虹の男と星の娘   作:丸亀導師

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第六十八話

[2028

数度目の取材をする中、少女はモジモジとしつつも自らの知りたいことを聞き入れ徐々に眼の前の人物像を固めることに成功していた。

 

果たしてこの人物がどんなキャラになるのだろうか、そうこの男をモデルとした登場人物を描こうと、決心しいざ取り入れるとなると問題が起きた。

強すぎる、ただただ強すぎるのだ。

 

主人公にしてみればどうかと言われれば、それはそれで問題がある。どう考えてもそういうキャラじゃない、大昔のロボットアニメの主人公だ。

そして、アニメ映画〘哀の戦士〙その主人公。どうしてだろうか、まったくジャンルは違うのに、彼をそうすると寄ってしまうのだ。違うことがあるとすれば、彼には帰る場所が有ることくらい。

 

致し方なく、彼を輪切りにしてそれぞれに散りばめた。

でも、それでも諦められないそれならと、彼女はペンを動かしシルエットを描く演武を行うその姿を幻影し、物語の最初と最後を飾る最初の盟刀の主として。]

 

 

 


 

〜sideアクア〜

楽曲に乗って踊り歌う私達、私という異物の混入で困惑する観客、奇異の眼差しに串刺しにされる私。

胸が苦しくなりそうで、時折気持ちが悪くなる。ああ、こんなことなら舞台になんて立とうと思わなければよかったと、心が折れそうになる。

 

ルビーと私の見ている世界の違いからか、ルビーは私にしきりに言うんだ。

 

『色を見ちゃ駄目応援してくれる意図の糸を探すんだよ?』

 

そんなもの私には見えない、濁流の如く様々な水が入り混じりその汚泥のようになった色合いから、まるで異臭が立ち込めてこようとするかのように、私に其れ等が覆い被さろうとする。

 

『お姉ちゃん!それ見ちゃ駄目、こっち見て!』

 

そう聞こえると、私の眼の前に一瞬だけ出て来てその紅玉色の瞳に綺麗な星を瞬かせながら、私を見る。ルビーのその瞳は母様から受け継いだもの、天性のものだ私の瞳にも同じ様なものがあるらしいが、私にはとんと理解できない。

この子は本当に輝いている私に星なんて無いから、そんな輝き…

 

『ハイハイ、ネガティブにならないの!この曲終わったらお姉ちゃん衣装チェンジね。一旦落ち着いたらおソロで行くから。』

 

そんなに早く私にやらせるの?振り付け全部覚えて

 

『るよね〜。知ってるよ〜お姉ちゃん部屋でコソコソ練習してたの。それに自分に星が無いなんて言わないの、どんなに小さくても星は持ってるもの、輝き方を知らないだけなんだよ?

星を持ってないのはパパくらいなものだよ?』

 

解った、解ったからもう説教辞めて。

 

『良いよ?それに、今どう?全然気持ち悪くないでしょ?』

 

そう謂われるとそうだ、眼の前の景色は変わることはないのにどうしてこんなにも変わるのだろう。

渦だと思っていたものは、布の中にある模様のように

濁流だと思っていたものは、布に変わって柔らかく私を包み込もうとしている。

そう、最初から渦なんてものは無かった。

ルビーは、私にそれを教えてくれた。同時に少し、ステージの上が楽しくなった。

 

なんてことはないのだ、私が学校でやっていた事をもう一度やれば良い。魅了するんじゃない、そんな必要もない。

ただ、皆が求める私を演じれば良い、私の古参達は私に何を求めるのか?女々しいものか?少女か?青年か?いや違う。

男勝りな女だ。

 

 

 

……

 

次の衣装は…趣味が良いんだか悪いんだか。

黒色に赤いリボンと赤い刺繍、標準的なスカートの

〘セーラー服〙

私にあってるのかしら?

