虹の男と星の娘   作:丸亀導師

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第六十五話

[2031/2/#

あるドラマの撮影日、脇役の女の子二人が話し合っている。

 

議題は役者として自らの演じ方と、その志というものだ。

 

一方は嘗て子役時代に一斉を風靡した、天才。嘗て周囲を照らした恒星。

 

もう一方は、脚本家の想定通りに動くことが出来る精密機器。しかし、照らすことの出来ない惑星。

 

しかし、ある時太陽は惑星に光を見出した。彼女は、今迄惑星だと自ら言っていた少女が薄暗く光っていることに気が付いた。その光はあまりにも弱々しく、自分が照らしていてはいずれ輝きを無くしてしまうのではないかと思った。

 

高校受験を期に少し惑星から離れてみようと、太陽は思った。暫くすると惑星は薄ぼんやりと輝き始めた、自らの演技を彼女が自信を持ち始めた。太陽はそう思った。そして、再び太陽がそれに近付くとその光は見えなくなってしまった。

太陽は思った、このままではイケないと。

 

太陽の憧れた光に、太陽は相談した。光は太陽に言った自らが自らを知る他に、彼女が光り輝く方法はないと。どういうことなのか?と太陽は訊ね、その問いに光は答える。彼女は確かに惑星だが、それがどんな惑星なのか?灼熱の炎と溶岩に包まれた星か、それとも極寒の冷気と氷に包まれた星か、それとも水を蓄えた星か、砂や岩肌を晒す星か、惑星にも色々あるように自分がどんな惑星なのかを彼女自身が気づかないことには今いる場所から先へは進めないだろうと。]

 

 

 


 

〜sideアクア〜

 

私はあかねちゃんとお昼を食べに近場のカフェに来ているんだけど…あかねちゃんから物凄いオーラというか、そういうのが発せられているように見える。

あかねちゃん、今ガチの時はあんなに消極的で頼りなさそうだったのになんでだろ、凄く頼りになりそうで見違えたよ。

 

「それで?かなちゃんは、どうしてあんな演技をするようになったのか、後学のために聞きたいんだけど。人があんなにも変わることって、そうそう無いと思うんだよね?

もしかして、誰か恋人ができたとか?」

 

「いやいやいや、かなちゃんに限ってそれはないよ。

第一、かなちゃんの演技は変わってない、というかそもそもかなちゃんの演技の幅って結構広いんだよ。

かなちゃんっていう存在そのものが、役になる。

 

私達みたいな憑依型とは違って、それぞれの役をかなちゃんという型に流し込んで、かなちゃん自信が役になるみたいな?

つまり、かなちゃんが素の姿で本当にやりたかった演技をやるって事になるのから、型そのものが幅広深底って事になるのかな?」

 

私の話に何か腑に落ちないご様子、確かにかなちゃんって周囲に溶け込むような演技とか、そんなものを持ってたけど。

どちらかと言うと、一本の硬い芯があってそれさえ揺らがなければ、かなちゃんは本領を発揮できる。今のかなちゃんは、その芯棒が非常に硬いんだ。

 

「うぅ〜ん。今になって本領発揮したのは、まあ大輝さんに触発されてだと思うけど、かなちゃんってそこまで深底の型持っていたかなって、そう思って。

あっそっか、形を変えられたんじゃなくて形と深さを深く捺せられたってことか。

でも何か吹っ切れたように変化してるんだけど、おかしいなぁ」

 

「まぁ良いじゃん。最高峰かなちゃんの演技、一緒にやってみたかったんでしょ?じゃあ良かったじゃん。

ところで話が変わるんだけど、台本のこの部分明らかに原作と違うんだけど、特に鞘姫の性格と刀鬼との関係がさ、これじゃあ異常者だよ。」

 

「やっぱりマリンちゃんもか。実は私もね、この鞘姫の性格が改変されたのに馴染めなくて、情報が少なすぎるというかねそこに苦慮してるの、劇場でやるからにはストーリー展開を早くしなくちゃならないのもあると思うけど、本当にこれで原作者は納得したのかなって。」

