[2030/4/1
あるドラマの撮影日、脇役の女の子二人が話し合っている。
議題は役者として自らの演じ方と、その志というものだ。
一方は嘗て子役時代に一斉を風靡した、天才。嘗て周囲を照らした恒星。
もう一方は、脚本家の想定通りに動くことが出来る精密機器。しかし、照らすことの出来ない惑星。
二人は談笑する、お互いの夢を目標をどちらが惑星の父の名字を継ぐかとか。結婚相手はどんな奴が良いのか、とかそんな当たり障りのないものを。
二人は褒めあった互いに違う得意分野を持っている。
恒星は惑星を照らすために、自らの演技力を引き出し、惑星は恒星を主役にしようと動く。
二人は共になるといつも、そうやって助け合った。
恒星が役者をやることに自信がないといえば、惑星はそんな事はないと、恒星を励まし。惑星が道に惑う時、恒星がいつも道を照らした。
そんな恒星系は非常に相性の良いものだった。]
〜sideかな〜
今日は舞台〘東京ブレイド〙の顔合わせ日、私とあーちゃんはスタジオへと向かった。
道中あの悪夢の成嶋メルトと鉢合わせして、彼がキャストの一人だと知った時の感想は、正直に言って良いものじゃない。今日あまの悪夢を思い出した。
すれ違いざま話しかけてきたから対応したけど、どことなく以前よりも役とかに努力を見せているのが解る。というか、色々と変わった気がする。そして、あーちゃんに見せるその瞳。まるで焦がれるような視線、コイツあーちゃんに恋している。
それからBスタジオへ行って、顔合わせをした。
ララライが主催、だけれど半数は外部からのキャスト…鏑木さんの息がかかった人達。所謂〘鏑木組〙だ。ま、成嶋君のネーミングセンスは良いものね。
自己紹介の中に有名俳優の姫川大輝がいた、何故だろうか以前あった神木に何処となく似ているようなそんな感じがする。
全くの別人で名字も髪色も違うし、年齢的にも有り得ない事だと思うけれど、何処となく面影があるのだ。
顔合わせも程々に主要メンバーが揃っていることから、そのまま本読みへと移行する。少し時間に余裕があるからと休憩時間も兼ねた自己紹介part2の始まりだ。
「二人共、久し振り!」
「久し振りって、この前あったばかりでしょ?そういえば、この前言いそびれてた事があるんだけど、あかねライブに来るならもっと目立つようにしてなさい?私が見つけられないから。」
「いっ、行ってないよ〜、かなちゃんのライブなんて見てないって〜」
「いや、あかねちゃん私達の近くで結構一人で盛り上がってたよ、誰よりも。」
あかねが、顔を真赤にして恥ずかしがってる。恥ずかしいなら来なければ良いのに、まあ私も一生懸命声援を送られるのは悪くは思わないから、別に攻めたりはしないけれど。
「三人はそれぞれ知り合いなのか?」
「ええそうよ、あーちゃんと私は幼馴染。あかねとあーちゃんは一応恋人、あかねと私は元ライバルってところかな?」
ん?あかねの顔が少しムッとしたのが見えた、嫌ね何を勘違いしてるのかしら?もしかして〘元ライバル〙ってところに何か思うことがあるのかしら?いやいや、アンタと私は土俵が違うんだから、一概に今もライバルですって言えないわよ?