 

『さあ、第二段階。仮面を脱ぎ捨てて己の姿を見せてみよう!』

 

「マリちゃんが着替えてきました、皆さん!その素顔を得とご覧あれ!」

 

そうMEMちょが言い放つ、私は再度ステージに脚をかける。脚に震えが来てる、でも怖いんじゃない私はここを〘支配〙するんだ。顔も知らない素性も知らない奴らばかりだが、ドルオタという一種の洗脳を施された者たちだ、私を〘支配者〙と思わせられれば簡単に靡くだろう。その為に必要なのは重力だ……光を発して母様のように人を焦がすのでもルビーのように人を照らすのでもない、私は重力で人を引き寄せて、そして押さえつけて決して放さない……これこそが私の〘支配〙だ!!

 

「改めて名を名乗ろう、私はマリ。またの名を星野アクアだ。

今私は貴君等の眼の前に立ち、歓喜に慄えている。

私は、見知らぬ大勢の前に立ちこうして何かを行うことが、トラウマであった。

だが、諸君等のお陰で私は克服することが出来た、それ故に」は〜い、話が長くなるので要約すると〘ありがとう〙って意味です。」ルビー貴様!」

 

ワハハと声が響いた、そんなに面白いものか私に恥を

 

「マリリンそんな仏頂面してると、眉間に小皺が出来ちゃうぞ〜?あれっ?それって私にもクリーンヒットじゃん!」

 

「あーちゃんそんな硬いこと言わずに気軽に行けばいいのよ。リラックスして、でもやっぱりその口調も似合ってるわよ。」

 

どいつもこいつも自分勝手によく言う!ならば私からも言わせてもらおうか?

 

「さぁ~て、次の曲は!」

 

そう来るか、だがルビーよ歌唱力で私に勝てるかな?お前の努力では決して到達し得ぬ、その高みを得とご覧あれ。

 

 

 

 

〜sideアムロ〜

 

鮫島アビ子…こうして彼女と合うのも2年ぶりかな?まさか、俺宛に電話を掛けて来るなんて思わなかったが、何のようだろうか?

俺も暇じゃないが、お人好しってことかな?いや違うか。

とりあえず、家に来て欲しいなんて言われて、言われた住所に来たものの、簡単に家に入れるとわな。

 

「久しぶりだね、君から呼び出しの電話があるとは思わなかったけど、連載が忙しいんじゃないのかな?」

 

「はい、ですけど少し参考にしたい事がありまして。あの時のように、助言が欲しいんです。」

 

仕事を引き受けたのは良いが、劇の脚本なんて書いたことがない。それに、実際劇はどんなものなのか良くわからないか…

 

「そうだね、今連載しているのは東京ブレイドだったかい?近日に劇をやると聞いているけれど、あまりいい進捗じゃ無いみたいだね?その事で聞きたいんじゃないのかい?」

 

「は…はい!それで…ブレイドの登場人物を勝手に改変されて、頭に来てそれでえっと…脚本家の方から仕事を奪って私がやるって言ったんです。」

 

なるほどな、クリエイターとして一番嫌なことをされたということか…だとすれば頭に来るのも無理もないが。確かに、原作者と脚本家との間で直接やり取りさせると両者の相性がハマれば最上のものが出来上がるが、ハマなければ両者が即座に決裂して企画がその時点で破綻するのでそうした相性問題に悩まされないよう中間を挟むのが常識だ。

 

しかし、いい加減この業界も気が付かないものかな、こういうものに中間を挟みすぎると原型が保てなくなって本末転倒になることだってあるんだと。

少し、揺さぶって見るか?

 

「君は脚本を書いたことは無いはずだが、それでも書けるとそう思ったのか?ならばそれは驕りも良いとこだな、人一人ができる事なんてたかが知れている。無茶をしすぎれば体を壊すし、限界を把握していなければ何もできなくなるぞ?

 

少し説教臭く言ってしまうが、君は自分の事を天才だなんて思っているんじゃないのか?

