2045年の1号コロニーの建設後の移民開始くらいかなと思っています。
「2030/2/#
とあるバーにて、二人の男が酒を酌み交わす。
バーには誰一人客はいない、キャバレーの場所にも人っ子一人いやしない。バーテンすらそこにはいない、異様な光景がそこにある。
地味なスーツを着た二人が、カウンターに腰を掛け互いに酒を注ぎ合う。かなりの度数の酒を煽っているにも関わらず、二人に酔を受けた様子はない。
「国連での我々の国の立ち位置は、今やかの合衆国に次いでのものとなった。
隣国の政治を急速に腐敗させ、我が国の奴隷のようなものにするのは意外と難しいものではなかったよ。」
「だが、やりすぎるのはどうかと思うが?第一、そこまでしなければならないことなのか?俺は政治には疎いが、そういう物事に関心が無いわけではない。場合によっては」
「そう焦るものでもない。アステロイドベルトから小惑星を地球軌道に固定するまで後6年はかかるが、それが終われば第一号コロニーの建設と月面都市の開発に着手できるさ。そうなれば、後は我々の想定通りに動く筈、君のおかげだよ。ここまで来れたのは。君の齎した技術革新の前倒しの御蔭で前世の歴史よりも人類の宇宙開発と進出はスムーズかつ急ピッチで進めている。今度は重力に魂を引かれた者たちに付け入る隙は与えん」
「試算通り事が進めば良いほうだ。早めすぎるのは良くは無い寧ろ、遅いほうが良いこともある。急ぎすぎれば、必ずどこからかしわ寄せが来るぞ?特に核パルスエンジンの試運転なんて、地上じゃ無理だからな。何より、15年後に待ち受ける最後の関門は一筋縄ではいかないぞ……あの事件を阻止できなければこれまでの苦労が全て水泡に帰してしまうからな」
二人は話し始めた、未来へ続くそんな物語をそして彼等は何処を目指しているのか、それは当人たちにしか解らない。]
〜sideアクア〜
自信があった、誰よりも役になりきれるとそう思っていた。だけれど私は怖かった、周囲の突き刺さるような視線が、失敗を咎める視線が私を冷やかに見るその存在が、まるで私を見透かしているような、そんな観客たちが。
一つの失敗で私はそこでの道を、足を遠ざけていた。生まれて初めての挫折を味わった私はその道から逃げたかった。その道にいる父様を見て、私もそこに立ちたいと思っていたものも、夢も何もかもが恐怖にかられ私は舞台劇から離れていた。
無くした自信を取り戻すために、ここに、再び舞台に立つ決心をするまでは。
ルビーが力に目覚めアイドルとしてステージに立った時、正直に思ったことは母様の複製に成り果てないか、もしくは〘私の様になってしまう〙ということだった。
ルビーの夢は母様のようなアイドルになることだった、そして私はルビーに力が無い事を良いことと思い、ルビーがアイドルになることを応援した。
だけれども力が発現すれば、周囲の悪意に気が付く。そうなった場合あのステージ上に集まる衆目の視線、悪意の籠もった或いは下衆な想い。グチャグチャと色んなものが入り混じった、気持ちの悪いものまで見えてしまう。
そうなったら、あの〘可愛い純粋で明るく元気〙なあのルビーが、私のように〘利己的で不純で暗い〙そんなものになってしまうなんて考えていた。
でも、ルビーは違った。ステージに立つ彼女はあの感情の渦を物ともせず、ただただ〘楽しい、嬉しい、皆に笑顔を〙なんていう感情とその余裕を突き付けられた。
私は姉なのだ、私は姉なんだ。
〘お姉ちゃんは妹の手本にならなきゃならない〙んだ。なのに、これまでは私の後ろを無邪気についてくるだけだった妹に自分は今追い抜かれようとしている。
私は今まで少々浮かれていた、恋人だって出来た友達も増えたと、そう思いながら。
そんな時に、ルビーの姿を見たら今浮かれている自分なんかよりも、遥かにルビーが立派な存在に見えた。
片や〘押し寄せる感情達から逃げた姉〙
片や〘全てを受け入れ光をもたらす妹〙
どっちの方が立派だろうか?後者だろう。私は妹に負けたくないなんて始めて思ってしまった。
苦手なものを克服すれば妹よりも立派な姉に成れるのだろうか、ルビーのように誰か大勢の見知らぬ人間を前にして、大立ち回り出来るだろうか?
学校のような見知った顔で、魅了すれば簡単に掌握出来るような
子供と少ない大人だけの世界ではない。
殆どが見知らぬ大人で、子供だましも通じない悪意と偏見に満ちた世界を生きる人々、それを前にして果たして私は耐えられるのだろうか?