私は役者をやってるだけじゃないから、それこそ舞台役者じゃないしね、今回はアンタのほうが経験豊かだから見習っていきたい。
「そうなんだな。凄く仲が良さそうに見えたから。」
「ま、良いわ。それよりあかね、今回はちょっと手伝ってくれないかしら?私も舞台は久し振りだし、あーちゃんなんて素人同然だから色々とアドバイス、期待しておくわよ?」
あかね、アンタが私をどう見ていようが構いやしないけど、今の私は全てを飲み込もうとするかもしれないから、色々と抵抗してみなさいな。
それと、あーちゃんのトラウマもそれとなく伝えて上げるから、二人でフォローすればきっと乗り越えられると思うし。
今から本番が楽しみね。
〜sideあかね〜
本読みが始まった。団員の皆はいつも通り、初めから飛ばしてない。正しくジョギングみたいな、そんな風に肩慣らしを兼ねて試行錯誤を入れていく。姫川さんは例外だけどね?問題があるとすればかなちゃん達の方だ。
かなちゃんは言わずもがな、周囲のフォローとか色々と考えながら質問も含めてどうしていくのか試行錯誤してる。
成嶋君は素人っぽいからやっぱりというか、慣れていない感じそれでも一生懸命やってる。
問題なのは、
「かなちゃんとの絡みが少ない……本番また皆の足を引っ張らないか心配だ…」
マリンちゃんだ本読みから結構本腰を入れて役作りをしようとしてる。だけど、まだまだ誰もその役を理解出来てない段階でそれをやるのは無謀だと思う。
なにより
「ここ少し原作と違う…今日あまだってここまでの違いは無いし、なによりこの子はこんな性格だったかな?」
舞台の脚本とドラマや映画の脚本は少し違うんだ、カメラに対してしか意識をしなくて良いそれと違って、その視線は180度場合によっては、全方位からその視線を感じる。その為に、どんなに素晴らしい殺陣をドラマでやっていても、こっちでは何の役に立たないことだってある。もちろん逆もしかりだけどね、私が今ガチでそれを味わったように。
普段のマリンちゃんみたいに、自分の役を見つけるのが上手い人ならたぶんその違いに直ぐ気が付くと思うけど、どうしてだろう今の彼女からは余裕が足りない感じがする。
「あかね…ちょっとここどう思う?」
かなちゃんから質問だ。珍しいこともあるもんだ、かなちゃんなら自分で簡単に答え導き出したり出来てる筈なのに、それよりもマリンちゃんを…マリンちゃんの場所を指さしてる?
「あかね、私とあーちゃんの絡みは終盤以外あまり無いみたいだから言っとくけど…あーちゃん、昔それも10歳くらいのとき舞台で1度失敗してそれでトラウマ抱えてるから、ちゃんとフォローしてあげて。アンタくらいしか今は頼れないから。」
舞台でトラウマ…何があったんだろう、凄く気になる。でも、あの状態のマリンちゃんに今直接聞いたらたぶん怒りそうだな、今日終わったらで良いかな?
それに、それやるくらいなら少しぐらいアドバイスしてたほうが、今の彼女の調子を見てるんならそっちの方が良いと思うし。
それに、台本を読み進めていくうちに解ってきた事がある。私も分析して自分の役を創るタイプだからね、マリンちゃんの気持ちは1番解ると思う。私の方が改変された箇所が多かったりするから、どちらかと言うと難易度高いけどそれはそれ。マリンちゃんは久々の感覚に慣れきってないはずだし、肩を貸してあげないとね。
〜sideアクア〜
「アクアちゃん、そこはもう少し固く。そうそうそんな感じで…」
舞台での演技指導…久し振りに受けるけどやっぱり見えない。あの壇上に立った時の感覚、あれを思い出せない。こんな本読みだけだとあれを克服出来ないんじゃないか…どうすれば良い?
自信のない私と対称的にかなちゃんは、あの〘姫川大輝〙という人に触発されてどんどんと、私を照らしてくれる太陽としてその力を存分に発揮し始めた。
それに見惚れてしまう私がいる。イケないと解ってはいる。でも、あれは誰もが手を伸ばし焦がれる、正しく太陽…
「あの二人…凄いな流石だよ、かなちゃんも今回は本気で演技出来るってそう思ってるみたいだし。」
『かなちゃん、あんな演技出来たんだ。昔みたいにギラギラと輝いて、あれこそがかなちゃんだよ。周囲に合わせるみたいな演技は、彼女らしくないもん。』
「本当そうだよね、あれこそがかなちゃんだよ昔から変わらないよ。」
でも焦がれるだけでは駄目だ、太陽に近付きすぎれば燃えてしまうように、照らされ過ぎれば彼女に食われる。
なら、適度な距離が必要だけど今の私はメインキャスト、脇役ではない主役の立ち位置。だから、輝け無い私は無理にでも輝かないといけいない。
「そうなの?てっきり演技を変えちゃったんだと…」
「かなちゃんは、主役から脇役に落とされた人だからね、だんだんと演技を変えていく内に、周囲に溶け込むような演技をするようになっちゃったんだ。父様の影響も多分にあるけど。」
「へぇ…そうなんだ。ずっと一緒にやって来たの?」
何この?あかねちゃん、それは嫉妬?かなちゃんとずっと一緒に役者やって来た、私への嫉妬?