確かに今は売れっ子だろう、だけどね君レベルの人はこの世に大勢出てきた。そんな人でも、一つの作品で終わってしまう事だってあった。俳優の世界でもそうさ。

 

肯定ばかりされて増長した今の君に言っても無駄だと思うが。きっと尊敬する人物すらいないのだろう?」

 

「そんな事はありません!それに私にだって。吉祥寺先生という師匠がいます、彼女を超えることが私の目標で…

でも先生も他のメディアで足元見られて、作品を……それもよりにもよって私が漫画家を目指す原点となった〘今日あま〙があんな酷い形で踏み躙られたことはどうしても許せませんでした。それで思ったんです。ここで私が言わなきゃ、漫画家はずっと下に見られて、またあんな理不尽な仕打ちが繰り返される。私が背負わなきゃって。」

 

なるほどな、今回の事は決して自分に酔ってる訳じゃない。それよりも、敵討ちとでも言えるのかな?となると元を辿ればあちら側の過度な金権主義に基づく悪習が招いた自業自得とも言える。なら、俺に彼女は説得できない。出来るのは、師匠である吉祥寺さんくらいか。

 

「なら、俺に出来ることは無いね。俺だって脚本なんか書いたことは無い、そういう仕事は脚本家の仕事さ、餅は餅屋と言うだろう?

勝手に背負うなら背負えばいいさ。だけど、部屋の片付けが出来無いくらい余裕を持っていないのはまる解りだよ?このままでは、君は間違いなく、リタイアするだろうね。」

 

自分でも解っているだろ?睡眠も満足に取れていないのは解かりきってるじゃないか。

 

「俺に言えるのはそれくらいだよ、聞きたくなかったかい?」

 

「いえ…参考になりました。ありがとうございます…。」

 

強くもない心で虚勢を張って、それで全てを抱え込む。何処にでもそういう子はいるものだな。

そう思いながら、俺は一人足を吉祥寺さんの方へと向ける。

本当に俺はお人好しだ、誰のためかな。

 

フッ、自然と笑いがこみ上げる。娘の晴れの舞台だ、台無しになんてしたくないのかもしれない。徐ろに電話をかける。

 

「もしもし?吉祥寺さんですか?安室嶺です、娘がお世話になったそうで、これから少しお話がしたいのですがよろしいですか?はい、鮫島さんの件で少し大丈夫ですか?はいお願いします、では。」

 

彼女なら鮫島さんを説得できる、そんな気がした。

 

 

 

〜side雷田〜

 

東京ブレイド、どうすんだよ…このままだと成功するものも成功しない、胃が痛い。

GOA君の作品はとても良いものばかりで、僕としても東京ブレイドのそれも良い出来だと思っていたんだけど…間に入る人が多すぎたのがいけなかったってことなんだろうな。

 

お客さんだって皆満足した顔で帰っていく、そんな姿を見るのが僕は好きなんだ。だけれど、このままだと東京ブレイドは間違いなく失敗する。

どんなに凄い人だって、門外漢の事に頭を突っ込んでただで済むはず無い。

鮫島先生は最近の舞台を見たことすら無いって言うんだ、それならこのステージアラウンドを有効に活用なんて出来やしない。

 

そう考えに飲まれていると、電話が鳴った。

 

「はい、雷田です。」

 

[あぁ、久しぶりですね雷田さん。安室嶺です。娘がお世話になっていると思うんですが、その東京ブレイドの件でお話がありまして。

解決策は既に種を蒔きましたので、後は貴方次第です。良い方に転がすのもよし、無視するもよし。選んでくださいよ?それでは。]

 

一方的に話をして一方的に電話を切られた、解決策ってなんだ?俺に何をしろと?種蒔いたとは?

でも、東京ブレイドの解決策なんて…彼はどうしてそこまでやろうとするのか?部外者だろうに。

 

「これが安室嶺か…」

 

嫌に不気味だ、俳優とかそういうのを抜きで人として何かおかしいと思った。そんな人の血を引く娘が今回の東京ブレイドの舞台に立つんだよな……こりゃ、絶対に失敗なんかできないし、それ以前にしたくない…絶対に成功させてやるか!

 

 

 

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