 

そうだよねぇ、原作者がこれで納得してるから出てきてるわけだけど、これ本当にアビ子先生納得して書いてあるんだろうか?絶対にあの人、自分の作品を子供のように愛してる人だから、見せてきちゃうか?現在の所、ララライの人たちの御蔭でこの間の今日あま程酷いことにはなってないけど、アレの二の舞はごめんだし。何より、アビ子先生にまで吉祥寺先生と同じ哀しみを味合わせたくない。

 

「ねぇあかねちゃん、台本を原作者に見せるのって有り?それとも無し?」

 

「え?いや、それはう〜ん。無しじゃないかなぁ、向こうも納得の上だろうしそれに、マリンちゃんはアビ子先生に会った事あるの?」

 

会った事?というか、来たというか。

 

「父様が昔、ラスボスのモデルにしたいって言われてアビ子先生が取材に来たことがあるの。結構かわいい人だったよ、初心だし自分の作品を愛してるし。

特に父様と会ってる時の笑顔、まるで恋する乙女みたいで。」

 

「それは娘としてどうなの?」

 

「うん、30越えたおっさんに恋する乙女。しかも相手はこっちの親、複雑な気持ちの訳ないじゃん。だって絶対に実らない恋だもの。ただ、何より問題だったのはその時のアビ子先生の表情が災いして誤解した母様を宥めることの方のが大変で……」

 

私達はそうやって談笑し、互いに意見を出し合った。それが功を奏したかなんて解らないけど、同じタイプ同士引き合うものがあったのかもしれない。現にいくつかの話題はかなちゃんにも言えないことを話せたし、もちろん逆にかなちゃんとしか話せない話題もあるから、どっちが上で下とかじゃない……二人とも大事な親友だよ。私はいい友達も持てたと思う。

 

 

……

 

「ただいま〜、母様聞いてよ劇の台本がさ……」

 

なんだろう物凄い違和感を感じる、父様も帰ってきてるみたいだけど、リビングに皆一塊で座ってる?でも、なんだろうな真剣な雰囲気かな?

 

ドアを開けてそこに座った三人を見た時、私は何か嫌な予感がした。何があったのか、あまりにも真剣なルビーの瞳に射抜かれて私の頭は一瞬真っ白になった。

 

 

 

〜sideルビー〜

 

帰ってきたお姉ちゃんが呆然と私達の方を見ている。その光景は見たことがないけれど、でもきっと頭が真っ白になった人ってあんな感じになるんだなって、なんとなく解る。そんな感じだ。

 

「お帰り〜アクア。ちょっと皆でお話があるんだけど〜ルビーの横に座ってくれない?」

 

お腹が少し大きくなったママがお姉ちゃんにそういうと、お姉ちゃんはバッグを肩から降ろして、私のすぐ横に腰を掛けた。

 

「さて、全員揃ったところで話さなければならないことが2点ある。2つとも重要な事だから心する事。」

 

実は私はお姉ちゃんが来る前に2つとも聞いている、どういう事を話すのかもどういう経緯でそうなったのかも。

一つの件に付いては、ママとパパと先輩のせいで結構物事が複雑になってるってことも、既に私は二人に質問を散々浴びせかけて答えを得てる。

私だって恋愛に障壁なんて無いって、そう思ってるし寧ろ先輩を応援してるから。

お姉ちゃんの事だって、大恋愛って事になると思うから後ろからサポートするよ?

