虹の男と星の娘   作:丸亀導師

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第七十七話

〜sideかな〜

 

MV撮影も終盤に差し掛かり、予定していた日付も完璧に終了した。私達はアネモネさんからかなり絶賛された。

 

「貴方達は絶対に売れるわ。私が保証出来る、今迄撮ってきた中で全員が輝いているにグループなんてなかったもの。

昔、TVで見ていた旧B小町以来の気持ちだわ。でも、旧B小町でさえセンターを張れるエースはアイ一人だったけど、全員がセンターを張れる程の器が見込めるエース揃いのグループなんてたぶん日本史上初かも」

 

流石にそんな大げさなとは思ったが…そこまで言われれば悪い気はしない。

ただ気掛かりがあるとすれば、あーちゃんとルビーの関係だろう。

あーちゃんは極々普通にMVを撮っているものの、一見すると気高く清楚な彼女は、裏では結構ヤッているということをひた隠しにする、所謂〘嘘吐き〙ということを利用しているんだと思うんだけれど、その魅力が皆を引き寄せている。

 

ルビーの方は別の意味での〘嘘吐き〙で明るくお転婆な姿からは想像できないような、暗い儚げな演技を披露してみせた。思わず鳥肌が立っていたのだけれど、ルビーの方はどちらかといえばアイさんと同じ様なものだろう。

 

お互いに本当の自分をひた隠し、互いに引き合うその姿は姉妹というよりかはライバル。

 

私はといえば、私は本当の自分を見てもらいたいから、私に出来る私の出来得る限りの演技をさせてもらったわ。

それでも、何て言うのかしらあーちゃんとルビーと比較すると迫力が足りていないと、そう実感せざる負えなかった。

やっぱり観客は大勢いた方が良いもの、私もかなり毒されてきてるって証かしらね。

 

「アネモネさん、私のMVなんですが本当にNG部分とかなかったんですか?」

 

「え?無かったわね、私としては貴方が今一番売れると思っているけれど、あの姉妹の方はまだまだ粗削りだからまだ伸びると思うわ。貴女も気付いているようにあの姉妹もセンターを張れる器の持ち主だから。

 

だからいずれ貴女を追い越そうとするでしょうね、貴女は今を輝いているからそれを見て焦るかもしれない。あの姉妹が未完成の原石なら貴女は完成された宝石みたいなものだから。」

 

「ということは自分に伸び代を見せるだけじゃ駄目と…私がするべきなのは二人の輝きに飲み込まれないよう色々と装飾しなきゃいけないって事ですか?」

 

「おっ!鋭いね、身内だと言い辛いだろうけどそういうものよ。でも、それを見つけるのは貴女だからしっかり頑張りなさいね。それと、MEMに1言言っといて。若い子に張り合うのは良いけれど、無茶はし過ぎ無いようにって。

 

全員がエース級と言っていいあなた達の最大の強みは誰がセンターを取るかで、状況に応じて自由自在にグループの輝きの色や特性を変えることができること。これは全盛期のあなた達の先輩にも出来なかったことだから、旧B小町を超えたいのならこれをモノにできるかどうかに掛かってると言っていいわ」

 

貴重な外からの声は聞くに値する、身内だけだと私達は大きく成れないものなのだから。

 

 

……

 

撮影が終了し残りの2日間は待ちに待った観光をすることになった。まずは参拝しようと私が提案したのだが、それに待ったをかけた人物がいた。なんと、ルビーだった。

 

「観光する前に行きたいところが有るんだけど、行っても大丈夫ですか?直ぐに終わるんだけれど…。」

 

彼女には珍しく、しおらしい態度に思わず違和感を感じた。余りにも普段とは違う態度に、私はあーちゃんとは結構付き合い長いし、あーちゃんの態度ならなんとなく解る。

けれど、ルビーの事はあーちゃんの妹だからとあまり深くは詮索したことが無かった。公私混同はあまり良くないからね。

 

「ルビー、あぁアイが言ってた事ね。なるほど、解ったわ場所の案内はしてくれる?」

 

「うん、じゃあ助手席に行くね?」

 

そう言って車が向かう先は観光には不向き、それどころか観光なんてしない場所。霊園…それもそれなりに新しい部類の誰か偉人の墓があるような場所じゃない。

そこに付くと、場所不相応な白衣を着た一人の男性が立っていた。顔は…悪くない感じだけど何処か気だるげな感じの人だ。

 

