しく思ってる。ルビーの娘の実力を評価してくれる人だ、嬉しくない訳が無い。

 

「私には歌も振り付けも、何が良いのか解らない。でも、その人が努力していたっていうことは解るし、好きな音だってある。今のルビーのそれは真似だったとしても、そこから現れる個性だってあるはずだよ母様。」

 

「ふぅ〜ん、二人揃ってルビーを肯定するんだ。ま、良いけどね。後はルビー達がどれだけ周囲を虜に出来るのかって事だよね?ま、それなら別に間違ってないけど、じゃあ本物に偽物がどれだけ抗えるか、見てみたくない?」 

 

解ってる、母様達が企んでたことなんて私はなんとなく察しが付いてたよ。だからさ、私はお姉ちゃんだから例え目の前に母親という壁がいたとしても、妹を手助けするのがお姉ちゃんの役目だよね?だからさ、ケンゴ。私と一緒に来てほしいんだ。ルビーに母様の複製という殻を破らせるために。

 

 

 

〜sideかな〜

 

アイツ…彼氏を連れてきてた…。何してんのよ、私に見せびらかしに来た訳じゃないでしょうね、自分は本当に女の子なんですよってそんな報告見たい訳無いじゃない。

やはりまだ役に飲まれたままね……アンタにとってそれは初恋よね、前世を入れれば解らないけど今世でアンタの浮ついた話なんて一度もなかったもの…けど、元のアンタだったらリスキーだけどスキャンダルの可能性には注意を払ってたからね。

互いに変装してるとはいえ、こんな衆人環視の中で抱き着くような素振りを始め迂闊な行動は取らない。ソイツと付き合うのは構わないけど、そこは早く目を覚まさせてやらないと……

 

はあ、まったく嫉妬なんて私らしくもない。それに、こんなステージに立っているのにそんな余計な事考えてる場合?

今、私の隣では二人の雛が必死になって、目の前の存在に立ち向かおうとしている。

 

一度も大衆の目の前で演技をしたことのない二人、ルビーは少しだけ子役の経験があるけど、結局はその程度。私の全盛期の頃みたいに、そこまで広い場所でやったことなんて一度たりともない。

メムは社会人として、私達よりも遥かに豊富な人生経験を持っているけれど、それは少人数の集まりという枠の中。どれもがこれだけの人数を一度に相手して、愛想を振りまいたことなんて無い。私だってそんな経験、あんまりないのに。

 

恋なんて、今考えなくても良いのに、やっぱり気になっちゃうわね。

あーちゃん、アンタに話したこと無いしいつもはぐらかしてたけど、私の初恋の相手って結構アンタの身近にいたんだよ。

 

私の初恋の相手は、私をちゃんと私として見てくれていた。〘天才子役のかなちゃん〙じゃなくて、有馬かなという一人のあどけない子供として接してくれていた。

親が私を甘やかしてくれない時も、私をアンタと一緒に遊びに連れて行ってくれた。

 

私が忙しくて私に暇がなくなってしまった時も、アンタを連れてきてくれた。演技でわからない事があったら、真っ先に聞きに行ったし、マネージャーなんかよりも遥かに私のことを心配してくれていた。 

 

私が子役の事務所にいられなくなった時も…、出演作品が仕事が減ってしまった時も、私に仕事を斡旋してくれて私の心が折れないように、そうして接してくれた。

 

それが、アンタの父親だったってアンタが告白した時。私の中の恋心は、憧れはアンタに対しての憎悪と嫉妬に駆られたものだわ。

〘この子がいなければ、この子の母親がいなければ〙

なんて都合の良い事を並べ立てて、私はアンタと縁を切ろうとした。だけど、アンタの父親は言ったわ。

〘この娘の事をよろしくお願いする。この娘には友達が君しかいないんだ、だから恨むのは俺だけにして欲しい〙って。 

惚れた弱みよね、完全に口車に乗せられたわよ。

 

ま、だからじゃないけど。今、私の目の前で手を繋いで母親に詰め寄られてるアンタを見るのは、楽しいものよ。私はいつまでもアンタの親友であり続ける。それが約束だし、今の私を作っているものだから、だからアンタの代わりに私がアンタの妹を。

アンタの妹が望んでいた、この晴れ舞台を。盛り上げてやろうじゃない!!

 

あ、アレはあかね?へぇー、私色のサイリウムなんて振っちゃって、周囲の熱気に包まれて解らなかったけどアンタ相当私の事が好きみたいね。両手で2本ずつ、計四本の白いサイリウムなんて持っちゃって、いつかヲタ芸なんてもの見せてもらおうかしら?