 

「1つ目は有馬かなを、家の養子として受け入れる事になったということだ。」

 

「え?それってどういう事?私そんなの聞いてない、かなちゃんだってそんな事言ってなかった!」

 

ありゃりゃ〜、先輩お姉ちゃんに話してなかったんだ。ま、当然だよね言い辛いし、そんな事聞いたところでお姉ちゃんその時点で納得なんてしなさそうだもん。私でさえ、最初聞かされた時は思わず頭の中が真っ白になったし。

 

「まぁ落ち」落ち着ける訳無いじゃん!どうして今更なの、いつだってやりようはあったんでしょ、一番辛い時期にどうしてやらずに今なの?」その時期から協議してきた、そして許可が出たのが最近というだけの話だ。」

 

これはお姉ちゃんの反応の方が正常だと思うな、現に私だって、あの初ライブやJIFの最中にそのことを話されてたら、間違いなく今のお姉ちゃんと同じ反応をしていただろう。でも、JIFっていう大きな山を乗り越えてからの私は最近なんか達観しすぎて〘だいたいこんな話だろうなぁ〙とか〘次こういう話するんだろうなぁ〙とか解っちゃって、いまいちリアクションが上手く取れない。だって知ってるから。

 

お姉ちゃんはそれが、〘なんとなく〙で出来ないのかもしれない、力も人それぞれなんだなって改めて才能は残酷だと思う。

 

「それは良いよ…私もかなちゃんがお姉ちゃんだったら、なんて思ったことがあるから。それで?まだあるんでしょ?」

 

お姉ちゃんその話はね、たぶん法律上一番良くない話なんだよ。ママもパパもお姉ちゃんが聞いてこないから、たぶん話そうとしてないだけだろうし、ママなんか目がとてもニヤニヤしてるんだよ。話す時は人の顔を見る観察眼をもっと身に着けて、二人の隠蔽率は心じゃ解りづらいよ!

 

「2つ目は私から話すんだけど〜、コレ何か解るかな?」

 

「……!、それ何処で貰ったの?」

 

たった一枚のカード、されどそれはお姉ちゃんに致命的な隙を生む。心がどんどん見えてくるけど…いや、流石にお姉ちゃんそれは私も引くよ?初夜が告白受けたその日で、尚且つ野外プレイとか何その特殊性癖。そんな生々しいものみたくないよ!ちょっと軽別するな〜。……いや、二人の関係を私と先生に年齢問題云々抜きの前提で置き換えて考えてみたら……ごめん、その場合おそらく私もやっぱりお姉ちゃんと同じことに陥らないって言いきれるような自信が無いや…

 

ホラホラ、パパもなんか見えちゃったみたいに目を見開いてるじゃん、お姉ちゃんを顔見してるよ!御蔭で今思い浮かんじゃった私と先生のヴィジョンが読まれなくて済んだのは良かったけど……

 

「そこまで進んでいるのか…両者合意の上でと、やはりケンゴ君とアクア、君は肉体関係を持っていたのか…

どういう経緯でそうなったのかはまあ、今は置いておこう。

君に聞きたいのは、アイが彼にこれを渡された時君は彼がこの家に来るのか知っていたのかという。そういう事を聞きたかったんだが、知らなかったんだな?」

 

「前私言ったよね、人の心を勝手に読まないでって。なに?自分達は良くて娘には清楚でいろって押し付けるの?

それともそんなに私の事、信用してないのかな⤴?」

 

私としてはどっちもどっちなんだけどね?そりゃあ、私だって本当は早くセンセーとそんな関係になりたいけどさぁ…センセーが捕まっちゃうのは嫌だし、かと言って他の人と結婚しちゃうのも嫌だから、私のお墓参りの時にちょっと悪巫山戯で、〘さりなちゃんの大憑依作戦〙やってみたんだけど、楔は撃ち込んだからきっと私の勝ちだな!

 

「アクア?別に私達はアクアの恋愛に反対してるわけじゃないよ?けどね、今さ舞台劇をアクアはやろうとしてるわけだけど、精神的にキツイとか思ってるんじゃないの?

苦手なものを克服するのは凄いストレスを感じることって、お母さん解ってるからさ、それに励まそうとしてくれる彼氏さんなら私は大歓迎だよ?

