後5分か、まさかあんな失態をするとは。趣味というか、副業のようなものだったものだが、つい話し込んでしまった。
アイや社長とは約束していたのだが、約束を破るのは男として恥以外の何物でもないな。
いや、アムロ・レイまだだ、たかがタクシーが渋滞に巻き込まれているだけだ。
この距離ならば、走ればなんとか間に合うか。いや、行ける!
「すいません。ここで下ろして頂いても良いですか?えぇ、はいありがとうございました。ミヤコさん、資料を会社までお願いします、後上着も。タクシー代はこちらのカードで。」
「あの、どうするおつもりで?」
何をそんなに、慌てたような顔をして。
「なに、健康のために走るだけだよ。人の身体なら、渋滞を気にせずに行ける。チュっ、頼むよ? 」
手の甲へ信頼と尊敬の念の為にキスをする。
『嘘、キスされちゃった///』
渋滞の中扉が開かれる、ゲートオープン。最短距離はこっちだな。路地に向けて脚を加速する、基本的にスニーカーで移動していて良かった。皮靴では、いざという時にこうして走ることなんて出来やしないのだから、疲れ辛いというのは正義以外の何者でもない。
昨今では、パルクール等という移動手段が若者の間で流行っているようだけど、それを実践してみても悪くはないな。
地図は頭の中に入っている、後は方角さえ間違えなければ良い、3秒後人が来るか。路地の右側の扉が開き、人が出て来る室外機を足場に跳躍、受け身を取りながら脚を進める。
しかし、どうしても間に合わなかった場合はどうしようか、何か土産のようなものもないし考えておくには時間が足りないか?
確か、今のB小町用に作った曲は確か3曲ある。だとすれば、約15分。開始時間が後8分だから、二曲目には間に合うか。
なんて利便性の悪いステージなんだ、駅からもそれなりに遠いバス停からも。全ては俺のせいだが、しかしどうだ?
最後の信号か、ここを過ぎれば後は一直線か。見えた。
「ハァ、ハァ。チッ…チケットは…これでいいいか?」
「しかし、もう終わり頃ですけど」
急がなくては
「構わない。…うっふぅ。」
階段を下っていくに連れて、歌が聞こえてくる。
STAR☆T☆RAIN
か、始まりというStart Line 銀河鉄道という Star train
星の雨という意味のstar rain
この3つの語呂合わせ正しく、B小町の始まりに相応しい歌詞だと思う。
「よ、なんとか間に合ったな」
「いや、約束より10分遅いよ。5分前には付いてないとね。」
音程も、ダンスも良いな。たぶん昨今のアイドルたちの中では一二を争うレベルだ。それぞれのソロパートの音程も完璧だ。
全員が輝いているように見える、きっと他のアイドルを見に来たであろう人達が、呆然と見ている。きっと焦がれ。いや、焼かれているようだ。
「そう言えば、ミヤちゃんどうした。」
「多分まだタクシーの中だ、終わった頃には到着すると思う。」
一番輝いているのはやはり、アイか。だが、他の娘達も負けず劣らず、まるでアイの瞳の輝きが乗り移ったように輝いて見える。
まだまだ、荒を探そうと思えば出て来るだろうが、逆説的に言えば伸びしろが有ることを指し示している。
『あっ、いたっ!よぉ〜しもっと行くぞー!皆、着いてきて!』
「頑張っているな。」
「お前が来たのがわかったら、輝きが増してるように見えるな。アイツ、多分お前のことが好きなんじゃないのか?アイドルに恋愛ごとはご法度、なんだがな。」
そうかな、彼女が俺に求めているのは父性かもしれない。上手く、社長に逸らさないとな。俺には彼女の父親代わりなど出来ないからな。
「そう言えば、ほらサイリウム」
赤、青、緑、黄色のサイリウムか。ま、箱推しってことでいいのかな?
「推しとか、そういうのは俺は良くわからないが、応援するという事は、悪い事じゃないな。」
「大人び過ぎてるな、まだ19だろうに」
そうか、成人は確か20だったか。
「後で、遅れてしまったお詫びに何か彼女たちにあげないとな。土産話も有ることだしね。」
「義理難いところは、変わってねぇな。」
彼女達の輝きは確かに強い、だが闇の中で光り輝くということは、おかしな奴らからすれば恰好の餌食だろうな。
だからこそ、俺が目立たなきゃならないと奴等は必ず動くはずだ。特に神木ヒカル、彼は恐らく誰かの命を奪う為の行動をする。光のない星が自らの価値を見出すにはそれしか無い、そしてシラトリ、深淵の中からどうこちらを見ているか。
アイだけじゃない、皆瞳に光を宿しているのだから。
〜sideアイ〜
「いっーヤッター大成功ー。アイちゃん凄い輝いてたね、私達が霞んじゃうかと思ったよ。」
「ううん、皆のパフォーマンスがあったから輝けたんだよ。それに、私なんかより歌も踊りも表現力だってそれぞれで輝いてた。私なんて、中途半端だから。」
「アンタねぇ、良い?アンタが一番輝いてたって事実は変わらないわけ、謙虚しないでさもっと誇りを持ってほしいわけ。私達は得意な部分で輝いて行けるから、アンタはあんたで、そのカリスマ性で私達を引っ張って行くの!」
「ただね、アイちゃんは表現力がもうちょっとだから、色んな感情を表に出して歌ったほうが良いかもね〜って。
私だってね、結構歌には自身あるけど。放課後ティータイムの平沢さんには勝てないから、悔しいけど天才にはね。」
パチパチパチと楽屋の私達へと拍手が聞こえた。
「四人とも良かったよ。最初の曲は聴けなかったけど、後はかなり完成度が高いと思う。」
うわぁ~、だっと走ってアムロにダーイブ。やっぱり優しい、優しく受け止めてくれる。
「アイ、スキンシップも程々に怪我をされたら困るからね。それに、周囲の目が凄い痛いんだ。俺の事、ロリコンじゃないかって社長から言われてるんだ。」
「別にそういう関係じゃないし、佐藤さんにはそう思わせとけば良いじゃん。それよりも、私達のパフォーマンス良かったでしょ?」
ふふーん鼻が高いんだから。
「いや、良くないから!アンタさ、安室さんは私達の事心配して来てくれてんの。余計迷惑かけるんじゃないの!」
ニノちゃんお硬いんだから〜
「うーわかった。でもさ、なんで遅刻したの?」
「皆には済まないと思っている、俺のせいだ。少し、大学の先生方と話が盛り上がってしまってね。時間を忘れてしまったんだ、まるで相対性理論だよ。」
相対性理論?って何なのか良くわからないけど、
「君等との約束を破ることになってしまったから、お詫びに何か欲しい物はないかと思ってね。勿論、僕のポケットマネーから出すよ。急がなくて良いよ、次のライブまでに考えておいてくれれば。」
何にしようかなぁ、アムロが驚くようなそんな物の方が良いかな?
いや、でもアムロが用意してくれるんだから真剣に考えないとね〜。