虹の男と星の娘   作:丸亀導師

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第八十四話

〜sideアクア〜

 

「はいカット!今日の分はここまでだね、アクアちゃん良かったよ。」

 

「ありがとうございました!」

 

学校も始まり、私の仕事もポツポツと入り始めた。東ブレから入った人達がいるけれど、私は役者として歩みを始めた。

アイドル姿の私を見たことがあると言う人達もいるけれど、私は本業役者副業アイドルとして通している。本業をアイドル、副業を役者として通していた若き日の母様とは逆のタイプのマルチタレントが今の芸能界における私の立ち位置だ。

たまにルビーの誘いを受ける形でステージに立つけれど、それはそれで楽しんでいければと、そう思う。

 

でもね…今撮っているドラマの内容が内容なのだよ。何が悲しくて実話にしろというのか?まるで家の事務所の中でも見てるんじゃないの?とでも言えるような、そんなものだ。〘アイドルを目指す1人の少女とその友達の二人三脚物語。〙

 

私は友達枠、アイドル枠は誰だって?

 

「やっぱり大きくなってるね、前より晒しが盛り上がってる。もう男役出来ないんじゃない?でも、巨乳…いや、爆乳高身長マニッシュ娘というジャンルも良いかも…。」

 

不知火フリルだ…ダンスも歌も出来て演技だってピカイチ。なによりそのキャラクター性、〘圧倒的な不知火フリル〙を全面に出してもそれが良しとされる程の信頼感。仕事慣れしたその態度見習いたいけれど…

 

「良い加減に胸の話しは辞めて下さい、それに今の晒しは4ランクダウン用のだから、男装用のものは別だから!」

 

「サラシにも色々と種類があるのか、勉強になる。」

 

なったところでどこでその知識を使うのか、この娘は何を考えているのかさっぱりだ。

演技をしている時の彼女と、素の彼女はあまりにも違うギャップが強すぎるし、素の彼女は本音しか言わないのだから質が悪い。

 

「あーちゃん、お疲れさん。しっかし、不知火フリルと共演でダブル主演ね…先を越されたって感じね。」

 

「そう言うけれど、有馬先輩。貴女のキャラも重要人物ですよ、あの天才子役が長い時を越えて帰ってきたって、話題ですよ?それに、実力も前以上と評判になっている。

今回選ばれたのは、アイドルメンバー枠でダンスも歌も出来る、そう言う演技でライバルポジが先輩が1番似合うと言われたところからですから。」

 

こういうところが彼女の怖いところだ、〘役者有馬かな〙としての彼女を知っているのが、不知火フリル。

かなちゃんの演技が真に迫る本物のものだっていうのは、やってる側は誰も解っている。テレビ局だとか、スポンサーだとかには解らないだろうけれど。

 

今求められている自分を演じる事も出来るようになったかなちゃんは、水を得た魚のように仕事に身が入っている…このままいけばフリルと同じようなトップタレントへと至る事ができる筈。

だけれど、天才子役という名前が足を引っ張る。

 

母様達が、かなちゃん達のバックダンサーをやったJIFのあの時、〘アイドル有馬かな〙が公に良い意味で広がった。

そこで東ブレの演技、更には最近出たMVでもその美しさは担保された。

 

歌とダンスは当たり前、そこで一級の演技も出来て主役がアイドルになるドラマなら、それに入れやすい。当たり前だよね、良い箱があるのにその中に入ったおせちが、あまりにも味が落ちていて形の悪いものだったら誰だって嫌だ。

 

じゃあ私はなんでフリルの友達役やってるのかといえば…たぶんフリルのゴリ押しなのだろう。いつも我儘言わない子供が初めて吐く我儘に、ご褒美をあげるようなそんな物。それが私だ。

 

「そんなジトーっとした目で見ないでよ、どうやったって胸は透けないよ?」

 

「なんで解ったの?まあ良いよ、それよりこれから少し時間ある?一緒に食事に行きたいのだけれど。」

 

それくらいなら良いんじゃなかろうか?

 

「かなちゃんは、何か予定ある?」

 

「とりあえず無いわね…そこの人と違って。さっさと行くわよ、不知火後輩!」

 

広角を上げて嬉しそうにステップするフリルの後ろ姿、嬉しいんだろうな。こういう事あまり出来ないから、互いに胸の内を知っているからこそかな?

