虹の男と星の娘   作:丸亀導師

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刀鬼ってなんかシャアに似てね?


第六十九話

鮫島アビ子彼女が座るモニターの前には、彼女自らが否定した演劇版東京ブレイドの脚本家GOAが映し出されている。

二人は緊張した面持ちの中、今回の東京ブレイドの脚本に対して思い思いの事を紡ぎ出した。

 

鮫島は初めてステージアラウンドの劇を目で見た感想を、そしてそれを有効に使うにはそれを良く知っている人ではないと駄目だということ、そして自分ではそれが出来ないことを悟ったという。

 

鮫島は吉祥寺先生に、連れられてそれを知りそして雷田に声をかけられた事をチャンスだと考えたこと、脚本をもう一度きちんと話をしながら折り合いを着けることを、そして演劇に落し込む時に最も重要な部分を纒めたことを。

 

GOAは演劇に対する並々ならぬ熱い想いを、自分の東京ブレイドへの解釈で、原作者たる鮫島先生との齟齬を実感した。

東京ブレイドを読み返して、主要登場人物の一つの共通点を見つけていた事を、どうしてキャラクタに固執したのかをそれを話した。憶測でもそれを聞きたかったのだ。

 

鮫島自身、物語よりも最も重要視していた部分を編集等が間に入り、伝わらなくなっていたことを知りGOAへの非礼を詫た。

そして、GOAへの質問に返答した。

 

「GOAさん貴方を信頼して、一つ大きなネタバレをするんですけれど、実は東京ブレイドは現実にいるある人をモデルにして、主人公達を書いているんです。

その人はとても凄い人で、最初はその人を主人公にしようとしていたんですけれど、何故か作品の展開が拡がらなくてやむおえず分割したんです。

 

だから、戦闘スタイル。特に刀鬼とブレイドの動きは鏡写しにして欲しいんです。

それとなく、ですけどそれが解かる演出を入れられたらなぁとかも、お願いできますか?」

 

GOAの、彼女と話した感性として彼女という人はかなり自分のキャラに入れ込む、ただそれだけではない。きっと、モデルとなった人は彼女にとって特別な存在なのではないか、そういう結論に達していた。脚本家としてそれはきっと、叶わぬ恋とかそういうものに似ていると直感したのだ。

 

彼はその願いを掬い上げようと、ペンを取る。次こそは原作者を納得させる、そんな作品に作り上げようと。寝る間も惜しみ、幾度の夜も越え、それを書き上げた。二人の共同作業、漫画家としての時間を削ってでも完成させたかった彼女と、そんな彼女が眼の前で期待していることに答えようとする彼。

鮫島とGOAはその山場を超えた時、一つの達成感とパートナーを得たような、そんな気分で互いを見ていた。

 

 

 


 

 

〜sideあかね〜

 

脚本が書き上がった

 

その連絡が入ると私達は再びスタジオへと足を向けた。

到着するとそこに金田一さんが私達を出迎えた。

 

「全員それが新しい脚本だ見て驚くな、受け入れろ。それが脚本家と原作者が足並み揃える恐ろしさだ。」

 

三者三様、十人十色の感想が出てくる。

キラーパスの様な演者任せ、説明台詞の少ないなんとも演者には優しくない脚本だ。

それと、私達のそれとは別に劇の始まりの前に

 

「声だけですか、しかもこれって男女二人だけ、この内容原作にも無いものじゃないんですか?とするとこれって、前日譚?」

 

対話する男と女のシルエットだけを照明によって作り出して、それを演者が語るというものだ、だけどこれ

 

「まるで影絵ね、女と解りやすいシルエットじゃないとこんなの…それに化粧の時間も少ないから、女形のやれる仕事じゃ…一人いたわね。」

 

「そう、主演で化粧の時間も少ない男役の女が一人ね。」

 

私達はマリンちゃんの方を見て、彼女の出方を見た。

 

「配役は私と姫川さんですか…確かにこの胸なら影でも解りやすいですからね。両者とも髪が長いなら、シルエットで女と解るのはこういうところですからね。」

 

意外とポジティブだね、なんか心境の変化でもあったのかな?予定外の事があると結構あたふたしてた印象あったから、一皮剥けたというか人が変わったというか?

 

私よりも心配しなくちゃいけない人いるから、そっちに気を使ってあげて。

 

そう言って彼女は鳴嶋君の方を見た、一人だけ演技が硬い人。素人からあがった彼は、これに対応できるのか心細く思っているのかもしれない。

確かにあの様子は危ないな…あのまま放ってはおくのは不味い気がする。でも私だってまずは形を作らないとならないんだから、最低でも台本を全て読んでからかな?

 

「あかねちゃん、今の台本ならたぶん読まなくてもある程度は行けるよ。だって、原作通りだもの。」

 

彼女が台本を握る手は力が入っていた、だけれどきっと誰かの意志の介在を感じ取ったんだろうと思う。オカルトみたいな話だけど、彼女はそれを読み取れるのなら。

 

 

……

 

稽古をしていて少しの違和感に気が付いた、それはマリンちゃんと姫川さん。ブレイドと刀鬼のその話し方が、なんかこう同一人物?が話してるような、そんな感覚があるんだ。

 

台本でその仕草が細かく入っているけれど、確かに全く同じ内容が仕草が書かれていて、なんというかこう

〘双子が話をしている〙みたいな?それでも、二人の演技の違いもあってその違和感も薄れるんだけど。

 

「あの金田一さん、ちょっと気になるところがあってですね。」

 

私はその事を話した、脚本家のタイプミスなのかそれとも本当にそれをやるのか。

答えは後者だった、マリンちゃんは言ってた原作通りだとそれはマニアックな所だけど、もしそれが本当なのだとしたら。

 

二人は兄弟とか言う設定は無いはずなのに、そこまで似せる必要は無いんだけど。

これが原作者の要望通りってことは、これって元々モデルは〘一人〙ってことなんだよね?

