虹の男と星の娘   作:丸亀導師

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第六十一話

[2029

少女の憧れは、もう一人の少女だった。

少女は憧れに近付くために、憧れの少女と共にいたいが為に同じ道を歩もうとした。

 

しかし、現実と夢はあまりにも遠く想像とはかけ離れた少女の姿に少女は失望する。

だが、それでも焦がれ続けた少女と共演するために、彼女は努力を重ねていった。

 

幾つもの道で駄目ならば、一つの道を極めようと舞台の道へと進んでいった。努力をすればするほど、少女との間を埋められるとそう信じて。だけれども、憧れの少女は時間を積めば積むほどに、その姿をなくして言ってしまった。

 

ある時少女に知らせが入る、〘憧れと共に仕事が出来る〙

少女は急いで彼女に駆けた、私はこんなにも凄くなったのだと、私はこんなにも立派になったのだと。少女は、少女にそう言いたかった。

 

少女が憧れの少女を再び見まえたとき、それは一つの終焉を見たような。そんな感情を抱いた。

変わり果てたその姿を、変わり果てたその演技を、少女は悟る。〘誰が彼女をこの姿に変えたのか〙

 

少女は、猛り怒る。そいつを見つけて言ってやるんだと、その為に上を目指すと。

憧れが話た、自らが師と崇める存在を…

少女は復讐を決意する、憧れの姿を元へと返すその為に自らの演技を磨いていくと。]

 

 

 


 

〜sideかな〜

 

「じゃあJIFの成功を祝いまして乾杯〜い!」

 

「「「「「乾杯〜い」」」」

 

か〜〜、この一杯のために生きてる〜って感じがする。ま、ノンアルコールの単なるオレンジジュースだけどね。

私達のアイドルとしての初めての大型ライブイベントが終わって、幾日かこうやって小さな祝杯を上げた。

 

アムロさんの家のリビングで開かれたこの祝杯、新旧B小町、事務所の社長さん達、関係者である私達の為の祝杯にあーちゃんは来ることはなかった。

彼女曰く、主役が祝杯やるのは解るけど、私達は実質部外者だから…だとか。

 

気を使ってくれるのは嬉しいけれど、こう。なんというか、親友なんだからそういうのは気にしないで貰いたいのだけれど。

今文句を言っても始まらないことだし、この時を楽しみたいのだけれど……ちょっとMEMさんアンタハメ外しすぎじゃないかしら?それ、お酒よね?え?大人だから関係ない?確かにそうだけれど。

 

あ〜、社長さん?そんなにお酒を飲んで…駄目ですよ、飲みすぎて明日に支障が出ますから!

ミヤコさん、止めて下さい。アイさん達も、どうしてそう笑っていられるんですか、急性で倒れますよ!

え?いつもの社長だから放っておけ?いやいや、駄目でしょ!

 

 

……

小さな打ち上げが終わると、部屋の片付けをアイさんとアムロさんが行っていた。ミヤコさんは子供がそろそろお眠だと言って、リビングに備え付けのバーカウンターですっかり酔いつぶれていた社長を引きずって帰って行った。

B小町の皆さんは、だいぶ酔っていたご様子でベッド2つと足りない分を布団が床に敷いてある二階のゲストルームで誰がベッドに寝るかを巡ってじゃんけん大会で接戦の末に見事勝利をもぎ取ったニノさんがベッドで、残るサキさんたちは床に敷いた布団でそれぞれ早々ご就寝。MEMちょも一緒に、今回の主役として無条件でベッド一つを与えられ、そのままご就寝。ルビーもアルコールを飲んでしまったらしくダウンしている。

じゃあ私はどうかといえば、片付けの手伝いを行っていた。

 

「まったく、すいませんね。こんなにも散らかしちゃって、人の家なんだからもう少し綺麗に使えないのかしら。」

 

「大丈夫、気にしないでくれ。アイドルグループなんて6年ぶりだからね、皆舞い上がってもしょうがないよ。」

 

「そうだよね〜、もうそんなに経つんだな〜って。私達も歳を取るわけだよ、最近は肌のお手入れもきちんとやってるんだけど、小皺が特に目元とか気になるんだよねぇ。」

 