 

……

 

家に帰って身体を流し、ハロにメールが無いか訪ねた。どうやら父様から返答があったそうだ、スマホではデータが残るかもしれないからハロを使って送ったけれど、どんな返答かな?

 

[子供の視線の先、手を繋いでいる相手の顔が見えるものはないか?

それ以外の人物は、

ブライト・ノア ハサウェイ・ノア  ボッシュ・ウェラー の三人が確認できる。

ブライトとボッシュは戦友、ハサウェイはブライトの息子

絵から読み取れるのは、ハサウェイとボッシュが口論をしていたこと位しか読み取れない。台詞があれば尚良し。]

 

鮫島さんの描く絵は、漫画絵とは少しずれているけれど解りやすいみたいだ。

台詞は後でルビーにお願いしよう、目一杯思い出して貰わなくちゃね。それよりも、どうして目線の人物の横の人を気にかけるのだろうか?

 

鮫島さんには私の書いてる小説を素に、漫画を描いて貰っているけれど、上手く言ってるだろうか?原作者と挿絵師の関係だけれど、あの子よりかは物語は上手く行ってると思うんだけれど。

〘哀の戦士外伝 赤い彗星の軌跡〙

二人が和解出来ることを願って、書いてるんだけど大丈夫だろうか?

一年戦争時代、ザビ家への復讐に囚われていた頃のシャアさんの物語を書いていく内に思った事だが憎しみというものは時として、生きるための原動力にはなるのかもしれないが、それを維持し続けるのに心をすり減らしていくのかもしれない。前に取材協力を行った際にシャアさんは親友だったガルマ・ザビを復讐の為に謀殺した時のことを

 

「虚しかった……歓喜も達成感も後悔も無く…ただ虚しさだけがあった…ただ自分を信じていた友を裏切ったという虚しさだけが残り、そんな自分自身を嗤った」

 

と自嘲と共に語っていた。

 

もし、母様がハイジャックで父様の安否が不明になった時の顔を思い出すと、改めて体が震えてくる……。

父様がもし誰かに殺されでもしたら母様も最悪この時のシャアさんのようになってしまっていたのかもしれないって……自分だってかなちゃんやルビー、そしてケンゴ君を誰かに殺されるようなことがあれば……それを想うと改めて父様には何が何でも無事に帰ってきてもらいたいと心から願う。

 

「アクアちゃん〜お友達が来てるわよ〜。」

 

「は〜い、今いくよ〜。誰かが来る予定なんて無かったのにな。

 

 

〜sideかな〜

 

ドラマの収録で遅れてきた私に合わせて、プチライブをやってくれる二人。特に特にMEMさんの心遣いには心底、ありがたい気持ちがある。

私達の動画のその悉くが彼女の手で命を吹き込まれ、彼女のセンスによって再生数が上がっていく。表も裏も両方やって、一流に仕事をこなす彼女は私にとってアイドルではなく、1人のキャリアウーマンだ。

 

「はい!今日の収録も終了〜二人共お疲れ様〜!っと後はお姉さんに任せて、良い子は寝る時間だよ〜↷」

 

「本当にごめん。私達だけ先に仕事を上げさせて貰うなんて…」

 

「良いの良いの!どうせ私は未成年じゃないからねぇ…」

 

「でもMEMちょだけにやらせるなんて…」

 

「ルビー帰るわよ…人の善意は受け取っておくものよ。それに、それがMEMさんの仕事でもあるの、私達が我儘言って困るのは彼女の方だから。未成年者に無銭労働、時間外労働させた。なんて言われたら、彼女の今後がヤバいのよ。しっかりと色々勉強しときなさい。」

 

あいも変わらず、ルビーはその事が解らないのか知らないけれど、手伝おうとする。

確かにここは苺プロのスタジオだ、だけれどだからこそ私達が法律を曲げて、彼女の手伝いをしようとするのは非常にまずい。

 

私達の動画を編集しているのは彼女ともう一人、スタッフがいる。もしMEMさんだけなら、私も勿論手伝おうかと言うだろう。だけれど、苺プロのスタッフだけれど所詮は他人だ。何処から情報が漏れるとも構わない。

年齢がバレるのは芸能界では日常茶飯事、でも流石に法律破るのは最悪の場合彼女の人生を完全に破壊しかねない。

 

「先輩ってさ、色んなこと考えて動いてるよね…それって窮屈じゃない?」

 