 

それにしても、周囲の人達嫌にヲタ芸が上手いというかその手のベテランみたいな動きね。もしかして、もしかするとだけどこれは仕込まれたわね。私達の歌に合わせて、彼等は動いている。それは、私達の歌を曲調を知っていなければ出来ないこと。ましてや、6年前のアイドルの歌なんて知ってるやつはだいたい、その当時のファンに決まってるんだから。

 

見事な迄に集めたのね、コイツ等は初めからB小町のファンだった。私達が生まれる前から、既にファンだった連中よ。

だからその推しは、アイやニノさん達みたいな旧B小町メンバー。だから何だって話よ、問答無用で私達の虜にさせてみせるんだから。

 

 

 

〜sideルビー〜

 

あ〜も〜、スッゴイよ凄い!この会場の一体感、ネットの配信とかだとこんな感情感じることなんて滅多に無いけど、会場の一人一人が私達に夢中になって私達のことを見てくれてる。

さっきまでの気持ち悪いあの感情なんて、忘れられちゃうくらいこの皆が私達を見てる。

 

この小さなステージでもこんなに凄いんだから、ドーム会場なんてどれだけ凄いことになるんだろう?

考えただけでも、ワクワクしてくる〜!パパが言ってた夢中になれって事、やっとわかった!

要するに目の前のことを受け入れるんじゃなくて、把握するってことなんだよね?

 

お姉ちゃんは利己的に考えて、これを理解できてないと思うけど、感覚的にこれ私には解るよ。

誰かに何か教えるのは得意じゃないけど、この感覚はカリスマとかそういうのとは違う意味で、今世界を支配してるんだ!

 

皆が誰を見て、何を期待してるのか。大まかな道筋が、まるで蜘蛛の糸のように絡まって、巣を作ってる。糸を手繰れば、それが何処に繋がっていて、誰が何を意識してるかなんてのも見えてくる。パパ、パパの見てる世界ってこんな感じなんだね。

お姉ちゃんから聞いてた、渦巻いた意思とか全てが混ぜこぜになった混沌とか、そういうのとはまるで違う。

 

スッキリとした世界、キラキラと糸が世界を紡ぐ美しい景色、それぞれが色々な色を纏ってそれぞれを意識する、そしてそれが一体となって太く逞しい、まるで虹のようなコントラストを描いてる♪

 

『ルビー、輝いてきたねぇ…私も楽しみにしてるよ』

 

ママ?ママの声が鮮明に聞こえた。でも何だろ、ママの意識ってこんなに怖いものだったっけ?これなんだろう、獅子?

でもそんな感じの、嫌味とか妬みとかそういうのじゃなくて、そう愛の鞭だ。

 

だとすると、これママが何かを企んでるってことになるよね。ヨシそれなら、私はもっともっと皆の期待に答えられるように、輝かなきゃ!

隣のかな先輩よりももっと。先輩、私達の事を背負ってくれてる、優しいくてちょっぴり頼りないお人好し。だから私は背負われるよりも、並び立ちたいんだ!

 

 

〜sideMEMちょ〜

 

身体が重い…息が苦しい…周囲の視線が痛い必死に作った笑顔で、皆を笑顔にする。

私は○○○○○、アイドルをやりたかった一般人、母子家庭を支えなきゃならなかった、アイドル崩れ。

憧れに近づきたくて、焼かれてしまった鳥。

 

アイドルになりたくて仕方なかった、でもその機会は無かった。歳をとってその機会を手にして、今地下アイドルみたいなステージで歌を振付けを披露して、9つも歳下の子たちと肩を並べて初めてのステージに立っている。

 

正直言って恥ずかしい、そんな感情がある。

 

もしもここがJIFのステージだったのなら、きっと良い意味で吹っ切れていたろうに。

 

中途半端なステージのせいで、卑屈になって今でもアイドルを辞められるんじゃないかって、そう思ってしまう。

 

どうして辞めたいの?

 

これは夢だった、でも結局のところは学生の頃こそ抱けたものだったよね?

 

今の自分を見てみなよ、恥ずかしい姿を皆の前に曝け出している。今からこの調子でアイドルをやっていても、直ぐに30になってしまうだろう?

そうでしょ○○○○○、貴女はもう25なの、だから辞めるのなら早い方が身のためだよ?

 

ー嫌だ辞めたくなんてない、諦めたくなんてない!

 

どうして?貴女は所詮は砕け散った原石、目の前の二人みたいな宝石にもなれない屑

 

ーやっと夢が憧れが叶うのにそれを手放すなんて!

 

でも、貴女の時間は二人よりも短い。その魔法なんて直ぐに解けて、無くなってしまう。二人の足で纏い、そんなの嫌じゃないの?

 

ーそんな事…そんな事無い。二人は私を受け入れてくれただから!

 

でも、そんな二人だからこそ二人の道を閉ざしたくは無いでしょ?だから、まだ間に合うよ?私は後悔だけはしたくない、自分のせいで二人が、陰るのを見たくない。

 

『それは違うよ。』

 

違うわけ無いよ。

 

『MEMちょ、頑張ってたじゃん。私達に追い付こう追い抜こうって、やっと夢が叶えられるんだってそう言ってたじゃん。

夢は何時になっても叶えられる、憧れは止められない!

だから一緒に行こ?どれだけ挫けそうになっても良い、馬鹿にされたって良いだってこれが、憧れたって事だから!!』

 

 

 

アンコール!アンコール!アンコール!アンコール!

 

「先輩!MEMちょ!行こ!」

 

「「ええ!」]

 

 

 




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