そんな事無いですよって言おうとするけれども、私が言ったところで皮肉に聞こえるだろう。

 

「そんな事あるんだよ〜、もう膝とかさ偶に痛いって思う時もあって、歳だな〜なんて思うんだ〜。」

 

「俺も、もう38だからな。そろそろ、体力的にもピークを過ぎてきたと感じることがあるよ。」

 

この二人が堪えているのだから、加齢って怖いんだなぁ。と、内心思った。傍から見ればアイさんが二十歳前後、嶺さんが二十台後半にしか見えないっていうのになぁ……

 

「そう言えば、アイさんはお酒を飲まなかったみたいですけど、弱いんですか?」

 

「ううん、違うよ。実はね今、私のお腹の中には赤ちゃんがいるんだよ。本当は安静にしてないと駄目なんだけど、ちょっと無理して出てたんだ〜。だから、もうわがまま言わずに休暇を取ることにしたんだよ。

スケジュールとかも、これから取らないようにしてたからね。」

 

お腹を擦るその姿に胸がチクリと痛んだ。今更だ、ルビーもあーちゃんもいるのに今更私の心は痛む。夫婦なんだから、まだ32歳なんだから。今まで、子供を作って来なかった方がおかしいんだ。本当はもっと子供を産みたかったでしょうに…二人の立場を始めとする柵がそれを許さなかったんだ。だからか…物欲や顕示欲があまりないこの二人がこんな大きな家を建てて、家の部屋数が多いのも何時でも家族が増えてもいいようにって……

私の中の決心が揺らいでしまう、嶺さんの事が好きだと。異性として好きだと、そう二人に言い出したいのに口は動いてくれない。

 

「アムロ、そろそろ良いと思うんだ、皆も寝ちゃってることだしね?ねぇ、かなちゃんもこっちに来て。」

 

そう言うと、アイさんは私達を連れて二階の二人の寝室へと移動した。いったい何があるのだろう、私がこんなところに入って良いのだろうか。そう思っていると。

 

「じゃ~ん、これはなんでしょ〜か!」

 

アイさんは私に一枚の紙を見せつけてきた、役所だとかそういう場所によく置いてありそうなA3紙。最重要書類とか、電子化されないもの。その中の一つ

 

〘養子縁組届〙…養子縁組か、いったい誰が誰の子供になるのか…なんて聞くのも野暮ったいけど。

 

 

「誰が誰の養子になるんですか?」

 

「かなちゃんが、私達の養子になるんだよ〜?」

 

そんな話聞いたこと無いんだけど…水面下でそんな話が進んでいたの?第一どうして

 

「いや、実際のところは君が陽東高校に入学してからの大凡2年間少しずつ協議を重ねていてね。ようやく君のご両親の了承を得た、というところだ。最後は君の意志を尊重したいと思ってね、君がどうしたいのか、それを聞きたい。」

 

了承をって…そんなに迷う事を今すぐになんて…私はどっちを取れば良いんだろうか?

お母さん……ママのことは、実際今はあまり好きじゃない。この数年の間に、私に会いに来てくれた事などあっただろうか?

 

だけれど、私にとっては数少ない肉親だ。例え私の事を金蔓としか思っていなくとも、私は親の願いのために役者をやる程度には、親を愛していたし……それにママだってどんなに荒れても私に直接手を上げたり、私の稼いだお金に勝手に手を付けたり持ち逃げするようなことはしないくらいの親心は残っていた。改めて考えてみると実際どうなのかと言われれば、即決出来るものじゃない。

 

「別に養子になったところで親権が無くなるわけじゃない、だけど普通…そうだろうな、迷うだろう。けれど、以前の君なら、迷う事無くこれを受け入れたんじゃないか?」

 

「そ…そうですね。確かに前の私ならたぶん貴方の子供に慣れるならと、きっと受け入れていたんだろうと思います。

だけど、今漠然と思っているのは本当に貴方方の養子になって良いのか、何のために私を養子に取るのか、色々と疑問が付きません。」

 

正直な疑問だ、どうして私なんかを養子に取ろうとするのだろう?