 

まあ、漫画だしそういうとこもあると思うけどそれでも一人を分割して二人にするのは、その人って凄い個性あるんだろうな。

誰がモデルになってるかは解らないけど、原作をきちんと読めばわかるのかな?

 

 

〜sideアクア〜

 

今更だけどシルエット演技って初めてだ、それになんか十二単衣みたいなの着せられてるし髪型は流しだから、楽でいいんだけどもそれでも身体の線を綺麗に影で飛ばすのは難しい。

 

「姫川さんの出番ってこれの直ぐ後なんですよね?大丈夫なんですか?」

 

「衣装と化粧自体はそのまま、だから関係ない。」

 

なるほど…

 

「それよりお前…ホント胸デカいな。あの男装してた時とか、さっきまでと言いそんなサイズを良く隠せるな。」

 

「昔から良く役作りに励み続けて積み上げたノウハウのお陰と言っておきます。それよりも姫川さんの方が凄いですよ、即興で直ぐに演じ分けられるのは正直尊敬します。」

 

「性別分けられるお前もお前だがな。それに、俺の演技に良く付いてこれるな、有馬と違って感覚派じゃないと思ったが?」

 

演劇で褒められるのは初めてだ、駄目出しされたりは良くあるけど。素直に褒めてくれた礼にその疑問にお答えしようかな?

 

「人を見る目はあるつもりですよ?まあ、偶に勘が外れる事もありますけど…例えば、今で言う不思議系タイプとか良くも悪くも常識では測れない人が多いですね。そうした特殊な例を除けば、この人はこういう演技をするからこう合わせれば良いとか…意外とわかります」

 

「だからオッサンは、お前のことを気にかけたのか。安室嶺の娘なんだって?実際どうなんだ、認知されてないのか?」

 

「普通に普通の家族ですよ、認知されてないとかはないです。公表されてないからどちらかと言うと隠し子ですけど、父親してくれてるかと…世間一般的には毒親の部類かもしれませんが。」

 

「オイ姫川、星野無駄話ばかりするなよ。」

 

おっと忘れてた、さて演技演技。……いい感じに終わってよかったよ。

 

「星野、お前はこの役どう解釈してる。」

 

「そうですね、恋人同士じゃない。でも恋人よりは深い関係でも夫婦でも無ければ、愛し合ってるわけでもない。互いのことを良く理解し合った、〘同志〙じゃないかなと。だから恋愛要素はない、それでも会うのが遅すぎたという未練をと、そう思ってやってます。」

 

私のその言葉を聞いて彼はうんうんと頷き、彼とのシルエット演技の稽古は幕を下ろした。後は通しでやる時に、互いにどれだけ磨き上げられるかだね。

 

 

……

この劇の見どころは何処か、そう言われて何処を推すかと言われれば基本最も派手な演出のある、終盤の殺陣になる。

動きながらも台詞を吐きながら、剣戟を交え時にはジリジリと剣を抑え合う。顔が近い…吐息すら感じる心音もだ。

 

私と彼の動きはこの台本の中ではかなり同調する、そんな風に組み立てられてる。バックでは互いの後ろに意味深なシルエットが浮かび上がり、私達の姿と違う人物が映し出される事になっている。それに関しては撮影するやつを映すらしいので、劇団の誰か若しくは全く違う人がやるのかは解ら無い。

なにせ急にやるのだ、誰が抜擢されてもおかしくはない。

 

「おい星野、そこなんだがもう少し足を強く踏み入れろ、そうすれば姫川と同じ体勢に簡単に出来る。」

 

金田一さんのアドバイスとかは結構的確で、私達のことを良く見ているというのが解る。

これは父様には無理だね、絶対アドバイスとか言って人には解らないことを言われるのがオチだもん。母様の場合に至っては擬音交じりになって言葉として成立していないから、解読不能だし。

 

終劇のあかねちゃんの扮する、鞘姫が斬られるシーンは元々私が斬られる筈だったのにそれを庇う彼女が死に、そして皆がその傷を肩代わりするという、感情に訴える内容。

恙無くそれが完成してしまった事に私は少し違和感があった。

 

私を庇うその姿、感情演技が挟まる直前のその行動をあかねちゃんと、もっと話をして彼女のことを知らなければならないのに、なんでだろうか、彼女のことを知るには〘父様〙と話をしたほうがより、見える気がするんだ。

 

……

 

 

「お疲れ様でした〜」

 

今日の稽古も一段落し帰路へと付く、その時一人の人物に声を掛けられた。

金髪のニヒルな笑みを浮かべた人物が私のことをじっと見ていた、彼の顔に見覚えはないけれど何処か懐かしいもののような気がする。

 

「げっ、アレ神木プロダクションの社長よ。この前あった時、何処かに連れて行かれそうになったのよ、怖いわぁ〜」

 

「かなちゃんそれ本当?本当なら警察に言って捕まえてもらったほうが良いよ。」

 

「二人共なに言ってるの、神木さんに失礼でしょ?あれは…なんだろう誰かを待ってるのかな?」

 

誰を待っているのかなんて私には解らないけど、彼は何かを私達に知らせようとしているんじゃないか、でも何を思っているのかも解らない。

暗い瞳の中にほんの少し写し出される、星の瞬きは

 

〘助けを求めている〙

 

そんな気がした。

 

 

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