自分で思うのもあれだが、私はルビーほど忍耐強く無い、短気で喧嘩早く何より口論でそれを治めてきたようなそんな奴だ。
そんな奴が、話を解さず外面のみの判断を下す舞台劇に適応出来るのか?そんな不安もよぎる。
そんな時だ、苺プロを通して私のもとに一軒のオファーが舞い降りた。東京ブレイド、大人気マンガが原作の2.5次元舞台劇。観客動員がどの程度かは解らないが、これが私の転機になるのではとそう思ってこれを了承した。
この劇を行うのは劇団ララライを中心とした、私を含めた数名の若手役者たち。
私は早速ララライに出向く決意を固め、あかねちゃんというツテを頼りに、まだ練習も始まらない内に挨拶に赴いた。
ちょうどかなちゃんも休みと言うし、かなちゃんはララライでの経験があるというので、付き添いとして、私と一緒に来てくれた。
そこで私を待っていたのは、私の演技の未熟さと今迄の奢りを痛感させてくれるものだった。
その日劇団の事務所にいたのは、代表である金田一敏郎さんと他事務員の方々や所属役者の人達。
挨拶回りをし、さあ色々と話しをしようと思った矢先に指摘された。私の格好とそれによる私の男性としての演技、その粗を。
今迄指摘されたことがなかった、そんな自分の粗を金田一さんは指摘した。
男の仕草は今迄、自らの観察で補ってきた。歩き方や話し方も、〘自分なり〙に解釈してやって来た。それを部分的に指摘されたことに、私は内心驚きと共に父様の偉大さを痛感させられた。
私の歩き方や動きは、父様を真似たものがベースになっている。身近な男がそれくらいしかいないから、致し方ない事だがそれを見破られた。そして思ってしまった。
〘もっと男を知らなければならない。〙
(そんな事をして何になる、今迄のやり方が間違っていただけであろう?なら、新しいやり方を模索すれば良い。)
(私にそんな時間があるわけ無い!なら今のやり方を続けた方が良い!)
「あーちゃん、色々と言われてたけど大丈夫?」
「別に大丈夫だよ、それに父様が凄い事は充分知ってたし。まぁ、私が娘なんじゃないかって直ぐに指摘されたのには驚いたよ。もっと、色々と変えなきゃ駄目なんだなって痛感したよ。
だからさ、かなちゃん。色々とお世話になります。」
嘘だ、私は動揺している。私のそれを否定された事に。
〜sideルビー〜
JIFが終わってから私の周りは少し変化した、通行人に声をかけられる事はないけれど、なんとフェスの映像がテレビで取り上げられて、全国的に知名度が上がったと思う。
今迄登録者数が少なかったYou Tubeチャンネルもその人数が一挙に6万も増え、現在も順調に数字を伸ばしている。
学校の方でも今迄見向きもされなかった、私のアイドルという組成が少しずつ浸透して行ってるのか解らないけれど、皆の態度が少し変わった気がする。
特に変わったのはフリルちゃんだ、元々話すことがあったのだけれど今では頻繁に会話する。
お姉ちゃんの事とか、お姉ちゃんの事とか、お姉ちゃんの事とか…?これ、私じゃなくてお姉ちゃんの事が気になってるだけなのかな?
みなみちゃんも、私の事を応援してくれてるみたいでB小町のオフィシャルファンクラブに参加しているみたい、嬉しいなぁ。
そんな良いこともあるんだけど、ちょっと気になることもある。私に対してのお姉ちゃんの態度だ、フェスが終わってからというものお姉ちゃんの視線に嫉妬の感情が含まれる様に感じるようになった。
表面上はいつもと変わりがないし、実際本人も自覚してないみたいだけど、〘羨ましい〙だとか〘どうしてルビーは〙だとかそんなものを放ってきてる。
う〜ん、良くわからないんだけど家にいる時もそういうのを浴びせられてると、まぁ良い気分じゃない。無意識だろうから注意することも出来ないし。正直スタイルといい、歌といい嫉妬することが多いのはこっちの方なんですけど。
ここはね、先輩に相談しよう!ってことで先輩の家に来ています。学校が終わったら一目散に帰ったみたいだから、たぶんもういると思う。
ノックしてもしも〜し!
「いちいちノックするんじゃない!チャイムがあるんだからそっち押しなさいよ!ったく。で?要件は何?」
「話長くなりそうだからお邪魔して良いですか?」
文句は言われるけど先輩優しい人だから入れてもらえる、始めて入ったけど綺麗に掃除されてるしダンボールも…ダンボール?
