魔法少女世界にいる文化部どもが悪ふざけした結果、スーパーヒーローが爆誕してしまった   作:鳩胸な鴨

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それはそう。


放送部「唐突に生えてきた妹を受け入れられるワケねーでしょうが!!」

「と言うわけで…、店長さんのご好意で、ここの娘になりました!

今日からよろしくね、お姉ちゃん!」

「……き、帰宅部ゥゥウウ…!!

貴様の差金だなァァアア…!!」

「差金ってか、世話してやってくんねーかって頼んだだけだよ。

文無し宿無し、おまけに雲隠れ中で実質戸籍無しのトリプルコンボだ。

取れる手なんて限られてんだろ。

まさか戸籍誤魔化して養子にするとは思わなかったけど」

 

怨嗟を凝縮した放送部の叫びに、帰宅部は淡々と言葉を返す。

唐突にできた妹を前に、放送部が「ええい寄るな!」と抱擁を拒む。

が、しかし。アメジストは「いいじゃん、家族なんだしー」と、構わず放送部の頬に己の頬を擦り付けた。

明らかに距離感がバグっている。

あの自己中が極まった放送部が翻弄されている姿を前に、帰宅部が生暖かい視線を向けていると。

からん、と喫茶店の扉が開き、生物部が入ってきた。

 

「様子を見に来たぞ」

「生物部!アンタ、コイツと仲良いでしょう!?引き取ってください!!」

「ヤじゃ。めんどい」

「畜生!!」

「もう、そんな邪険にすることないじゃん」

「唐突に生えてきた妹を受け入れられるワケねーでしょうが!!」

 

かつてないほどに荒ぶっている。

ただでさえ手入れされていない髪をわしゃわしゃと掻き乱し、放送部が「うがーっ!」と咆哮を放つ。

その光景を前に、帰宅部は生物部に耳打ちした。

 

「普通、あそこまで拒否するか?」

「自家発電聞かれるのが嫌なんじゃろ。

あいつ、喘ぎ声ヤバいからの」

「あー…。そりゃ必死になって拒否するわ。

ムッツリドスケベに禁欲は無理だもんな」

「ブッ殺すぞ!!」

 

顔じゅうに青筋を浮かべ、叫ぶ放送部。

どうやら内緒話が聞こえていたらしい。

帰宅部らは放送部から目を逸らし、ひゅー、ひゅー、と下手くそな口笛を吹く。

あからさまに小馬鹿にしている2人に抗議を続けようとするも、アメジストの愛ある抱擁がソレを許さない。

結局。腕力で振り解くこともできない放送部は、されるがままに抱擁を受け入れた。

 

「…わかりました。わかりましたよ。

お姉ちゃん、やってあげますよ」

「わぁーい!」

「…一応言っときますけど、夜中の9時から10時は絶対に部屋に入らないでくださいね」

「大丈夫!どれだけエグい声が聞こえても、気にしないようにするから!」

 

瞬間。放送部の絶叫が響いた。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「……疲れた」

「市中引き回しみたく振り回されてたな、お前。おもしろっ」

「死ねボケ」

 

翌日。ぐったりとカウンター席に項垂れた放送部の背に、帰宅部が揶揄いを飛ばす。

言葉をひり出す気も失せているのか、今時の小学生でも言わないであろう罵声を投げやる放送部。

この1日、放送部は唐突にできた妹に振り回されっぱなしだった。

そもそも、放送部は他人を振り回すタイプの自己中であるが、そこまで社交性豊かな性格をしていない。

人を動かす才能はあるが、人と付き合う才能が皆無なのである。

対するアメジストは、生粋の陽キャである。

家庭環境が許さなかっただけで、集まりごとには積極的に参加するし、なんなら自分で計画も立てる。

大して親睦のない人間にも快活に迫り、仲を深めようとあらゆる手を尽くす。

放送部と相性が悪いのは、言うまでもないだろう。

 

「んー…。アレだ。今時のマンガとかにありがちな『陽キャに絡まれて死ぬ陰キャ』を見てるみたいだ」

「アンタも陰寄りでしょうが…。

よくあんなノリについて行けますね…」

「お前らと違って、ある程度の社交性を持ってるだけだっての」

 

帰宅部は言うと、砂糖もミルクも入っていない、苦くて酸っぱいコーヒーを啜る。

数口啜ったのち、彼はカップをソーサーに置き、再び口を開いた。

 

「…アメちゃんのノリは手探りっていうか、自分のやり方でお前と距離を詰めようと頑張ってるだけだ。

あんま邪険にすんなよ、お姉ちゃん」

「……はぁ。わかってんですよ、ンなこたぁ。

パパとママが『私の妹として引き取った』って言ってたし、その事実はもうとっくに受け入れてるんです。

ただ、一緒に風呂に入ろうとか、そのレベルのスキンシップを当然のように強請ってくるのに困惑してるだけで」

「…………ん???」

 

待て。今、何かおかしくなかったか?

帰宅部が問おうとするも、放送部は構わず続け、己の爪を見せつける。

 

「勝手に私の身の回りの世話まで始めるし。

今日だってほら。見てくださいよ、このマニキュア」

「うっわ性格的に似合わなっ」

「自覚はありますよ、畜生。

…わざとズボラなキャラ演じてたのに、このままだとどこにでも居るフツーの女になっちゃいます」

「それならそう言やいいだろ」

「言いましたよ。『お姉ちゃんはもっと可愛くするべき』って却下されました。

パパとママも『肌以外は無頓着すぎて心配してたから、このくらいおしゃれしてくれる方がちょうどいい』って言うので、なすがままにされるほかないワケです」

「…お前がとことんまで振り回されてるの、マジでウケるな。

グループチャットに上げよ」

「殴るぞ」

 

帰宅部に新たな弱みを握られたと思い込んだ放送部が、投げやりに脅し文句を吐く。

本当に嫌ならば、徹底的に拒否するタイプだと知っている帰宅部は、ソレに対して生暖かい視線を向けた。




そりゃあ唐突にこんなグイグイくる妹できたら誰だって戸惑う。俺だって戸惑う。
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