「ねぇ、3人ともお昼に行っちゃったし私達も何処かに食べに行かない?マリンちゃんは私と絡みが多いし、色々とそう台本の解釈とかで色々と聞きたいからさ〜」
あかねちゃんその反応怖いよ、でもかなちゃん以外の光は見てみたい。ここはあかねちゃんの好意に素直に甘えさせてもらおう。
〜sideアイ〜
娘達が学校へと言っている間に、無理を承知でアムロに連絡を入れて休みを取ってもらった。幸いな事に今はドラマのスケジュール調整だったものだから、意外とすんなり返してもらったらしい。
そして、私とアムロは四人用の食卓テーブルを挟んで相対している。娘達が帰ってくる前にある事をアムロに伝える為にだ。
何時になく真剣な私の眼差しに、アムロは何かを感じ取ったのかもしれない彼から口を開いた。
「それで、相談事って何かな?何時になく真剣みたいだけど、お腹の子に何かあったのか?」
「ううん、違うの問題なのはアクアの事。まあ話すよりも、私の手を取って?その方が早いから。」
話をするよりも直接感じてもらった方が、色々と解りやすいしたぶんこの力ってこういう事の為にあるんだろうし。
「ああ、解った。」
テーブルの上に置かれた私の両手に、アムロの両手が重なって私は
それと同時に私はアムロへとこの前あった出来事を伝えた。
アクアがあの友達を作るのが苦手で、いつも友達じゃないものを作ってしまうあの愛久愛海が、彼氏らしい人物を作ったと。
「なるほどな、それで?彼が来たことをアクアは知っているのか?」
「ううん、知らないよ。彼が来たことを言ってないから、ただアムロが帰ってきたら言うつもりだったから、だから今日アクアも交えてちょっと聞いてみたいなぁって。」
だって、アクアにそれを行ってどういう関係か聞いてみたいじゃ〜ん
「言っておくが当人同士合意の上の恋人なら、俺はそれを否定する素材は持ち合わせてないぞ?」
「いやいや、私だってそんな根掘り葉掘り聞いたりしないよ〜、たださ。あの娘今、舞台劇をやろうとしてるでしょ?
昔アムロ言ったよね?あの娘に舞台劇は無理だって、才能とか以前に悪意に敏感過ぎるからって。
それでね、ちょっと疑問に思ったんだけどあの娘結構マメな性格じゃない?
彼氏が家に来るのは絶対に確認するだろうし、そもそもあの娘来たことすら知らないんだよ?おかしいよね、それで試しに彼の音楽聞いてみたけど、まさにあの娘為にあると言っていいくらい良い曲で思わず聞き入っちゃたくらいで…別に何もおかしいところが無かったんだよ。」
「つまり君はこう言いたいんだろ?精神的に不安定なアクアに励ましの曲を送るにしても、あまりにもタイミングが良すぎると。
精神観応のときに言えばよかったんじゃないか?」
あ、そうだけどちょっとそれは気が付かなかったな〜。だって私これ初めてなんだも〜ん。
「とりあえず、曲と彼氏の事を少し聞こう。詮索はあまりしない、ただ背後関係は調べてみるよ。」
「お願いね。私はご覧の通り、身重な身体で二人の事を護ってあげることができないから…情けないことだよ。こういう時に母親らしく、してあげられないのなんて。」
本当に情けない。アムロが忙しい間、あの娘達を護ってあげられるのは私くらいなのに。
「君が気に病む必要はないよ、ただタイミングが悪かっただけさ、それにまだ悪い事だと決まったわけじゃない。」
それもそうだね、私達の時みたいに本当にヤバい存在が後ろにいるって決まった訳じゃないもんね。アレのトラウマのせいで都合の良すぎることには私どうしても疑り深くなっちゃう所があるからな。あの曲は実際、あの娘の励みになるだろうし、彼の好意には嘘のようなものは見られなかったし、感じもしなかったから私の思い過ごしならそれに越したことはない。だから今は考えすぎないようにしようか。