「先輩、これ…何処かに引っ越すの?」
「ああ、これ?…あんたん家に来月から住み込むのよ。」
ええ?そんなの聞いてないんですけど、パパとママなんで言ってくれないの?サプライズでもするつもり?
「なんでって顔してるわね、ここの家賃も安くは無いからそろそろ別の所に移ろうかなって、思っていたんだけど住込みして良いって言われたからね。」
嘘だ、直感的にそれがわかった。何かを隠している、私達に知られる事を恐れている、そういう感情が読み取れた。
先輩は役者という仕事柄、それらを巧みに使い時にはお姉ちゃんですら欺くことが出来る。それは一種の才能なんだろうけど、この動揺がそれらを覆い尽くす。
でも、ここで詮索しても良いこと無いだろうし、本人が口から言った方が良いよね?そんなに焦ることでもないと思うし。
「ふぅ〜ん、そうなんだ。
ところで聞きたいんだけど、最近お姉ちゃんの様子がおかしく感じるんだけど、先輩何か心当たりあります?」
「え?う〜ん、そうね。東京ブレイド関連のせいだと思う、彼女舞台劇が苦手だからそれでかなりストレスを感じてるはずだから。」
あぁ〜、なるほどね。つまり、影のものみたいな感じ?でいっぱい人がいるところで、色んな感情を拾いたくないのかも。
小さい頃にあったような気がする、その時は演技で少し躓いたって聞いたことがあるけどそれと私にどう関係あるの?
「そっか…、直接聞いてみるよ。ありがとう先輩。」
「話が長くならなかったじゃない、ほらジュース飲んできなさいよ。」
先輩も悩みが有れば直ぐに話してくれれば良いのに。
〜sideアイ〜
「ア・ナ・タのアイドルサインはBー」
私は歌を口ずさみながらルンルンと手料理を作っている、なんでこんな事してるのかと言うと、今日から私の仕事が減って家に居られる時間が増えるからだ!
ドラマの撮影とか〜映画の撮影とか〜そういうのをここ最近頻繁に入れてなかったのが幸いしたんだね。
今は専ら、ラジオの収録をちょくちょく入れながら、ネットをメインにしています!
妊娠したらこうしてゆっくりと過ごすのが一番だしね、まだまだそんなにお腹も大きくなってないし、今度は双子じゃないと思う。次は男の子がいいかな、思い返してみれば時折アムロが女の子ばっかりに囲まれて肩身が狭そうにしてる時もあったし。出産は何処にしようか、やっぱり宮崎?吾郎先生の病院なら信頼できるし、マスコミだって邪魔しに来ないからね〜。
お昼一人で家のリビングの大型テレビを点けて見ているとそこにはなんと!
記者会見をしている私が映っているではないか!な〜んてこれも事前に収録をしたやつだからあれなんだけどね?ただ100インチの8Kテレビで会見とか見ると最近気になってる目元の小皺とかが映っちゃいそうでなんか嫌だなぁ……
妊娠後期頃はきちんと身体のことを考えて、仕事をいったん無くすけどそれはしょうが無いこと。それに、今はネットもあるしスマホさえあれば、テレビ局に映像で出演出来るから以外と仕事は無くならないんだよ?とはいえ、こうしたメリットがある一方でテレビで今映ってる精細すぎる映像故に誤魔化しが良くも悪くも効かないってデメリットとか思うと技術の進歩が齎してくれるものも一長一短なところってあるよね。
ピンポーン
誰かな?
玄関に行って、モニタを確認する。う〜ん、不審なものは持ってなさそうだね、一応チェーンを掛けてと。
「はい、どちら様ですか?」
「以前愛久愛海さんと一緒に仕事をさせていただいた、森本ケンゴというものなんですけれど、愛久愛海さんはご在宅でしょうか?」
う〜ん?あっ!今ガチに出てた人だね、なんかアクアと仲良さそうにしてたけど、結局MEMちょに告白してた。
でもどうしたんだろう、今日は朝から稽古に行ってていないんだけど、アクア忘れてたのかな?
「う〜ん、今日は出掛けてるからいないよ?もしかして、何か大事な用事があったのかな?連絡とかしてないの?」
「いえ、特に用事とかは無いんですが…サプライズで来ただけなので、あの良ければでいいんですがこれを渡しておいて貰ってもいいですか?」
なんか怪しいなぁ、アクアとどういう関係があるんだろう?
「彼女へのプレゼントっていうか、彼女をモデルにしたオリジナルソングなんですけど。」
ふ~ん、今どき楽曲渡すのにバーコードなんて。直接合って渡せばいいのに、さ〜ては二人共できてるな?
「うん、伝えておくね〜。」
彼は私にそれを渡すと、そそくさと帰って行った。
アクアが帰ってきたら色々と聞かないとね。