 

「それは、俺じゃなく発案者のアイに聞いてくれ、彼女が君をどう思っているのかも。」

 

私は視線を嶺さんから、アイさんへと移した。

 

「ふっふ〜ん。実はね、かなちゃんが高校に入学する前から、かなちゃんの演技の仕方とか、人への当たり方とかそういうのを見ててなんか、アムロと似たような動きする娘になったなぁって思ってね?

それで、もしかするとかなちゃん、アムロの事が好きなんじゃとか、思ってたんだ〜。

 

でね、ふと思ったんだ。どうして、私はこんなにかなちゃんの事を考えてるんだろうなって、ルビーやアクアの事も可愛いって思ってるけど、かなちゃんの事も同じ様にかわいいなって思ってたんだ。

私も知らず知らずの内に、かなちゃんを実の娘にしたいって思うようになってたんだよ。 

 

長い事というか、かなちゃんも四歳くらいから私達と一緒にいたでしょ?それはもう、実質私達の娘なんじゃないかってそう思ってね?

 

かなちゃんご両親と最近連絡とれてないでしょ?だから、私達の方がご両親よりも親の役目を果たせてるんじゃないかって、勝手に驕りで思ってるんだけど、これは純粋にそう思ってるんだ。

だからね、かなちゃん。どうか私達の娘になって下さい。」

 

そうは言われても、私は頷くことに躊躇する。確かに嶺さんの事は好きだ!でも、私は嶺さんの娘になりたいわけじゃない、恋人になりたいんだ。だから、良い機会だろう私はアイさんの言葉に返すように言い始めた。

 

「アイさん、ありがとう。でも、私は別にアイさんと嶺さんの娘になりたいわけじゃない、確かに最初の頃は嶺さんの演技に憧れて真似して同じになりたいなんて思ってた。

けど今は違う、今まで嶺さんから受けた指導や演技を自分なりに昇華させたい。そう思うようになりました。

 

それで、私は一つ思ったんです。私は嶺さんの演技にただ憧れたわけじゃない。

私は、嶺さんに恋をした。恋をしたんです。今まで、ずっと誤魔化してきた、これは演技に惚れたんだと。でも、私は嶺さんの事が好きで好きでしょうがないんです。

だから、私は嶺さんの娘に成りたくない、成るのならせめて愛人の方がいい!」

 

言ってて解る、顔が物凄く熱い。アイさんは涼しい顔をしているけれど、嶺さんは考えるような顔をしている。困らせてしまっているけれど、今は寧ろ私の事を考えてくれる。それだけでも、私の心は晴れやかだ。

 

 

 

 

〜sideアクア〜

 

「イベントの成功を祝してかんぱ〜い」

 

私達は安いファミレスにいる、ルビー達が主役の祝杯なんだから、脇役どころか端役。エキストラでしか無い私達は参加すべきではないのだ、だからこうして皆でファミレスでお腹を満たしている。

 

「は〜い、今日は私の奢りだから皆いっぱい食べてくださ〜い。」

 

今日は私の奢りだ……皆協力してくれたから私の財布の紐も軽くなったよ(涙)。実際、私だけだったらきっとかなちゃん達に声援届かなかったろうし、(たぶんあかねちゃんが一番目立ってた。)ヲタ芸の流れを作ってくれた皆には感謝しか無いよ。

 

「本当に良いの?こんな人数分出してたら、マリンちゃんのお金無くなっちゃうけど…」

 

あかねちゃんは優しいな〜、私の財布の中身の心配をしてくださるなんて、でもたぶん一番品物注文してるの貴女なんですけどね。かなちゃん命のあかねちゃん。

 

「マリン、そんなに出さなくても俺も出すよ。女の子に出させるなんて、面目ないし。」

 

「ケンゴ君ありがとう♪でも良いの、元々私が皆に無理言って来てもらったんだから。」

 

バンドの皆さんも、無理言って来てもらってるしお金も払えない私からの細やかなお礼だから、私にはこれぐらいしか出来ないんだよ。

 

「ねぇ、気になってたんだけど。あかねとマリンは一応付き合ってるって事になってるんだよね?