「ルビーちゃん結構早かったね、もう少し掛かると思ってたけど。」

 

「うん。折角来たんだから、皆も一緒にお線香あげてあげれば喜んで貰えるかなって。さりなちゃん、B小町好きだったんでしょ?昔とは顔ぶれが変わってると思うけど、許してくれるかな。」

 

「あぁ、彼女も喜んでくれると思うよ。」

 

アイさんと旧B小町の皆さんのサイン入りの色紙を、何処からか出した彼女は墓前へと立ち話を初めた。

アイドルになったこと、B小町になった事。メンバーも友達も大勢出来た事、墓主の願いを叶え続けることを誓って。

 

その姿は普段の彼女とは程遠く、だけれど何処か清々しい光景を見ているように思った私は、感性がおかしいのだろうか?

その後一人一人線香を捧げて手を合わせて自己紹介をする。

霊園から出た時点で自己紹介を受けた、雨宮吾郎という病院の先生だという。

そして、墓主は12歳という短い人生を儚くも一生懸命に生きた〘天童寺さりな〙という一人の少女のものだった。

 

 

〜sideルビー〜

 

ここには私が眠っている。〘天童寺さりな〙という私ではない前の私の抜け殻が、私という存在だったもの(・・)が静かに私の人生を狂わせないように眠っているのだ。

12年という無限とも思える苦痛の中、生というものに必死にしがみつき、もがき苦しみそして最後に息絶えるという。

そんな意味の無かった(・・・・・・・)人生を生きた私が。

 

でも、そんな人生だったけれど今この時を生きるための、充分なスパイスだってそう思えている。パパもママも私を愛してくれるし、お姉ちゃんだって私のことを好きでいてくれて、先輩も私のことを私として見てくれる。

生きる(・・・)という何の意味の無い行為を、今こうして楽しくしっかりと感じているのは偏に、無意味(・・・)な〘天童寺さりな〙という人生に唯一の意味を与えてくれる。

 

『ルビー本当にそれでいいの?自分がその子だって本当に言わなくても。』

 

前世の記憶と人格が別になってるお姉ちゃんには解らないだろうけど、自分が本当に助からないっていう絶望感は、たぶん私以外に体験した人はいないんじゃないかな。いやパパは解るのかも、そうなると私の一番の理解者ってパパなんだろうね。でもパパと違って私は、死ぬのなんて覚悟出来なかったよ。

 

生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きたかった。

私の夢はお母さんと一緒に暮らしたい、お母さんと笑顔で暮らしたかった。

 

「ルビーちゃん、アイさんに会いに来るかい?」

 

「うん、ママと当分会えなくなるからちょっとだけ。皆も良い?」

 

だから私のママへの想いは、憧れと代償行為なのかもしれない。

 

「ルビー、そんな事を…」

 

思っちゃだめなんて、言えないよね?でも、ママが好きなのは本当だから。だから、いつか本当に私はけじめを付けなくちゃ駄目なんだ、解ってるけど怖いんだよ。

私が《さりな》だって言っても、誰にも信じてもらえない事が。だから私は嘘を付く、いつか真実を伝えられるそんな勇気を持ち得た時に、真実を語れるように。

 

 

……

 

「ママ!どうだったの?メールとかくれればいいのに。」

 

「え〜、だってゴロー先生と一緒にいたんなら聞けばいいじゃん!ま、良いけどね〜っと。ありゃりゃ、皆勢揃いちなみに先生扉の外は誰かいるの?」

 

「いいやいないよ、今なら普通に喋っても大丈夫なはずさ。」

 

やっぱりママって有名人だねそう言えばこの間取り、見たことあるなんて思ってたけど、ここ産婦人科になったんだ。

元、私の部屋。

 

「あはは、ちょうど座ったばかりなんだ。

それでね、ルビー、アクア。この子ね、男の子なんだよ。家の家系図で始めて産まれる男の子。これでアムロに寂しい想いさせなくて済むね。」 

 

そう言えば家は、ママ、私、お姉ちゃん、かな先輩、後一緒に暮らしてないけどお祖母ちゃんがいる。全員女だから、もしかしてだけど肩身が狭い思いとかしてたんだろうか?

 

「そうか……男の子か…」っとお姉ちゃんがママのお腹を摩りながら目を輝かせてる。そういえば、ママが妊娠の分かった時、弟と妹どっちがいいかな?って話になった時にお姉ちゃんも次は弟が欲しいって言ってたっけ?