「確かに窮屈だと思うことはあるわ…でもねこういう業界長いと考えるようになるのよ。

アイさんだって、アンタ達と一緒にいるためにどれだけ考えてたんだか解らないけれど、きっと今も色々考えながら入院しているはずよ?」

 

経験の浅いこの娘には、まだまだ解らない事かもしれないけれど、自然と適応していくのよ。

硬っ苦しいこの業界で、パパラッチに怯えながら仕事をするアイドル。それこそアイさんはいつもそれを頭に入れながら、時に繊細に時には大胆に動いていた筈。

 

この娘にとっては偶像だったとしても、私やあーちゃん。MEMさんにとっては、同業者。同じ悩みを抱えて来た、そんな人なんだ。

 

「う〜ん、恋愛とかそういうのの制限が厳しいって良く言われるけれど、確かにテレビのママと家の中のママは違ったよ?

テレビで見るよりも人っぽいし、抜けてるところも多かった。それでも、色々言葉とか礼儀作法とかをパパやミヤコさんからの監修を受けて勉強してたの見てたから、そういうことなんだね。」

 

「アイドルの仕事だけじゃなく、色々と経験していく事ことが1番大切だと私は思っているの。

それに…MEMさんとスタッフの亮介さん中々に良い感じだしね。」

 

仕事関係の付き合いだろうけれど、それでも私達といるよりも幾分か気が楽じゃないかしら?いつも私達に気を使ってるから、今だけは歳上に肩を貸してもらえるのだから。

 

……

 

「「ただいま〜」」

 

玄関にある靴が一つ多い?それにこれ…フェ○ガモのヒールじゃない?あの高級ブランドの誰か有名人が来てる?いや、嶺さんもアイさんもいないから来るような人は…

 

「お帰りなさいまし。お久しぶりですね?瑠美衣ちゃん?それに…かな様ですね?覚えておいでで?大君 美鈴です。」

 

「げっ!君ちゃん」

 

この人があの…お嬢様って感じの人よね。昔一度会った事あったけれど、こんな子じゃ無かったようなもっとこう、何と言うか〘ふんわり〙していたような…気がしたんだけれど。

 

「昔と違うと?そうですねぇ、貴女もそうだったように私の方もその後色々とありましたので。人は変わっていくものですよ?」

 

芸能人とか財界人とは別方向のヤバい人みたいに、喋り方がまず違うし、何よりお金持ちオーラが滲み出ている。まあ、あれから私がアイドルになって星野家の一員となったように、色々あったのは事実だし、彼女の方も訳ありなんだろうなとは見るだけで察せられるけど。

 

「今夜お泊りさせて頂くことになりまして、父上と母上にも既に許可を取っておりますし、お二人のお祖母様も快く了承していただきましたので。」

 

は?今朝はそんな事一言も言ってなかったじゃない!ルビーの方を見ると、目が点になっていた。どうやら彼女もその事を知らなかったみたいだ。

 

「かなちゃん……ごめんね、止められなかったよ。」

 

あかねは、この子に恐怖を感じたって言うけれど好奇心旺盛なだけじゃないの?

私のことを物凄く観察してきてる、なんかむず痒いわね。それにしてもジロジロと…

 

『ごめんなさいね…以後気をつけるわ。』

 

「ええ、本当よ。あかねも怖がってたみたいだから、少しは自覚を持ちなさいよ?

後、その口調どうにかならない訳?アンタ私とタメよね、なら敬語みたいなの辞めて普通に喋りなさい。」

 

「それは少しばかり無理な相談です、私この言葉を躾けられておりますので、ですが貴女のような人は嫌いではありません。どうでしょう、改めてお友達になりませんこと?」

 

「友達なんて勝手になるものよ、それになるんなら親友になれるようにしましょうよ。」

 

正直どんな子かよく知らないけれど、悪い子ではなさそうね。でなきゃ、この子で出会うまでは私以外の同世代の女の子に決して隙を見せようとしてこなかったあーちゃんが素の心を見せるわけないもの。

 

「ねぇ、かなちゃん…今」

 

「ご飯よ〜皆、こんな所で話してないで食べながら話しましょう?」

 

詮索するのなんて辞めましょ、気にしたところで仕方なし。それに、政治家の娘だって言うけれど、本質はあーちゃんと同じで友達欲しいだけの子よ。

 

 

 

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