でもさ、私達から見るとケンゴ君とマリンが付き合ってるみたいに見えるんだけど、どういう事?」

 

鋭いのは相変わらずだね、ゆき。本当の事を言ってもきっと、私達の事を責たりはしないと思う。

 

「へへ、実はね私とケンゴ付き合ってるんだよ。あかねちゃんとは、番組を盛り上げるための演出と相互のメリット・デメリットの関係って言った方が良いのかな?」

 

「え?本当に?私とノブくんと同じなんだ…なんか仲間が出来たみたいで嬉しい!

でも、どうしてそんな事してるの?」

 

そりゃあ、番組で付き合ったりなんかしたら後々面倒だし、自分達で進む道とか考えたいことも出来なくなっちゃうから、それにそれでもし二人きりで、あんな事やそんな事やってたらいきなり注目の的になりたくはないじゃん?

 

「あかねちゃんは、この前JIFの有馬かなって娘いたでしょ?その娘の為に色々とやるには、少し有名になったほうが良いって考えての事だって。

私も少しは有名になりたいけど、自由な恋愛出来ないと思ってね?

ね~ケンゴ君!」

 

「まあ、なんていうのか。お前等だって俺等と同じ様に愛し合ってるんだろ?なら、自由に付き合って自由に生活したいだろ?プライベート切り売りして、そんなんで彼女を幸せにしてあげられるのかって考えたんだ。それが今の結果だよ。」

 

私も同じ意見だよ、やっぱり意見の合う彼氏って良いなぁ。

 

『おい貴様、少々浮かれ過ぎではないか?まるで、昔の私を見ているようだな、優しい心で諭されて利用され最後は置いていかれる。そんな未来の姿が見えるよ。』

 

『あいっかわらず捻くれてるね、ハマーンさんは。ケンゴ君は私の事を第一に考えてくれてるの、だから私に協力してくれるし私の意見も聞いてくれる。

そんな姿が羨ましいんじゃないの?』 

 

『まったく馬鹿馬鹿しい小娘だ。良いか?忠告はした、せいぜい足元を掬くわれぬようにな。』

 

そんな事言われても、私はケンゴ君を信じてるから。だから、ずっと一緒にいてくれるよね?

 

 

 

〜sideあかね〜

 

有馬かな

赤ん坊の頃から子役としてテレビに出演している。幼少期、母親が彼女を応募したことから、彼女の役者人生は始まった。

1〜6歳までの間に子役としての地位を確立、一躍時の人と〘天才子役〙として、芸能界のスターとなる。

 

しかし、それ以降出演作の量は低下の一途を辿り、歌手やアイドル紛いの企画を行っては、その事業から撤退している。

元来、太陽のような演技をしていた彼女であるが、キャッチコピーである〘10秒で泣ける天才子役〙というものが足を引っ張り、それ以外の役での出演は低下している。

 

10歳の頃から徐々に出演作が再び増え始めるも、主演とは行かずドラマでは3話出れば良い方なそんな役者となっていた。

11歳の頃から、演技に幅が見られるようになる。

所謂演技派と言われる種類に分類される、その様な役者となっている。(この頃から、師匠と呼ばれる人物に多大な影響を及ぼされている?)

 

次第に演技派としての知名度が出て来ており、演技派実力派の名脇役として、その地位を確立するもいずれも主演に返り咲くことはなかった。

 

中学1年の頃より、一人暮らしを始める。

 

中学2年の秋頃、私と共演する。この時、私と共に出演した劇では、準主役級のポジションを射止める。良好な演技を行い、劇団でも有名な実力として認められるものの、その演技の仕方は私が嘗て憧れていた自由奔放なものから、型に嵌め込まれたそれぞれの演技、主役を際立たせるものとなっていた。

(技量の向上、演技の幅が増える。また、この頃より他人への接触時、口調の矯正が行われた可能性がある。)

 

以後、実力派名脇役としてその地位を確立している。

高校一年の秋口から、今日あまの主演として実に12年ぶりの仕事を行う。……

 

 

やっぱりどう考えても、小学校高学年の頃に心境の変化があったろうね。そこで、周囲のへの変化が物語っているように、絶対に〘師匠〙という存在に変えられて染められてしまったんだ。

かなちゃん、私がその〘師匠〙を見つけ出して、きっと太陽の様なかなちゃんを取り戻して見せる。

 

 

 

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