 

「あ、そうだ。私が入院している間家事とか出来ないから、お祖母ちゃんにお願いしたよ?新しい孫が出来るからって言ったら、直ぐにOK取れちゃった。だからその間は4人仲良く、家で待っててね〜。」

 

「そう言えばアイさん。安室さんは何処に?あの人なら貴女の事が心配で直ぐに来ると思っていたんですが、まさか別居中なんてことは無いですよね?」

 

センセにとって、パパはいったいどういう人なんだろうか?ママの事が心配し過ぎてどうにかしちゃうような人じゃ無いと思うんだけれど。

 

「先生!アムロは仕事で来れないだけなんだよ、東京の方だけじゃなく、来年の春からは海外の映画撮影の仕事が舞い込んでその打ち合わせで結構忙しくしてるんだ。それに…出産日には絶対に来るって言ってたからね。仕事先にも絶対条件としてそれは確約させたから大丈夫だよ」

 

「そうだったんですか…ならいいですけど」

 

ママはそれだけ話すと先生もほっとしたようで笑顔を浮かべて、同時にママが私達に向き直ると

 

「観光楽しんできてね〜」

 

と言わんばかりに、私達を部屋から叩き出した。

 

 

〜sideあかね〜

 

この雨宮吾郎という先生、少し変わっているというか何かを隠しているような得体のしれなさがある。

一見すると周囲に対して明るく振る舞って居るのだけれど、内実何か後ろ暗いものを感じられる。

何がどうとか、具体的には解らないけれどただそう思う。

 

「こうして改めて私の故郷を紹介するのは初めてです。バスガイドとかってこういう気持ちなんでしょうかね?さて、お次はこの社なんですけれど…」

 

結構説明も丁寧で、私達にも解りやすいように噛み砕いて説明してくれる。ネットに乗っていないような、地域での親しまれ方とか昔はどうとか、そういう事まで言ってくれるから意外と為になる。

 

天岩戸神社なんかも行ったりして、神社巡りツアーなんてそんな感じで過ごしていると、東京では見たことのない草が生えていた。やっぱりこういうところの自然って、本とかだけじゃあ解らない事もあるんだな。

 

「あの〜、この草って何て言うんですか?私みたこと無くて…都心とかだと自然が少ないので。」

 

「これは……見たことないな。ここらへんに自生しているタイプの奴じゃ無いと思うんだけど、山菜とか植物も結構散策してるから知ってると思ったんだけど…これは解らないね。」

 

「それはたぶんホトトギスだよ。」

 

皆が声が聞こえた方を向いた。そこには一人の青年が、後ろに大きなリュックを背負って登山の格好をしながら、現れた。

私はこの人を見たことがある、誰だっけか?そう悩んでいると、マリンちゃんが驚いたように(そんなに目を見開く必要があるかな?)言った。

 

「八洲さん?」

 

誰だっけ、後ちょっとのところで喉になにかが詰まったように答えがはっきりしない。

 

「僕もこうやって見るのは久しぶだけれど、普通はこの時期は地上部が枯れて、地下茎だけに成るはずなんだけれど、もしかしたら新種かもしれない。

サンプルとして持ち帰りたいけど…一つしか無いし一応は絶滅危惧種の一種に数えられてるから、どうしたものだろうか?」

 

勝手に話を始めて、勝手に盛り上がっている。

 

「へぇ…ホトトギスですか。確かにこの時期は無いですよね、私の家の周囲にも生えていたりはするんですが…。なるほどなぁ、だから新種だと?」

 

「やはり田舎は良いですね、草花が生い茂って。正に大自然を感じられる。」

 

ねぇ誰だっけ?私顔見たこと無いんだけど

 

ケンゴ君のバンド仲間の八洲さん。ルビーは会うの始めてだと思う。でもなんでいるの?

 

あの時の、私がかなちゃんの応援している横で、ヲタ芸やってた人だ。それで見たことあると思ったのか。

 

「あ、自己紹介遅れました。八洲 望です、今日はフィールドワークの為に、ここに来たのですが良いものが見られて興奮しています。」

 

「あぁ、ご丁寧にどうも。今日は非番ですので、名刺を持っていないのですが、雨宮吾郎といいます。この近くの病院で産婦人科医をしております。そのお年で部長ですか…まだお若いのに。」

 

「親の七光りですよ、17の息子に何をやらせてるんでしょうね。」

 

部長?バンドのリーダーってだけじゃないのかしら?こうして私達の観光に、一人参加者が増えた。

 

 

 

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