 

でもね、アクア。貴女彼氏に、そういうの苦手だとか相談した?してないよね、人に心配かけさせたくないってそういう性格なのは解ってるから。問題なのは、なんで彼はそれを知ってたのって事。」

 

「俺たちは君が心配なんだ、アイから感じた(きいた)話では彼自身は心からの善意でそれを君に贈ったようだ。だが、彼は恐らく俺等と同じだと考えるのが普通さ。だとすれば、彼自身には別に問題はなくとも、その背後に何かある可能性もある。」

 

「だから私に、彼と別れろって言うの!なんで!私達はただ愛し合ってるだけなのに…」

 

待ってよ、お姉ちゃん。パパとママが言いたいのはそういうことじゃないよ。それにパパとママの方もそれじゃ完全に言い方が悪いから。私達は心を感じることが出来るんだってことをみんな忘れちゃ駄目だよ。この力はこういう時の為にあるのに……まったく、腰をあげようかなぁ。

 

「お姉ちゃん、別にママ達がお姉ちゃんの恋路の邪魔しようとしてる訳じゃないよ。

別れろなんて言ってないの、もしそのケンゴさんが悪いことの片棒をかつがされようとしてるなら、一緒に助けようって、そう言ってるだけだよ。

頭の回転早いのは良いことだけど、早とちりしちゃ駄目だって。悪い癖だよ?ほらこっち向いて?」

 

お姉ちゃんをこっちの方に向かせて、私の手でお姉ちゃんの手を包むように握る。

 

「私達は家族だよ?だから、何があってもお姉ちゃんの味方をしてあげるし、お姉ちゃんが悪い方に行こうとすれば必ず助けるから、だからね?」

 

私達を信じて。

 

 

 


 

「ちょっと先行しすぎだよ?本当にあの娘のこと好きになっちゃったんだ。最初はしぶしぶやってたにしては、今じゃ相思相愛って?面白いね、僕の計画通りに行ってるわけだ。」

 

ホテルの一室で二人の男が相対する。いや、もう一人は男か?いや男だ。中性的な美青年は、もう一人を煽るように言った。

 

「俺はただ。彼女がいたたまれないからやっただけだ。それに、彼氏が彼女が苦しんでいる時に、手助けしちゃ行けないか!」

 

灰髪は、もう一人に掴みかかる。襟首を掴まれているにも関わらず、まるで涼しい顔でそれを相手する。

 

「勘違いしないでくれ、言い方が悪かったのなら謝るよ。別に悪いとは言っているわけじゃないんだ、それどころか当初の予定以上に良い傾向だなと思ってね?それだけだよ、手をどけてくれないかな?」

 

ニコニコと睨み合う。

そこに更に二人の男が割り込んだ。

 

「二人共辞めろ、今ここで啀み合っても意味はない。ケンゴ過ぎたことは気にするなよ、お前の気持ちも解かるよ。」

 

「八洲…だけど、コイツは彼女を駒としか見ていない。」

 

「駒なんかじゃないよ、むしろ女性はこの世で最も尊いものだろう?ホントに彼女を単なる駒としてしか見ていないのなら、君の前で話題にすら出してないから。

 

それに、それを助ける君はきっと良い騎士になるんじゃないかなと、そう思っただけさ。

彼女のような素晴らしい女性は滅多にいないんだ、だからこそ君には決してその人を手放してほしくないだけだよ。

 

さっき言いたかったのはこういう時、先行しすぎると君たちは良くとも周りから誤解されて変な勘繰を入れられたり、あるいはお互いの想いがすれ違って気付かないうちに関係がややこしくなったりする場合があるからそこを気を付けて欲しいってことだよ。」

 

暫し二人が互いの顔を見つめ合った末に灰髪が

 

「……悪かったよ」

 

と言って手を放し、もう一人も

 

「こっちこそごめんね。少し悪ノリが過ぎた」

 

とニコニコと笑っていた顔を正して頭を下げると、間に入っていた男が嘆息して椅子に腰を下ろす。

 

四人の意図は解らねど、ケンゴのみ彼女を気遣う。

 

 

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